2008年12月6日土曜日

企業経営者よ人的資源を潰すのは止めよ

企業経営者よ、人的資源を潰すのは止めよ、良質な労働力の再生産が出来ず、そのうちに企業も行き詰まる

米国発の金融危機は日本経済への影響が他国ほどではないと言われながらも、輸出産業である自動車、電機産業を初め業績にかげりが見え、そのすそ野の大きさから影響は忠夫とではない。これからリストラが増え各層で生活不安は大きくなるだろう。
さらに出生率がチョット上がったからと言っても少子化傾向は続き人口は減る一方で、若年労働者の生活、労働環境は悪化をたどる。結婚もままならず社会に不満を持ち、生活基盤である家庭も崩壊、社会人教育も受ける機会がなく労働力、いわんや人的質は大幅に低下、その結果は企業活動に支障を来たすのは目に見えているし、国際競争力は大きく減退することも誰が見ても確かだ。
今の日本の社会を見て、こんなことが考えられないか。
企業は国際競争力を保つため、以前であれば独占禁止法に抵触するのではないかと思う大型合併を続けている。コストダウンの手っ取り早い手段は賃金カット、リストラであり、固定費(人件費)削減のために派遣労働者を組み入れ、需給調整の手段としている。
一時的に経営者は業績を上げることが出来、株主や経済界の評価を受け名声は上がり、業界ではやし立てられる。しかし、よく見れば請負制度や派遣社員の多用で、その企業の経営基盤は弱体だ。
いま、人材派遣のあり方が問題になっている。昔は特殊(例えば同時通訳など)な才能を持った人達を派遣するのが目的であったと思うが、米国の「年次改革要望」により規制緩和のためと言って製造業にまで拡大されたから堪ったものではない。企業は人件費削減のために大歓迎した。米国が日本の労働者を一生涯一つの企業に縛るのはやめ、自由に働くことができるように解放してくれたはずが、終身雇用、年功序列の伝統ある慣習を打ち壊し日本企業の底力を破壊し、大きな生活不安をもたらした。
派遣の実態もひどいモノであるらしい。企業の勝手放題さはとどまらない。これは派遣社員経験者から聞いた話であるが、派遣された社員は正社員と同じ仕事を安い賃金でさせられる。派遣先の会社にあってコミュニケーションはなく、「派遣さん」と呼ばれる特別のグループになる。派遣会社にあっても電話連絡だけでことは済むらしい。コミュニケーションのない企業組織にあっては、満足感はない。
過日、幕張メッセからの帰り、JR京葉線で2人のサラリーマンが話をしていた。「お客様満足度」の高い企業は、自分の会社に対する満足度と相関があるらしいと言うのだ。今、お客様満足度の高い企業というとどんな企業があるのか。内部告発で企業内の悪事が露わになっている現状を考えると、社員教育、社会人教育など人的教育の欠陥が指摘されておかしくない。
安全教育、社員教育もろくにしない。不安全は免れないし、人格形成も不十分になる。不遇の結果はひねくれてくるし、協調性も養われない。派遣社員によって社会的不祥事を起こされると、派遣先企業の責任を問われる。渋々記者会見し「異常の兆候は見えなかった」というのが精一杯である。
もっと困るのは、正社員は入社するとカリキュラムに従って各種教育を受ける。具体的にはよく分からないんだけれど「○○会社の社員らしい行動を」と要求される。何かやると直ぐ呼ばれて注意される。「企業のイメージを壊さない」ことが重要なのだ。しかし、派遣社員はそう言う社会人教育をうける機会が十分でないことだ。
人的資源を無駄づかいする企業、国に未来はない。日本も貧困率でアメリカに次いでワースト2位になり1位とはピン差である。歴代の総理がアメリカの規制緩和要求に沿った政治を進めてきた結果であることも一つの要因である。
国民一人一人の生活圏、人格権を保証する品格ある国に戻さなければ、国は荒廃に向かうしかない。それを防ぐのが政治である。
企業は、今の雇用制度を即刻見直し健全な社会の育成に強めるべきである。その上に立った競争社会を築けばよい。
今のままでは、企業は自ら滅亡の道を進んでいるように思える。古くから「企業は株主のものか、社員のものか」という課題がある。当然資本家も大切であるが、従業員、労働力あっての企業である。
「企業は誰のモノか」よりもさらに次元の高い「国を成り立たすため」に企業家は真剣に考えるべきだ。