2019年9月30日月曜日

関電「原発マネー」還流(2):「カネを返した」、「情報は小出し」では傷口が大きくなるだけ

関電「原発マネー」3.2億円還流疑惑は社長の記者会見以降も少しづつ詳細がメデイアで報道され、「カネは返した」、記者会見も「まず小出し」する関電の責任縮小作戦も結局は傷口を大きくする結果になった。

高浜町の元助役から経営トップを含め6人に1.8億円が渡り、うち4人は返却、修正申告したというが総勢20人に3.2億円が渡ったという。儀礼の範囲を超えている分は返却したというが一時は預かったことになるらしい。

その還流期間も問題があるらしい。八木会長は06~10年というし、記者会見では2011~2018年と言う。どうしていろいろあるのか。会社法には事項もあり長いので7年と言う八木会長の説では時効になっている。

裏金の還流は、電気料金で納めた資金の一部が関電の工事代金になり、地元の建設会社に支払う。地元の建設会社は高浜町の元助役である実力者に工事手数料という名目でわたし、元助役がお中元、お歳暮やいろんなご祝儀で関電の関係者に配られたそうだ。

事件のきっかけは金沢国税が工事を請け負った建設会社を税務調査して疑惑が公になった。関電は社内調査とともに第三者を含めた調査も実施したらしい。記者会見での質問に社長は「調査結果はある」というが個人情報の関連から詳細な公表は避けたようだ。

批判が高まったことから明後日に再度記者会見をし、詳細を公表するらしい。これは一番まずい例だ。前回の記者会見と今度の記者会見での違いを追及される。社会部記者はそこをついてくるし、疑問がはれなければさらに追及する。

ウソにウソの上塗りは厳禁だ。最後は整合性にかけ、会社の信用がガタ落ちだ。

さらに悪いことに、経団連会長の中西さんが「八木さんや岩根さんはお友達で、うっかり変な悪口は言えない」と弁護するような発言をしたことだ。経済界上げて関電を擁護するのか。

ここは「経済人としてしっかり調査し真実を国民に公表することが大事で大変心配している」と言うべきではなかったか。

中西さんも日立のトップで、原発事業を展開している。東電、関電も含め原発事業者はグルなのかと疑われる。

公益事業社としての姿勢に問題がある。徹底的に追及すると他の電力会社も同じ事例が出てくるのではないか。後出しは批判も少ないだろうと次々にでてくる可能性がある。




2019年9月29日日曜日

今日の新聞を読んで(295):「自分第一」のトランプ外交、その目線は大統領選支持者か

大統領選が近づいてくるとトランプ外交も「アメリカ第一」から「自分本位」に代わってきたか。「アメリカ第一」は米中貿易摩擦交渉までで、進展が見られないとみると日米貿易交渉は「自分第一」になってきた。すべてが大統領選を見据えて目線は大統領選の支持者だ。

多国間交渉では調整したためアメリカを犠牲にした面もあり、グローバリゼーション否定し二国間交渉で不満があればけん制し、相手方の譲歩を引き出し勝利にもっていく。軍事、経済で大きな力を持っているアメリカに反抗する国はない。出来ることは引き伸ばしで一時しのぎだ。

それもいつまで続くか。トランプ大統領の都合で何時ツイッターで異論を唱えるかわからない。だから各国首脳はトランプ大統領のツイッターに釘つけだ。

国連総会での演説で、「社会主義への恐怖」に言及したようだが先進国での多国間協調を乱し、協調路線に風穴を開けたのはトランプ大統領ではなかったか。その間隙をぬって中国、ロシアが覇権拡大に余念がない。

国内では力をつけてきた民主党左派にも警戒しているが、米経済界も「脱株主第一」を掲げ従業員、地域社会に貢献する姿勢を打ち出した。

選挙戦をにらんでの民主党候補者バイデン氏へのスキャンダル疑惑も出てきた。真相究明には下院の姿勢次第だ。

トランプ大統領は再選されるのか。

再選されれば今後4年間もトランプ流外交に振り回されるのか。今、日本は安倍政権だがポスト安倍で誰が出てくるかによるが、安倍総理に出来た親密外交、国際舞台での仲介役が無理になるだろう。

一方、トランプ大統領が敗ければ、国際協調路線に戻るだろう。二国間交渉から多国間交渉へ。今回の日米貿易交渉も勇み足になるだろうし、慎重な姿勢をとってきた先進国首脳は日本を笑うだろう。安倍外交も方針転換が必要だ。中国、ロシアは強気になり、北朝鮮も米国を頼れなくなる。

特に安倍政権は北、中国の脅威を煽って巨額の兵器購入を約束してきたがその見直しも要求されるだろう。

今の世界経済の景気下降懸念の要因は米中貿易摩擦で出口が見えないことだ。トランプ大統領は次々に関税を持ち出し中国をけん制しているが、中国は大統領選を見据えて様子見だ。トランプ大統領が変わることこそ経済対策であり金融政策ではない。

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今日の新聞を読んで(294):憲法審査会議員団欧州視察、自民の思惑はずれも当然だ

なかなか進まない衆院憲法審査会の審議だが、ここにきて与野党の議員団が憲法改正の経験が多い欧州4国を視察したというが、自民党のこれを機会に改正機運を高めようと目論んだようだが、それぞれ国により事情が違うことが分かり参考にならず、不発に終わったという。

今時、各国の事情が違うことを認識するとはお粗末すぎないか。

私は大学で所属していた団体の勉強会に出席し、東北の憲法学者が「他国では細かいことまで憲法に書いてあり改正が必要になるが、日本の憲法はよくできており無駄がない。改正の必要がない」という内容の発言を聞いた。

憲法改正は国の政治体制が大きく変わる時、例えば日本では終戦、東欧では旧ソ連からの独立、ドイツでは東西ベルリンの統合などではないか。日本も終戦を迎え明治憲法から新憲法に変わった。GHQに強要されたと安倍総理は言おうが決してそうではない。その前にGHQから日本政府に草案の作成を指示され、各組織が草案を提示した。しかしその草案では民主政治にほど遠いと判断され、GHQ自ら作成に乗り出した。そのGHQ草案に日本も修正を加え新しい国会で承認された。

押しつけ憲法ではなく、独自の憲法作成というが安倍自民党草案こそ押しつけではないか。

新聞報道によると、各国の憲法改正の事情が違っているようだ。

一番改正数の多いドイツは63回、日本では法律で規定するような内容も盛り込まれ、小さな制度変更でも改憲が必要で、当然改憲手続きは緩いか。重要でない要素まで盛り込まれているという。

国民投票、国会発議も不要な国もある。

リトアニアは14回国民投票をやっているが通ったのは4回で、旧ソ連からEUへの加盟だという。一度否決されるとそれで終わりということになる。

ウクライナは憲法裁判所を設置しているが武力紛争時に政府に建言を集中させる「緊急事態条項」の必要を指摘されたという。

憲法裁判所は安倍総理のやった恣意的な憲法改正をけん制するためにも必要かもしれない。日本でも最高裁判所に違憲審査権があるがなぜか、憲法判断は避けている。

日本の現憲法は専門家の間でも硬性憲法と言われ、2/3の国会発議、多数決の国民投票を改正にはハードルが高いが、それ以外の憲法改正条項はない。憲法改正は想定されていないのか。

与野党それぞれ思惑が違い世論調査でも憲法改正賛成が増えてきているが民意が低い。

野党も安倍政権の下での憲法改正には反対しているが、審議自体への参加は認めている野党もある。安倍政権ではなくリベラル政権での審議促進を願う。

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2019年9月28日土曜日

安倍総理の傷心の帰国?:日米貿易交渉では譲歩、国連総会一般討論は空席だらけ

国連、日米貿易交渉を終え帰国した安倍総理
さえない顔だ
NHKニュースより

安倍総理の帰国の写真を見ると出発時の意気揚々とした顔に比べて精彩がない。今回の日米貿易交渉は自己評価「80点」というが、トランプ大統領に大幅に譲歩、ウィンウィンどころではない結果だったし、国連総会での一般討論はどの国が聞いているのか空席が目立つ。何も今回が初めてではなく、いつもアメリカ大統領の演説では満席だが、日本の首相になると空席が目立つ。

日米貿易交渉は、米国側が合意文書にクレームをつけているということで署名先送りの観測が流れていたが、どういうわけか急遽署名すると言い出した。

そこにはトランプ大統領側の事情があったようだ。米中貿易摩擦は出口が見えず停滞、国内では民主党とスキャンダル合戦、支持者に何かアピールする材料がほしかったのだ。そこでトランプ大統領の見立てはクレームをつけけん制し譲歩を引き出す日米貿易交渉の合意しかなかった。

新聞報道によると、いつもこの種の交渉になると農産物vs自動車の構図になる。 牛肉、豚肉、トウモロコシvs自動車など工業製品か。結果は畜産農家には不安が多い。トウモロコシは中国が輸入の約束を守らず売れ残った全量を日本が買うことになったらしい。自動車は追加関税を回避できたと政府は言うが協定が誠実に実行されないとアメリカが判断すれば交渉に持っていかれるのだ。

トランプ大統領がツイッターで「やっぱしやる」といえば日本に譲歩を迫ったことになる。自動車業界はいったん安堵感を持ったが先行きは不透明だ。

安倍総理はウィンウィンで「80点」と評価するが日本のメデイアの評価はアメリカ側の勝利という。

空席の目立つ総会場
官邸 Instagramより
一方、空席だらけの国連総会での一般討論はどうだったのか。官邸のHPに載っているInstagramを見ると空席だらけだ。

そんな総会場で安倍総理は何を訴えたのか。官邸のHPの一般討論演説を読んでみた。

まず、自分のことを言っている。向こう3年日本の舵取りを続けると言い、今回は6回目の本会議で思いを新たに臨むという。

そして自由貿易の旗手として立つという。日本自身が解放された経済体制の中で貿易の恩恵を受け目覚しい成長を遂げた。この恩恵を受けた日本の責任が重大だ。歴史に根ざした使命だという。

ところが、トランプ大統領の保護主義には触れていない。多国間自由貿易はトランプの二国間保護貿易に反するのだ。

実績としてはTPP11、日EUEPAも成立させ、更にはWTOへのコミットメント、東アジアでのRCEPに全力を尽くすという。

一方、アメリカにも触れている。米国との新貿易協議FFRを重視するという。米国における投資は英国についでおおい85万6000人の雇用を生んでいるし、日本から米国への自動車輸出は174万台だが、米国内での日本車の生産は377万台になっている。

これで何故、ウィンウィンの関係なのか。

対ロシアでは北方4島の領土問題を抱えている。解決のためには平和条約を締結し北東アジアの平和、繁栄により確かな礎を得たいという。

北朝鮮の変化について最大の関心を持っている。国交の正常化、全拉致被害者の帰国を実現するために金委員長と直接向かい合う用意があることを繰り返す。

中国とは互いに首脳が往来し決定的な安定の軸を加えたい。EFZ、海域上空が安全で、平和であることを望むという。

中東では新しいがささやかなプログラムがある。ガザの小中学校の先生を日本に招きガザと中東を広い視野に置き自分たちのことを見つめなおす、慰藉の力を及ぼすのではないかと期待する。

又、新しい風が吹くとも言う。天皇即位で各国から首脳が集まってくる。大阪でのG20サミットでは世界経済のあり方、環境問題を主導、ワールドカップ、2020東京オリンピックパラリンピック、アフリカ開発会議を挙げている。

そして国連安保理改革にも言及している。安倍総理がアフリカ訪問を繰り返しているのが国連改革、特に常任理事国入りを目指し、アフリカ勢の協力が必要だからだ。日本は拠出金額が第3位(?)だが国連の地位は低い。今、国連の意義が厳しく問われているのも事実だ。

どんな国の誰が聞いてくれたのか分からないが、トランプ大統領がイラン問題に時間を割いたことと比較し世界に影響を与える演説ではなかったか。

外交を得意と自称する安倍外交だが対米外交では譲歩、遅々として進まない外交に日本の舵取りを任せていいのか。

野党は次の国会で日米貿易交渉など外交の詳細について予算委員会での質疑を期待するが、真相究明は政権交代しかないか。


関電「原発マネー」3.2億円還流?(1):コンプライアンスも経営陣では無力化か、認識のずれか


公益性の大きい関電にコンプライアンス疑惑が出てきた。経営陣がかかわると無力化するのか、あるいはお中元、お歳暮、ご祝儀での認識のずれが出てきたのか。

原発事故という競争原理もあまり働かない分野だが立地自治体と事業者の癒着疑惑は昔からあった。関電に原発マネー還流疑惑はコンプライアンスのあり方が問われる。経営陣6人で1.3億円、全体の20人で3.2億円になるという。

7年間、経営トップには厚く、下には薄くの金品の授与だが、「一線を越えていた」批判は当然だ。常識で考えて超えるときは返却したが、そのほかは一次預かりで、返却すべきタイミングを見ていたと苦しい説明だ。

「何故、受け取りを拒否しなかったのか」と聞かれれば、高浜町役場の森山さんとの関係をこじらせたくなかったという。収入役、助役で関電にとっては重要な人物であったようだ。原発事業者と地域住民とのトラブルなども解決してくれたのではないか。

原発マネーの還元のやり方は、関電が発注する工事金額に上乗せし、工事を請けた土木建設会社は工事の手数料という名目で「裏金」として高浜町の森山さんに渡し、森山さんが関電関係者に渡したようだ。

工事関連会社への金沢国税の税務調査で指摘され関電は社内調査したが1年間も公表せず、社外関係者も含めた調査で20人、総額3.2億円が還流されていたことが判明したらしい。

法令違反の疑い、1年間も公表を遅らせた責任、「経営が厳しく」電気料金の値上げの裏での金品の受領と会社のコンプライアンスを厳しく問われる状況下での岩根社長らの記者会見は困惑の極みだったのだろう。苦渋の顔が見られた。

公益業者として社会規範を守る姿勢にかけていた。

記者会見でも言い訳がましい。問題発覚から何故1年も経過、取締役会にも報告せず、倫理意識、公平、透明性に欠ける。「一次預かりでタイミングを見て返すつもり」「常識を超えていると思ったものは返還」、「個人情報もあるのでコメントできない」「調査して結果はある」そして最後に「辞任はあるのか」と問われ「再発防止に努めて責任を果たす」と責任逃れの常套句をいう。

どうしてこうも企業のコンプライアンス疑惑が続くのか。強化しているはずだが経営陣が関与する事例では実効性が薄いのか。更には仲間意識が強くどうすれば仲間や会社を守る子とができるかに腐心する。

こういう事例は早めサッサと非を認め公表、対応し責任の所在を明確にすることが一番後遺症の残らない処置ではないか。経営者のわが身に関することは特にそうだ。

今、原発は苦しい立場にある。地震対策、テロ対策そして廃炉、再稼動、関電は更に大山が噴火したときの積もる火山灰の厚さの想定を10cmから15~25cmに引き上げ原子力規制委員会の再審査を待っている。

関電の社長は電気事業連合会の会長でもある。他の電力会社からの批判も受けている。

後は、辞任しか道はない。時間をかけず早く決断すべきだ。

2019年9月27日金曜日

日本はアメリカ合衆国51番目の州か:親友関係が打ち出す安倍対米外交は国益を害していないか


日本がアメリカ合衆国の51番目の州かと思わせる安倍総理とトランプ大統領の友好関係が政治、外交、軍事そして経済面でも大きく米国に頼る安倍外交を展開しているが、本当に国益に沿っているのか。あらゆる面でトランプ大統領に譲歩する結果になっていないか。今回の日米貿易交渉もその代表たる内容だ。

GDP世界第3位の日本の行き過ぎた米国頼りは、多国間より二国間交渉を優先するトランプ大統領の国際政治の場で仲介役として頼られているように見えるが、本当は笑いものになっていないか。程々と言うこともある。あまりにも親密すぎると多国間交渉で不利になる。

今回の日米貿易交渉を見ると、安倍総理はウィンウィンの成果と言うが、大統領選を控え、国内では大きなスキャンダルを抱えているトランプ大統領は大満足の様相で、最終合意を確認する署名の場にアメリカの支持団体代表もでていたほどだ。

最近では文書の文言に異論を唱え署名が先送りされそうだったが急きょ署名まで持ち込んだトランプ外交の強引さには驚くが、その背景には安倍政権が譲歩していたのだ。

農産物、牛肉は38.5%の関税を2033年度に9%に、豚肉は4.3%が27年度に撤廃、米は無関税枠を設けないことになったという。一足安心という意見もあるが、畜産農家は減っていくだろうと同業者は見ている。外食産業はメリットが大きいだろうが、日本の過程では安心が第一なのでそんなに大きな影響はないだろうとも言われている。確かに外食での輸入牛肉は硬くてまずい。重さは同じでも筋や脂肪が多い。

コメは協定の対象から除外されているようだが、その理由はコメ農家は民主党の票田で、トランプ大統領の共和党には関係ないらしい。

自動車については追加関税を回避したというが条件として協定が誠実に実行されていることが前提にあり、万一違反していると判断されれば追加関税の動きが出てくる。米中貿易摩擦でも公約を守っていないとトランプ大統領は追加関税を引き上げたことがある。日本だって例外ではなさそうだ。

トヨタ会長が一安心とコメントしていたが、関税は継続審議なのだ。常に農産物vs自動車の構図で交渉されるが今回も農産物を犠牲にしてのウィンウィンらしい。

交渉の真相は、国会審議などで検証されるが、TPPの審議の時は野党が交渉経過を追及していたが政府は「相手のあることでコメントを差し控える」との答弁を繰り返していた。当時、担当大臣を移動させ、何も知らない石原さんが担当大臣になり野党の質問の矢面になっていた。今回はどうなるか。

結局は与野党が拮抗するか、政権交代しなければ真相究明にはならない。

自民党政権が力のよりどころにするのは日米安保だ。日米安保で日本の領土は守られていると考えるのだろうが、実際にはそうではない。アメリカの海外戦略のためにあるのだ。日本は多額の軍事費、基地の提供し、訓練の場にもなっている。米国の海兵隊を維持するには在沖海兵隊であることが米国にとっては一番経費が安いのだそうだ。

日本を守るよりも中東やインド、南シナ海に紛争対応の派遣が主だ。日本は中国の頻繁な尖閣諸島への領海侵犯対応に安保条約の範囲を尖閣にも含めるという発言を要望していたが、オバマ政権ではなかなか認めず、最後に言及したほどだが、トランプ政権は早々とコメントした。中国との二国間のイザコザには介入したくなかったのだ。

安倍総理はアメリカ大統領を存分に利用する。大統領との親密さで政権の人気、支持を上げたいためだ。

伊勢湾サミットの際は、急きょ決まったオバマ大統領の広島訪問に同行し一緒に献花した。オバマ大統領が単独で訪問し、世界にメッセージを発した方がより効果的だったと思うシーンにも恥じらうことなく顔を出したのだ。

そしてトランプさんが大統領に選出されると、出張の途中と言いトランプさんを訪問、ゴルフ道具をプレゼント、その後はゴルフ外交、頻繁な首脳会談と親密な対米外交が続く。

トランプ大統領をノーベル平和賞に推薦したり、大統領選に向けトランプ大統領の成果アピールに協力したりする行為はアメリカ合衆国の51番目の州に匹敵する行為ではあるが、ドイツ、フランスのように距離を取り日本の国益を害しない行動が必要ではないのか。

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2019年9月26日木曜日

日米貿易交渉急きょ合意:安倍総理自己評価は80点でも、何がウィンウィンだ

アメリカ側の文書内容への不満で、日米貿易交渉の合意署名ができないと言っていたのが、何故か急きょ予定通り署名したという。安倍総理の自己評価は「80点」のウィンウィンだというが本当にそうか。トランプ流貿易交渉ではアメリカ側が不満を言い、けん制することにより譲歩を引き出すパターンだ。

背後に何かあることは専門家や農家、自動車業界の人間ならわかることだが、一般の国民には分からない。国連総会でイランがアメリカは経済テロと言ったが、二国間貿易交渉はアメリカによる「弱い者いじめ」だ。安倍総理とトランプ大統領の親密な関係が合意をもたらしたなどというメデイアは御用メデイアだ。

農産物はTPPの水準をうわまわらないという。緊急輸入制限の発効基準も60万1800トンと言うが、それに米国だけから初年度24万2000トン、将来は29万3000トンの低関税輸入枠が設定されているという。

農家いじめではないか。

自動車関税も2.5%撤廃はだめでも追加関税の回避はできたというが、条件が付いていて、協定が誠実に実行されている間は追加関税を課さないということらしい。

この条件は曲者だ。トランプ大統領がいつ、文句を言い出すかわからない。国内の自動車業界の動きによっては簡単に難癖を付けられる。

工業製品については関税よりも部品の調達比率「原産地規制」の適用除外の方がメリットが大きいと判断したようだ。

協定にサインし、早期の実効を目指すのはトランプ大統領の大統領選に向けてのアピールがある。トランプ大統領は「アメリカの農家と牧場にとって大きな勝利、私にも重要だ」とコメントしたことからもわかる。

今回のトランプ流通商外交の成果は対象を絞り込んだミニ合意というメデイアもある。とにかく何らかの成果を米国民に示すことだけが目的だったのだ。これでトランプ大統領の再選があるのか。米国内ではスキャンダル合戦が続いている。

安倍外交も多くの問題を抱えている。今の国会の勢力で真相追及はできないが、政権交代で真相究明することを考えた方がいいのではないか。

今日の新聞を読んで(293):東電旧経営陣3人に対する判決は「無罪在りき」だったのか


東電旧経営陣3人に対する強制起訴裁判での東京地裁の判決はやっぱり「無罪在りき」だったのか。長期予測での予見可能性が重要な点になったが、判決直後の新聞報道では「どこでも」と言う表現や「南から北にかけては海底の地形が異なる」という理由で長期予測の信頼性に疑問を投げかける証言を裁判所は採用したようだ。

2008年の長期予測では日本海溝のどこでも津波地震が起きる。過去400年で3回発生しているので繰り返すという内容だった。だから今回のように福島県沖で起きることなど予見できなかったというのだろう。

ところが朝日新聞(2019.9.26)の科学「問われた長期評価「15.7m津波」」で公判でどう評価されていたかが詳細にわかった。

長期予測に賛同
長期予測に異論
東電の担当者は権威ある機関の見解で無視できない

検察官役弁護士は多くの専門家がかかわった公式見解

長期予測に関わった島崎先生は誰もが合意できる範囲でまとめた古文書にしか残らない地震を考慮する重要性

積極的な証拠がなくても確立をゼロにしてはいけない。

わからないものを「わからない」で出すと専門外の人に都合よく解釈され過小評価される

東電の担当者は長期予測が出ていることを前提に何をすればいいか考えた

長期予測に基づき対策工事に着手した事業者もあった(日本電源)
地震の歴史記録のあいまいさ

日本海溝で南北で地震の起き方が違う

専門家が無条件に賛同していない。



南北の発生に仕方の違いを重視

判決では東北大の専門家の意見を重視し、長期予測は信頼性にかけ経営陣の予見可能性を否定したのだろう。

今回の判決は、過去の判決を踏襲し判決内容の違いを回避したのか。

今、各原発の再稼働を安倍政権は目論んでいるが、3.11以降、原発敷地内の活断層の有無が注目され、再稼働を否定する動きもある。トレンチ調査では活断層か、地滑りかが争われたこともあるし、近くに断層があった場合、敷地内へ伸びているかどうかも問題視される。

政府は原発再稼働を目論んでいる。

これらの事情から過去の判決を踏襲したことも考えられる。下級審では原告勝訴も上級審では原告敗訴がこの種の裁判のパターンだが、今回は強制起訴→敗訴のパターンだ。

さらに、専門家も国も原発の運転中止を求めなかったという。当然だろう。そんなことを求める政権はない。事業者の責任で判断すべきだ。

ただ、3.11東北地方太平洋沖地震後、民主党の時の政権である菅総理が中部電力に対して浜岡原発の運転停止を要請した。浜岡原発はいつ起きても不思議ではない東海地震の震源域の真っただ中に存在するのだ。中部電力は相当渋っていたが、要請を重く受け止め停止した。

また法や規則は絶対的安全を保障したものではないという意味の内容だったが、おかしいのではないか。法や規制は国民の身体、生命の安全、財産を守るためにあるのであって法や規制の第1条目的をよく読めばわかるはずだ。

今回の場合も絶対的安全を確保するには、対策工事が完了するまで運転を停止することだろう。東電は原発のリーでイングカンパニーとして停止の判断ができなかったのは、新潟県中越沖地震で箱崎刈羽原発を止めたことで初めて赤字に転落、そして今回も止めることになるとさらに収益が悪化することを心配したのだろう。

いろんな専門家に根回しした経緯もはっきりしている。旧経営陣3人が全く長期予測を否定していたわけではなかろう。

ここは、控訴し3人の判断が一般社会通念上認められるものかどうか再検証すべきだ。


2019年9月25日水曜日

小泉進次郎さん セクシーな話をしようよ、このままでは「化けの皮」がはがれる

小泉進次郎さん セクシーな話をしないか。このままでは話は旨いが、政策はない「化けの皮」がはがれるぞ。今回の気候サミットは小泉さんにとっては厳しい外交デビューになった。期待が大きかった分失望が大きな批判となって返ってくる。

「今日から変わる」「気候変動のような大きい問題は楽しく格好良く、セクシーであるべきだ」と言えばロイター通信が「セクシー発言」を世界に配信した。

「セクシーとは」と記者に聞かれるたびに「そういう質問はセクシーでない」と禅問答の応酬だ。専門家に言わせるとアメリカで「セクシー」とは魅力的な政策を持っているということらしい。

環境相に就任して間もない小泉さんだ。「美しい演説」は得意でも地球環境問題で具体的施策についてはいまだ勉強不足か。「就任して間もないので」と言い訳をしていたが、何もわからないで何故、気候サミットに出席したのか。グテレス事務総長は「美しい演説でなく具体的な政策を持ってこい」と言ってたはずだ。

日本は地球温暖化対策での施策に遅れを取っている。「石炭火力をどうするか」と問われ、「減らす」といったはずだが、「どうやって」と畳みかけられると「・・・・」としばらく無言で天井を見た映像が流れた。前評判の高かった小泉さんだからこんなことになったのだろう。

新聞で小泉さんが就任したいきさつが報じられていた。菅さんにアドバイスされ安倍総理は「ちょっとやらせてみるか」程度に考えたようでそれほど期待していたフシはない。

就任後の福島第一原発の汚染水の海洋投棄問題、台風15号での千葉県の被災地視察、そして今回の国連気候サミット出席では批判を受ける門出になった。

特に地球温暖化対策は先進国では遅れをとっている。6位のCO2排出量だが26%削減、今世紀後半の早い時期に「実質ゼロ」を目指すという。脱原発、石炭火力発電計画、自然再生エネルギーへの取り組みも不確実性が大きい。

そのほかに3年で限界が来る福島第一原発の汚染水海洋投棄問題、2045年にまでには汚染土の最終処分が待っている。環境相の任期は2年だ。どちらの問題も先送りできる。それとも被災者に寄り添いながら説得できるのか。

国会が開かれれば野党の質問攻めにあう。小泉さんにとっては正念場だ。メデイアの世論調査では、今のところポスト安倍のトップに立っているが、どうなるか。



地球温暖化対策での抑制温度:気象学では2℃とはどんな温度か


地球温暖化対策と言うと2℃未満、できれば1.5℃未満に抑えたいというが気象学でいう気候感度では2℃とはどんな温度なのか。エネルギー資源学会が2009年に「地球温暖化 その科学的真実を問う」という新春Email 討論をやった報告書の中で参加者の一人である横浜国大の伊藤先生が、気象学の専門家が気候感度から「3℃を中心に半分から2倍の範囲に実測値が入っていれば理論家としては満足」と言ったことが披露されていた。

そうすると1.5℃から6℃の範囲内に実測値が入っていればいいということか。真実はこれだけではわからないが2℃とか1.5℃という数値が独り歩きしているが気候感度と言う点から論じることは有意義で地球温暖化対策にも気象学者や対策面では気象工学の関与も必要ではないか。

世界の若者たち、スウェーデンの活動家が「あなたたちは私たちの期待に応えていない」と訴えた。国連のグテレス事務総長も「何もしないことによる損失が最も大きい」と「パリ協定」への対応を訴えるが現実は厳しい。

できれば1.5℃未満と言うが産業革命以前と比べてすでに1℃上昇、2030年には1.5℃に達し「パリ協定」に基づいて現在の削減目標を各国が達成しても今世紀末の気温上昇は3℃を超すという。

国連は2050年までに排出ゼロ、20年以降石炭火力の新設中止、排出への課税を要請しているが77か国が「2050年排出ゼロ」を約束した。

日本は今世紀後半の早い時期に「実質ゼロ」だが、石炭火力発電の新設が計画中だ。そのため「やる気なし」と判断されたのか「美しい演説」はできなかった。安倍総理自身も出席していない。トランプ大統領も離脱を言っているが10分ほど出席したらしい。

地球温暖化の原因、対策を各分野の研究者が集まって検証する前に政治テーマとなり、要因をCO2人為説で悦明しやすくしたか。政治課題化したために先進国vs新興国の構図が出来上がり不満とした排出量第2位のアメリカは離脱、第1位の中国はいつものように「発展途上の大国」と主張し過大な負担を強いられることを回避する。

小泉さんは初の外交デビューとあって海外メデイアも注目していたのだろうが、「セクシー」発言などが話題になったし、「石炭火力発電をどうするんだ」との質問に「減らす」と答えたが、「どういう風にして」と畳みかけられると「・・・・」で天井を仰いだシーンがテレビで放映された。抽象論ではしゃべれるが具体論ではまるっきりダメだった。

また「セクシーとは」と聞かれ「そういう質問こそセクシーでない」と禅問答を繰り返す。専門家に言わせると「セクシーの裏には魅力的な具体策を持っていること」だというが、小泉さんには無理な話だ。だんだん「化けの皮」が剥がれてくる。

グテレス事務総長の最も嫌うパターンに日本はもっていったのだ。

そこで本題だが、IPCCの報告書などに気象学はどう関与しているのか。気象学会などが報告書で主張している点を拾ってみた。

気象学も地球温暖化問題に当初から深くかかわり気候の将来を予測する最も重大な課題を背負っているが気候の将来予測を可能にする知の集積と技術の開発を前進させる必要がある。天気予報の延長線上ではなく広範な知見の体系的進歩を基礎にして初めて成り立つのだという。

地球温暖化は気候の将来予測の科学的基盤を掘り下げ、予測の可能性を高める目標が重要で、地球温暖化に関する気象学分野における研究体制の充実、強化が急務と言う。

雲やエアロゾルの微物理過程や放射過程など気候モデルの諸物理過程の精緻化に対して観測データが不十分、将来予測の進歩には欠かせないのだ。

気象学が今までどんな関与をしていたかわからないが将来予測に対して、自然変動、気候モデル、シナリオに不確実性が見られる。特に気候モデルでの不確実性は重要だと指摘する。

一方で大事な指摘もある。

放射強制力に対する全球平均気温の上昇の「しやすさ」の指標である「気候感度」の推定に大きな不確実性があるのだ。だから1.5℃、2℃と言っても不確実性が残るのだ。先にも言った「3℃を中心に半分から2倍の範囲に実測値があれば理論家としては満足」なのだ。

CO2人為説を主張する研究者たちは2℃をどう考えているのか。地球温暖化原因説の議論では測定誤差を指摘する研究者もいる。CO2人為説ではCO2排出量で平均気温の動向を関連づける手法がとられているが気象学上はいろんな要因がある。

CO2人為説が一番説明しやすい面もあるのではないか。



2019年9月24日火曜日

何だったのか日米貿易交渉大枠合意:正式署名見送りで米がけん制、日本は譲歩か


閣僚、高官同士でやってきた日米貿易交渉も大枠で合意、日米首脳会談で正式署名と見ていたら、正式署名を見送るという。いつもの米国がけん制し、日本が更なる譲歩をするトランプ外交のパターンにもっていかれるのか。

前任者の茂木さんが「頂点が見えてきた」「大筋原則合意」などと発言し日米貿易交渉も順調に進んでいるのかと思っていた。「難しい交渉をよく頑張った」と国民にアピールする安倍政権の作戦だったのか。

思えば茂木さんは頻繁に訪米していた。担当大臣が訪米するのだから「やっぱり何かある?」と疑ってかからなければならなかったのだ。

今回の正式署名見送りでわかったことは日米相互に認識の違いがあったことか。

日本政府は「ライトハイザー通商代表が協定分にクレームをつけている」と言うのだが、もともと26日までに合意文書に署名できることは無理だったという。

交渉は、言われていた通り農産物vs自動車の攻防だった。

日本は市場開放はTPPの範囲内、自動車の追加関税発効回避だった一方、米国は農産物の市場開放、だめなら自動車への追加関税だ。

牛肉はTPPと同水準と言うが、そもそもTPPを離脱したのはトランプ大統領だが、米国の生産者がおおきな打撃を受けているらしい。これがトランプ大統領の再選に大きく影響するらしい。

トウモロコシは大量に日本が輸入することになった。その背景には中国がトウモロコシ輸入の約束を守らなかったために大量のトウモロコシが売れ残ったのだ。それを日本が飼料用として輸入するのだ。

日本政府は害虫駆除を目的としているが怪しい。安倍総理は買い入れは政府ではなく、民間が買い入れるのだと主張するが商社の反応は鈍い。

自動車については、日本は25%の追加関税回避の文書化を要求していたが、米国がクレームをつけ脅しをかけているらしい。同じことがカナダ、メキシコ、韓国でもあったが、いずれも数量制限で合意している。日本にもこの線で合意を強要するのではないか。

トランプ大統領と安倍総理とのプレゼント、ゴルフ外交、特別待遇のトランプ訪日を演出した両者の友好関係もトランプ大統領には通用しないのか。海外の首脳が眉を顰める友好関係も大統領選を控えては何の役にも立たない。

安倍総理はトランプ大統領の気を引くために、このほかにも巨額な兵器購入の疑惑もある。それでも各国首脳は「自国第一主義」のトランプ大統領を多国間交渉の持っていかす仲介を安倍総理に期待している。

得意とする外交、時間を見ては世界を飛び回る安倍外交への検証は政権交代しかない。今の政界状況では「はぐらかし答弁」で誤魔化されるだろが、意外にトランプ大統領のツイッターから暴露される可能性はある。


2019年9月23日月曜日

地球温暖化で国連事務総長「美しい演説より具体的計画を」と:「美しい演説」は得意だが、それでは小泉さん困るだろう


国連事務総長のグテレスさんが、「気候変動サミット」に当たり「美しい演説より具体的な計画」を要請した。「気候危機」に当たり具体的温暖化防止策が必要なのだ。フランス、カナダ、イギリスはすでに提出しているが日本はまだらしい。

国連は2070年度までにCO2排出量実質ゼロにする目標を出しているが、日本も大阪G7サミットで実質ゼロを世界にアピールし約束した。

小泉新大臣の役目も重要になってくるが、「美しい演説」は得意でも「具体的計画」は事務方任せか。

小泉大臣はいろんなことを言っている。「スピード感を持って全部やる。日本は本気だということを伝えるべく動きたい」と言う。

都市の温暖化ガス排出削減を訴えるという。東京都、京都に続いて横浜市に2050年までに実施を要請したという。

政府の役割も大事で、世界の脱炭素化に積極的にかかわっていくともいう。持論の「脱原発」を進めるとしたら政府の政策に反しないか。

大量生産、大量消費、大量廃棄、この社会を変革していく社会改革を担当するというが廃プラスチックのことを言っているのか。今、レジ袋の削減のために有料化が検討されているが全体の排出量の2%だ。ペットボトル、食品包装など、どうするつもりか。

20日の記者会見で温室効果ガス削減目標を聞かれたとき、事務方に説明を譲った。いろいろ突っ込まれると答えるのに困るからではないか。

確かに日本の削減計画は達成が苦しい。

2070年までに実施値ゼロを目指す。

日本の約束草案は2030年度で2013年度比26%減(2005年度比で25.4%減)、約10億4200万トンーCO2になる。

カーボンプライシング導入、石炭火力発電廃止は見送りで原発の再稼働も進まず、2017年までに8%しか減らず、2030年度目標達成も無理なのだ。石炭火力発電の計画が進んでおり2030年度は排出量オーバーなのだ。

小泉さんが、日本が気候変動の取り組みで世界で主導的役割を果たしたいという思いを伝えることができたと手ごたえのあったことをコメントしたが、削減計画もままならない状況下で世界が認めているのか。

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経営者の安全配慮義務:事故を起こした経営者の一方で、しっかりやっている経営者もいるのだ


東電やJR西日本の経営陣は特別なのか。大事故を起こした企業の経営者が業務上過失致死傷罪で責任を問われているが、すべての経営トップが自らの事業への安全配慮、注意義務を怠っているわけではない。

経営者の中には他社の事故事例から類似事故を防止したり、JR東日本のように過去の事故を風化させないため社員教育を徹底している企業トップもいるのだ。

私も現役時代、兵庫県南部地震の発生の時だったと思うが、社長が「地震対策は大丈夫か、しっかり対応を」と指示したために全社あげて地震対策を検討したことがある。ただ、「設備のどこに危険が潜んでいるか」を見出すのが大変だったし、積み上げた対策にすべて対応できたわけではない。当然のことだが優先順位をつけ報告したようだ。

ただ、そういう調査、対策をやっても実際に地震が発生し、「あの時の対策が役立った」という実感がないのでこういう運動は長続きしないのも事実だ。

当時は化学会社の工場で火災事故が起きると、それに連鎖しているように他の化学会社でも火災事故が起きていた。記者会見で社長は「再発防止に努める」というが思うようにはいかない。

今どうなっているか分からないが、会社では年に一回安全運動の一環として「類似災害、事故防止」をテーマに取り組んでいたが、本社を含めた事務部門ではやっていないのではないか。そしてそういう部門から経営トップが生まれるのだ。そこが企業の安全対策、経営トップの安全配慮が劣っている要因ではないか。

今回の東電の事例でも会長の勝俣さんは事務部門、他の2人の副社長経験者は技術部門の出身者だがどうしたたことか。

「知らない」、「あいまいだ」、「信頼性がない」、「根拠が乏しい」、「他社はやっていない」、「土木学会に検証を依頼」、「そういうことを言う人もいる」などと予見可能性を否定する発言が多い。

最後は「もし対策を実施しても工期から考えると間に合わない」と言い出した。「やらなくても同じ結果」と言いたいのだろうが、「間に合わなくてもやっていた」ということとでは経営者の責任は大違いだ。

その背後には東電の経営状況もあったようだ。新潟県中越沖地震で始めて赤字に転落し、今回多額の対策費、原発停止では更なる収益の悪化が予想され経営者としては大いに迷ったのではないか。

新聞で過去に安全管理が問われた主な事故を見ることができる。

1985年の日航ジャンボ機墜落事故では30人が不起訴、1991年の信楽高原鉄道事故では元運転手が有罪、JRは不起訴、2000年の雪印乳業食中毒事件では元工場長が有罪、経営陣は無罪、2005年のJR宝塚脱線事故では3人が強制起訴されたが無罪、2012年の中央道笹子トンネル崩壊事故では8人全員が不起訴になった。

大企業の経営陣には責任が及ばず、現場の管理者、担当者の責任でお茶を濁す結果に終わっている。これでは経営者は安泰だ。記者会見で謝罪すれば無罪放免となる。企業に責任が及ばないので「よかった良かった」だろう。

それでもがんばっている企業経営者もいるのだ。

日本電源は長期予測に従い他社に先駆け、対策を立てた。東北電力女川原発も対策を立て大きな被害はなかった。むしろ地域住民の避難場所になったという。同じ東電の福島第2原発も設備自身は第1に比べて新しくなっていたが、緊急事態での対応が適切で大事故には至らなかったようだ。

JR東日本の社長がテレビ番組(何の番組か思い出せない)で過去の事故を風化させないために当時の関連施設を残し社員の安全教育に活用しているという。

一方で心配は事例も続く。

JALではパイロットの飲酒が問題になっているし、新幹線も部品の劣化が検査をスルーしている。

地震大国日本では巨大地震の襲来が長期予測されているが、原発はどう対応するのか。経営者の英断(?)次第か。


2019年9月22日日曜日

東電・旧経営陣3人に無罪判決(3):控訴して責任究明を 一般社会通念上、通用する判決になっていない


東電旧経営陣3人に対する業務上過失致死傷罪の強制起訴で下された東京地裁の判決は、一般社会通念上から考えても通用する判決ではなく、ここは起訴して上級審でも論争を深めるべきだ。

例え、福島第一原発事故前後の法整備、規制強化があるとしても巨大で危険な技術を活用した原発事業を展開している企業のトップに対しては特段の安全配慮、注意義務を課し、このような甚大な事故は未然に防止すべきである。

「あれだけの事故だ。誰かが責任を取らなければ」と思う福島一原発事故だった。東京地裁の判決でも「事故の結果はまことに重大で取り返しのつかないもの」と認定しながら法令上の規制や国の指針、審査基準のあり方が絶対的安全性の確保まで前提にしていなかった」と、予見可能性の有無にかかわらず刑事責任は負えないというのだ。

国の法令や規制、指針などは国民の身体、生命の安全、財産を守ることを目的として存在するのではないのか。それは事故の前も後も変わることはないと思うが、そうではないのか。

何かしら東電の経営者の責任を回避しようとする姿勢が見られないか。

国の法令、規制などをあいまいにし骨抜きにしているのは原発事業者自身ではなかったのか。「こういう場合は対策工事を終わるまで運転を止めなければならない」なんていう内容の規定があるのか。そこまで言わないと事業者は判断できないのか。

確かに活断層の上には原発の重要施設を設置することは禁じている。そこで敷地内に断層があったり、活断層がつながっている可能性がある場合、事業者は必死になり否定する。学識者でも「活断層ではなく、地すべりだ」ということもある。

大事なことが何一つすんなりと決まらないのが原発業界の一番の欠点だ。

今回の東京地裁の判決や新聞報道を拾ってみた。

東電の経営人は「知らない、ただの試算ではないか」、「長期予測は信頼性がない」、「私に権限はない」、「たとえ対策を建てていても事故は防止できなかった」、「土木学会に検証を依頼した」などあらゆる面で疑問を投げかけ、責任回避に走る。

問題の地震調査研究推進本部の長期予測「三陸沖から房総沖はどこでもM8.2、30年以内で20%の確率」について、専門家の意見が分かれた。

作成に関係した専門家は「もっともおきやすい地震を予測」したそうだが、東北大の2人の専門家は疑問を呈した。一人は「どこでも地震が発生する」記述に異論を発したし、もう一人は「北部と南部では地形が異なり乱暴な予測と批判したそうだ。

地震の発生メカニズムが分かっていない今、国の機関による予測に対して反対意見はある。「地形がどうだこうだ」、「震源が広い範囲」などは地震予測では常識だ。

原発立地に厳しい見方がされている現在、原発立地を緩和しようとする御用学者の意見か。指名検察官が何故、もっと専門家の意見を求めなかったのか。裁判官は「長期予測」の信頼性に大きな疑問を持ちこれが無罪へと影響したのではないか。

それに、こうも東電の対応のまずさが目立った背景があったのだ。新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発が停止したために赤字に転落した。それに加えて今回数百億円、工期4年の対策工事を実施すると更に収益が悪化する経営環境にあった。

当初は15.7mの津波高を隠していたが、他社が長期予測に基づき社内的に対応をしていることが知って、東電も急遽対策チームを立ち上げたそうだ。日本電源は、防波堤の変わりに盛り土でかさ上げしたり、非常用電源の防水対策をしたらしい。近くの東北電力女川原発も対策したために津波発生時は住民の避難所となったらしい。経営者の判断が雲泥の差をもたらした。

経営者が確認をもてなければ自分で情報収集し危険の発生を予測する情報収集義務、安全配慮義務はなかったのか。

判決では、指定弁護人が3人が情報収集していれば津波の来襲は予見可能だというが、更に3人が情報収集したとしてもその認識にいたるような情報を得られたとは認められないという。

どうしてそういうことがいえるのか。原発のリーデイングカンパニーといわれる東電だ。会長、社長、副社長らがもっと権威者に相談していれば、もしかしたら認識にいたる可能性もあったのではないか。

それは企業トップの安全配慮義務、注意義務の意識の問題だ。下請けの若手技術者は長期予測を信じてシミュレーションし、15.7mの津波の来襲を予見したが、企業のトップはそこまでの安全配慮がなかったのか。お粗末な経営者としかいえない。

控訴し、しっかり東電経営者の責任を追及すべきだ。


2019年9月21日土曜日

豚コレラの「イノシシ」、明治三陸地震の「長期予測」で専門家の意見が大きく判断を狂わせていないか

豚コレラの拡大阻止、明治三陸沖地震の再来襲で専門家の意見が大きく判断を狂わせる結果になった。野生イノシシによる豚コレラ汚染が8府県まで拡大し、渋っていたワクチン接種に踏み切ったし、東電福島第一原発事故での政府の「長期予測」の信頼性では東電の旧経営陣3人が無罪判決を受けた。

野生イノシシや車、人間の出入りが被害拡大に影響していることは確かで専門家にイノシシ対策について助言をあおったそうだ。その結果「積極的に対応すべき」という意見と「対策を取らなくても収束する」という専門家もいたそうだ。

ワクチン接種をしたくない農林水産省の役人は都合のいい「対策を取らなくても収束する」の助言に従ったようだ。いままでもそういうことで豚これらは一応収束していたように思えた。ところが今回は様子が違った。

東電旧経営陣3人に対する業務上過失致死傷罪では明治三陸沖地震の来襲における政府の「長期予測」への信頼性が重要なポイントになった。専門家の間では長期予測に異論を唱える者が公判で証言したようだ。

裁判官は異論もあるということで政府の長期予測の信頼性も否定し3人の「予見可能性」を否定し無罪判決につながった。

豚コレラは「対策を取らなくても収束する」と助言した専門家、、長期予測では信頼性なしと「異論」を唱えた専門家はいま、どう思っているのか。何事もなかったようにメデイアのインタビューに答えているのか。

思い出すのは「専門家の予測はサルより劣る」というタイトルの本を読んだことがある。経済問題でも専門家より素人の予測が当たっているのだ。

専門家に助言を求める官庁の担当者も「都合のいい意見」に拘ったら大きく判断を誤ることになる。


日本学術会議「温暖化対策」促進訴え:その前にCO2人為説対自然変動説はどうなった

JGL 2007.No2
上段はしぜん影響のみ 下段自然影響+人為影響
自然影響と人為影響を加味した方が気温上昇と相関在り

日本学術会議が地球温暖化対策促進で緊急メッセージを発した。今世紀半ばまでにCO2排出を実質ゼロを目指す必要があるが取り組みが遅く経済社会システムの早急な変革を訴え、市民が消費行動などを通じて取り組みを加速することを求める緊急メッセージを環境省地球環境局長に提出した(朝日新聞2019.9.20)。

温暖化による生活や健康への脅威を避けるためだという。地球温暖化対策というとイベントが始まれば動き出す。今回も23日からニューヨークで「国連気候行動サミットが予定されている。

これほど騒がれているのに平均気温1.5℃未満(2.0℃未満)に上昇を抑制する削減計画「パリ協定」をCO2排出量第2位のアメリカが離脱し、第1位の中国は負担を恐れて「発展途上の大国」と抵抗する。

日本は第6位だが26%の削減を計画しているが、これで一体どのくらい平均気温上昇抑制に貢献できるのか。専門家の試算では0.001℃という。それでも80兆円の巨額な投資が必要で費用:;効果では疑問がある。

ところで、地球温暖化の要因は何なのか。CO2人為説と自然変動説の主張が平行線のまま一致点が見出せない。

CO2人為説は、その根拠を日本の地球シミュレーターの解析結果に負うところが大きい。CO2排出量と世界の平均気温の関係から大きな要因となるのだ。仮説に過ぎないという批判もあるがこれが事実になって、今削減計画が検討されている。

一方、自然変動説によると、今は小氷河期からの回復期で30~50年周期の自然変動で2000年ごろがピークだという。アラスカ大の赤祖父先生が提唱される説だ。今、CO2の排出量は増えているが平均気温の上昇は停滞している(ハイエイタスという)ではないかという。

赤祖父先生は地球温暖化の要因にCO2量も無視はできず、1/6はCO2、5/6が自然変動だという。「もうすぐどちらが正しいか分かる」と。

環境問題はオスがメス化しているとか、ダイオキシンとか社会的に騒がれては消えていく。丁度地球温暖化が持ち上がったのはそういうテーマを探していたときで、まず政治家が飛びついた。日本で言えば竹下さんが会議に出席したのだ。

科学的検証も十分でないままに政治課題になってしまった。環境問題に取り組む団体で「温暖化ムラ」ができ、巨額な費用が使われている。

日本学術会議も以前、討論会を実施したが、CO2人為説と自然変動説で意見が平行線をたどり一致点が見出せなかったという新聞報道を見たことがある。

また、エネルギー・資源学会が「出発点で十分なコンセンサスを得ないまま予防原則に重点を置いて議論を進めることは大変危険である」と「新春 e-mail討論会」を実施した。メンバーは赤祖父(アラスカ大)、江守(国立環境研究所地球環境研究センター)、伊藤(横浜国立大)、草野(海洋研究開発機構 地球シミュレーターセンター)、丸山(東工大)の各分野の専門家だ。

エネルギー資源学会の新春E-Mail討論

その結果は、エネルギー資源 Vol.30、No2(2009
)にまとめられている。それぞれ多くの資料を提示しながら自らの主張を展開されている。是非一読すべきだ。自然変動説の赤祖父先生、CO2人為説の江守さん以外の専門家がどう考えているかが分かる。

その中で参考になったのは、気象学から考えると「3℃を中心に半分から2倍の範囲に実測値が入っていれば理論家としては満足なのだ」という。3℃というと1.5℃から6℃の範囲内ということか。

だとすると2℃未満に抑えるということは気象学から言えば1℃から4℃の範囲ならいいということか。

横浜国大の伊藤先生は「多様な観点から理解し合えないのも悪くはない?」という。むしろ正しいか、間違っているか分からないCO2人為説で突っ走ることこそ危険ではないか。

2009年3月10日、日本学術会議は分析委員会で「地球温暖化問題解決のためにーー知見と思索の分析 われわれの取るべき行動の選択しーー」を公開した。
それによると温暖化はほぼ確実に起こることを予測するも詳細は不確実性が大きくそれを考慮して対策の検討をしなければならないと提言、問題解決のために自然科学、社会科学の知見を動員した総合的検討が必要という。

しかし、専門家が集まって検討を行ってきたが理路整然とした科学的地図を描き出すことは難しいという。

急いでことを進めると費用vs効果で失敗する可能性もあるし、歩みが遅いと平均気温は上がり異常気象が続発する。自然変動説で様子を見る余裕があるか。

近年、地球温暖化は「停滞」しているのだ。

JGL 2014.No3
CO2排出量は増えるが平均気温は停滞
黒線が平均気温

CO2の排出路湯は増えているが、この15年ほど平均気温の上昇は止まっているように見えるのだ。ハイエイタスといい注目を浴びている。

自然変動説を取る人は「それ見たことか」というがCO2人為説を取る人は海洋の700m以深で蓄熱量が増えているためで、後10年もすると戻ってくるという。

難しい。気象学、物理学の専門家も含めてしっかり検証すべきだ。

関連記事
2019.9.25掲載
地球温暖化対策での抑制温度:気象学では2℃とはどういう温度か
yamotojapan.blogspot.com/2019/09/blog-post_99.html



2019年9月20日金曜日

東電・旧経営陣3人に無罪判決(2):過去の判例の踏襲でなく、新しい判例の構築ができないか


東電旧経営陣3人に対する無罪判決で思うことは、過去の判例の踏襲ではなく、大企業が展開する事業の安全確保に関して経営トップに責任を課す新しい判例を構築する機会にできないか。

今回の東電旧経営陣に対する業務上過失致死傷事件の東京地裁の判決が出たが、裁判官の国民感情とはかけ離れ且つ社会通念上も通用する考えを持ったものではなく、その稚拙さに驚くとともに、東電経営陣も安全に対する意識の劣る人間が巨大企業の経営に携わっていたことに驚きを隠せない判決だった。

法曹界と言う一般国民生活とはかけ離れた世界に生きる裁判官の育成に問題があるし、そんな人間を憲法は身分保障しているがそんな必要はない。こんな憲法の規定こそ改正し削除すべきではないか。

政治家、大企業や官僚に対しての責任追及はなかなか難しい。訴訟維持が難しければ検察官は不起訴処分にするが、それは密室での判断だ。それに対抗するために検察審査会があり、「起訴相当」「不起訴不当」などの判断をすれば検察官は再捜査しなければならない。

今回もその事例である。強制起訴は不起訴の理由を透明化することであるが、国民が考えれば起訴→有罪なのだが今までの例では起訴→無罪だ。一般には「疑わしきは罰せず」の理屈だが、こういう事案は「疑わしくは有罪」の動きにもっていかなければ企業トップの安全配慮はおろそかになる。自動車メーカーの品質不正もそうだが、企業トップに責任を持たせることをしなければ、事故や不正は無くならない。

これだけの大事故を起こした結果から考えても経営者の責任は重大と思うが、10数年ほど前の状況下でどう判断すべきだったか

判決では経営トップ3人に「予見可能性がなかった」と言うだけで責任を退けていいのか。系列会社の若手技術者は長期予測を信頼し、シミュレーションで10mを超える15.7mの津波が押し寄せると判断し対策の必要性を御前会議でも主張していた。

若手技術者は「巨大津波の予見」を持っていたが、経営トップはもっていなかったということは、能力のない人間が経営に携わっていたのか、予見可能性を認めれば会社の責任まで発展することを恐れたためか。

この事故の重要な点は政府機関が発表した「長期予測」で15mを超える津波が押し寄せる可能性に言及したことだが、専門家には異論を唱える者もいたという。確かに1896年の明治三陸地震の予測では反対意見があるのは確かだ。御用学者も大勢いる。

更に他の電力会社も全面的対策を取っていなかったと言う。でも事実は違うようで日本電源は外部には発表していなかったが内部では対策を取っていたようだ。外部で発表すると他の会社も従わなければならないことになると大きな迷惑をかけることを心配したそうだ。

東電は原発事業のリーデイングカンパニーだから他の原発企業は東電に右に倣えだったのだ。東電がやらないと言えば皆やらない。しかし実際は他社が検討しているという情報を得て急遽、対策本部を立ち上げ本格的に検討したらしい。ワーキンググループを立ち上げた。

でも東電内部ではいろんな検討がされていたという。

防波堤の規模から費用は数百億円、後期の4年と見ていた。武藤副社長に報告したらしい。若い技術者はこれをやらなければ「安全性の再評価」(バックチェック)を通らないと主張したそうだが、何故か武藤副社長の判断は土木学会に検証依頼だったという。若手技術者はそれを聞いて「力が抜けた」と公判でいったそうだ。

武藤副社長にしてみれば巨額な投資、稼働中の原発の運転を停止する決定権限はもっていなかったという。そうだろう、当時は勝俣会長が絶対的権限を持っていたのだ。いわゆる東電は大企業病罹っていたのだ。

また、国は直ちに安全対策、運転停止を求めていないという。確かにそこまでは求めていないが、これは企業の経営トップの判断次第だ。

3.11東北地方太平洋沖地震、津波での被害を見て、当時の民主党政権で菅総理は中部電力の浜岡原発に対して運転停止を要請したが、中部電力は抵抗した。結局は総理の要請として重く受け止め運転停止した。

浜岡原発は東海地震の震源域の真っただ中にあり、いつ起きても不思議ではない東海地震だ。菅総理の考えも支持できるが、いまだ東海地震は発生していないのも事実だ。

更に判決でおかしなことを言っている。

法や規制は絶対的な安全確保を前提にしていないという。しかし法や規制の目的は国民の身体、生命の安全、財産を守ることではないのか。法で解釈に迷ったら第1条目的をしっかり読めと教えられたことがある。裁判官こそしっかり読み込む必要があるのではないか。

どうしても裁判で判決となると過去の判例を踏襲しようとする。過去の判例と判断が違うとそこを指摘されるのだ。しかし時代の流れで法解釈、事業者の責任も厳しくなってくる。巨大技術の応用は万一の時の被害も巨大になるのだ。

巨大技術、危険な技術を使って事業展開している企業の経営者には特段の注意義務、安全配慮義務を課すべきだ。

焦点は「巨大津波を予測し対策をすべきだが間に合わない。間に合わなければ運転を停止するか」と言うことだろうが、運転停止の法的義務はないが10mを超える津波が押し寄せ電源喪失を認めた。

日本社会では原発の有用性は認められている。止めることによる社会への影響は大きい。対策には巨額な費用が掛かるし工期から考えて間に合わず、運転停止するしか考えられなかった。そういう状況下で慎重な判断が必要だったという。

だから対策もせず、運転を続けた結果、若手技術者の言う通り巨大な津波に襲われた。でも当時としては経営陣に責任を課すことは難しいと判断したのだろう。

「疑わしきは罰せず」では責任を取るべき人が責任回避できる。「疑わしきは有罪に」が企業事件には必要ではないか。

甚大な事故を起こし、人のいなくなった町は荒廃、遠く離れた町で生活を強要され、汚染水はたまるばかりで3年後には限界、汚染土壌の中間置き場は確保されても2045年には最終置き場の確保が必要になるが目途はたっていない。病院に入院していた44人の患者が避難で体調を崩し死亡されたことも事実だ。

判決後に出された3人のコメントは「事故により多大な迷惑をおかけした。改めてお詫び申し上げます」というコメントを発表した。指定弁護人の追及にことごとく反論し、責任回避した3人の本心なのか。

控訴し、しっかり責任追及すべきだ。過去の判例の踏襲ではなく、今から新しい判例を構築する打ってつけの事案ではないか。3人には人生をかけてしっかり反省してもらうことだ。

2019年9月19日木曜日

小泉進次郎さん 所管外でも考えを示せ!「寄り添ってばかり」では無責任だ

小泉進次郎さん 所管外の問題でも政策を示せ! 得意(?)の「寄り添い」ばかりでは無責任だ。何の権限もなく関係者に「寄り添う」姿を見せていれば皆信用し近づてくるが、大臣ともなればたとえ権限がなくても政策を打ち出すべきだ。国民にとって嫌なことでも丁寧に説明し説得する必要が出てくるのだ。

汚染水海洋投棄発言で原田・前環境相が「海洋投棄発言」をしたが、小泉さんは就任直後に福島県を訪れ関係者に謝罪したという。「心を傷つけた」「寄り添いが必要」「自分は福島の人と復興に努力してきた」と発言したらしい。自分の今までに姿勢を貫いたことになる。

小泉さんが謝罪発言をしなかったらここまで大きくメデイアが報道しなかっただろう。テレビのインタビューで原田さんは自分の心境を述べ「13回も会合を開いたが進まない。ここは自分が捨て石になって解決の糸口を作りたい」と言うのが原田さんの本音だ。

何故、環境相の新旧交代時にお互いに確認していなかったのか。放射能汚染水の海洋投棄は環境省には関係ないことなのか。

一方で大阪市長の松井さんが重要な発言をしている。汚染水が安全なものであることが確認できれば大阪湾で海洋投棄をしてもいいという発言をした。これに対して小泉さんは「会えたら話してみたい」と言ったそうだ。

トリチウム含有排水は、現在稼働中の原発からは海洋投棄されているし、世界的にも認められた行為である。ただ最近韓国が問題にしてきた。

漁業関係者は汚染水にはトリチウム以外に有害物質を含んでいるというし、風評被害を心配している。

ここはどうだろう経産省、環境省が中心になってトリチウム汚染水の海洋投棄の是非を検討したらどうか。経産省では13回も会議をやって結論は出ないという。

それとも半減期の12年が終えるまで海洋投棄を自粛するか。3年で敷地内保管は限界と言うが、それまで経産相、環境相の任期が持つか。それとも漁業関係者に嫌がられることだから決定を先延ばしするか。

小泉さんを入閣させたのも、問題の多いお友達を入閣させた「お友達内閣」という汚名を目くらましするためであるし、安倍さん自身はあまり期待せず「チョッとやらしてみるか」程度の考えだったようだ。

それでも最近のメデイアの世論調査ではポスト安倍で22%の人気を持っている。メデイアは早く「化けの皮」をはがすべきではないか。

東電旧経営陣に対し全員無罪(1):被災者は怒り、経営者は安堵? これでは事故は防げない

注目の福島第一原発による事故で東電旧経営陣3人に対する強制起訴の業務上過失致死傷罪で東京地裁は3人全員に無罪(求刑禁錮5年)を言い渡した。これにより原発のような危険な巨大技術を利用した事業を展開する企業の経営者は安堵しただろうが、被災者や国民は怒り心頭だろう。

こんな判決が通るようでは企業活動での安全確保は無理だろう。経営トップは安全には気を遣わず、儲けばかりを考えていればいいのだ。その風潮が企業犯罪を野放しにしていないか。

まだ東京地裁での判決文の読み上げは続いているので最終的に裁判所がどういう判断を下したかは詳細にはわからない。

この事案の焦点は、「津波の発生を予見し対策を取っていれば事故は防げ、4.5km離れた病院入院患者44人が避難で体調を崩し死亡することはなかったか」ということで、検察官役の指定弁護人と3被告の弁護人が「予見可能性」があったかどうかで対峙した。

政府機関の長期評価に基づき若手技術者が試算した結果、15.7mの結果が出たが、シミュレーションでは敷地南側から押し寄せることになっていたが、実際には東側から押し寄せた。このことから対策を取っていても事故は防げなかったということも言えるのだ。

政府機関の長期評価に対して経営陣は「信頼性が低い」と主張、対策は先送りし「土木学会に検証を依頼せよ」と指示した。経営陣を含めた社内会議も「正式な会議ではない」と抗弁していた。

だから若手技術者による検討結果も無視された。若手技術者は結果を「腰が抜けた」と言っている。

しかし、実際には15.7mの津波が押し寄せ10mの高台を超え非常用電源などが水浸しで動かなくなった。

ただシムレーションでは敷地南側から押し寄せつる設定になっていたが実際には東側から押し寄せた。無罪判決ではこの点をどう判断しているのだろうか。だから対策しても事故は防げなかったというのだろうか。

公判で南側から押し寄せる場合と東側から押し寄せる場合とでシミュレーション上は大きく違うことを確認しているのか。

この事案で難しい点がある。被害をこうむった人たちが入院患者で避難により体調を崩しての死亡だ。直接死亡や障害が発生していればまた違った判断になっていたのではないか。

兎に角、まだ判決文が読まれており、終わるのが午後5時ごろと言う。詳細なことは今晩のニュース解説や明日の新聞で分かるだろう。

しかし、危険を伴う巨大技術を使った事業を展開している企業トップに業務上安全配慮を課さないことは不思議なことだ。こんな風潮では企業の事故は減らない。自動車会社の品質不正も同じことだ。

現場の管理者や担当者が責任を取らされ、経営者は無罪放免ではやりきれない。この判決を機会に判例で経営者責任をはっきりさせてほしかった。

いつも思うことだが裁判は誰のためにあるのか。国民の生命、財産を守るためではないのか。

若い技術者に予見可能性があったのに、経営トップにはその能力がなかったということか。それほど経営者の能力は劣化しているか、それとも会社全体の責任を回避するために予測できなかったとうそぶいているのか。







復旧を遅らせる災害ごみ:必要な分別収集、最終処分場の確保は出来ているか

2019.9.18 テレビ朝日 報道ステーションから


台風15号による災害も遅れ気味とはいえ進む復旧作業だが、その中で一番復旧感を乏しくしているのが災害ゴミの処理ではないか。家庭から排出される災害ゴミは近くの空き地に出される。それを収集し分別して処理するのだ。

今までの災害から得られた教訓は処理が進むのは分別されてまとめられていることだ。混在したゴミが一番処理を遅らすのだ。災害ゴミは一時的にどっと排出される。だからどこかの時点で分別することが必要なのだ。

そのあとで、リサイクル、再利用、焼却、埋め立てと決められた処理ルートに乗せればいいが、一時に大量に排出さえると問題を起こす。

焼却炉を持っている自治体でも処理能力がオーバーすると焼却炉にトラブルが発生するだろうし、よく言われているのは定期補修とかち合うことだ。定期補修を無視して運転するとトラブル発生の原因になるし、定期補修にはいれば処理が滞る。

処理能力をオーバーすれば近隣の自治体に処理依頼するが、今回は千葉県全体に問題があるので東京都などに応援依頼と言うことになる。

分別し最終的に処分場へ埋め立てが必要なものが出てくる。ところが埋め立て処分場を確保している自治体は少なく、多くは業者に委託している。

兵庫県南部地震の時は大阪湾フェニックス計画で埋め立て地を持っていたので復旧が進んだと言われている。3.11東北地方太平洋沖地震の時も東北から大阪へ埋め立て物を運搬したという。そんなこともあってか、福島第一原発での汚染水保管が後3年と言われているときに、前環境相が「海洋投棄も選択肢、これしかない」と発言したことに小泉新環境相は「住民に寄り添う」と謝罪発言をした。松井大阪市長は、汚染物質の基準値をクリアーし安全が確保されれば大阪湾で海洋投棄をやってもいいと言い出した。小泉さんは慌てただろう。なんでもそうだがどこかで安全を確保して処理しなければならないのだ。

東京都も中央防波堤埋め立て処分場を持っている。広大な面積と思っていたがごみ排出量も多いのだ。何時かは限界が来るが、新しい埋め立て処分場の確保は難しいという。それでも首都直下地震のために埋め立て地を確保しているというのだ。

災害ゴミを見るたびに思い出すのは、通常の家屋解体作業で出てくる廃棄物をどのように処理しているのか。一軒撤去するのに約300万円かかる。瓦、コンクリート基礎、木製の粗大ごみ、ガラス、断熱材、食器類、電化製品、衣類などが混載で排出される。

これらが分別されどういう内訳で処理されているのか。知っておくことが環境衛生行政に役立つのではないか。

カワラ、陶器、ガラス:破砕するだろうがその後どう処理されているのか。コンクリート製品だと破砕し道路の路盤などに活用されている。ガラスも破砕して道路の舗装に使われ、ギラギラ光っている路面がある。

柱などの木材、家具類:以前はチップにして燃料に使っていた。例えばロータリーキルン式の焼却炉では燃料代わりに投入される。燃料にもなるし廃棄物の処理にもなり一石二鳥?。おが屑のようにして牛小屋の下の敷いたりできるのか。粉砕し発酵させて肥料と言うことも考えられる。

それ以外のリサイクルはすでにルートが確保されているが内容物が残ったままのガラス瓶、ポリ容器、缶類はどう処理しているのか。

いつも思うことだが、廃棄物処理は私たちの生活になくてはならない仕事だ。自治体の担当者や業者に任せきりにしないで日ごろから理解を深めておくことが大事ではないか。