2019年9月23日月曜日

経営者の安全配慮義務:事故を起こした経営者の一方で、しっかりやっている経営者もいるのだ


東電やJR西日本の経営陣は特別なのか。大事故を起こした企業の経営者が業務上過失致死傷罪で責任を問われているが、すべての経営トップが自らの事業への安全配慮、注意義務を怠っているわけではない。

経営者の中には他社の事故事例から類似事故を防止したり、JR東日本のように過去の事故を風化させないため社員教育を徹底している企業トップもいるのだ。

私も現役時代、兵庫県南部地震の発生の時だったと思うが、社長が「地震対策は大丈夫か、しっかり対応を」と指示したために全社あげて地震対策を検討したことがある。ただ、「設備のどこに危険が潜んでいるか」を見出すのが大変だったし、積み上げた対策にすべて対応できたわけではない。当然のことだが優先順位をつけ報告したようだ。

ただ、そういう調査、対策をやっても実際に地震が発生し、「あの時の対策が役立った」という実感がないのでこういう運動は長続きしないのも事実だ。

当時は化学会社の工場で火災事故が起きると、それに連鎖しているように他の化学会社でも火災事故が起きていた。記者会見で社長は「再発防止に努める」というが思うようにはいかない。

今どうなっているか分からないが、会社では年に一回安全運動の一環として「類似災害、事故防止」をテーマに取り組んでいたが、本社を含めた事務部門ではやっていないのではないか。そしてそういう部門から経営トップが生まれるのだ。そこが企業の安全対策、経営トップの安全配慮が劣っている要因ではないか。

今回の東電の事例でも会長の勝俣さんは事務部門、他の2人の副社長経験者は技術部門の出身者だがどうしたたことか。

「知らない」、「あいまいだ」、「信頼性がない」、「根拠が乏しい」、「他社はやっていない」、「土木学会に検証を依頼」、「そういうことを言う人もいる」などと予見可能性を否定する発言が多い。

最後は「もし対策を実施しても工期から考えると間に合わない」と言い出した。「やらなくても同じ結果」と言いたいのだろうが、「間に合わなくてもやっていた」ということとでは経営者の責任は大違いだ。

その背後には東電の経営状況もあったようだ。新潟県中越沖地震で始めて赤字に転落し、今回多額の対策費、原発停止では更なる収益の悪化が予想され経営者としては大いに迷ったのではないか。

新聞で過去に安全管理が問われた主な事故を見ることができる。

1985年の日航ジャンボ機墜落事故では30人が不起訴、1991年の信楽高原鉄道事故では元運転手が有罪、JRは不起訴、2000年の雪印乳業食中毒事件では元工場長が有罪、経営陣は無罪、2005年のJR宝塚脱線事故では3人が強制起訴されたが無罪、2012年の中央道笹子トンネル崩壊事故では8人全員が不起訴になった。

大企業の経営陣には責任が及ばず、現場の管理者、担当者の責任でお茶を濁す結果に終わっている。これでは経営者は安泰だ。記者会見で謝罪すれば無罪放免となる。企業に責任が及ばないので「よかった良かった」だろう。

それでもがんばっている企業経営者もいるのだ。

日本電源は長期予測に従い他社に先駆け、対策を立てた。東北電力女川原発も対策を立て大きな被害はなかった。むしろ地域住民の避難場所になったという。同じ東電の福島第2原発も設備自身は第1に比べて新しくなっていたが、緊急事態での対応が適切で大事故には至らなかったようだ。

JR東日本の社長がテレビ番組(何の番組か思い出せない)で過去の事故を風化させないために当時の関連施設を残し社員の安全教育に活用しているという。

一方で心配は事例も続く。

JALではパイロットの飲酒が問題になっているし、新幹線も部品の劣化が検査をスルーしている。

地震大国日本では巨大地震の襲来が長期予測されているが、原発はどう対応するのか。経営者の英断(?)次第か。


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