2019年9月19日木曜日

東電旧経営陣に対し全員無罪(1):被災者は怒り、経営者は安堵? これでは事故は防げない

注目の福島第一原発による事故で東電旧経営陣3人に対する強制起訴の業務上過失致死傷罪で東京地裁は3人全員に無罪(求刑禁錮5年)を言い渡した。これにより原発のような危険な巨大技術を利用した事業を展開する企業の経営者は安堵しただろうが、被災者や国民は怒り心頭だろう。

こんな判決が通るようでは企業活動での安全確保は無理だろう。経営トップは安全には気を遣わず、儲けばかりを考えていればいいのだ。その風潮が企業犯罪を野放しにしていないか。

まだ東京地裁での判決文の読み上げは続いているので最終的に裁判所がどういう判断を下したかは詳細にはわからない。

この事案の焦点は、「津波の発生を予見し対策を取っていれば事故は防げ、4.5km離れた病院入院患者44人が避難で体調を崩し死亡することはなかったか」ということで、検察官役の指定弁護人と3被告の弁護人が「予見可能性」があったかどうかで対峙した。

政府機関の長期評価に基づき若手技術者が試算した結果、15.7mの結果が出たが、シミュレーションでは敷地南側から押し寄せることになっていたが、実際には東側から押し寄せた。このことから対策を取っていても事故は防げなかったということも言えるのだ。

政府機関の長期評価に対して経営陣は「信頼性が低い」と主張、対策は先送りし「土木学会に検証を依頼せよ」と指示した。経営陣を含めた社内会議も「正式な会議ではない」と抗弁していた。

だから若手技術者による検討結果も無視された。若手技術者は結果を「腰が抜けた」と言っている。

しかし、実際には15.7mの津波が押し寄せ10mの高台を超え非常用電源などが水浸しで動かなくなった。

ただシムレーションでは敷地南側から押し寄せつる設定になっていたが実際には東側から押し寄せた。無罪判決ではこの点をどう判断しているのだろうか。だから対策しても事故は防げなかったというのだろうか。

公判で南側から押し寄せる場合と東側から押し寄せる場合とでシミュレーション上は大きく違うことを確認しているのか。

この事案で難しい点がある。被害をこうむった人たちが入院患者で避難により体調を崩しての死亡だ。直接死亡や障害が発生していればまた違った判断になっていたのではないか。

兎に角、まだ判決文が読まれており、終わるのが午後5時ごろと言う。詳細なことは今晩のニュース解説や明日の新聞で分かるだろう。

しかし、危険を伴う巨大技術を使った事業を展開している企業トップに業務上安全配慮を課さないことは不思議なことだ。こんな風潮では企業の事故は減らない。自動車会社の品質不正も同じことだ。

現場の管理者や担当者が責任を取らされ、経営者は無罪放免ではやりきれない。この判決を機会に判例で経営者責任をはっきりさせてほしかった。

いつも思うことだが裁判は誰のためにあるのか。国民の生命、財産を守るためではないのか。

若い技術者に予見可能性があったのに、経営トップにはその能力がなかったということか。それほど経営者の能力は劣化しているか、それとも会社全体の責任を回避するために予測できなかったとうそぶいているのか。







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