東電旧経営陣3人に対する強制起訴裁判での東京地裁の判決はやっぱり「無罪在りき」だったのか。長期予測での予見可能性が重要な点になったが、判決直後の新聞報道では「どこでも」と言う表現や「南から北にかけては海底の地形が異なる」という理由で長期予測の信頼性に疑問を投げかける証言を裁判所は採用したようだ。
2008年の長期予測では日本海溝のどこでも津波地震が起きる。過去400年で3回発生しているので繰り返すという内容だった。だから今回のように福島県沖で起きることなど予見できなかったというのだろう。
ところが朝日新聞(2019.9.26)の科学「問われた長期評価「15.7m津波」」で公判でどう評価されていたかが詳細にわかった。
長期予測に賛同
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長期予測に異論
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東電の担当者は権威ある機関の見解で無視できない
検察官役弁護士は多くの専門家がかかわった公式見解
長期予測に関わった島崎先生は誰もが合意できる範囲でまとめた古文書にしか残らない地震を考慮する重要性
積極的な証拠がなくても確立をゼロにしてはいけない。
わからないものを「わからない」で出すと専門外の人に都合よく解釈され過小評価される
東電の担当者は長期予測が出ていることを前提に何をすればいいか考えた
長期予測に基づき対策工事に着手した事業者もあった(日本電源)
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地震の歴史記録のあいまいさ
日本海溝で南北で地震の起き方が違う
専門家が無条件に賛同していない。
南北の発生に仕方の違いを重視
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判決では東北大の専門家の意見を重視し、長期予測は信頼性にかけ経営陣の予見可能性を否定したのだろう。
今回の判決は、過去の判決を踏襲し判決内容の違いを回避したのか。
今、各原発の再稼働を安倍政権は目論んでいるが、3.11以降、原発敷地内の活断層の有無が注目され、再稼働を否定する動きもある。トレンチ調査では活断層か、地滑りかが争われたこともあるし、近くに断層があった場合、敷地内へ伸びているかどうかも問題視される。
政府は原発再稼働を目論んでいる。
これらの事情から過去の判決を踏襲したことも考えられる。下級審では原告勝訴も上級審では原告敗訴がこの種の裁判のパターンだが、今回は強制起訴→敗訴のパターンだ。
さらに、専門家も国も原発の運転中止を求めなかったという。当然だろう。そんなことを求める政権はない。事業者の責任で判断すべきだ。
ただ、3.11東北地方太平洋沖地震後、民主党の時の政権である菅総理が中部電力に対して浜岡原発の運転停止を要請した。浜岡原発はいつ起きても不思議ではない東海地震の震源域の真っただ中に存在するのだ。中部電力は相当渋っていたが、要請を重く受け止め停止した。
また法や規則は絶対的安全を保障したものではないという意味の内容だったが、おかしいのではないか。法や規制は国民の身体、生命の安全、財産を守るためにあるのであって法や規制の第1条目的をよく読めばわかるはずだ。
今回の場合も絶対的安全を確保するには、対策工事が完了するまで運転を停止することだろう。東電は原発のリーでイングカンパニーとして停止の判断ができなかったのは、新潟県中越沖地震で箱崎刈羽原発を止めたことで初めて赤字に転落、そして今回も止めることになるとさらに収益が悪化することを心配したのだろう。
いろんな専門家に根回しした経緯もはっきりしている。旧経営陣3人が全く長期予測を否定していたわけではなかろう。
ここは、控訴し3人の判断が一般社会通念上認められるものかどうか再検証すべきだ。
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