2019年9月10日火曜日

テレビ番組「ポツンと一軒家」(2):生活者はただ者ではない、強い意志、趣味、技術は必要


テレビ番組「ポツンと一軒家」をなんとなく興味本位で見ていたが、そんな番組ではないことが分かった。番組が追い求める相手は「ただ者」ではないのだ。強い意志、目的、合わせて趣味を持ち、おまけに独学での大工技術を持っているのだ。マネができるものではない。

今は視聴率がベスト10入りの常連番組の「ポツンと一軒家」だが私が見始めたときは「何でこんな山奥で一人暮らしをしているんだ」「何をして生計を得ているのか」と興味半分に見ていたが、今は見る目が違ってきたのだ。

そして対象者がただ者ではないことが分かったのだ。

親から受け継いだ田畑、山林、家屋を守るという固い意志、夫婦で暮らして休みになると孫たちが尋ねてくれる楽しみ、生まれたときから見慣れた光景の懐かしさ、趣味などこれらに生きがいを感じて他人は「寂しい山間部の生活」と感じるだろうが別の人生があるのだ。

さらに驚くのは、やった経験はないが独学で勉強し大工仕事で家を建てtいるのだ。山間部で暮らすには家が必要だが外からやってくる人間にとっては空き家を探すか、自分で家を建てなければならない。

経験のない人間が2年かけてコツコツと建設する。ある人は基礎部分は専門家に依頼し後は自分でやったという。友達も手伝ってくれたというが、山間部暮らしでも地元の人たちとの仲間作りは必要だ。

今、日本全国台風や豪雨など巨大化する自然災害で家が流されたりし避難生活を無理強いされているが、こんな山奥は「大丈夫か」と思っていたが、昔建てた家屋、開墾した田畑だ。今のように切り土、盛り土で強引な宅地開発をやったわけではないので地盤、周囲の山肌は安定しているようだ。

ただ、道路、がけ崩れなど起きているが、自分たちで対応しなければならない苦労はあるようだ。道路の雨水溝に崖から崩れ落ちた砂利などが埋まると、自分で掃除するらしい。それをしなければ道路がだめになるという。

ところが視聴率が良い分、番組が言いわたり、サプライ感がなくなって来たという。本来は突然訪問し、「どんな生活をしているのか」尋ね相手方も視聴者も驚かす番組だったようだが、今は途中で道順などを聞くと「やっぱり来たか」「いつも見てるよ」という好意的発言が多くなった。好意過ぎて案内を買って出る人まで現れた。所さんはスタジオで「楽になったなー」と苦笑いだ。

いろんな場面があった。

老母の面倒を見るために生まれたこの家に帰ってきた。しかし母親も亡くなり、今は一人暮らしだ。「寂しくないか」と聞くと「生まれた家だから」という。離れたくはないのだ。家族は麓で生活し買い物の手助けをしてくれている家族もいた。

親から受け継いだ田畑、山林を守ろうと夫婦2人で暮らしている例もある。山奥で一軒しかないため助成金も受けることもできず、自費で小型の農機具を買い細々と農作業をやっているが、田畑はきちんと石垣が組まれしっかりしたものだ。こんな山奥にどうしてこんな石があったのか。どこから運んできたのか。そんなことを考えると開墾した祖父の苦労が偲ばれ放棄するつもりはないという。

定年後に戻ってくる例も多い。海で仕事をしていたが、定年後にここに土地を買い、自分で家を建て、休日にはお客さんから要望があれば釣り人を漁場に送る仕事をしている。家の入り口は道路のガードレールの切れたところにフェンスがあり、これをあけて川底に下り、パイプでできた仮橋をわたり家に着く。こんな状況だから材木を背負って一人で運んだそうだ。普通では考えられないことをやってしまう驚きだ。

こんな事例もあった。都会で印刷会社を経営している若い社長が田舎暮らしがしたくて山間部に家を借り(?)、本社毎移ってきたのだ。本社業務をやりながら社員たちは都会で仕事をしている。結構楽しんでいるらしい。社員は苦笑いして「いいんじゃないか」と認めている。

また、大きな旧家が捨てられず、民宿をやっている例もあった。土間、囲炉裏、寝るときは蚊帳を張る。風呂は五右衛門風呂で木戸を開けると目前に素晴らしい光景が見える。小学生が宿泊し昭和の良き時代の生活を体験し満足して帰っていく。喜ぶ小学生の姿に生きがいを感じるのだ。大雨で道路が傷むと自分で対応するという。

最近の放送で趣味の登山を生かし周辺の山を買い、登山道を整備し多くの人が登山に来るようになったという。自分の山に登山道を整備し登山客を呼び込んでいるのだ。仲間もでき共同で登山道などの整備をする。休憩所のような建物を建て温泉、カラオケ、宿泊もできる。登山が趣味だとは言え、これは壮大なプランだ。最初奥さんは「どうか」と思ったそうだが、今は「感謝、感謝」だという。

山奥の一軒家でレストランを経営している女性もいた。薬草を利用した料理を出すそうだ。見れば家の周りに野草のように見える草が生えているがその中に薬草がある。料理に材料には事欠かない。ファンでリピーターもできたらしい。

こんな田舎、山間部で生活するのは実際には大変だということがわかる事例もあった。細い砂利道を登っていくところに一軒家がある。親から受け継いだ家や土地らしい。買い物は近くのスーパーに自転車で行くという。行きは坂道でブレーキをかけながら一度も漕ぐ必要はない。坂道をすごいスピードで下っていくが、逆に帰りは上りの坂道で2時間かかる。一度の買い物に2時間半かかるという。「不便ではないか」と聞くと「不便には慣れて苦労ではない」と言う。

今、若者が田舎の暮らしを求めて農林業に従事している。しばらくは村から生活費の補助があり、家賃も低額で提供される。こんな自然の中で子供を育てることに価値を見出している若夫婦だ。それでも住んでいるのは山奥の一軒家ではなく集落などだ。

村は、さびれていく農林業を継いでくれるし、人口も増えることにメリットがあるそうだが、しかしいつまでこんな生活を続けていけるか。子供が小さいときはいいが、大きくなるに従い教育、医療の問題が出てくる。収入も将来のことを考えると不安ではないのか。テレビでは成功例だけを放映するが、挫折もあるのではないか。

ある番組で出演したタレントが言っていた。東京から宮古島に移住した仲間が「やっていけない」と戻ってきたというのだ。

有名人が東京を離れて田舎に移り住むケースはあるが、移るのは住まいだけで仕事は従来通りやっているのだ。

親から受け継いだ家、田畑、山林、そして定年、趣味の活用さらには大工仕事などいろんな条件が重なって成功している「ポツンと一軒家」での生活だ。根性がいる。一時の出来心でやれるものではないのだ。


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