2019年9月7日土曜日

京急踏切衝突事故:若い運転手の責任にするな、背後に経営者の安全配慮義務がある

京急踏切事故現場 2019.9.7 NHKニュース7

またまた踏切で重大事故が発生した。死者1人、けが人33人と言われている事故だ。毎日この踏切を電車が通過し、通行人、車の往来があったが、この日のこの時間には大型トラックが切り返しをしながら踏切に進入、直後に遮断機が下りた。トラックが立ち往生しているところに時速120kmで快速電車が入ってきた。手前の駅は通過駅だから速度を落としていなかった。

新聞、テレビでは線路側の狭い道路を大型トラックが踏切に面した道路を左折しようとしたが無理で、切り返ししながら右折。たまたま通りかかった京急の運転手と車掌がトラックの誘導に当たっていた。踏切に進入した直後に遮断機が下り立往生になったが、職員は異常ボタンを押したという。

大型トラックは手前の狭い道から踏切のある道路に出て左折しようとしたが
無理とわかり右折に変更し、切り返ししながら踏切内に入った時、
遮断機が下りたという 2019.9.7 NHKニュース7

平常時とは違った条件が重なった。それに電車の運転手は1年1か月の経験だという。

まず原因究明が始まる。

   なぜ、大型トラックの運転手は線路沿いの細い道を通ったのか。同僚の話では普段使わないという。

   電車の運転手はどの時点で異常に気付き非常ブレーキなどの操作をしたか。
 これは難しい。事故を起こせば直前のことなど頭が真っ白になり確かなことを覚えてい
 ることは無理ではないか。

この時点で気付いたといっても340m手前で気付きブレーキ操作をしても間に合わないと専門家は言う。時速120kmで走っていると600mは必要という。

   踏切内には障害物検知装置がある。
トラックに気付いて反応、340m手前の信号が点滅、その時点で気付けばブレーキ操作で止まるはずという。運転手は非常ブレーキを手動でかけたという。

   ATSはあったのか。
報道ではATSには触れていない。
京急は車両には異常がなく、ブレーキも正常に作動したことを確認しているようだがATSには触れていない。

   遮断機が下りる直前に踏切に進入した。これが原因らしい。

   この踏切は「開かずの踏切」と言われ、1時間のうちで48分閉まっている。
  今、開かずの踏切は社会問題になり改善工事が進められている。

これらが原因に挙げられるとすると、一番立場の弱い経験の浅い若い運転手の操作ミスにされがちであるがそれでは根本的な対策にはならない。事故の背後には必ず経営上の問題があるのだ。

今回も経営トップの責任はどうなのか。ATSを設置していれば今回の事故も防止できたのではないか。

京急電鉄の経営トップの安全配慮義務が問われるのではないか。なぜ優先してATSを取り付けなかったのか、「開かずの踏切」の改善工事をしなかったのか。

従来の鉄道事故などの判例では経営トップに日常業務として乗客の安全輸送に関する安全配慮義務はないという。だからJR西日本の宝塚脱線事故でも大きな事故を起こしてもその責任は現場の管理者と直接の担当者に押し付けられて終わりなのだ。

だからいつまでたってもこの種の事故は途絶えない。社長など経営者に責任を負わせれば会社での対応も違ってくるはずだ。

今、3.11東北地方太平洋沖地震の際の原発事故に関して15mの防潮堤を建設していれば非常用電源のダウンによるメルトダウンなど発生していなかったはずではないかと、東電の旧経営陣3人が若手グループの提案した防潮堤建設を先送りした責任を問われる裁判が行われている。3人共に「知らなかった」「15mの津波が押し寄せるという予測に対し信頼性がなかった」と反論している。

公共交通機関や巨大技術を使った原発などの事業を展開している企業に対しては経営トップに安全配慮義務を課すべきである。

今回の事故も若い運転手の操作ミスに原因を押し付けてはいけない。事故の背景には必ず経営者の責任があるのだ。

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