2010年3月9日火曜日

反対意見に耳を貸さず、その心配、危険が現実のものに




大規模公共事業の計画が上がるたびに反対意見が出てくる。反対者の意見に耳を傾けていれば、税金のムダ遣い、危険を回避出来た事例も多いだろう。

しかし、事業者の強い意向で建設を進めた結果、効果の低い利用率の悪い施設がほとんどだ。今は費用vs効果が叫ばれているが、事業を推進しなければならない特別な背景があったのだ。

 かなり前だったが、九州の自民党有力者の地元で橋を建設したが、地元の人もその効用に疑問を抱いていた。年配の女性が「こんな物をつくって、全国の皆さんに申し訳ない」と言っていたのが印象的だった。

 費用vs効果で、その事業が評価されるのはよいが、これが危険を伴う工事であっては話が違う。

 民主党政権になっての見直しで、ダム本体工事が凍結になった八ッ場ダム建設も御多分にもれず、以前からその危険性が指摘されていたのだ。地元の先生らが、この付近の地滑りの危険を指摘していたのだ。

 私も度々現場を訪れ取材した。「止(と)めようにも止(と)められず止(や)めようにも止(や)められない八ッ場ダム建設、完成すれば地滑りの危険」をはじめ多数の記事をネット新聞に投稿した。建設現場周辺を歩いて、地滑りの危険を感じたからだ。

 それには、奈良県川上村の大滝ダムでの試験貯水で、実際に地滑りが発生した例があるからだ。2003年にテレビのワイド番組、週刊誌などでその話題が持ちきりになった。計画段階から、学識経験者などが周辺地質から地滑りの危険を指摘し、ダム建設に反対していたのだ。

 結果は、試験貯水で地下水位が上がり、地滑りを起こし、周辺住民は避難しなければならない事態に至った。現在、損害賠償を求めて訴訟中である。

 同じような危険をはらんでいるのが八ッ場ダムだ。案の定、水没住民の移転先である川原畑地域の国道145号バイパス工事で、過去の地滑りの痕跡が見つかり、のり面崩落の危険があり、対策工事の必要性から開通が半年遅れるとの新聞報道に接し、その感を強くした。

 事業主体である国の役人よりも、その地域に住んでいる反対住民の方が、よく分かっているのだ。事業主体が、反対者の考えに耳を傾けていれば、税金の無駄づかい、起こるであろう危険を回避することが出来たのだ。

事業計画に対する地域住民の積極的な参加は不可欠なのだ。
写真(左) 試験貯水で地すべりが発生した奈良県川上村の大滝ダム
3800億円、38年に歳月をかけ2002年8月完成。この辺の地形は崖錐で、22年前から危険が指摘されていた。
写真(右) 八ツ場ダム工事現場。住民移転先の川原湯地区から川原畑地区を望む。左手の工事現場が地すべりの危険がある箇所。

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