2010年7月26日月曜日

消費税論争:国家財政に対する冷静なコンセンサスを




参院選で菅さんが唐突なまでの消費税論議を提案したかと思ったら、敗北でトーンダウンしたが、メデイアは財政再建に向け消費税論争の必要性を訴え続ける。

7月14日にはIMFが財政再建のために、消費税を今後10年で15%まで引上げる例示をした。菅さんは援軍を得た気持ちになったのかと思ったが、どうもそうではないらしい。一向に消費税論争に拍車がかからない。騒いでいるのはメデイアだけという状態だ。

日本の国の財政はどういう状態なのか。

財務省の言うように借金だけを掲げて議論してもダメだ。政府には金融資産もあるのだから借金から差し引いて計算しなければならない。そうすると言われている対GDP180%ではなく、もっと低いレベルであり日本の財政は決して危機的状態ではないと言う。

財務省の言いなりになってはいけないことは分かっているが、取りあえず若国の財政状況を知るために、財務省のHPから「財政事情の国際比較」を開いてみた。

債務には、「粗債務(総債務残高)」と粗債務から政府の保有する金融資産を差し引いた「純債務」があるらしい。2009年度の債務残高を見ると対GDPは189.6%で、先進国で圧倒的に高いレベルにある(2番目に悪いのがイタリアの122.9%)。一方で、純債務から見ると対GDP97.1%でイタリア(97.8%)に次いで2番目のレベルだ。

アメリカなどは純債務を採用しているのに、何故財務省は粗債務を採用して財政状況は先進国で最悪だと主張し消費税増税を訴えているのか。純債務は粗債務から金融資産を差し引くのであるが、その金融資産の過半は将来の社会保障給付を賄う積立金であり、直ぐに取り崩して債務の償還や利払い費の財源にすることは出来ないことに留意する必要があると言う。

確かに財務省も言うように純債務で比較しても、先進国では一際厳しい水準だ。2009年度で見ると日本は97.1%、米国59.0%、英国47.55,ドイツ51.1%、フランス49.5%、イタリア97.8%,カナダ27.3%で、先進国でも一番悪い。

消費税増税の前に歳出を削減する努力が必要になるが、国全体の歳出は平成21年度で206.5兆円になる。一般会計歳出88.5兆円、特別会計歳出354.9兆円、うち重複額146.兆円を差し引き、更に国債整理基金特別会計における借換償還額91兆円を差し引いて206.5兆円になる。

その具体的内訳は、国債利払いなど78.9兆円、社会保障費68.5兆円、地方交付税17.7兆円、財政投融資10.2兆円、その他31.1兆円の中に公共事業費8.4兆円、文教・科学5.3兆円、防衛費4.8兆円などがある。

財務省は徹底した支出の見直しをしていると言うが、21年度の特別会計の見直し対象事務、事業の歳出予算額は-1.24兆円で、特別会計355兆円の歳出を考えると微々たるものだ。

民主党政権は、これらの中から古い時代遅れの事業の見直しや歳出削減を狙って仕分けが予定されているのだろう。中には必要以上の予算を獲得し、使われないままに積み立てられたり、国債の運用に廻したりしているモノもあるらしい。洗い出しは大変な作業だ。

埋蔵金がまだ20兆円ほどあるという人もいる。特別会計の積立金は193.8兆円あるらしい。8割に当たる151.2兆円は将来の保険支払いなどへの備えである国民年金など保険事業に関するものである。財政投融資特別会計には10.7兆円あるが、臨時に特例で一般会計繰り入れで21年度には3.4兆円になる。外国為替資金特別会計にも為替・金利変動による損失に備え20.6兆円あるが、1円の円高で0.8~0.9兆円の為替評価損となる。

複雑な国家予算だ。財務省はもっとわかりやすい国家財政の実情を公表すべきである。何故一般会計と特別会計と別にしなければならないのか。特別会計もしっかりその内容を国会で審議すべきである。

そして、菅さんや財務省、メデイアが訴えるように「本当に財政危機なのか」。菅さんが言うように議論すべきではないのか。
写真左:財務省 財政再建のための消費税増税の必要性を説くが、国家財政を分かりやすく公開すべきである。そして事業仕分けも与野党合同で財務省を仕分けすべきである。
写真右:財政事情の国際比較(対GDP比) 財務省HPより 左は純債務、右は粗債務 どちらにしてもわが国は先進国に中で一番厳しい内容である

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