東日本大震災でのM9の巨大地震、それに伴う大津波と福島第一原発による原発震災の当初は地震学者、東京電力関係者から「想定外」の発言が続いた。関係者がバカで無知だったのか、降りかかる大きな責任を回避するためだったのか。清水東電社長は3月13日の会見で「コレまでの想定を大きく越える津波だった」と想定外であったことに言及した。
この政府や東電の「想定外」発言に対して、土木学会など3つの学会が共同緊急声明を出した。
それによると、今回の震災は古今未曾有であり、想定外と言われる。我々が想定外という言葉を使うとき、専門家としての言い訳や弁解であってはならない。このような巨大地震に対しては、自然の脅威に畏れの念を持ち、ハードのみ為らず、ソフトも組み合わせた対応という視点が重要になることを改めて認識すべきである(共同緊急声明 東北関東大震災―希望に向けて英知の結集をーより)。
すごく真っ当な考えである。専門家として、関係者として専門性が要求される分野に於いて「想定外」と言うときは、思考が至らなかったと自らの非を認めることであったり、又、それぞれにかかる責任を出来たら回避したいということだろうが、決して責任逃れに使ってはならない。
今回の震災は天災に起因するものであるが、原子力発電事業者の東京電力にどんな責任があるのか。
我が国にあっては原子力発電のパイオニアとして東電は非常に重要な役割を果たしてきたと思うが、経営上、他の原発事業者と比較しても安全意識が欠落していたのではなかろうか。
120km北に位置する東北電力女川原発では、今回の津波でトラブルは発生したが、福島第一原発のような原発震災には至っていない。その要因に福島第一原発は想定津波5.4mと見ていたが、女川原発は9.1m、しかも非常用発電機など炉の冷却に必要な機器は堅牢な建物内に設置していた。
今回の大津波による大震災は決して想定外ではなかったのだ。97年には今回のような原発震災に警鐘を鳴らす論文が発表されていたし、869年の貞観地震や1500年には巨大な津波が襲った痕跡を産総研が見つけ再び来襲する危険を指摘していた(朝日新聞2011.3.25)。
しかし、耐震指針が見直されたのは2006年になってからだ。産業界から圧力があったと言われている。
その新耐震指針を見ると、(4)確率論的安全評価手法活用に向けた取り組みとして、「想定した基準地震動を上回る地震動の影響により、施設が損傷し放射性物質の拡散や周辺公衆の被爆をもたらすリスク(残余リスク)の存在を十分認識しつつ、それを合理的に実行可能な限り小さくするための努力が払われるべきとする・・」と記され、残余リスクとして今回のような原発震災が認められているのだ(耐震設計審査指針 平成18年9月)。
経営上コストを重視する(?)東電にとっては、この新耐震指針を忠実に守っていたために、津波対策を怠り、重大な原発震災を招く結果になった。
ところで、東電の技術者が全員津波対策を軽視していたわけではないだろう。東電は、福島第一原発に設計の想定を越える津波が来る確率を「50年以内に約10%」と予測し、2006年に国際会議で発表したという(朝日新聞2011.4.24)。
東電には、対策を怠れば今回のような事態が発生するだろうことを予見する可能性は十分あったし、今までやる気になればいくらでも津波対策をするコトは出来たはずだし、国民はそうすることを期待していたはずだ。
危険を伴う巨大技術である原子力発電の事業者としての注意義務を怠った東電の責任は避けられない。
この政府や東電の「想定外」発言に対して、土木学会など3つの学会が共同緊急声明を出した。
それによると、今回の震災は古今未曾有であり、想定外と言われる。我々が想定外という言葉を使うとき、専門家としての言い訳や弁解であってはならない。このような巨大地震に対しては、自然の脅威に畏れの念を持ち、ハードのみ為らず、ソフトも組み合わせた対応という視点が重要になることを改めて認識すべきである(共同緊急声明 東北関東大震災―希望に向けて英知の結集をーより)。
すごく真っ当な考えである。専門家として、関係者として専門性が要求される分野に於いて「想定外」と言うときは、思考が至らなかったと自らの非を認めることであったり、又、それぞれにかかる責任を出来たら回避したいということだろうが、決して責任逃れに使ってはならない。
今回の震災は天災に起因するものであるが、原子力発電事業者の東京電力にどんな責任があるのか。
我が国にあっては原子力発電のパイオニアとして東電は非常に重要な役割を果たしてきたと思うが、経営上、他の原発事業者と比較しても安全意識が欠落していたのではなかろうか。
120km北に位置する東北電力女川原発では、今回の津波でトラブルは発生したが、福島第一原発のような原発震災には至っていない。その要因に福島第一原発は想定津波5.4mと見ていたが、女川原発は9.1m、しかも非常用発電機など炉の冷却に必要な機器は堅牢な建物内に設置していた。
今回の大津波による大震災は決して想定外ではなかったのだ。97年には今回のような原発震災に警鐘を鳴らす論文が発表されていたし、869年の貞観地震や1500年には巨大な津波が襲った痕跡を産総研が見つけ再び来襲する危険を指摘していた(朝日新聞2011.3.25)。
しかし、耐震指針が見直されたのは2006年になってからだ。産業界から圧力があったと言われている。
その新耐震指針を見ると、(4)確率論的安全評価手法活用に向けた取り組みとして、「想定した基準地震動を上回る地震動の影響により、施設が損傷し放射性物質の拡散や周辺公衆の被爆をもたらすリスク(残余リスク)の存在を十分認識しつつ、それを合理的に実行可能な限り小さくするための努力が払われるべきとする・・」と記され、残余リスクとして今回のような原発震災が認められているのだ(耐震設計審査指針 平成18年9月)。
経営上コストを重視する(?)東電にとっては、この新耐震指針を忠実に守っていたために、津波対策を怠り、重大な原発震災を招く結果になった。
ところで、東電の技術者が全員津波対策を軽視していたわけではないだろう。東電は、福島第一原発に設計の想定を越える津波が来る確率を「50年以内に約10%」と予測し、2006年に国際会議で発表したという(朝日新聞2011.4.24)。
東電には、対策を怠れば今回のような事態が発生するだろうことを予見する可能性は十分あったし、今までやる気になればいくらでも津波対策をするコトは出来たはずだし、国民はそうすることを期待していたはずだ。
危険を伴う巨大技術である原子力発電の事業者としての注意義務を怠った東電の責任は避けられない。
写真:耐震設計審査指針(改訂) 平成18年9月
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