2009年8月28日金曜日

前回と今回の総選挙 その相違点と類似点は

前回の「郵政民営化」の是非を問う選挙では自民党に296議席ももたらし、比例区では候補者が足らず、他党の候補者が当選する結果になった。今回は「政権交代」を訴える民主党が、世論調査では320議席を越える勢いで、比例区では候補者が足らなくなる事態が起きそうだという。

 前回と今回で、何が違い、何が同じなのだろうか。

 小泉さんは、「自民党をぶっ壊す」「私に反対する者は、抵抗勢力」と位置づけ、ある意味でCHANGEを訴えた。今回は民主党が「政権交代」をスローガンにCHANGEをを訴えている。旧来の政治から新しい政治に期待を持たせる。

 前回自民党は120項目にわたり政策を訴えたが、「郵政民営化で世の中は変わり、すべて良くなる」という主張に徹した。一方で当時の民主党岡田代表は「他にも大事なことがある」と正面から攻撃に出、真面目な訴えを繰り返したが、如何にせん、小泉さんの方がメデイア操作に長けていた。

 今回は、メデイアもマニフェストが身に付いてきたとマニフェスト検証を繰り広げている。読めば読むほど、どちらが良いか選択に窮する。

 民主党が先行した為と、政権交代の機運もあって民主党のマニフェストがモデルになり比較検討がされているが、自民党の反撃は「その財源」に終始している。お互いに「どちらがバラマキか」の言い合いになったが、自民党だって不足分は消費税増税に頼っている。いままで10年間で300兆円もの赤字を積み上げてもいる。民主党を批判する資格などないはずだ。却って民主党の「根本的に仕組みから見直す」という主張の方が説得力がある。

 小泉さんは、郵政民営化是非を問う選挙だからと言って、反対する候補者がいる選挙区に対抗する候補者を配置し、メデイアは「刺客」候補と煽り面白おかしく選挙戦を報道した。それがフィーバーし、自民党へ無党派票が流れ込んだ。今回は、民主党は自民党の大物候補者に若手女性候補を立てるなど、小沢さんの戦術も前回の自民党の戦術と変わらない。

 ただ違いと言えば、前回の小泉劇場の反省から、メデイアが報道を自制していることだ。静かな報道が、有権者にしっかり考えさせる環境を提供することになり、良い傾向である。
 
 今回の選挙で大きな相違点は、党首の問題だ。前回は自民党も民主党も選挙後の党首は誰かわかったが、今回は自民党については、選挙後の政策運営を誰がするのか。麻生さんが引き続き総裁の座に居るのか分からない。

 「党首力」とか「責任力」と麻生さんは言うが、遊説では開口一番「わたしの力不足」を謝罪したのも麻生さんだ。自ら力不足を認めた麻生さんで国民は満足しないだろう。

 一方、民主党だって政権担当能力は未知数であり、小沢さんというカリスマ政治家をかかえている。今回の選挙で小沢シンパが増えれば、民主党内の政策決定段階で内紛発生の可能性も出てくるだろう。しかし、鳩山さんを党首に政権担当体制は出来そうだし、若手の論客も期待できる。ここは任せて見るか。

 政策推進体制の見えてこない政党に、政権を任すわけにはいかない。この点が民主党圧勝の原因になっていると思う。

 世論調査で320議席を越える可能性も指摘されている。民主党幹部は、選挙は最後の最後まで分からないと、引き締めにかかっている。揺れ戻しを心配してのことだ。確かに、自民党支持者だった人も、今回は民主党にと思っている人も多いだろう。民主党圧勝なら、小選挙区は民主党、比例区は自民党と考える人も出てくるだろう。それこそバランス感覚だ。

 誰かが失言したり、政策でブレたりすると事態は大きく変わってくる可能性もある。過去に橋本政権で例がある。民主党は鳩山さんもブレるような発言を避けようとしているし、小沢さんも政策について発言していない。岡田さんは固く失言はないだろう。逆に自民党はどうか。麻生さんは相変わらず変なことも言っているようだが、失言にはなっていないようだ。

 前回の選挙では構造改革が大きなテーマで、構造改革の総括が必要であるが、自民党は早々とマニフェストで行き過ぎた市場原理主義からの脱却を唄った。地方ばかりでなく、都会もそうだが、格差の拡大、地域の疲弊は大きな問題で、候補者は構造改革の必要性を喋れない状況にある。

 しかし政治改革の必要性は、自民党候補者も個人的に訴えているようだ。小選挙区ごとに改革を訴える候補者を選べば、少しは改革が進むだろう。期待したいところである。

 前回ほど、メデイアもフィーバーしていない。メデイアに煽られることなく、静かに政党を選択するチャンスだ。

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