2009年10月30日金曜日

東京モーター・ショーに見る自動車産業の夢と現実







東京モーター・ショーも29日の入場者累計で28万人を越えた。今回は出展社も241社から122社に半減し、開催日も減らしたという。27日に入場してみたが、確かに以前の様な人気はない。それでもコンパニオンが立っているブースは人だかりが出来ている。

 今回は、環境への取り組みが目立ち、「CO2を全く出さないゼロ・エミッション」を目指している。

 今のところ主流は、ハイブリッド・システム、アイドリング・ストップ、筒内直接噴射、可変バルブのタイミングなど燃費改善対策が施され、15~30km/Lの燃費車だ。これに減速時に生じるエネルギーを電気に変える減速エネルギー回生システムも加わりより燃費のよい車になっている。

 実用化の近い電気自動車に各社が力をいれている。プラグインタイプは、家庭の100V、200Vで充電でき、急速充電器を使えば15分ぐらいで、80%を充電できるらしい。スバルのハイブリッド出品車Plug―in STELLAは、1回の充電で90km、エネルギー効率もよく、電気代100円で100km走るとPRしている。

 そんなモノかと思ったら、ニッサンのLEAFの航続距離は160kmだという。1回の充電で10km以上は走ることが出来るが、その根拠は80%のドライバーの1日走行距離が100km以下という調査から考えているらしい。

 担当者に「電気自動車はどうですか」と聞くと、自分のドライブ計画では、往復距離、充電施設のある場所、充電時間などいろいろ勘案して計画を立てる必要があると言う。コンビニや高速のPAなどでの充電インフラの整備は進んでいるが、長距離ドライブや田舎に帰る計画などは対応出来ないこともある。

 また、注意しなければならないのは、航続距離もエアコンなどを使うと短くなると言うことだ。先の総選挙で東京地方区から立候補した小池さんが、エコを唱え自分も電気自動車2台を使用したが、距離が短く、エアコンを使うと更に短くなるので真夏の選挙は大変だったという記事を見たことがある。今の電気自動車の実情をよく表している。

 CO2排出“ゼロ”と言うが、それは走行時であり、家庭で充電する必要があるので、当然電力会社ではCO2が発生することになる。決してCO2排出がゼロ出はないが、今のところガソリン車に比べれば、遙に少ないと言うことだ。

 最終的には燃料電池自動車なのだろう。一部分野で走っているが、実用化にはほど遠い。

 参考出品車を見ると、自動車産業の夢がいっぱいである。スバルのHYBRID TOURER CONCEPTを見ると、車内ジェットやクルーザー感覚のコックピットデザインで、コンソールユニットはITを駆使したタッチパネルが施され、未来カーとは言え直ぐにでも市販されれば乗ってみたい車だ(販売価格は別として)。

しかし、自動車産業の現実は厳しい。

 昨年のリーマン・ショック以来、車の生産は大きく落ち込み、期間工や派遣社員の首切りが進み社会現象までになった。日本自動車工業会の乗用車生産台数を見ると、特に今年1月~5月にかけての生産台数は40万台でピーク時の約50%に落ち込んだ月もあるが、今年9月は72万台と前年同月比で20%減まで持ち直した。

 更に、運転免許保有者も2000年7314万人、2004年7825万人、2007年7991万人、2008年は8045万人と伸び悩んでいる。スズキの鈴木会長が、教習所での教習生が減ってきていることを考えると、自動車産業に往年の期待は出来ないとコメントしていたが、それが実体だ。

 生活環境も関係する。東京では駐車場を確保しようと思えば、月に2万円以上かかる。維持費のことを考えると、レンタ・カー、カーシェアリングなどの分野も伸びるだろう。

 今の車を大事に、長く乗るのがいろいろな面で一番良さそうだ。

2009年10月27日火曜日

鳩山首相所信表明:理念だけだが、心地よい響きがあった


今回の鳩山首相の所信表明は、今までの格式や専門用語を駆使した官僚から提出された施策を並べ替えたモノではなく、鳩山さんの体験から言いたいことを述べたところに、理念だけと批判されているが、何か心地よい響きを保っている内容だった。

 住民が主役の地域、国造り、暮らしの豊かさに力点をおいた経済、人と人が支え合う役に立ち合う、一人一人が参加する「新しい公共」、「役に立つ」「必要とされる人間」として社会の中で自らの「居場所と出番」を見つけ事の出来る社会を構築する理念は、今まで忘れがちだった理念を再確認してくれるモノだった。

今までの自民党政権での経済成長路線、効率化優先の市場主義経済の追求から顕在化してきた格差社会の反省から、人間重視の経済への転換は当然のことである。

 鳩山首相は、今回の選挙の勝利者は国民一人一人だという。しかし、国民は民主党を選択出来たことで勝利したわけではない。愛想を尽かせた自民党政権を今回だけは避けたのだ。戦後の行政のムダ、悪因習を蔓延らせたのには、野党だった民主党にも責任があるのは確かだ。穿った見方をすれば、勝利者と思っているのは、小沢さん一人ではないのか。

 これからやろうとしている「戦後行政の大掃除」は自民党政治を180度転換する大きな挑戦であり、鳩山さんは「躓くこともあるだろう」「頭を打つこともあるだろう」と言及している。

 ところが、既にその兆候は見えている。所謂小沢さんとの「二重権力構造」だ。これは総選挙前から見識者は心配していたことであるが、民主党の組織作りの段階で顕在化してきた。「それ見たことか」と思っている人は多いはずだ。

 改革の方向、政治を根本から見直す長期戦略のための国家戦略室の構想がよく分からない。「行政の大掃除」をするのであれば、一番活躍しなければならない菅さんの存在が薄いことに気が付いていたが、「菅外し」を覆すために特別に菅副総理に言及しなければならなかった事情も政権党内の実情を伺わせる。

 更に異例のことは、自らの政治資金規正疑惑にも言及しなければならなかったことだ。国民の政治不信を払拭するためには、政治家一人一人が襟を正さなければならないが、鳩山さん本人がその疑惑のど真ん中にいる。他人の疑惑の時は、「説明責任を」とコメントしていたが、自分の事になると歯切れが悪くなる。

 小沢さんも公設秘書が起訴された。臨時国会では、民主党は代表、幹事長2人が、政治資金規正法で自民党からの攻撃の対象になる。

 常識で考えれば、2人共に首相や与党幹事長の職に就くべきではないと思うが、大きな政局になる可能性は十分に考えられるが、そんなことに時間を費やす余裕など今の国政にはない。

 何よりも重要で最優先課題は、雇用対策だ。緊急雇用対策本部を立ち上げて、失業者支援、雇用創出に取り組むという。しかしこれは並大抵のことではない。雇用を創出しようと思えば、企業の業績回復が必要であるが、それには消費の拡大が前提になる。

 家計収入の増加、将来の不安の解消などいろんな政策が絡んでくる。今政策に上がっている子供手当、暫定税率の廃止、高速道の無料化などは家計の可処分所得を増大させるが、一方で価格競争は企業収益を減少させ、給料の減額、人件費の削減のためのリストラなど悪循環が続いている。

 雇用対策で失敗すれば、国民の信を失い、政権の座から転がり落ちる。今、民主党政権は自民党政権の政策の180度転換を目指しているように見えるが、「何だ、自民党政権の方がまだマシだったのではないか」と考えるようになる可能性も大きい。

 理念を実現する政策に緊張感を保って当たらなければ、国民に飽きられる日は直ぐそこに来ている。党内の権力闘争など御法度だ。

2009年10月26日月曜日

雇用は悪化しているのに景気は回復に向かっているとは


経済指標は改善している報告が多い中で、生活感、雇用は悪くなっている。実生活も安売りに群がる傾向にある。本当のところはどうなのだろうか?

 内閣府の6月の景気動向指数先行指標は、05年を100として、先月比2.9ポイント上昇の79.8。7月の消費者物価指数は前年同月比2.2%下落、3ヶ月連続で下落している。景気回復の実感のない中で、消費者の財布のひもは引き締まっている。一方、内閣府の8月の消費者動向調査では、消費者態度指数は確実に改善していると見られていい、9月は40.5と前月を0.4ポイント上回っている。

 日銀の景気判断も2ヶ月続けて引き上げられ、「持ち直しに転じた」から「持ち直しつつある」という。

 アジア経済も底打ち感が出て、シンガポール、タイやインドネシアではGDP成長率が大幅にプラスに移ったと言うし、世界的にも、景気底打ちの兆しが見られ、欧米の株価も上昇している中で、日本だけが取り残された感がある。

 製造業でも一部の企業は、繁忙度が高まっていると言うし、損益分点売上高を越える企業も出てきているが、実体は在庫調整が進んだり、リストラで1人当たりの仕事量が増えたためでもあり、人件費削減で損益分岐点が引き下げられた為だろう。自動車産業では期間工の採用も出てきた。

 経済指標は改善されて来ているようだが、雇用は悪化している。

 失業が依然多いのだ。昨年10月から今年6月まで職を失ったり、失う見通しの派遣社員や契約社員は20万人をこえ、解雇された正社員は2万人の上ろうとしている(2009年5月)。企業のリストラも正社員まできた。

 有効求人倍数も7月は0.42、完全失業率は5.7%に達し、8月は5.5%に改善したという。内閣府の7月の経済動向試算では5.4%と見ていたので、5.7%には驚いている。約360万人が失業していることになる。

 しかし、失業者の実数はもっと多いだろうと見られている。就業者でも従業員を解雇せずに休業する企業には国が手当を補う「雇用調整助成金」により支えられている人も200万人前後おられるらしく、これも高止まりの様相を示している。

 自民党政権の時、09年度緊急人材育成・就職支援制度が導入され、月10万年の生活費をもらいながら職業訓練を受けることが出来るようになったが、訓練を受けても職がない状態にあるらしい。

 特に注目しなければならないのは、若年層の雇用悪化が目立つことだ。15~24歳で9.9%、25~34歳で7.1%になっている。

 これは大変な事で、すさんだ人生を送ることにもなるし社会人として教育(経験)も積めず、ゆくゆくは国の成長力も低下するはずだ。

 やっとのことで仕事が見つかったとしても、今は低所得化の時代だ。

 OECDの08年の相対的貧困率では、日本は15%をこえ、ワースト4、1人親家族の貧困率は58%だと言う。あるテレビ局で、「貧困を感じるときはどんな時か」との質問に、食事が3度とれない時、病院に行けない時、携帯が使えない時、旅行に行けない時などを上げていた。「食事が3度取れない」は身につまされる思いだ。

 読売新聞の5月の世論調査でも、54%の人が昨年の4月に比べて「生活が苦しくなった」と指摘しているが、当然かも知れない。加えて自分や家族の仕事の現状や将来に不安を感じている人も78%に達している。

 経済指標が少しよくなったと言っても、雇用が改善しなければ実体感はつかめない。

 外交デビュー華々しかった鳩山さんも、ここに来て「経済は必ずしも順調ではない。家計に刺激を与えることが一丁目一番地の課題だ」と指摘した。

 雇用の悪化、給与所得の減少は、家計に大きく響き消費は冷え込む。その結果企業業績も当然悪化する。分かっていることだが、雇用の改善の為の景気対策は先決問題だ。

 しかし、子供手当や公立高校の無料化などマニフェストに沿った政策が推進されようとしている。今の民主党の事業の見直し、公共事業の削減、赤字国債の抑制など賛成すべき面もあるが、景気刺激策として逆効果になっていないだろうか。教育・訓練が必要な医療・介護分野、補助金で保っているような環境分野で内需を拡大するのは、並大抵のことではない。

 失業者を支援し、税制で雇用主を優遇する施策などで経済を活性化し、税収を上げなければ景気対策にはならない。そう言う意味では金融相の亀井さんのモラトリアムは一手だ。

 需給ギャップの問題もある。供給に対して需要が落ち込んでいる。テレビで放映される画面を見ると、小企業では工場内はガランとしていて稼働しているのは数台の設備だ。経営者は、これ以上こんな状態が続くとやっていけなくなると訴える。一方で、特色のある技術を持った中小企業ではフル稼働している。今の不況などどこ吹く風だという。しかし、、多くの中小企業は似たような技術で熾烈な競争している。

 おまけに、もうけなしの仕事もしている。「断れば次がない」の強迫観念がある。

 失業率が高止まりの状況での景気回復はリストラ以外の何ものでもない。教育・訓練したって受け皿がないのだ。若者が企業人として経験を積めないことは、国の将来にとって大きな損失である。

写真は、大田区本羽田の工場周辺 こういった工場の活況が日本経済を支えた事になる。
    今は、高層アパートやマンションに変わっている。生き残れた工場が、細々と稼働している。

2009年10月24日土曜日

急勾配の碓氷線の電化を支えた旧丸山変電所







明治時代のレンガ造り建築物に興味があったので、富岡製糸場に次いで旧丸山変電所に行ってみた。今、地域で世界遺産登録を目指そうとしている碓氷峠鉄道施設だ。

 10年ほど前に、終着駅となったJR信越線横川駅から旧碓氷線の下り線路跡を改造した遊歩道「アブトの道」を碓氷峠鉄道文化村を右手に見ながら、碓氷峠の森公園へ向かって歩く。旧碓氷線の上りは、「ぶんかむら駅」から「とうげのゆ駅」までトロッコ列車が土日、休日に運行されている。

 2kmほど歩くと、赤い煉瓦造りの建物が見えてくる。こんな人里離れた山間にある建物だから直ぐにそれと分かる。

 1893年(明示26年)、急勾配の碓氷線横川―軽井沢間約11km、標高差約550mの峠越えをアブト式鉄道が採用されたが、1911年(明示45年)日本で最初に電化されることになり、この変電所が建設された。

 2棟からなっており、1棟は変流器や変圧器が収められた機械室、もう1棟は、必要な電力を供給するために蓄電地室で、312個の蓄電池が配置されていたそうだが、1963年に新線が開通することになりその役割を果たした。1994年(平成6年)に国指定の重要文化財に碓氷峠鉄道施設として指定された。

 レンガ造りで格調高い建物であることは分かるが、外側は痛んできている。蓄電池室は、窓は曇りガラスで、中の様子は伺えない。充電中は水素と硫酸が室内に発散するために通気に気を配った作りになっている。屋根には換気窓らしいモノもある。

 機械室は、交流電流を直流電流に変えて機関車に送電していたので変流器と変圧器が置かれていたらしいが、今はそれらしい器機は見あたらない。換気塔の残骸やレンガ、碍子、鉄材などが無造作に放置されている。

 そう言った機器類がきちんと保存されていれば、この建物の評価は上がるのだが、残念ながら建物だけでは価値が半減するように思えた。ここを通る観光客は、ほとんど建物だけをデジカメや携帯電話で撮し、通りすぎる。私のように窓の外から中を撮影している者はいなかったが、世界遺産登録を目指すのであれば、保存の仕方を工夫しなければならないと思う。

 この道を更に登って行くとトロッコ列車の終着駅「峠の湯」につく。さらに旧線を碓氷峠に入っていくと、いくつかのトンネルを過ぎて、名勝の「めがね橋」まで行ける。

 このメガネ橋と旧丸山変電所が、絹産業関連の世界遺産登録リスト入りの準備をしている。

2009年10月22日木曜日

時の政権に翻弄される八ツ場ダム?







 一都5県の知事の現場視察も終わり静かになった頃合いを見て、一ヶ月ぶりに八ッ場ダム工事現場を訪れた。紅葉も真っ最中のためか平日でも観光客が多い。途中、柵で囲まれているダム本体工事予定地に工事事務所の人が立っている。また、誰か視察に来るのだろうか。

 まず「やんば館」に八ッ場ダムのパンフレットをもらいに行ったが、いつもあるパンフレットがない。置いてあるのは「川原湯温泉の吾妻渓谷散歩マップ」だけだ。案内の女性に「パンフレットはないのか」と聞くと、「そこにあるだけです」という。いつも八ッ場ダム工事事務所作成の資料があるはずなのだが・・。

 跡になって分かった。同じ日に衆院国土交通委員会の川内委員長が建設予定地を視察した際、公報センターの「やんば館」が「ダム建設を前提とした展示に問題がある」とクレームを付けたらしい。それで常置されていたパンフレットをしまい込んだらしい。

 今回の前原国交相の中止発言から始まり、時の政治に翻弄される八ッ場ダムだ。

 昭和27年に利根川改修改定計画の為に調査に着手されて以来、国(当時の建設省)、群馬県、長野原町そして1都4県の関連地方自治体でいろんな協議がされたようだ。当然のことながら国会議員、県知事、県会議員、町議会議員が建設推進で利権に群がって暗躍したのだろう。地元で推進協議会などが発足すると、会長は町議会議員やその地域の有力者が就き、国はその有力者と組んで強力に推し進めるのは常套手段だ。それが出来なければ今までの公共事業はまとまらない。

 今、週刊誌で利権に群がった人達の事が報道されている。真偽のほどは知らないが、地域や住民を代表して国や県と交渉する人達は、あらぬ嫌疑をかけられないためにも十分に注意すべきだったことは確かだ。「ダムはムダ」とよく言われるが、建設目的以外に無駄な費用を税金で賄っていることへの批判もある。

 川原畑側の移転先にいってみた。「工事関係者以外 立ち入り禁止」の看板の他に「地元車優先」の看板も立つ。中腹に比較的緩い斜面を削り取った造成地が現れた。神社は一番高い場所に移され、先祖のお墓も湖の見える場所に移設されている。

 移転先の造成は終わった箇所には家が新築されている。驚いたことにまだ全体の造成も終わっていない場所でも新築中の家もある。図面上は区画の線引きも出来ているのだろうが、造成工事が住民の要望とあわず、遅れている可能性もある。
 神社の下は、付け替え国道145号線の函渠工事が進んでいる。この付近の完成予想図を見ると、4車線になっている。「八ッ場ダムの経緯」をみると平成5年に、長野原町が国道145号付け替え道路の4車線化構想の受け入れを決定とある。町が希望したのか、国が気を利かせたのか知らないが、こんな山間で4車線なんて考えられないことだ。

 この神社の境内から川向こうの川原湯側の移転先(打越地域)を見ると、既に1期は分譲され家も建っているが、2,3期分は今も造成中だ。右方でも造成工事中で、ここはJR新川原湯温泉駅になる。温泉地もこの付近に移転するのだろう。川原湯温泉は、駅に近い温泉を売り物にしている。

 八ッ場ダムは、4600億円のうち、既に約70%にあたる3200億円を使っているとよくいわれる。予算ベースではそうだろうが、工事を見渡すと、とてもそうとは思えない。反対している民間団体の調査では、まだ土地の収用も出来ていないところがあるという。完成しているのはトンネル工事ばかりだ。

 地質だって良いとは言えない。盛り土整形されたところを見てもよくない。しかも湖面に突き出る法面勾配は30度を越える急斜面のようだ。指摘されている地滑りの危険は大きい。

 打越地域では沢が多いようだ。防災ダムが至る所に設置されている。上部からの落石、土石の流出を食い止めるのだろう。知事の現場視察の時に、工事事務所の人が「地質は硬い。金槌で叩くと火花が飛ぶ」と説明していたようだが、そんな問題ではない。川原湯温泉街を登っていくと、あらゆるところに落石防止ネットが張ってある。

 温泉街で落ち葉の掃除をしていた人は、「中止が前提では、話し合いしても仕方がありませんよ」という。「ここまでやったら、もう進めるしかないと思いますよ。私達は温泉で生きていくしかないのです」ともいう。

 「新しい温泉街出来ると環境はこんなによくなると言われ、期待していたが工事も長引くばかりで、温泉街はかえって寂れた」と失望を隠せない。確かにそうで、親水公園の未来図が画かれている。

 湖面2号橋工事現場付近で農作業していた人が、「政治に翻弄された50年だよ」と苦笑いする。

 前原さんは「マニフェストに書いてあるとおり、中止にかわりはない」と言うが、後処理をどうするのか。ダムは止めるが、JR,国道の付け替え工事は完成させるのか、温泉街の再構築はどうするか、地域住民の生活の補償をどうするか。

 民主党が政権に就いている間に、解決できるのか。これこそ問題だ。

2009年10月18日日曜日

マニフェストに拘ると政権はもたない。マニフェストの存在意義は?




 マニフェストを実現しようとすれば国債発行に頼らなければならないジレンマに鳩山政権は置かれている。読売新聞の世論調査では、マニフェストの修正について、「必要な場合は修正」を認める人が76%に達している。

 マニフェストか、赤字国債か、政権は難しい舵取りの局面に向かっている。

 10年度の一般会計要求額は、政権公約実現関連の4兆3767億円を含め、95兆380億円の過去最高額になったが、更に予算額の明示にない事項要求を加えれば97兆円になるらしい。税収が46兆円から40兆円に落ち込むことを考えると、赤字国債の発行は避けられない現状だ。

 マニフェスト実現に必要な主な予算は、子ども手当2.3兆円、公立高校無料化0.46億円、農業の戸別所得保障0.56億円、高速道無料化0.6億円、雇用対策0.27億円 で子ども手当が全体の約50%を占める。
 
 中学校卒業まで1人あたり2.6万円を支給し子育てを支援するらしい(10年度は半額)。7人ほどいる家庭では月18万円の手当になり、父親は「実現すれば嬉しい」と笑顔でコメントしている。

 子供を産んで育てることは親の責任である。低所得なら低所得なりに育て方もあるだろう。またその覚悟で子供を作ったのではないのか。子供1人1人に手当を支給すること自体に抵抗を感じる。

 寧ろ保育所が不足して、働きたくても働けない母親の為に、待機児童を解消するための保育園、学童保育、延長保育などを拡充すべきではないのか。子ども手当は内需拡大のための施策の一環でもあるらしいが、景気対策には待機児童解消策の方が効果は大きいのではないか。そのためにも設置基準緩和などの構造改革が必要だ。

 民主党の政策で子ども手当が、クローズアップされているが、最近の世論調査(読売新聞2009.10.18)で内閣に優先的に取り組んで欲しい課題では、景気対策(73%)、年金制度改革(49%)、雇用対策(47%)、医療制度改革(41%)そして子育て支援(31%)だ。

 「国民の目線」での政治が、先の衆議院選での人気取りのバラマキ政策に翻弄されている感じがする。
 早く国会を開いて、政策の議論をするべきである。この1ヶ月民主党政権は、マニフェストに掲げて国民の信を得たとマニフェストを御旗に、今までの自民党政権とは逆の政策を推し進めてきたが、ここに来て公共事業、外交、そして今までの構造改革で混乱が起きている。

 政権に就いたこともなく、実体は把握できず、民間のコンサルタントなどの活用で何とかまとめ上げたマニフェストだ。実際に政権に就けば思うように行かないのは当然だ。

マニフェストの目標から離れると、公約違反だと非半田出る。マニフェストを実現しようとすれば、予算がいくらあってもたりない。おまけに国民は期待している面もある。実現しなければ政権の維持は難しい。

 ところが、国民はマニフェストも「必要があれば修正してもかまわない」という人が76%もいるのだ(同 読売新聞)。

 赤字の上積みは極力避けなければならないが、税収も46兆円から40兆円に落ち込みそうだ。ここは一般会計ばかりでなく、特別会計も含めた207兆円全体での削減を考えるべきだ。ほとんど必要な予算である一般会計より、特別会計の方に削減代がありそうだ。民間企業では一律5%カットでの予算執行をよくやるが、国はどうしてこういう考えが出てきないのか。

 一般会計概算要求95兆円を92兆円まで落とすと仙谷さんは発言している。あれもこれもではなく、優先順位をはっきりさせて、PDCAで修正しながら目標に近づけていった方が良いのではないか。

 今の状態が自民党麻生政権だったら、「またブレた」と批判されるだろうが、鳩山政権では国民は鷹揚だ。09年度補正予算見直し、10年度予算編成において、そのプロセスが国民にオープンであった為ではないか。

 今マニフェストはその存在意義を問われ始めたのではないか。政権政党にも野党にも選挙公約を要求した。政策課題について、何時までにどうするか数値目標で示すことを要求した。しかし、人気取りのバラマキ予算に走った嫌いはある。

 強力にマニフェストを推進した早稲田大の北川先生はどう思っているのか。今、一向に発言されないことに疑問を感じる。

2009年10月17日土曜日

羽田ハブ空港化は唐突な政策なのか







 関空について負担金や伊丹空港の関係、リニア問題などいろんな問題を抱えていた大阪府の橋本さんが、国土交通相の前原さんと会談したが、羽田のハブ化、関空については具体策がなかったことに大きなショックを受けたようだ。
 この前原さんの羽田空港ハブ化発言は、千葉県にも波及し、驚いた森田さんが急遽、前原さんと会談し、笑顔で納得した様子がメデイアで報道された。「誤解のないように、意思疎通が必要」ということらしい。

 この政策は、本当に唐突だったのか。

 成田は国際線、羽田は国内線でのすむわけで共存していた事は明らかなことであるが、 羽田は航空需要の増加から発着能力が既に限界に来ている。成田は夜間しようが出来ないし、今後の拡張は難しいらしい。どう考えても羽田の拡張しかないが、今2010年10月の使用開始を目指して工事中だ。

 久しぶりに羽田空港に行ってみた。展望デッキから離発着をしばらく見た。離陸は頻繁だ。誘導路には常に4~5機が滑走路に向かっている。前の機が離陸して上空を旋回しながら上昇している間に、次の機が離陸する。離陸間隔は40秒前後か。過密状態であるのは確かだ。以前、離陸間隔が短くて気流が安定しないままに次の機が続き、事故を起こしたことがある。

 離発着便を見ると、圧倒的にJAL機が多い。ジャンボ機は幹線を飛んでいるので問題なかろうが、それ以外は不採算が多いのだろう。地方空港が出来るたびに、JALが飛行を押しつけられる歪んだ航空行政も経営悪化の一因なのだろう。

 向こうに建設工事中の情景が見える。2010年10月新国際線ターミナル誕生と英語、中国語、韓国語で書いてある。1245億円かけて新滑走路(2500m)、誘導路、エプロン、管制塔を建設している。今回の拡張計画で、国際線が3万回増え、さらに深夜・早朝の国際線3万回も増えることになるらしい。発着回数は最終的に40.7万回(現在30.3万回)になるらしい。

 我が国の航空行政はどうなっているのか、国交省のHPを開いてみた。

 「空港の設置及び官吏に関する基本方針の策定について」(平成20年12月24日)によると、首都圏における空港相互間の連携のあり方で、経済財政改革2008の基本方針に従い成田は国際線の基幹港、羽田は国内線の基幹港との基本的役割分担し、両空港の一体的活用による、国際航空機能の最大化を図ると言う。また首都圏空港における国際空港機能プランに従い、今羽田は建設工事中だ。この機能拡大プランの中で、22年には羽田は昼間約3万回、深夜・早朝3万回の系6万回、成田は約2万回の計約8万回の国際定期便を実現できるのだ。

 ハブ空港化に関しては、国際拠点空港の記述があるが、成田、関空、中部が今後共に適切に応えると共に、東アジアと世界を結ぶアジアゲートウェイとしてネットワークを構築するという。

 羽田について国際拠点空港としての言及はないが、その要望も大きい事から狙っているのは誰にでも分かることだろう。

 前原さんは、成田、羽田の国際、国内のすみわけを撤廃することに言及したが、今までのしがらみがないだけに、思い切った政策を推進できるわけだ。

 東アジア地域における空港間競争の激化問題では、韓国の仁川国際空港を念頭に置いている。私の岡山の親戚は、海外旅行に行く場合近くの地方空港から仁川国際空港に行き、そこから目指す海外へと向かうのが便利だという。地方から東京、成田経由では不便なのだ。

 羽田がハブ空港になれば、経済も刺激でき成長に繋がる。採算の悪い地方空港を増やす悪例になった空港整備の特別会計の見直し、JAL再建への道筋も付けられるだろう。今までのように、関連自治体への配慮(?)などからはっきり言及できなかったことを民主党政権になって政策に対して説明責任を果たすようになったと見て良いのではないか。

 空港を持つ地方自治体は、どう思おうと羽田のハブ空港化は時代の要請であり、遅ればせながら推進しなければ国際競争にも負けることになる。

 とは言え、大きな難題がある。孫を保育園に迎えに行った帰りに、年配の方2人が騒音を測定されていた。何をやっているのかと思ったら上空に航空機が飛んでいた。ブオーンという低い音がしているが、騒音計には出てこないだろう。

 騒音問題だ。生活環境が悪化しているらしい。朝晩の本数が増えて子供の睡眠に支障を来しているという訴えがある。そのため航空機の侵入角度を変えたり、横田基地があるために空域問題もある。

2009年10月15日木曜日

株価は海外頼みで1万円台の攻防か




10月13日、東証は5日連続の続伸で一時10,100円を超えたが、終値は10,076.56円で、9月30日の水準を回復したという。
 しかしNYダウが14.74ドル下落した事により14日は1万円台を割るのではないかと東京証券取引所に行ってみた。案の定、10時30分の時点で40円安の10,036.56円で、1万円は割らなかったモノの終値は16.35円安の10,060.21円だ。前日はロシア、イギリスでも下落している。

 日本株にとって、国内独自材料は乏しい。どうしても海外市況に頼ることになる。

 今、注目されているのは、金融危機政策後の出口戦略だ。金利らしい。

 オーストラリアは電撃的に金利を3%から3.25%に上げたという。次は韓国が上げるのではないかと見られている。円安、ウォン高は日本にとっては有利な競争になり、メリットは大きく、何時になるかが注目されている。

 日本はと言えば、景気判断も「持ち直しに転じつつある」から「持ち直しつつある」に記述が変わったが、0.1%の超低金利は維持するらしい。出口戦略についてのコメントなど、特に目新しいモノはなかった。

 ところが14日NYダウが急伸したために、15日の午前には212年高までになった。

 特に為替は影響する。今の円高は財務相の藤井さんが円高容認発言をしたのも一要因と考えられているが、元は米国でのドル安政策が原因だ。

 内需拡大政策の効果が出てきて国内経済が好転しての、円高であれば良いのだが、日本はまだまだ輸出に依存しており、この傾向は変わらないだろう。

 国内事情としては、取りあえず鳩山政権の赤字国債がどの程度になるのか、予算編成での経済対策、通常国会での鳩山政権の混乱の有無、年末にかけての雇用/失業率等か。

2009年10月14日水曜日

提案されては消えた政府紙幣だが、やってみる価値はある




政府紙幣は、財政支出、デフレ対策で提案されてきた。つい最近では名の知れた経済学者(?)がデフレ、円高の経済不況にあって、景気刺激策として償還の必要のない政府紙幣の発行に関連して発言している。
 政府紙幣発行で、デフレから物価上昇へ、円高から円安へ誘導しようというモノだ。時の政権内でも検討されたようだが、伊吹さんが「マリファナの様なモノ」と言ったように、ハイパー・インフレ、大幅な円安への危険がぬぐえず、末期の麻生政権でも採用に至らなかった。

 私も発行に興味がある。今の鳩山政権での景気対策は、子育て手当や補助金の拠出での刺激策で、公平性に欠け、且つ子育て手当などは民主党政権を支持する者でも、過半数が反対している政策である。

 それよりも、皆平等に一人あたり30~50万円を配るのは公平なやり方である。金額もでっかいから、先の給付金とは違って,今回は何か買ってみようということになるかも知れない.

  その時の経済の背景、発行してどうなったか、調べてみようと日銀金融研究所貨幣博物館に行ったが、政府紙幣も歴史があり今まで我が国でも発行されてきたと言っても、最近では明治の初期と昭和13,17年頃のことで古い。

 確固たる財政地盤もなかった明治政府は国庫の窮乏を補填するとともに、各藩や民間に殖産興業資金を貸し出すために1868年(明治元年)「太政官札」を発行した。しかし、この紙幣は新政府の権威が確立しない段階で発行され、兌換準備や発行額の制限もなかったために価値が下落、混乱に一段と拍車がかかったと言う。

 いずれは新貨幣に交換される事になっていたが、財政事情も窮迫、新貨幣の不足などに対応するために為換座三井組の名義で新しい円単位の政府紙幣を発行した(明治4~5年)。

 日中戦争が拡大に向かった1938年(昭和13年)臨時通貨法が制定されて新素材、新形式の補助通貨を発行できるようになった。そして素材を節約した少額貨幣紙幣が次々に発行された。小額政府紙幣50銭券(昭和13年)は、富士山を画いていたが、昭和17年の政府紙幣は靖国神社に変わった(以上の項 貨幣博物館の展示資料から)。

 今までの発行理由は、殖産興業資金の貸し出しなどを目的にした事もあったが、戦時中の金属不足による硬貨の代替品だった。
 今、デフレ対策、円高対策の景気刺激策としてその可能性が話題になってきた。

 提案しているのは、我が国の著名な経済学者ではない。どちらかというと亜流の経済学者だ。しかし、やってみる価値はないだろうか。

 09年度のノーベル経済学賞の受賞者は、経済学者ではなく政治学者だということが波紋を呼んでいる。ここは亜流の経済学者の政策に頼ってみるのも一手ではないだろうか。長期の経済停滞を我慢するか、物価上昇や円安を選択するかだ。

2009年10月12日月曜日

消費を刺激するには政府紙幣の発行しかないか


政府は「底入れ」と言うが、スーパーやコンビニの売り上げは減少、デパートの売り上も減少の一途だ。そんな中で、ユニクロ、ニトリががんばっている。安売りでないとお客がつかないらしい。
 銀座の高級ブランド店も、閑散としており店員の数の方が多く、あの開店ラッシュは何だったのか。ユニクロの服で十分満足なのだ。
 ドル安で円高が進み、株価も1万円を切った。G20では米国や中国の消費に頼らない内需拡大が課題になったし、鳩山総理は子育て支援や環境事業で対応すると約束した。

 しかし、こんな民主党政権の経済政策で景気回復に持っていけるのか。

 内需拡大の一環としての2万6000円の子供手当、公立高校の無料化などは、小さな子供をかかえている家庭には朗報かも知れないが、一方で財源確保のために扶養控除も廃止されるとなると、子育てを終わった家庭では家計を圧迫する。私立高校も危機感を強めている。公平感にかける政策で良いのか。

 その子供手当も来年6月には支給が開始できるように法案を用意するらしい。何やら参議院選対策の様相を呈している。そのやり方にも問題がある。所得制限をすべきだとの考えもあるらしい。あの定額給付金の二の舞になりそうだ。預金に廻す人も出てくるだろうし、ギャンブルに費やす親もいるだろう。

 教育関連分野に回ったとして、教育に従事する人はアルバイト、非正規社員、学校では臨時教員などが多い。こういった人達の生活が安定するようになるとは思えない。更に教育をキチンと受けていれば就職にも有利になり雇用が改善すると思うだろうが、そう簡単ではない。企業の景気が良くなり、企業が業績を上げない限り雇用は創出できない。

 皆が期待している環境関連事業はどうか。エコポイントがついたエコカーや電気製品は売れている。太陽光発電なども話題になっている。しかし、それは補助金がついている為に何とかやっていけてるだけで、補助金がなくなればブームはしぼむ。

 車のデイーラーの知り合いの営業が、プリウスは売れるが他の車は売れないとぼやく。補助金が延長されるかどうかが今後の鍵になるらしい。

 日本経済は、どうしても輸出頼みであるが、米国の失業率は10%にもなった。借金してでも生活する生活スタイルのリーマン・ショックで一変した。直後のテレビ画面で、「これからは貯金をしなければ」と自嘲気味にコメントしていた、アメリカ人が印象的だった。
 このままでは、「二番底が来る」という予想(逆に読むとウソヨという)も現実味を帯びてきそうだ。 

こうなったら、消費を刺激するのは「政府紙幣」しかないのか。

 古くは元東洋大教授の高橋洋一さんが提案し、今は経済評論家の師長卓郎さんがしきりに言っている。政府紙幣を印刷して1人当たり30~50万円を配れと言うのだ。国の借金にもならないし、消費を刺激するには良いらしい。問題はインフレになるかどうかだ。

 1人50万円もくると、何か買おうとする気にはなるだろう。海外で安く調達出来る安売り製品より国産のモノを買って、「国内生産者に潤いを」と考えることも出来る。

 今まで、消費を控えていた人達も多いはずだ。ここでパッと実施すればインパクトが強い。「やるぞ、やるぞ」と言ってなかなかやらないのが一番拙い。

正式に取り上げてスパッとやる景気対策としては面白い。

2009年10月11日日曜日

民主党の議員立法禁止は憲法に反しないか


民主党が政策一元化のために、議員立法を原則禁止し、法案提出は政府提案に限ることを決めて、所属国会議員に通知したことが波紋を広げている。
 更に、横路衆議院議長が、これに異論を呈した。独裁国家ではあるまいし、三権分立で立法府の役割は非常に重要だという。
 民主党内でも政府にも入れず、党の要職にも就けなかった議員は「なにをすれば良いんだと言うことになる」と混乱している。

 国会議員は、国民全体の代表者であり、選挙民からも独立した法的地位を持っている。最近は政党が発達(?)したために、政党による議員拘束が強化され、その地位はかなり制約されたモノになってきた。党の指令に拘束されあ、討議により発言、評決しなければならない。

 憲法では、「国会は、国の唯一の立法機関である」と規定し、法律案は両議員で可決した時に法律となる(憲法第59条)。国会を通じ、国会中心に行なわれ、国会の議決のみで成立する国会単独立法である(憲法第41条)。

 では、法律の発議権はどこにあるのか。

 国会議員(一人では出来ず、衆議院20人、参議院10人の賛同が必要)にあるのは当然であるが、内閣にあるかは争う店であるが、内閣法第5条で「内閣総理大臣は内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他議案を国会に提出し・・・」と期され、内閣にも法律案の発議が出来ることになっている。実際に衆法(衆議院議員提出法律案)、参法(参議院議員提出法律案)、閣法(内閣提出法律案)がある。

 第171回国会を見ると、衆法では提出97件で成立は17件、成立率は17%。参法は提出41件、成立1件の2.4%。一方、閣法は提出91件、成立71件で78%と圧倒的に内閣提出法案の成立が高い。

 この衆法には、「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案」も含まれ、議員立法の必要性を訴えている。この法案の背景には、内閣では立場上法案提出がしにくかったために、議員立法で処理する方法をとったと記憶している。

 内閣が提出する法案は官僚主導の法案であり、制度を維持していくための改正などであるが、議員立法は民意を反映させた法案が多いのだろう(詳細は内容を調べてみないと分からないのだが)。
 民主党が政策を一元化するのも、内閣提出立法の効率を狙った方がよいだろうが、政府がキチンと民意を吸い上げていることが前提になる。政府が、官僚側に偏り国民の民意をくみ取れなくなった時には、本来の議員立法が威力を発揮することになる。

要は、民主党政権が「国民のための目線」を持っているかどうかによる。

原則禁止なので、特例も残されているのだろうが、民主党の議員立法原則禁止は、憲法に反する処置である。

国のダム事業の見直しで胆沢ダム(岩手県)は対象外か




本体工事未着工のダムは事業を進めないという事から、28のダムが事実上凍結になるという。42年前に工事に着手された八ッ場ダム、川辺川ダムも本体工事には未着工のため、当然対象事業に入る。
 計画段階のダムは当然としても、既に執行額が八ッ場ダムは約70%、川辺川ダムが約80%であるから、反対派は「当然」としても、地元は意見が割れるだろう(勿論この執行には問題があるが)。

 八ッ場ダムの工事現場に行くと、ダム本体工事に付随する仮排水トンネルは完成している。吾妻渓谷の景勝地に呑口構築物が忽然と姿を見せている。付け替え県道、国道、JR吾妻線の為に吾妻川両岸の急峻な山を削り取られて工事が進んでいる。このまま中止すると、この巨大な環境破壊はどうなるのかと心配になるが、付け替え国道、JRは完成させるという話もあるらしい。川原湯温泉地意外に住民は、それを望んでいる向きもあるらしい。

 それでも、旅館や土産物店の廃業で閑散としている温泉地、設備更新も出来ないで老朽化した温泉旅館をどうやって再生していくか。生活支援と言っても難題だ。

 更に用地買収でもJRは67%、国道は85%で買収は残っている。反対派はまだどんなに費用がかかるか分からない。「八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会」は、必要性、効果がないのに巨額の費用がかかる。建設費や関連事業で約6000億円、起債分の利息を加えると国民の負担は9000億円近くなると試算して建設に反対している。

 事業費と貯水量から貯水量万トンあたりの事業費用を計算すると、八ッ場ダムは0.428億円/貯水量万トン、徳山ダム0.053,大滝ダム0.414,川辺川ダム0.199,胆沢ダム0.171で、温泉地の移転、移転住居の多さから八ッ場ダムは、費用のかさむ公共事業なっている。次ぎの大滝ダム(奈良県川上村)は、専門家の地滑りの危険を無視して進め、試験冠水で実際に地滑りが発生したダムである。

 八ッ場ダムの現場の地層は非常に脆く、完成後は地滑りの危険がある。

 ところで、岩手県の胆沢ダムはどうなのか。あの小沢さんの公設第一秘書が政治資金規正法違反で起訴されたが、小沢さんに献金したために、このダムが受注出来たと西松建設の元社長が証言しており、あっせん収賄の疑いもある公共事業なのだ。

 胆沢ダムは、洪水調整、灌漑用水確保、水道水源、19200kWの発電が目的で、平成21年完成を目指す。事業費2440億円、貯水量14300万トンの規模だ。既に事業費の66%が執行されている。

 小沢さんの地元であり、このダムの見直しはどうなのか。民主党は手を出さないのではないかと穿って見る向きもあるだろう。

 工事の現況を胆沢ダム工事事務所のHPで見ると、ロックヒルダムで既に平成15年1月に本体工事に入っている。提体盛立は平成16年に着手し、1350万m3の提体盛立のうち約80%の1000万m3が終わっている(平成20年10月)。移転家屋は79戸で既に完了している。

 本体工事は既に着工済みで、凍結や見直しの対象にならないようだ。

 地域住民を巻き込んでの数十年かかる公共事業は、一旦決まると中止しにくい。役人は一旦決まったモノを中止することは御法度なのだ。工事を推進するには、地域住民とのつながりが必要だ。難しい要求も聞かなければならない。便宜を図ろうとすれば税金を使うことになる。今、八ッ場ダムに関連していろんな事が言われている。

 公共事業の進め方、しっかりした基準を作成し常に見直しをし、適正な運用が出来るようにして欲しいモノだ。

2009年10月9日金曜日

世界遺産登録をめざす富岡製糸場の「木骨レンガ積み」は、とにかく美しい







今から137年前の明治5年、殖産興業を掲げた政府は、養蚕が盛んで、製糸に必要な水が確保でき、燃料が近くで取れ広い敷地も確保できる条件に合ったこの群馬県富岡市に、フランス人の指導で官営富岡製糸場(器械製紙工場)を建設した。
 全国から若い女性が技術伝習生として集められ、技術習得後はそれぞれの地元で技術指導者として活躍したそうだ。
 この富岡製糸場も民間企業に払い出され、最後は片倉工業が昭和62年に操業を停止するまで115年間活躍した。
 そして今、近代工業発祥の地として世界遺産暫定リストに記載され、登録に向けた作業が今年始まった。施設はこの富岡製糸場はじめ日本全国から繭を集める為の碓氷峠鉄道施設、全国標準の養蚕法を創造した高山社発祥の地、冷凍施設としての荒船風穴など10施設が絹産業遺産群となっている。

 見学者は平日でも1日300人、休日になると1000人にもなり、年間37万人が見学に訪れている。ボランテイアによるガイドツアーも1日6回実施されている。

 10月4日から11月3日までの一ヶ月間、群馬県とセブンーイレブンが地域活性化のため応援フェアー実施中だ。

 私も建物に興味があって、今日で8回目の見学だ。最近有料になり1人500円見学量がかかる。

 何よりも興味を引くのは、正面に見える東繭倉庫だ。1階は検量所、作業所で、2階が繭の貯蔵に使われていた。構造は「木骨レンガ造り」で木の骨組みと西洋レンガ積み技法だ。
すべて近くで入手できる材料を使っている。

 骨組みに使われた木は、妙義山の杉が使われた。2~300年もので、真ん中の赤身をつかっているから水を吸い上げる導管もなく固くしまっている。今も木の部分はペンキの塗り替えだけで、交換したことはないらしい。鉄は錆びるが、木はそんなことはない。

 漆喰は、近くの青倉で取れる。今でも石灰を生産している。

 レンガも近くで焼いたという。埼玉県の深谷から瓦職人を連れてきて、技術を教えレンガを初めて作ったのだそうだ。あの渋沢栄一も一役買ったらしい。レンガ積みも壊れている箇所はみうけられない。

鳩山政権はマニフェストで早晩行き詰まる危険


鳩山政権は、ここに来てマニフェストとの整合性に苦悩している。今後、臨時国会が始まり国会での審議が始まると、早晩行き詰まる可能性も出てきた。早い時期に正念場を迎えるだろう。

 沖縄の在日米軍基地問題では、県外または国外への見直しが掲げられていたが、時間というファクターで変化する可能性もあると県内移転も容認するような考えを表明した。すぐさま「3党協定に反する」と社民党の福島さんが発言したが、「基本的には3党協定をわきまえつつ、時間軸でどうしようかと言うことだ」と弁解した。

 マニフェストとの整合性は別にして、現実論での処理が必要なのだ。

 民主党の各閣僚は、政策論になると、「マニフェストに書いてある」とか「マニフェスト通り」或いは「マニフェストで国民の信を得ている」などと政策根拠をマニフェストに求め、新たな説明を回避している傾向にある。

 しかし、マニフェストに書いてあるでは通用しない臨時国会での審議が始まれば、どの様な論戦を繰り広げるのか。

 民主党政権は標榜するムダの排除、予算の根本的な見直しは国民皆が注目している。内需拡大政策の一つになっている子育手当、所得制限の話も持ち上がっているが、まだ統一されていない。財源だって確保されていない。税制改革では暫定税率廃止問題、無駄な公共事業中止でやり玉に挙がっている八ッ場ダム、川辺川ダム中止問題では、NTTの再編・分割、郵政民営化見直し、亀井さんのモラトリアム発言で一挙に注目されてきた貸し渋り・貸しは餓死防止法案など議論が尽きない案件は一杯だ。

 また、これらの政策を推進する国家戦略室(局)や行政刷新会議などの整備が遅れている。法整備が必要なモノもあるらしい。おまけに役割分担が曖昧であれば、答弁する所管は誰なのか。国会審議が始まると、野党はそこを突いて来るだろう。組織論でグラグラしていてはガバナンスの欠如にもなる。
 民主党政権に不安を覚えざるをえない。早晩躓く気がする。今の自民党に政権担当の力はないから、政権交代はないとしても政局の混乱は続くだろう。迷惑するのは国民だ

2009年10月8日木曜日

役員を組合出身者で固めた小沢民主党を支持できるか


民主党の運営を任された小沢さんが、やっと役員人事を発表した。政府に入れなかった民主党議員にとっては、やきもきしながら待っていたのだろう。しかし、蓋を開けて見ると、組合出身者を重用した、来年の参議院選対策だった。

 恐らく支持母体である組合員の支持を得て、参議院で過半数を確保する小沢戦術なのだろう。

 政府は中堅の論客でしめて政策を推進し、党は両院で過半数を確保して安定政権を目指すのだろうが、何やら政府は鳩山、菅、岡田さんを軸とする民主党、党は小沢、石井さんの自民党と輿石さんはじめとする組合出身の旧社会党の形態を露わにしてきた。

 しかし、こんな党で今後支持を得続けることが出来るのだろうか。

 今回の民主党の政権奪取は、小沢さんの選挙戦術で勝ったと言われているが、きっかけは野党時代の長妻さんの年金問題の掘り起こしで自民党政権での不正を暴いたことであったし、その後に続く自民党政権への不信が政権交代の機運を作っていった。

 今回の衆院選では、多くの無党派層も民主党支持に移ったのだろうが、組合組織に属する人がどの程度貢献しているのか分からない。しかし、こんな党組織で、また無党派層の支持を得て、議席を確保できるかどうか。

 民主党内でも不満が噴出しそうだという。

 民主党では、政策は政府が推進し、法案立案などは幹事長室がやるという。政府に入れず、党役員にもなれなかった者は「何をすればいいんだ」と言うことになる。しかし、それはある程度中堅の実力(?)のある人の言い分なのだ。

 多くの議員は、各委員会に所属し、法案や制度の審議をするのだから、しっかり勉強して「国民のため」の政治をやってくれればよいのだ。

 民主党がぶち上げた政策、政策を推進する組織、党運営で今軋みが出てきている。これから臨時国会が開かれると、自民党からの追求で、あちこちで不整合な面が露呈し、政権を委ねることに不安が出てくることだろう。

 福田政権の時、自民党との連立構想が民主党内で拒否された時、当時の小沢代表が「今の民主党に政権を担当する能力はない」と言い切った事が、今回証明されるのだろうか。

 鳩山さんも政府は自分、党は小沢さんの役割分担を明白にするのも良いが、それだけでは、国民の支持は継続しない。

2009年10月4日日曜日

国会の各種委員会も自由取材にするべきだ



今、各省の記者クラブを廃止し、ジャーナリストが自由に取材できる制度へ持って聞こうとしているが、既存記者クラブの抵抗で民主党は約束通りに実施できるか不透明である。


 そんななかで外務省、金融庁が実現した。今のところ大臣の思い入れが強かったところで実現できているようだ。



 いままでの官庁とメデイアのなれ合いでの会見、そしてそのままをニュースとして垂れ流すのが良いとは思わない。官僚に情報操作されている危険もある。でもこれを他のジャーナリストにも解放して、どうなるのか。



 会見の内容、質疑を元に、その裏をとりニュースとして報道する事になるのだろう。大手メデイアの記者は、他のメデイアとの競争になり、プロとして存在感を出すためには相当の努力が必要になるのは確かだ。



 登録すれば、誰でも参加できる制度に賛成である。



 更に言えば、国会の委員会審議も自由取材出来るようにして欲しい。



 各政策、法案審議がどのように議論されているか、議論の過程で法案がどのように変化(良い方向か、悪い方向か)しているのかが重要だと思う。



 テレビによる予算委員会の中継やニュースを見ると、野党であった民主党の委員はフリップまで用意して論戦を挑んでいるが、閣僚の答弁は官僚の作成したペーパーを読んでいるだけのことであるにもかわらず、政治は閣僚答弁の通りに進んでいる。



 国会審議がどうなっているのか、詳しく分からないために失敗した例が、郵政民営化だ。04年の郵政民営化の是非を問う総選挙で落選した城内実さん(当時は委員の一人、委員会採択の前に委員を交代させられた。今回の選挙では無所属で帰り咲いた)の「内容を知っているだけに、それでも私は反対する」といった言葉は今も忘れない。



 一度国会の委員会を見てみようと思ったが手続きが面倒くさい。傍聴できるが、「委員長などの許可が必要です。委員長などの許可は本院議員の紹介により受けてください」と案内されている。懇意の国会議員はいないし、いちいち許可を受けるなど面倒くさくて出来ない。



 我々国民は主権者なのだ、国会のHP等で登録すれば自由取材できるようにして欲しい。何故、重要法案の委員会採決は乱闘になるのか。そこには制度的に無理があるからだ。



 そんな時、朝日新聞(2009.10.3)の「メデイアも新しい発想で」という星編集委員の記事が目にとまった。



 自民党の予算委員長したこともある逢沢一郎さんが「委員長席から討論を聞いていると、民主党員は良く準備していて、追求は鋭かった。我が党の閣僚らの答弁は通り一遍で、明らかに負けていた」と語ったという。「あの討論で自民党はすでに敗北していた」というのだ。



 星さんは、「首相や閣僚の答弁をニュースとして扱っているが、野党の追及の中身は余り大きく報じなかった」と反省し、メデイアはどうすべきか。「政府側の答弁を追っているだけでは済まない。野党追求の中身と閣僚の答弁を公正に判定し、かみ砕いて解説、論争を紹介する必要があると説いている。



 特権階級みたいなプロのジャーナリストよりも、生活感のある素人のジャーナリストの方が、見方は鋭いかも知れない。



 各省庁、官邸の記者会見を広く解放するのも良いが、国会を広く開放して欲しい。それこそ、民主主義の第一歩である。

2009年10月3日土曜日

結局、わが国では市民メデイアは育たないのか


3年前だったか、市民メデイアとしては、遅れて発刊したオーマイニュースは「市民はみんな記者になれる」、「劇場型から運動会型へ」を標榜し、登録記者5000人、年間1億ページビューを目指したが、定年を迎えた団塊世代の取り込みにも失敗し、最後はマネーに特化したもの1年前に廃刊した。

 我が国では、インターネット新聞よりも、ブログの普及が早かったため、オーマイニュースのようなネット新聞が大統領選にも影響を与えた韓国よりも事情は違ったようだ。

 登録市民記者も5000人弱で伸びない。オーマイニュース、JanJan両方に登録している記者がほとんどではないかと思うのだが、どうだろう。

 一方、今まだ残っているJanJanであるが、最近おかしくなってきた。ポイント制の廃止、編集長賞の図書カード廃止(最後はメモ帳が送られてきた)、編集長賞の廃止などは明らかに運営経費の削減であるが、紙面にも元気さがなくなった。

 一時の紙面作りは、オーマイニュースに比べてJanJanの方が、長けていたと思っていたが、今の紙面は感心しない。市民記者から投稿された記事を、編集担当者の知識の範囲内で、正式に記載するか、編集者が関与しない記事として載せるかの仕分けをしているだけのように思える。

 これは致命的な事である。紙面作りが面白くなければ、記事の投稿も減るだろうし、閲覧者も減る結果になるだろう。そうでなくても広告収入ではやっていけず、運営費のほとんどをスポンサーの男気に頼っている経営環境にあっては追い打ちをかける。

 今、大手メデイアは、どこも広告収入の大幅減少で経営はピンチだ。電通の「2008年日本の広告」によると、新聞、雑誌、テレビ、ラジオの広告収入は前年比7.6%減の3兆2995億円になったという。特に新聞の落ち込みは大きく8276億円で、ネットの6983億円が追い上げている。

 米国では脱ペーパー化が本気で検討され、ニューヨーク・タイムス紙は新聞とWebサイトの一体化を進めているし、ビル・ゲイツさんは、「5年以内にすべての新聞はオンライン化する」と2007年8月に予測している。

 我が国でも、最近日本経済新聞が赤字化したと言うが、毎日新聞、朝日新聞も経営難が報じられている。当然に紙面メデイアから撤退し、Webニュースサイトに移行したらどうかというニュースを目にすることがある。

 高給取りの大手新聞記者が、Webニュースを担当すると採算が取れない。そこで記者の給料を下げると、優秀な記者は逃げていく。当然に紙面の質は落ちる。その結果閲覧は減り、広告収入も減る結果、経営難になる。

 有料にしたらどうかという考えもあるそうだが、ネット・コンテンツは無料という文化がある。有料で見てくれる閲覧者がどれほど入るのか。「60万人の会員数が確保できれば何とかなるのでは」との観測もあるらしいが、とてもじゃないが甘いのでは。

 更に問題なのは、全社が有料化することであり、1社でも残っていると有料化出来ない。
公取法に抵触する心配もある。

 その問題は別として、全国紙での投書は、定かではないが月に3万件ぐらいと思うが、そのほとんどの投稿が棄てられている。だとすると、市民メデイアに参加したらと思うが、そうもいかないのは、メデイアのブランド力にある。

 私も、一度朝日新聞の声欄に掲載されたことがある。投稿し4日ぐらい後に女性記者から電話があり、「掲載することになったが、文章が長いので、編集しなければならない。記事のポイントは何か」と聞いてきた。新聞社の方で編集し直した記事をFaxしてもらって、最終確認し、「近いうちに掲載される」との連絡を受けた。

 編集担当者も掲載する記事には、それなりの責任を持たなくてはならず、一生懸命であった。

 オーマイニュースだって、記事の内容についてメールで何度も確認したことがある。データはビジュアルにしてもらった事もあるし、編集後の記事をメールで確認しあったこともある。記事の内容について関連するHPでの確認もしていたようだ。

 しかし、こういったことは編集担当者の資質の問題であることは勿論のこと、運営上、適正な人員配置の問題でもある。

 では、市民メデイア的なモノをどう残すか。

 大手メデイアのWeb化に乗って、そのニュース・サイトに投書欄を併設し、読者の投稿を掲載することだ。多数の投稿もドンドン更新して掲載し捌くことだ。ただ、「そのメデイアに相応しい記事かどうか」の判断で、掲載されない場合があることだが、それは今の市民メデイアでも変わらないのではないかと思う。

問題なのは「公平性」である。意見が先鋭化するし、最近は民主党よりが多い。確かにそうだ。小沢さんの政治資金規正法違反事件でも、小沢さんを擁護する記事が多かったし、八ッ場ダム中止問題では、民主党よりの記事が多い。そこは、Web運営者の裁量になるだろう。

写真説明
 左側JanJan 「市民は誰でも記者になれる」はやっぱり幻想か
右側オーマイニュース 「じいちゃん 雨はどうして降るの」 が掲載されている。

2009年10月2日金曜日

進化する東京丸の内:ビジネス、レストラン、ファッションが共存する街







東京駅前の丸の内街が大きく変わってきた。
 私が、東京へ出てきた頃のこの辺りは、10~12階建で四角張った鉄筋コンクリート造りのビルが並んでいた。ビルの入り口には○○ビルジデイングと表示されていた(デイは確かチに濁点が付いていた)。
 1階には、ファッションや時計、バッグなどのブランド店が入っていたが、ほとんどが日本を代表する企業のオフィスで、行き交う人はグレーや濃紺のスーツを着たビジネスマンや事務服に身を包んでいたOLだ。一時は、そのユニフォームが話題になったこともある。

 しおかし、丸の内街の再構築計画で、辺りは一変してきた。丸ビル、新丸ビルは斬新なデザインの超高層ビルに生まれ変った。東京駅に建ってもビルが高層化したために空が狭くなった。昔の様な広々感はなくなった。

 何よりも目を引くのは、丸の内仲通りに面し、今年9月にオープンしたブリックスクウェアー、一号館広場だ。

 ショップ、レストラン、カフェの入ったブリックスクウェアーや高層ビルの谷間に緑の木々、ベンチ、遊歩道のようなものも設けられた庭園が飛び込んでくる。一瞬「安らぎ」を感じる。オープンカフェもあり、あの表参道のオープンカフェと同じ感じだ。

 私が行ったときは午前中で、カメラをかざした多数の見学者、時間待ちのビジネスマン、年配のご夫婦、取材の打ち合わせ中のプレス関係の2人などで賑わっていた。

 驚いたのは、入り口付近に位置する洋菓子店の「PASStheBATON」だ。長蛇の列が車道付近までつながっている。
 良く店内を見ると、店員6人ほどの狭い店内に、お客が5~6人ほどが買い物をしている。店内が混乱するので入店規制しているように見える。入り口には「クロワッサンは1人6個まで」の表示。疑ってかかれば、長蛇の列を作ることで人気度を主張しているようにも思える。

 兎に角、「にぎわいと安らぎ」を目指した街づくりを追求しているように思える。やり方によっては、1人でも一日ゆっくり時間がつぶせる。そんな街になったのだ。

 昔は「アメリカに追いつけ、追い越せ」。丸の内は、その先頭に立って走ってきた。そして今、ビジネスの成長路線から、成熟した経済へとシフトしている。「今、丸の内から目を離せない」。

2009年10月1日木曜日

官から民への子育て 保育園、幼稚園はこれでよいのか




東京で住処にしている近くの区立幼稚園の解体工事が始まった。娘に「どうしたんだろう」と聞くと、「今、共稼ぎの親が多くなって、遅くまで子供を見てくれる保育園の方の需要が増えている。やっていけなくなったのでは」という。
 工事現場に行ってみると、旧幼稚園舎改修工事と表示されている。大田区の出張所に確かめると、大田区立の幼稚園は今年3月31日で廃園になった。この施設は小学校1~3年生の学童保育の施設に変わるという。小学校の授業が終わって、午後5~6時頃まで子供を預けることが出来るれば、親の就業を支援できることになる。

 小学校に上がった保育園児と幼稚園児を比べると、幼稚園児の方が良くできるらしい。長い時間机に座ることが出来るらしい。幼稚園に入る年齢になると、親はどうしようか迷うようだが、仕事のことを考えると、遅くまで見てくれる保育園の方選ぶことになる。

 東京都大田区のHPで、「区立幼稚園廃園のお知らせ」を見ることが出来る。区立は3月31日で閉園とある。私立へ変わるとなると費用も上がるのだろう。入園料補助金や保育料補助金の便宜が与えられるという。私立の幼稚園があるので、そちらで支障はないと言うらしい。

 今、待機児童は25,000人、東京都でも5000人を越えている(10年後の東京計画)。保育サービスの充実、定員の確保など待機児童を減らすのは各自治体の緊急課題だ。

 その一方で、多様なニーズに応え、保育サービスの充実に向けて区立保育園の民営化も進められている。区立では人件費が高く、コストもかかるので、民営化することによってコストを削減しようと言うのだ。経営形態には、区から民間へ土地/建物の貸与による民立民営(私立)と運営を委託する区立民営がある。現在大田区では、前者が9カ所、後者が4カ所になっているが、27年までに22の保育園を民営化するらしい。

 近くに、区立北嶺町保育園があった。駅からチョット離れているが、運動場も完備され、良い保育園だと思っていたが、募集では定員に達せずいつも2次募集する保育園だった。娘の通勤では一駅余分に乗らなければならないので、送り迎えに不便があり、第2志望にした保育園だが、民立民営化された。

 経営状態がどうかとか、保護者の見方はどうなのか、知るよしもない。

 一般的に言えることは、事業にかかる固定費の人件費の占める割合が高い。民営化すると、どうしても若い保育士さんを派遣で採用したりする。時給では1000円未満だろう。ベテラン保育士さんは、辞めていく。その結果、保育の質の低下は避けられない。

 サービスの充実面では、2時間以上の延長保育、定員の拡大、休日保育、一時保育などが上げられるが、保育の質もサービスのうちと考えると問題がありそうだ。

 先日の新聞報道によると、各地の自治体が公立保育園民営化を延期または凍結したという。その理由は、「保育の質が下がる」と保護者が反対したり、民営化での引受先が見つからない事にあるらしい。

 この記事の中で、専門家が「民営化は限界に達しているのではないか。社会全体で子供を育てるという観点で、保育政策を抜本から見直すべきだ」と提言している。

 「官から民へ。民でできることは民で」が一時叫ばれた。市場主義から考えると、経済を活性化させ、自由競争でサービスは良くなると訴えたかったのだろうが、肝心な保育士さんの待遇の悪化、それに伴う本来のサービスである「保育の質」も下げることになるのでは、何のための民営化か分からない。

 ホーム・ページを見ると、東京都は待機児童解消に向けいろんな政策を進めている。
しかし、これらは重要な政策であるが、その前に、今までの民営化の総括をして欲しい。経営が軌道に乗っているのか、サービスの質はどうなったのか、従業員の待遇はどうか、保護者の満足度はどうか。情報公開が必要だ。都民、国民のチェックすることはたくさんある。

 いろんな話を聞くにつけ、しっかりした検証をしての政策の推進が望ましいと思うのだが・・。