2010年1月5日火曜日

地下500mで、約2億年前の岩石との出会い




群馬県下仁田町は、中央構造線が東に延びる大断層が露出し、町中を断層が走っている。地質学的にも面白い場所で、今年、「ジオパーク下仁田」の申請を進めている。そこから車で30分の上野村で地下500mに約2億年前の岩石に触れることが出来るというので、元旦に見学した。

 上信越道下仁田ICから約40分、南牧―上野線を上野村に向かう。湯の沢トンネルを越え、しばらく走ると上野村ふれあい館が左手に見える。ここに東京電力神流川発電所の見学ツアー・ステーションがある。

 あの日航機事故のあった御巣鷹山の尾根沿いの山の中に東京電力が、地下揚水式発電所を建設し、上部ダム(南相木ダム)から約1400mにわたり直径2~8mの導水管を通し、下部ダム(上野ダム)に落差約650mで水を流し途中でポンプ水車を回し、発電する。

 今は、発電機1基で47万kWを発電して15万世帯分の電気を供給できるが、2基目を工事中で、最終的には6号機まで設置し、最大出力282万kWの規模になるという。

 見学ツアー・ステーションで、ビデオ撮影は禁止、所内の写真も個人で記念写真にするのはよいがインターネットで流すのは禁止、手洗いは緊急時以外はダメなので、すましておくようになどの注意事項を確認、見学バスで発電所に向かった。

 発電所に入るトンネルの前には、シャッターが閉まっていて、富岡市にある管理事務所で遠隔操作で開閉される。安全のためと野生動物が入ってくるのを防止するためらしい。

 トンネル内を約2km程走るが、道路幅、傾斜は設備類を搬入する為の大型トレーラーが走行できる設計になっている。前進(まえ)するときはクラクションを2回、後進(うしろ)するときは、3回ならして周囲に知らせるルールがあるという。

 バスを降り、シャッターが開くと、薄暗い広大な空間が目に入った。高さ52m、幅33mの大きな空洞が2カ所、地下500mになる。薄暗く、スポット照明が007の映画のシーンに格好の地下空間に見える。

 上部からトンネルを堀、岩石を爆破しながら下へ掘り下げていく。山体の圧力対策ではPSアンカーを打ち込んでいるとビデオが放映されていた。
 そして、念願の約2億年前の岩石層に触ることが出来る。直径30cm程ののぞき窓が3カ所設けられ、写真を撮ったり、手で触ることが出来る。ここの地質は砂岩の主体岩と礫岩、泥岩、玄武岩の混在岩から成り立っているようだ。砂岩は古生代二畳紀~中生代三畳紀(約3~2億年前)の地層だ。ボーリング・コアも展示され、上下にどうなっているかが分かる。この時期は、ペルム紀とかジュラ紀と言われ、まだ日本列島の形は出来ていない頃だ。

 いつも巨大な土木工事には驚かされる。この工事現場でも、長さ1000m、勾配48度、内径8mの導水管トンネルをTBM(トンネルボーリングマシン)で下方から一気に掘り上げていったと言うが、勿論国内初だ。

 昼間、電気の必要なときは、上部ダムから水を落とし発電し、電気需要の少ない夜間に下部ダムから上部ダムへ揚水するようになっている。これを電気を貯めると説明されていた。

 この揚水式発電は、3秒という短時間で立ち上げ出来ることが特徴で、電気のピーク需要に対応しているという。

 日本列島の誕生と日本の土木技術のレベルの高さとともに、エネルギー確保の大変さと省エネの必要性を実感できた元日だった。
写真(左) 見学ツアー・バスで、トンネル入り口へ 赤と白の格子戸のシャッターが下りている。安全確保と野生動物の侵入を防止するためらしい。遠隔で操作されている。
写真(右) 地下500mにある、約2億年前の岩石層ののぞき窓から砂岩を触ることができる
所内での写真は、個人で記念に使うことはできるが、ネットで流すことは禁止されている。
この写真は、パンフレット「神流川ジオイーサイト」から

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