2010年6月12日土曜日

日本経済の実感できる回復は何時なのか


政府は月例経済報告で「回復」を盛り込むという。何やらこれも選挙対策の気がする。実感がわかないのだ。所信表明では医療、介護、環境などの新成長分野に重点を置くと言うが、この分野がそうなのかと疑いたくなる。日銀も成長支援に融資すると言うが、資金の貸し手、借り手の心理は好転しない。

成長路線に乗り、雇用を創出できれば税収も増え、あらゆる面で明るい方向になるのだが菅政権を信ずればよいのか。「信じてくれ」ということは、裏返せば不信感を持たれていることだ。

環境分野だって技術力はあるが、今の技術で成長するとは思えない。新技術の開発、新事業の創出がポイントになる。医療分野では医師不足、看護師不足、公立病院の閉鎖、診療科目の減少など社会問題化しているし、介護だって施設不足、老老介護は悲惨な状態だ。私の年以上になると、年賀状が途絶えたと思ったら介護で大変だったという。

施設運営も大変で、人件費を節約するために、当直は定年退職者をあてたり、毎日の施設の送迎を見ると運転手は年配者だ。若い職員だって勤務は厳しい。腰痛は当たり前のようだ。この分野も職員の待遇改善が必要だ。とてもじゃないが、経済成長の原動力になる分野ではない。

観光立国もテーマになっている。押上にスカイ・ツリーを見に行ったが、ここでも外人の観光客が見受けられた。秋葉原の電気街は中国、韓国人の買い物客で賑わっている。中国語、韓国語が併記されており、ある建物の中では、ほとんどが外国人の買い物客だ。買い物が主の観光客のようだ。

雇用の創出は、成長戦略の主要な課題だ。若者、女性、高齢者の就業はなかなか大変なようだ。政府は景気は回復していると言うが、では何故、3月の統計で生活保護世帯が134万世帯、人数で187万人にも増えたのだろう。 

何故、先進国中、日本だけが経済の回復が遅れているのか。日本の税負担は他国に比べて低いから増税すればいいのか。法人税は40%都高いが、これを20%程度に落とせば経営者の投資意欲が湧いてくるのか。その場合の新規事業は何なのか。

いろんな人がいろんな提案をするが、具体策で確証があるのか。

今の経済は、需要が少なく作っても売れない。経営者は設備を休止し、リストラされ雇用減で失業と低収入化が進み、当然税収は減る。メイドイン東南アジアの低価格商品しか売れず、国産材料を使っての製品は高価で販売に苦労している。当然国内の生産者は潤わない。

大手スーパーは、低価格路線を進めているが、老舗百貨店では高価格商品も売れて来だしたという。節約、低価格商品に飽きてきたのか。粗大ゴミの中に安価な家具が目立ってきた。

デフレ対策について、昔買った経済書を開いてみたが、インフレに関する記述は多いが、デフレついては記述がない。今は、書店でもデフレに関する本が並んでいるが、昔は余り関心がなかったようだ。

たまたま、「ケインズ説得論集」が目にとまったので購入し読んでみた。

ケインズは、「1930年の大不況」で、多数の労働者が失業し、重要な産業に事業を拡大出来るほどの利益を確保できている処はない。生産者の多くにとってコストを回収できない価格になっているという。理由を少ない紙面で説明することは出来ないとも言う。

このような不況の時に、生産を減らすか、賃金を引き下げ総コストを削減していけば、かならず均衡を回復できるとみるのは幻想である。賃金カットは勤労者の購買力が低下する。勤労者は商品を買う顧客でもあり、企業の収入がほぼ同額だけ減収すると説いている。

対策は、先進国の中央銀行が協調して国債長期債市場の信認を回復するために大胆な政策を採ることだという。

リーマンショック以来、景気回復に向け各国が協力して当たろうとしているが、国毎にいろいろ事情があるようだ。欧米の先進国に比べ、日本の回復は遅れている。政府は日銀に下駄を預けた格好であるが、日銀の動きにはもどかしさを感じている。

資金の貸し手、借り手の心理的な要因も大きいらしい。

従って穏やかな回復が、何時起こっても不思議ではないとも言えるという。今は、設備投資を行なう市場が低迷している為に、新規事業が不足している。新成長戦略で、新規事業が見つかれば、大きく回復するチャンスはある。
写真:菅首相の所信表明を報じる読売新聞と「ケインズ説得論集」

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