2011年8月7日日曜日

市場予想、格付けが、世界経済を揺さぶり続ける







国民が職を得て、消費が上向けば経済は回復軌道に乗ったと予測できる。多くの投資家がエコノミストが発する予想、政府が発表する雇用統計、消費者物価指数など経済指標に注目するのは当然だが、先行き不透明感が高まっている今、もたらされる数値に株価、為替が大きく動揺している。

そして、今回のスタンダード&プアーズによる米国債の初めての「格下げ」は、すでに市場は織り込み済みと言う見方もあるが、市場にどう影響与えるか予想が付かない。

経済指標、統計値は勿論であるが、株価、為替が敏感に反応する「市場予想」って何なんだ。

今回の世界同時株安の要因は、米国の財政再建に絡んだ債務上限引上げと赤字財政削減問題での議会の混乱、欧州中央銀行のトルシェ総裁が「先行き不透明感の高いのは、ユーロ圏だけではない」と世界経済の先行き不安に言及したからだ。投資家は当然に、米、欧の経済の異常に注目することになった。

それに加えて、市場では米の資産運用会社の社長が「7月の雇用統計はあまり期待できない(日経 8/5夕刊)」と、8月、9月になるまで大きな改善はないと発言した。

その注目の米・雇用統計は、失業率は市場予測は9.2%だったが、9.1%で0.1%の改善だ。雇用も市場予測は8万5000人増だったが実際は11万7000人増で市場予測を上回った。

当然、株価、為替に+効果が期待できたが、如何にせんここ数日の株価下落、ドル安で打ち消された感じだ。

市場予想は、金融機関、エコノミストの予想。

SankeiBrizによると、スペインの4~6月GDPは市場予想を下回った。スペイン銀行もGDPの減速を予測していた。イタリアは市場予想と一致したという。コレは、エコノミスト20人を対称にした調査で中央値と一致したのだ。

Yahooファイナンスによると、豪州の4~6月期のCPIは、市場予想の前年同期比で+3.4%を上回る+3.6%になり、外国為替市場では豪ドルが急騰したそうだ。
一方、米国のGDPは1.3%増で、市場予想を大きく下回った。

世界経済は、市場予想、統計値、経済指標値で大きく動いている。政府が発表する統計値等は、それにより政府が経済運営の責任を追及されるので責任ははっきりしているが、市場予想の信頼性の是非、その責任を誰に問うのか。

エコノミストに騙されないようにするにはどうすればいいのか。あるケインズの高弟が、「どうして経済学を学ぶのか」と聞かれ、「経済学者に騙されないためだ」と答えた事を経済書で読んだ事がある。一喜一憂するのも疲れる話だ。

そして、今回のスタンダード&プアーズの米国債格下げだ。米国債をAAAからAA+に下げると発表した。

米・政府も黙っていない。資料を精査したら2兆ドルもの債務計上ミスがあると反論したが、格下げの根拠は、今の財政赤字削減では財政再建は不十分と見ているところにあるようだ。

この初めての格下げが、世界経済に与える影響は8日からの市場の反応を見るしかないが、他の格付け会社のムーデイーズ、フィッチは当面変更しないと言う。

格付け会社により判断基準が違うようだが、スタンダード&プアーズはその判断の責任をどう感じているのか。格付け会社は、国や企業が借金を約束通り偏在してくれるかどうかを独自の基準で判断すると言うが、今の経済情勢の下での赤字削減の影響、軍事費削減、医療費削減などが社会に与える影響、世界経済への影響をどう考えているのか。

あのリーマンショックの引き金になったサブプライムローンに高い格付けをしていたのも格付け会社だ。決定にはそれなりの責任がついてくるモノだ。

折しも、悲観的レポートで市場を動揺させたと言うことで、イタリア検察が格付け会社を捜索したという。S&Pとムーデイーズが「政党でない悲観的レポートで株式市場が揺さぶられ他可能性がある」として消費者団体が検察に告発したのだ(asahi.com)。

格付け会社の社会的責任を規制などを含めて、はっきりさせる必要がある。

しかし、今の経済は難しい局面が続く。「人々が消費し、雇用を増す自立的循環が戻るには時間がかかる」と言ったのはオバマ大統領だ。

写真左:格付け会社のスタンダード&プアーズ 2011.8.6 MSN産経ニュース

写真右:米国債の格下げ 2011.8.6 読売新聞夕刊

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