2011年5月7日土曜日

菅総理の浜岡原発運転停止要請は英断か、パフォーマンスか





















中部電力・浜岡原発の東海地震時の危険性は、長く指摘されてきたコトでもあり、「実際に存在するので仕方ないが、決して適地とは思えない」というのが一般的見方だったが、ついに菅総理は「運転停止要請」を出した。英断なのか、一連のパフォーマンスなのか。

2日前に海江田経済産業相が、浜岡原発を視察し、「結論は急がないで、真剣に考える」と言っていたこと、国の原発政策の今後を考えると「指導力に欠ける」と批判されていた菅総理にしてみれば想像も出来ない早さの決断だった。

今回の福島第一原発による原発震災のへの対応を考えると、東海地震単独もさることながら、東海、東南海、南海地震の3連動型巨大地震、それによる津波も予測されており、更に浜岡原発による原発震災もあわせ考えると東京、名古屋、大阪の首都圏に甚大な災害をもたらし、それは東日本大震災の比ではない。

「どうする」と迫られれば人災の要素が大きい原発を止めるしかない。

菅総理は記者会見でも、M8クラスの東海地震の発生確率は30年で87%で切迫しており、置かれている特別な状況を考えて中・長期対策が完成する間、すべての原子炉を停止すするよう安心・安全を考えて決断したという。

要は、中部電力が考えている津波対策として、防波堤(12m以上)を2~3年で設置しようとしている間の期限付き運転停止要請だ。

関係者の反応はマチマチだ。テレビ報道によると、国の政策として原発に協力してきた人は、突然のコトに驚いているが、静岡県知事は「英断に敬意を表する」とコメント、住民の意見を吸い取った判断だろうが、地域は困るのではないかとの意見も見られる。原子炉が止まれば自治体に配られる補助金がなくなるためか。

浜岡原発の危険性は住民、地震専門家から強く指摘されているが、住民による運転停止請求も静岡地裁は「東海地震だけでなく、東南海、南海地震と連動した場合でも耐震安全性は確認されている」と棄却された(2007.10.26)。

不祥事も明らかになっている。浜岡原発建設でコンクリートの品質に大きく影響するアルカリ骨材のアルカリ反応試験の成績表をねつ造したと元社員が告発した(河北新報2004.8.6)。

又、最近では原発の立地にも問題が出てきた。浜岡5号機の地下300~500m下に地層の揺れを増幅させる地層があることが分かり、東海地震の強い揺れが5号機に集まる恐れが出てきた(読売新聞2010.4.1)。

中部電力も福島第一原発の事故に鑑み、2015年に6号機の着工を計画していたが、延期するという。さらに、浜岡原発津波対策として東海地震時の津波想定は8mと言うことであるが、砂丘が10~15mあり、砂丘と原子炉建家の間に2~3年かけて防波堤(12m以上)を設置、原子炉建家の屋上には災害対策用の発電機をすでに設置、そして2012年に非常用交流電源装置を20m以上の高台に設置するという。

しかし、こういった対策に効果があるのか。砂丘で10~15mの防潮を期待しているようだが、今回の東北地方太平洋沖地震での被害を見ると海岸の松林などは全壊して跡形も残っていない。新設する防波堤だって倒壊すると原子炉建家にも影響する。対策も怪しいモノだ。

菅総理はこういった対策が完成するまで、浜岡原発の全原子炉を停止せよと言うのだ。

海江田大臣の視察から時間を置かず、運転停止要請は十分に議論された結果なのか、菅総理のパフォーマンスなのか。期限付きとはいえ、相当の混乱が想定される。私自身、浜岡原発は完全に停止した方が良いと思うが派生する問題をしっかり検討すべきだ。

写真上段左:浜岡原発は東海地震想定震源域内にある特殊事情 2011.5.6NHKニュースウォッチ

写真上段右:記者会見する菅総理 2011.5.6NHKニュースウォッチ

写真下段左:天然の砂丘の津波対策になるという 2011.5.6テレビ朝日スクランブル

写真下段右:中部電力が計画している浜岡原発の津波対策 これが完成するまでの運転停止要請だ2011.5.6テレビ朝日スクランブル

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