2011年5月26日木曜日

福島第一原発事故、チャレンジャー号爆発事故 巨大技術の病根は同じ







巨大地震・津波による電源喪失で、あってはならないメルトダウンを起した福島第一原発、気温低下で材質劣化による爆発事故を起こしたスペースシャトル・チャレンジャー号、これら2つの巨大技術の「安全」を前提にした病根は同じではなかろうか。

福島第一原発は、設計当初には分らなかったかも知れないが、次々に明らかになる巨大地震、津波に対する防止対策をコスト面から遅らせ、「止める」「冷やす」「閉じこめる」ことへの多重防御が疎かになっていた。

NASAも資金確保のため、スペースシャトルは安全で完璧なモノと言うことをPRする目的もあってのことだろうか、技術者の気温低下による打ち上げ延期要請を無視して打ち上げ期日厳守を貫いた。

この2つの巨大技術の事故に言えることは、危険な技術でありながら「安全神話」が蔓延ったことである。また、そのことを誇張することにより事業や計画を推進できたことだ。

原発事故では、その原因調査・検証に「失敗学」の提唱者の畑村先生を委員長とする委員会を立ち上がるという。今まで予算委員会では「言い訳」ばかり言っている菅総理、東電と何やらデータの捏造をやっているとしか思えない政府関係者、会議での発言が気に入らなかったのか訂正させ、「危険性がゼロでない」と言うことは「ゼロと言うことだ」と解説したりして信用を失っている斑目委員長、データがはっきりしない限りメルトダウンを認めず、甘い想定での事故対応で対策が後手後手になった東電、贅沢な資金を受け取って原発推進に協力した御用学者など「原子力村」の村民を相手の調査・検証だからうまく行くはずがない。

おまけに、この委員会には何も法的権限がないのだ。政府の一私的諮問機関だとすると、復興構想委員会と同じで、何か良いことが出てくれば、使っても言い程度の委員会なのか。

一方、米国での1986年のチャレンジャー号爆発事故の原因調査委員会は参考になる。

「ファインマンさんベストエッセイ」(R・P・ファインマン 岩波書店2001.3)によると事故防止方策を大統領に勧告すべく、ロジャース国務長官を委員長に政治家、宇宙飛行士、軍人、そして1人の科学者が選ばれた。ノーベル物理学賞受賞の理論物理学者のファインマン博士が科学者で選ばれた事が、解明できるか、迷宮入りかの決め手になったという。

ファインマン博士は精力的に調査活動し、地上の技術者とも糾弾なく話し合い、原因が気温低下によるOリングの材質劣化であることを突き止めた。このことは材質の劣化が心配される気温低下にもかかわらず、期日を厳守したNASAの面子にも係わる事項で、委員会は握りつぶそうとしたが、博士は後に退かず、結局は報告書の付録として公表されることになった(この項前書より)。

果たして、我が国の調査・検証委員会に、ファインマン博士のような人材が選ばれるかどうか。注目したい。

そして、この付録となったスペースシャトル「チャレンジャー号」事故少数派調査報告では重大な事が指摘されている。

曰く、いずれにせよ非常に不幸な結果を招くことになった。そのうち最も重大な過失は、この危険な機械がいかにも通常の飛行機同様の安全性に達したかのように言って、一般市民の搭乗を奨励したことだ。・・中略・・、ここで勧告したいことは、NASAの幹部達が今後、現実にしっかり目を向け、シャトルの技術上の弱点と不完全さとを十分に理解し、積極的にそれを除去することである(この前書より)。

この事は、原発災害にも言えることだ。政府をはじめ、「原子力村」の村民達は、巨大地震・津波の可能性には目を瞑り、「安全だ、安全だ」と言って本質的には危険な原発の建設に力を入れた。「想定外」という言葉を使えば、どんな危険も回避できると思っていたのだ。

米国の宇宙開発は、新しい宇宙船構想も発表され、宇宙開発にこれからも主導権を握るようだが、原発は、これを機会に見直しの気運が高まっている。

どうなるかは国民の理解を得られるかどうかだが、ファインマンの報告にもあるように、原発の現実にしっかり魔を向け、技術上の弱点、不完全さに積極的に取り組み、除去する事が必要になる。

福島第一原発、スペースシャトル・チャレンジャー号の巨大技術の事故の病根は同じなのだ。


写真左:福島第一原発 TBSニュース23 2011.5.16


写真右:チャレンジャー号爆発 ウィキペデイア ファイルchallenjer explosion

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