2011年11月28日月曜日

人情、コミュニケーションの希薄が「フーテンの寅さん離れ」を




































「フーテンの寅離れ」は、人情、コミュニケーションが希薄になった今の社会現象ではないか。人情とコミュニケーションの楽しさを見せてくれた「男はつらいよ」のフーテンの寅さん離れが起きていると読売新聞(2011.11.24)が報じた。柴又の「寅さん記念館」を訪れる人が開館した13年前の約1/3に落ち込み、特に児童・生徒の見学者も減っているらしい。

私たちのような年配になると、子供の頃はNHKの「バス通り裏」を見ながら夕食を食べたものだ。小さな庭を真ん中に近所の人たちが群れあい、悩み事を相談したりする人情話は、コミュニケーションの大切さ、楽しさを教えてくれたものだ。しかし、今はそんな風景を見ることさえ少なくなった。

寅さんの「男はつらいよ」はテレビの放送で毎回見ることが出来た。祭りの出店で啖呵売り、旅先で美人の女性と恋に落ちるが、最後は振られてまた旅に出る。時々は帰ってきての家族との会話、騒動も面白い。パターンは毎回決まっているが、なぜか毎回新鮮さがある。

何故、寅さんの出が葛飾柴又なのか。一度行ってみたいと思い11月27日に見学した。

京成電鉄柴又駅をでると、フーテンの寅さんの像が立ち、顔は横向きで帝釈天の方を見ているのだろうか。観光客がしきりにシャッターを切っていた。

帝釈天の参道は、両側に団子、せんべい、漬物などを売る店、食堂が並んでいる。やっぱり有名なのは高木屋本舗だ。店内には予約席のテーブルがある。渥美清さんの指定席らしい。

驚いたことに、熱狂的ファンがいるようで、フーテンの寅さんスタイルの観光客を見た。確か衣装は高島屋で作っているらしいが、お客さんからの注文は断っているといっていた。結構、高い値段だったと思う。

帝釈天は天気もよく、参拝者も多い。七五三のお祝いもあるようだ。ボランテイアのガイドさんに「記念館の見学者が減っているんですか」と聞くと、「そういう心配もあるが、今日なんか結構入っていましたよ」という。

記念館への道順を聞いて向かった。確かに参拝者数に較べて記念館に向かっている人数は少ない。

大人一人500円だが、65歳以上は400円だという。

記念館の中には撮影所から移設した見慣れたセットがあり、ポスター、フィルムも見ることが出来る。

何故、柴又なのか。豊かな自然と住む人たちの暖かい心、人情味豊かなこの土地が選ばれたようだ。1作目が42年前だから、その頃はそういう風情がこの辺にはあったのだろう。

寅さんの設定も面白い。不良少年という育ち、テキ屋家業、どう見ても親泣かせな人間だが、人情味のあるところはなかなかのものだ。

第一作目はどんなものだったのか。ポスターから第一作は42年前で、奈良・京都「男はつらいよ」、第2作目が京都・続「男はつらいよ」になっている。

第一作目の一部が紹介されている。御前様の娘冬子にふられた上、くるまやの皆といいたい放題を寅さんは聞いてしまう。2階に力なくあがっていく寅さんと気まずいくるまやの面々。「お兄ちゃん 何処へ行くの」「チョット旅に出ようと思ってな。何、最初からそのつもりだった」。毎回聞く定番の会話だが、なぜか新鮮さを感じられるのが不思議だ。

ところで「寅さん離れ」だが、寅さんは歴史上の重要人物ではなく、また、実在の人物でもない。人情や社会のコミュニケーションが希薄になっていく現在、年が経つに従い「寅さん離れ」が進むのも仕方ないことではないか。

むしろ、後世に忘れられないようにしようとすること自体が無理ではないか。人情の大切さを教えるにしても「男はつらいよ」では難しすぎないか。

写真上段左:熱烈な寅さんファンを見かけた 帝釈天表参道 2011.11.27

写真上段中:表参道の店 高木屋本舗 店内には渥美清さんの予約席がある 2011.11.27

写真上段右:京成柴又駅を出ると「フーテンの寅」像が待っている 2011.11.27

写真中段:寅さん記念館に移設されたセット 2011.11.27

写真下段:第1作、第2作の「男はつらいよ」のポスター

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