2011年11月22日火曜日

消費税増税強行路線へ:財政健全化か日本の信用不安回避か

野田首相が消費税増税に向け強硬路線に転じたかに見える。長年の課題である財政再建への一歩のためか、日本の信用不安回避のために急ぐのか。

民主党政権の取り組みは右往左往の連続である。「消費税増税なし」で政権交代を戦い、鳩山政権ではそれを踏襲したが、菅政権で消費税増税論が再燃し、反対意見が多いと見るや増税論議は良いだろうと言い出した。そして財務省に押された野田政権では、国内の消費税増税論議を後回しに、APECで国際公約をし、それを御旗に強硬路線を進んでいる。

私も以前から指摘していたことだが、政府債務問題では日本もこのままでは信用不安にかかるのは間違いない。その回避のためにも急いでいるのか。

民主党政権が描く消費税増税工程は、次期通常国会で関連法案を成立させ、その後国民に信を問い、消費税上げを実施するというものだった。付帯条件に「経済環境の好転したとき」も盛られる話だった。

藤井民主党税調会長も同様のことを発言しながら、それには国会議員、公務員も痛みわけしないといけないとか、民主党が選挙に負ければ消費税上げは出来ないだろうともいっていた。

ところが、今日の新聞報道では、野田総理は関連法案で消費税増税の「実施時期も書き込む」と言い出した。第3次補正予算が国会を通り、今後は消費税増税で与野党が対立することになり、場合によっては解散・総選挙もあるかもしれない。そのとき民主党は敗北するだろうが負けても消費税増税は実施できることになるのだ。

常識で考えると、解散・総選挙で国民に信を問い、消費税増税関連法案の国会提出になるのだろうが、自公の主張を民主党はどう受け止めるのか。

その民主党でも消費税増税に一枚岩ではない。最大派閥の小沢さんが「今は消費税上げの時期ではない」といったという。政治基盤の脆弱な野田首相にとって、どういう手で党内をまとめようとしているのか。

もう一つは、政府債務問題で、日本の信用不安が市場で叫ばれるようになるのは時間の問題だ。そうなると日本国債の下落、利回り率の上昇はギリシャ、イタリアどころの話ではなくなり世界経済は奈落の底に落とされる。財務省と野田首相は、それを回避するために早めの手を打っているのか。

それには、もっと前にやるべきことがある。

公務員の削減、給与カット、国会議員数の削減と今、一人当たり年に約1億2000万円かかっている費用の大幅カットによる歳出の削減だ。

先の国会の事業仕分けでは、役人天国の事案が槍玉に上がった。国家公務員宿舎の問題は見直しの判定だったと思うが、元改革派官僚で参考人として加わった古賀茂明さんが「国家公務員宿舎は不要、2500万もの年収のある高級官僚が格安の宿舎に入る必要はない。必要なら個人で借り上げたらどうか。そもそも、国民に増税をお願いしながら、一方で国家公務員の福利厚生をどうしましょうかと言う感覚が可笑しい」と喝破したのに拍手喝さいだ。

官僚は日本が財政破綻しIMFの管理下に入って財政再建の道を踏み出して初めて公務員などの削減・給与カットなどに取り組むのか。それじゃギリシャやイタリアにも劣るんじゃないか。

さらには、日本の財政の本当の姿がまだ分からない。財務省は財政健全化のために増税を訴えるが、まだ無駄な金を財務省などは隠していると指摘する経済学者もいる。

今の時期に増税してどうなるのか。さらに消費が萎み経済不況が進むのか。増税で市場の信用を得て、日本の信用不安が回避できるのか。

減税して消費が伸び、経済が回復し税収も上がり経済成長に持っていけるのか。タイラー・コーエンが言うように「容易に収穫できる果実」がふんだんにある時はそうだろうが、今はそんな時ではない気がする。

経済への影響を考えた総合的な判断が出来るデータを野田政権は国民に示すべきだ。

0 件のコメント: