2009年6月25日木曜日

ここまで来たら、進むしかない八ツ場ダム建設




半世紀以上かけ、総額4600億円にも上り、2015年完成を目指す八ッ場ダム建設の完成が困難であると「八ッ場あしたの会」が見解を発表した。明日26日には、群馬県が支出している建設費負担金の差し止めを求めた住民訴訟で前橋地裁の判決が出る。
その後川原湯温泉がどうなっているのか、7ヶ月ぶりに温泉街と工事現場を訪れた。
新しいキャッチフレーズも作られ「あたらし なつかし 川原湯温泉」の幟が各所にひらめいている。国道に立っても工事車両の通行が多くなったし、工事現場からの重機の騒音がはっきり聞こえて来る。工事が進んでいることが分かる。

秋にはダム本体工事が始まると言う場所に行ってみた。観光ポスターでも有名で観光客は必ず訪れる「瀧見橋」に行き、上流、下流を見ると新緑が眩しい光景が見れると同時に下流では、仮排水トンネル工事の河川水の呑口構造物の建設が進んでいた。ここはダム完成後は水没する事になっている。

何時だったか、テレビ番組で、無くなる温泉を一目見ようと最近温泉客が増えてきたと報じていた。その原因の一つに活性化を目指して再度訪れたときに利用できる3000円の割引券が配られたことらしいというのだ。若い夫婦が「これは嬉しいですね」と喜んでいる映像が映し出されていた。

駅員に「最近、観光客が増えたんですね」と聞くと、キョトンとした顔をしている。どうも増えてはいないようだ。

前に来たときに、昼食をとった「ふるさと」も今年2月1日に胸も痛む思いで閉店したと挨拶の看板が出ていた。名物だった水車も取り外され、軒下に放置されていた。温泉客、住民も減り、計画も遅々として進まない現状では移転を諦めざるを得なかったようだ。

平日で11時頃だったので、温泉客もみあたらない。

山木館の向かいの急峻な斜面に「標高586.00m」の標識が置かれている。ここがダムの堤高で、これから3m下が水面になる。ほとんどの旅館が水没する。

山木館のご主人に「何時移転するんですか」と聞くと、「2~3年にはそうなるでしょう」という。「あそこの塀を見てください。お土産屋さんがあったところですよ。皆廃業して行っている」と寂しがる。温泉街のあちこちで空き地が目立っている。

「最近観光客が増えたようですね」と聞くと、苦笑いして首をかしげる。どうもウソのようだ。観光振興のための割引券をPRするために、「やらせ」をしたのではと疑問が出てきた。

「今、反対運動や訴訟が繰り広げられているけれども、こうなったら前に進むしかないですよね」というと、「そうなんです。民主党がマニフェストで反対を掲げると言ってますが・・」と不安そうだ。

「用地買収も進んでいないというニュースも流れているが、移転計画はおくれているんですか」と聞くと「もう数軒移転しています。橋のこちらで右に入っていく道があります。町道なので、移転先に行くことが出来ます」と教えてくれた。

教えられた通りに行ってみるが、「工事関係者以外は通行できません」と看板が出ており引き返し、お土産屋の年配の女性に確認すると、「みんな通っていますよ」と屈託なく笑う。
急ごしらえの道路を上っていくと、「地元民車輌優先」の看板が出ている。

 登り切ると、急峻な山肌を切り土したり、盛り土してできた造成地が現れた。公園も併設され、ゆったりした町づくりになっており、既に8軒ほど建っている。しかしその区画以外は、未だ造成中である。温泉街や駅などの施設はまだ先のようだ。
写真:新しいキャッチフレーズ「あたらし なつかし 川原湯温泉」 の温泉街。 移転代替地にはすでに住宅が建つ

 計画されて半世紀以上、4600億円の事業費、それも最近見直されて大幅に増額された金額なのだ。生活基盤を失って他の町に出て行った人、廃業した人、これから心機一転新しい土地で事業を続ける人、移転して温泉旅館を続ける人。ダムで地域が水没することは多くの人が犠牲になることだ。

 ここまで来て、「中止だ」、「反対だ」はない。前に進むだけだ。この建設で生活が大きく変わる人達をしっかり支援すべきだ。大きな環境破壊と地元住民の生活破壊を残して良いはずはない。

1 件のコメント:

真人 さんのコメント...

民主党は衆院選のマニフェストで打ち出す、「ムダ削減」の事業で中止すべき事業として「八ッ場ダム」を上げた。他のダムとして熊本の川辺川ダムもあがっている。
人口増など水需要増を前提とした建設事業を順次凍結するという。

2009.7.2 朝日新聞より。

総事業費4600億円のうち、既に3200億円が使われている。用地買収の終わっていないところもあると言うが、中止した場合の地元住民への生活の保障はどうなるのか。工事中断で生じる環境破壊をドウするのか、