2015年の主要政策課題は安倍政権の大企業、富裕層優遇政策、日銀の異次元の金融政策で顕著になってきた不平等、格差の是正ではないか。統一地方選も控え是正できなければ国民の不満は高まり安倍政権を揺るがすことになる。
安倍総理は1日の自民党総裁としての年頭所感でスピード感をもった改革断行、アベノミクスへの多様な声に応えるために進化させるという。地方経済の活性化、中小企業支援も目立ってきた格差の是正に取り組む姿勢を明らかにしたのだろう。
安倍総理は選挙戦でもアベノミクスの成果を声高く国民に訴えた。雇用は100万人増加したと言うが内訳は非正規社員の増加だ。これでも労働者の選択だと言うが正規従業員との格差が広がっている。デフレ時代の人件費削減策が今も続いている。
日本経済の再生には「脱デフレ」が必須で、民主党政権時代も含めて各政権は「脱デフレ宣言」を検討したが達成出来ていない。
安倍政権になって日銀のインフレターゲット、異次元の金融政策で市場は円高→円安、株安→株高と基調は替わり政権側は「経済の好循環」と言うが、格差の拡大も伴って誰も信じることができない状況が続く。
円安で輸出産業は大きな収益を上げるが、通貨安は輸入品の物価高から生活品の物価上昇で消費税増税と相まって低所得者、中小企業には「好ましくない経済循環」を来している。日銀は2%物価目標が安定的に達成出来る時点まで量的・質的金融緩和を続けると言うがインフレが進めば制御不能の事態にもなるのだ。
政府は低所得者対策、中小企業対策として生活者支援を強化しようとしているが、円安一つとってもどういう方針で臨むのか分からない。市場関係者は130円まで行くというが想像出来ない事態だろう。
日銀の2%物価目標も市場関係者の予測では不可能のようだ。原油価格の下落、消費の落ち込み、そして家計所得の実質マイナス成長による消費の落ち込みは物価上昇の足を引っ張っている。原油価格の下落は日本経済にとってはプラスと言う見方も出来るが、世界経済の沈滞を表しているのではないか。
安倍総理は政労使会議で経済界に賃上げを要求してきた。今春闘も賃上げを要求、再来年も要求するという。税制調査会は法人税下げの代わりに賃上げを要求し最近は日銀総裁も賃上げを要求した。
賃上げ→個人消費増→デフレ脱却を狙っているのだろう。大企業が儲かれば下へ下へと恩恵が降りてくるトリクルダウンが期待されているが、そううまくは軌道に乗らない。企業は儲かっても設備投資は控え、内部留保に努めるだろう。
思い出すのは前川レポート、21世紀版前川レポートだ。
当時は輸出に頼らない内需拡大による経済成長を目指していた。 事情はチョット違うが今も内需拡大を狙っていることは確かだ。
2008年の21世紀版前川レポートは10年後に目指す社会として、経済システムを若替えさせる、格差是正、男女共同参画、出生率1.8,地域の自立を目指した道州制実施、農林水産業の再構築が上げられている。何のことはない2014年も同じことなのだ。
官僚が作る政策だからそんなに変わったものはないが、後は政権の改革決断だけなのだ。今でも達成出来ず同じ政策が続けて掲げられていると言うことは難しいのだ。
当時、作成した委員が言っていたのは、「企業の儲けを家計へ再分配する」システム構築に企業が反対したという。
政治の大きな仕事は冨の再分配だが、企業経営者の意識改革は進まず、賃上げ→個人消費増→内需拡大→脱デフレのプロセスも遅遅として進まない。
安倍総理は法人税下げなどで海外企業を日本に呼び寄せ、あるいは海外へ移転した生産設備を国内に呼び戻そうとしているが供給過剰で需要不足の日本で、どうやって需要を呼び起こすのか。一度海外に分散した生産が簡単にもどってくるとは思えない。
最近発表された「総合戦略」では、50年後に1億人確保、地方への企業移転、地方で若者の雇用30万人増、出生立1.8が掲げられている。人口減対策、地方経済の活性化を狙った政策だ。
安倍政権の要である「アベノミクスの成果を津々浦々まで」と言うが、アベノミクスに惑わされてはならない。今、アベノミクスへの批判が高まっていることにも注目すべきだ。
OECDも指摘しているように所得格差の拡大は経済成長を弱める。更には政情不安に結びつくのだ。米国の中間選挙で民主党が負けた要因の一つに「格差の拡大」があった。
不平等是正のために累進課税の強化、法人税減税は控え、内部留保に課税するなど法人の税制見直しで増税を目指す、労働者派遣法改正、残業代ゼロ制度の見直し、低所得者への生活支援、中小企業支援など総理の改革への決断力が問われる。
また、減税ばかりして経済界、富裕層にいい顔ばかりは出来ない。
国と地方の借金は1000兆円を超え、対GDP比230%にも達している。経済財政諮問会議で経済指標に長期債務残高の対GDP比も掲げることになったらしい。家計金融資産は1654兆円あるが2/3は国債購入に充てられており、残り1/3でこのまま借金を続けると10年後には危なくなる。でも海外資産が250兆円有るから心配ないというエコノミストもいる。
財務省の借金危機説が本当なのかどうか、国会で議論すべきではないのか。IMFやOECDも日本の借金に危険信号を出すが財務省からの出向者が多いことを考えると財務省の意向を反映させた警告とも思える。
財政危機になっても緊縮政策は不評を買うから困ったものだ。またギリシャの危機が再燃しているが国民は緊縮財政に不満を持っているのだ。
我が国でもそうだ。景気も良くなっているので税収も増え、赤字国債の発行を少しは抑制できると言うが自民党族議員、経済産業省は財政出動だ。
消費税10%への増税が先送りされ18ヶ月後に必ず増税されるという。その間の増え続ける社会保障関連費をどうするかが注目されるが、国民に負担を強要する手段しかない。
国民にはいろんな意味で負担を強いるが国会議員は自ら身を切る努力をやっていない。民主党の元総理の野田さんや維新の党の江田さんは選挙選で安倍政権を批判したが、有権者は「知らんふり」か「それでも安倍政権の方がマシ」と判断したのか自民党に大勝(?)をもたらし、記者会見では「この道を真っ直ぐに行け」と信任されたと豪語する始末だ。
何らかのプレッシャーをかけない限り格差拡大、安倍総理の大企業、富裕層向けの政策は続くのだ。
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