2015年1月16日金曜日

日銀・財政ファイナンスの是非:際限なき国債買い入れは制御不能のインフレへ?

政治からの独立性が要求される
日本銀行本店
日銀・黒田総裁は否定するが日銀の今の大量の国債買い入れは、財政ファイナンスの様相を呈し、このまま際限なく国債の買い入れを続けることは制御不可能なインフレへの可能性が出てくる。日銀は国債市場を良く点検し、対話しながら市場の安定を図るというがタイミングを間違えば一気に日本売りだ。

昨年11月の衆院財務金融委員会で財政ファイナンスの疑いを質問した野党議員に、黒田総裁は大量の国債購入はあくまで金融政策上、2%物価目標実現のための手段で財政ファイナンスではないという。

だから消費税増税などで景気が遅滞し2%物価目標達成が危ぶまれている今、日銀は更なる追加緩和をするのではないかと市場は予測している。FRBの出口戦略で量的緩和が終了し金融政策の正常化に向け利上げのタイミングが課題となっている今も、黒田総裁は「出口戦略は時期尚早」を繰り返す。

新聞報道では2015年度も国債発行額は139兆円になり、日銀の国債保有は増加、国債利子は納付金として政府に納められその額は2000億円増だという(読売新聞2015.1.15)。

成長戦略より金融政策に頼り切り
の首相官邸
見方を変えれば、政府が発行する国債を日銀が直接引き受ける貨幣化する財政ファイナンスも良さそうに思えるが、政府の赤字を日銀は穴埋めしているとみられれば話は別なのだ。日銀の金融政策決定会合でも民間出身委員が財政ファイナンスと見られる危険性を指摘していた。

国と地方の借金の合計が1000兆円を超え、対GDP比で230%は先進国で一番悪いのだ。これと相まって市場が日本財政をどう判断するかで一気に日本売りに出るだろうし、今は停滞気味の物価で更に追加緩和をすすめればインフレは制御が出来ない状態になるかもしれない。

又、大量の国債を保有する日銀にとっては、国債の下落は日銀の経営にも影響する。経済財政諮問会議で民間委員が日銀の経営も注視した方が良いと発言していた。日銀は資本金1億円の会社だが政府と一体だから潰れることはないと言われているし、何やら特別な会計処理をやっているらしい。

ところで本当に日銀の異次元の量的緩和で円安になり日本経済が息を吹き返しているのか。
政権交代が見えてきた当時、野党だった自民党は「市場に出回る円の量が少ないから円高であって、マネタリーベースを増加すれば円安になる」と白川日銀、民主党政権を揺さぶった。選挙戦に入ると自民党候補者は皆同じことを有権者に訴えていた。

しかし後になって疑問を呈する経済学者、エコノミストが出て来た。市場にジャブジャブ円を流しているから円安になっているという主張に異論を呈しているのだ。アベノミクスの成果ではないというのだ。

白川総裁の時と、黒田総裁の金融政策を比較してみた。

白川総裁は消費者物価上昇率を当面1%とし、それが見通せるまで強力な金融緩和を実施した。言い方を変えれば物価上昇2%以下とし当面1%を目指し、その後は更に上を考えると言うことだったと思う。 長期国債の買い入れも年約50兆円という大きい額だ。これと金利ゼロを継続していた。

欧米がリーマンショック後に急激な量的緩和を実施したのとは違って、白川・日銀はずっと前から量的緩和を実施、だから対GDP比も200%を越える事態になっていた。

ところが、政府や国会の圧力で慎重(?)だった白川総裁が退き、2%物価目標、2年で2倍の量的緩和を訴えて登場した黒田総裁に市場は大きな「期待」感で円安に動いた。
 
でも円安に動いたのは為替介入があったのではないかとみられているのだ。

為替介入は共同介入以外は、おおっぴらにやれるものではないが、極秘にはやっているようだ。民主党政権時でも週刊誌の「介入をやったのではないか」という経済記事を見たことがある。

2011年8~11月は14兆円の介入をしたが円は動かず、2012年末~2013年春にかけては80円から99円へ大きく円安になった。海外もゼロ金利で円キャリーはなく、複雑な為替介入をしたのではないかとみられているのだ(伊東光晴 「アベノミクス批判」)。

アベノミクスで円安になったのではないのだ。

円安になって輸出産業を中心に企業経営は好転、景気は上向いてきたように見えるが実感はまだら、おまけに消費税8%への増税等で個人消費は伸びず、更に10%への増税で景気に影響するとみた日銀は更なる追加緩和を決めた(後で政府は先送りした)。
黒田総裁は、量的緩和は2%物価目標達成のための手段だという。国会審議で「いつまで続けるのか。2%が見えてきた時か」と野党から質問を受けたとき、「安定的に2%が確保できたとき」と答弁していたが2%を超えるまでやるらしい。

マネタリーベースは2014年度末で270兆円、10月31日の決定会合では年間60~70兆円から更に80兆円の追加緩和を決めた。そんなにジャンジャン円を流してどうなるのか。

日本の財政をどう考えれば良いのか。財政が信用されなくなれば物価の安定も金融の安定も損なうことになる。その時が日本売りの始まりだ。国債が下落すれば日銀を始め金融機関は大きな損失を被る。

更に日銀が国債を買う財政ファイナンスに移れば日銀も制御出来ないインフレに突入することになる。また日銀はいつかは「出口戦略」を取らなければならないときが来るが、その時は国債の下落は免れない。  

ついに日銀の異次元の量的緩和、追加緩和の「副作用」が現れるのだ。「どういう形でか」は分からないが。

日銀の仕事は金融政策で物価を安定させ、国民の生活を守ることだ。ゼロ金利だから金利の上げ下げで物価を調整する手はないが量的緩和は非伝統的手法だ。一日も早く出口戦略を練って正常な金融政策を目指すべきだと思う。FRBに遅れずにやった方が遅れて単独でやるよりも悪影響は少ないのではないか。

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