嫌われる緊縮財政、でも財政出動しても経済が成長路線に転換し税収増につながるのか。新聞報道によると、ギリシャの総選挙で緊縮財政に反対する最大野党が優勢だという。国民は緊縮財政に嫌気をさしているようで2009年のギリシャ危機が再燃し欧州の政治、経済に再び混乱が起き世界経済に波及する様相を呈してきた。我が国もアベノミクスで経済成長を目指すが欧州経済の混乱は日本経済にも円高、株安で大きく影響するのではないか。
ギリシャの総選挙で最大野党の「急進左派連合」は緊縮財政の破棄や債務償還期限の延長、経済成長に向けまずは財政出動を増やすべきだ」と訴えている(読売新聞2015.1.17)。
ギリシャは、あの頃公共サービスを削ったために街中にゴミが回収されず散らかっている映像を見たことがある。今、緊縮財政で失業率は上がり、GDPも70%まで落ちた。現政権は「実現不可能な約束を信じてはいけない」と応戦するが金融支援の期限も近づきデフォルトの危険も出て来た(同上)。
自国の経済のことを考えず、国民の信を得るために闇雲に赤字財政を築いていった結果がこの始末だ。借金の帳消しは難しいだろうし償還期限の先送りは何ら本質的な解決にはならない。
特に欧州はユーロ圏という政治は後回しで経済を統合する荒技に出て、ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペイン、フランスの債務国、財政緊縮緩和vsドイツの債権国、財政規律維持の構図を持っている。ドイツ国民は他国の負債を負いたくないのだ。
考えられる対策はギリシャがユーロ圏から離脱することだが、それではユーロの信用を落とすことになり不可能のようだ。ユーロ圏構想の時の無理が出ている。
一方、金融支援をしているIMFも結局はどうして良いのか分からないのだ。昨年11月に緊縮財政の押しつけは失敗だったと発表した。
2008年に金融緩和、積極財政を主張し2年後の2010年には緊縮財政へ方針転換した。これには多くの経済学者から批判される結果になった。そして2014年に財政緊縮化を緩め金融緩和を提言した。
IMFなどからの金融支援を受けた国でもアイルランド、スペインは脱却したがギリシャは産業にも乏しく財政再建は道半ばと言うことになる。イタリアは予算案で緊縮財政を打ち出したが反緊縮デモが発生し、政権は雇用対策、景気回復策を重視せざるを得なくなった。
世界的には緊縮財政より財政出動、成長戦略が主流になってきたが、先のIMFは日本だけは緊縮財政、増税の必要性を訴えている。
安倍総理は財政健全化へ対GDP比を下げる目標を掲げると発表した(読売新聞2014.12.23)。
でもこの日本の借金1000兆円超、対GDP比230%には異論も有り、600兆円の資産もあるから正味の借金は400兆円ぐらいで米国の円換算1467兆円、対GDP比110%に比べても低いというのだ。IMFには財務省からの出向者も多く、そういった人たちが財務省の意向を反映する発言をしているのだ。
ところで日本は経済再生に財政再建、成長戦略の両輪を掲げ、2020年度にはPB黒字化を目指すと国際舞台でも宣言している。
増える一方の社会保障費削減では高齢者に負担増を強い、各種改革で歳入増、日銀の国債購入、そして予定されている消費税10%への増税などが対策に上げられているが、法人税の引き下げに対して企業への課税強化、富裕層への増税、国の事業の無駄の排除、規制改革、公務員改革を急ぐ必要があるのではないか。
恐らく安倍総理は公共事業、規制改革などで成長路線に持って行き、税収増による財政再建に力を入れようとしているのだろうが、成長戦略は生半可、「民間企業は踊らず」では片手落ちだ。ただ円安のメリットとして海外生産の一部を国内の生産設備に移す動きが出て来た。これには中国での生産というリスクを考えてのことだろうが、どこまで伸びるのか。
財政再建、PB黒字化は5年後の喫緊の政治課題だ。達成出来なければ国際的信用の問題にもなる。今のところ税収増は消費税10%への増税だが、増税は政府の予想に反して景気への影響が大きすぎる。家計への収入増がどの程度進むかによっては緊縮財政になり国民の不満が募る結果にもなりかねない。
あらゆる面でギリシャなど欧州の政治、経済を慎重に見ていく必要がある。円為替、株価はアベノミクスより欧米の政治、経済に動かされるのだ。欧米で何かあると円、日本国債が安全資産とみられて買われる。でも反対に日本売りもあるのだ。
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