リニア工事 もっと対話を 朝日新聞2015.1.11 再見細見 地域から |
5兆円を超し、10年の難工事が予想されるリニア新幹線工事が始まろうとしているが工事につきまとう建設残土処理、騒音、振動、微気圧波、低周波音などが自然環境を満喫している長野県・大鹿村も沿線住民の生活を脅かす公共事業になるのか。
私自身はリニア新幹線に乗ることはないだろうが、この新幹線の難工事に注目していたところ、朝日新聞(2015.1.12)の「再見細見 リニア工事「もっと対話を」」で沿線住民の苦悩を垣間見ることが出来た。トンネルで地下を通過する自治体はメリットが分からないままに不安ばかりが募るのだ。
環境影響評価準備書 |
大工事の環境影響評価は重要であるが、実際には工事をやってみなければ分からない問題も多く、従来の評価法では不十分な分野もあるだろうが、騒音、振動、低周波音、微気圧波、地下水それに排出する大量の建設残土の運搬、処理は住民の生活を脅かす。それも工事期間だけでも10年という長期にわたる。
そんな中で長野県大鹿村の住民の声が気になった。
大鹿村は長野県内の工事で排出する建設残土950万m3のうち298万m3が村内から排出される。環境影響評価準備書についての「長野県知事意見」では、工事では山岳非常口が11カ所設けられが、工事終了後に避難口の用途には使用されないために数の削減と原状回復が要求されている。
「リニア工事の課題」によると、300万m3の建設残土を処理するのに1日最高で1700台の大型ダンプが村内を走り回るらしい。24時間工事だと1分に1台、8時間工事だと1分に3~4台になる。もしかすると数台が連なって走るかもしれない
村内の小渋線(松川インター大鹿線)に集中するらしいが未改良区間もあるし、すれ違いでの交通渋滞、通行の危険は村民の生活や観光客に支障を来すために道路改良が必要だという。そして300万m3と言う大量の残土をどう処理するかだ。残土処理場を確保するにも急峻で沢が多く地滑りの危険もあり村外への持ち出ししかないという。
確かに建設残土の運搬、置き場には問題がありそうだ。
私も20年ほど前の春、高遠で桜を見て大鹿村にある中央構造線博物館を見学したことがある。高遠から258号で分杭峠を越えて大鹿に向かうのだが山道は山の斜面では石がごろごろ転がり路面まで散らかっていた。中央構造線に沿っているので地盤は脆い。峠から見渡すと両側に急峻な山が迫り断層帯であることが分かる。分杭峠はパワースポットにもなっていた。
大鹿村に向かって下りると舗装道路に出て民家が見えてきた。驚いたことに川向こうでは山崩れが放置されていた。所々でそういう光景が見えたが川をせき止めていないので対応が遅れているのだろう。
道路状況も良くは覚えていないが、舗装されている場所でも狭かったように思う。平地が少ないのだ。
表示案内に従って博物館へ脇道に入った。
中央構造線博物館の庭には、構造線の位置が表示され北方の峰に向け走っているようだ。グランド際の山の斜面は大きく地滑り、崩壊していた。当時はそのままにして惨事の大きさを残していると説明してあったが今はどうなっているか。
このようにこの辺は落石、崩壊、深層崩壊など地形、地質上のリスクが大きく今回の工事にかかわる小渋川橋梁、変電施設、非常口、工事用道路などの地上構造物は出来るだけ避ける必要があると指摘している(長野県知事意見より)。
博物館には断層面の大きな標本があったと記憶している。学術員の人に「ここは地震はないのですか」と聞くと「この辺はありません」と説明された。
でも中央構造線断層帯だから「ないはずはない」と思って調べたら、西の方では地震が発生しているが、この辺だと1983年(昭和58年)3月16日に震源を静岡県西部とするM5.9の記録がある。
大鹿村は、天竜川を挟んで西に中央自動車道、東に諏訪大社―高遠―大鹿を経て知多半島へ向かう中央構造線が走り、大鹿で東から西にリニア新幹線が横切る格好になっている。
恐らくこの辺の地下も脆いだろうし、旧小日影鉱山もあり鉱脈と同じ方向に走っているので重金属汚染も心配されているのだ。
また、このようなトンネル工事では必ず地下水や水資源への影響が心配される。長野県知事の意見書には、JR東海の回答書で「全体として影響は小さい」との表現が多いが個別の地下水、水源によって影響は異なるので「その表現は適切ではない」と見直しを要求している。
長野県内で最初にトンネル工事に着手するのが大鹿村といわれている。
それだけに工事になればどんな状況になるのか分からない。当然住民の不安は高まる。朝日新聞記事によると、村長は「県道の改良を要求する」というが何やら今までの公共工事に見られる首長の発言だ。
大鹿村は地下をリニア新幹線が通るだけで直接のメリットは期待出来ない一方で、自然破壊の危険が大きい。新聞報道によると、喫茶店をやめて村を去る夫婦の話や小さな部落で2世帯が村を離れていったという。
工事後の大鹿村を見てみたいが、どうなることか。
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