2009年9月29日火曜日

今の自民党に敗北の総括が出来るか、再生への道




久しぶりに自民党関連のニュースが新聞に踊った。一面に総裁の写真が載るのは最近では珍しい。新総裁に谷垣さんが6割に当たる300票を得て選ばれた。世代交代を訴えた注目の河野さんは199票に終わった。自民党員は、重鎮の排除を訴えた世代交代より、「みんなでやろうぜ」を選択した。

 誰が見ても、このままでは自民党の再生は難しい。

 谷垣さんは、「保守政治の大道を行く」と言う。「家庭のきずな」や「地域の結びつき」を大切にするんだという。何やら良く分からないが、昔からの伝統を守り、物事を急に改める事には反対らしい。

 従来の自民党を踏襲するのであれば、思い切った改革は出来ず、再生など不可能だ。改革を訴えた河野さんが獲得した地方票の110票をどう受け止めているのか。

 今、自民党員は「敗北の総括が出来ていない」という。まず、敗北の総括をやるべきだというのだ。

 私もそう思う。しかし、谷垣新総裁では敗北の総括など出来ない。なぜなら、重鎮である森さんや青木さんなどが政局毎に今までやってきた、密室政治、料亭政治を批判することになるからだ。

 自民党は、まず「開かれた政党」に脱却しなければならない。その為には、古参議員、派閥の領袖、総理経験者は障害になる。

 究極の密室政治は、小渕さんが病に倒れた後、5人ほどの自民党重鎮が森さんを次の総理に指名したことだ。当時の幹事長が誰だったか忘れたが、ベッドで「よろしく頼む」と言ったか、言わなかったかが問題になり、国民の前に茶番劇を演じた。

 森、小泉、安倍、福田そして麻生と続く自民党都合の総理のたらい回しも批判があった。国民の信を問わずに重要課題を決めていく自民党政権に呆れることもあった(勿論、参議院選などはあったが)。「自民党は政治を私物化しているのではないか」と言われるときもあった。

 そして今の民主党鳩山政権の「根本的に仕組みから見直す」政治手法を見ていると、自民党政治の拙かった「国民の目線」から外れた政治が浮かんでこないだろうか。
 政権を離れた自民党には官僚も遠ざかっていき、これからは自分で情報を収集していかなければならないし、委員会などでの質問も自分で作っていかなければならない。一人、一人が研鑽し、民主党政権をチェックするようにしなければならない。

 そして、若手、中堅議員を育てることだ。野党になっても予算委員会などで民主党政権や官僚に対して堂々と議論していける人材を育てることだ。それが政策能力と次の指導者を育成することになる。

 自民党若手でムダボ4と「国会へ行こう」という「ムダボ」タウンミーテイングをやっていた。私も参加したが、公共事業、社会保障、エネルギー・産業、文教・科学技術の4部門でムダの摘出作業をやっていた。成果も上がっていたようだ。古参の重鎮が牛耳るのでなく、このような若手に任せていくべきだ。そこに「新生自民党の姿」がある。

 こういった地味な活動から、「自民党は何を為すべきか」「民主党との対立軸」が見つかるかも知れない。

 派閥の解消もテーマになるだろう。たった119人の議員数でいくつもの派閥があることは笑いモノである。これには、メデイアも責任がある。何時だったか、派閥解消をやろうと意気込んだ時があったが、何か人事があると、メデイアは括弧書きで旧○○派と併記した。志を同じくする者が集まって、勉強会や情報交換をするのは問題なかろうが、メデイアがまず、意識改革をすべきだ。

 最後に谷垣さんは、「鳩山政権への対峙は是々非々で」と言い、政争のための政争出はなく、問題点を追求する野党の責任を果たすという。小沢さんの政治手法に押しつぶされないことを祈るばかりだ。

2009年9月28日月曜日

八ッ場ダム中止:住民の行政事件訴訟で、事業の裏表を明らかにできないか







今回の八ッ場ダム中止の判断は、高度な政治判断にしても利害関係に立つ水没地区住民の生活を考えると、そう簡単にはいかないだろう。

 民主党政権は「マニフェストで中止を訴え、国民に支持された」と主張し、「中止は当然」の立場をとっている。
 一方、地域住民は「国との契約をどう考えるのか」と訴えている。「政権が変わっただけで、そんなに簡単に反故に出来るのか」との懸念がある。
 市民団体の負担金返済訴訟での弁護団も訴訟を継続するという。

 川辺川ダム、八ッ場ダムの中止は、民主党がマニフェストではっきり明記している公約であるために、政局にもなりかねないテーマである。

 一番犠牲を強いられる地域住民だ。「政権が変われば、国の継続事業も簡単に変えることが出来るのか」、そして「何故ここに来てダムは必要ないのか」、行政事件訴訟の提訴ではっきりさせる手もあるが、その可能性については問題もありそうだし、決して臨機応変、敏速な処理ではない。

 行政事件訴訟は、本来行政権の公権力による拘束力のある決定に対して不服である場合に提訴出来るモノで、住民の権利、利益を保護する一方で、行政の合法性/合目的性を議論できる。今回は国土交通省が相手になるが、国土交通省は中止ではなく推進派である。鳩山政権の政策だから、戦略局になるか。

 提訴するのは、水没する地域の住民だ。訴えるのは、憲法第25条の「生存権」や「国との契約の責任ある履行」の保障を求めることになるし、ダム建設中止の合法性、合目的性も議論される。

 しかし、難しい面もある。「自由裁量行為」として、一般的に行政の自由裁量に属する事項については、裁判所の権限が及ばない事がある。市民団体が提訴した、負担金拠出の差し止め訴訟も、この概念で敗訴になっている。もう一つは「統治行為」として、高度に政治的な意味を持った国家行為ないし国家的利害に直接関連する事項は行政事件訴訟から除外されるのだ。

 今回の川辺川ダム、八ッ場ダム中止は、民主党がマニフェストの掲げ、国民の絶大な信任を受け政権の座に就いた。ダム中止は「高度に政治的な意味を持つ」とも解することが出来る。

 一方で、マニフェストの法的位置づけも議論すべきである。前原さんや民主党の幹部は、事あるごとに「マニフェストに書いてある」と抗弁しているが、本当にマニフェストを根拠にして良いのか。自民党政権時代に「もっと大きなことをやるためには、この程度の公約違反は問題ではない」と入った総理がいたほどだ。


 しかし何はともあれ、公共事業には確かに税金のムダ遣いと思われることが多いのは確かだ。計画推進のために立ち退きや生活支援等で多額の補償金や自治体には交付金が流れている。川原湯で移転先を見に行ったが、広い庭に大きな邸宅が建っているのが目に入る。以前の住まいは、傾斜地や平坦地でも狭い敷地に評価額の低い家屋が建っていたのだろうことを考えると雲泥の差だろう。これも今までの生活、生まれ育った家を犠牲にしてのことと思うと仕方ないことなのだろう。ダム問題で鄙びてしまった温泉街を復興するには並大抵のことではない。

 長野原町だってダムが中止になれば、交付金は入ってこない。これといった産業も乏しい町にとっては、財政的にも大打撃だろう。

 ここに来て前原国土交通相は、ダム中止補償法なる立法措置、補償措置を提案して来たし、長期にわたる公共事業の見直し基準も作成するらしい。

 この川辺川ダム、八ッ場ダム中止で、今までの公共事業の裏表をすべて国民にオープンに出来る手はないか。住民の行政事件訴訟の提訴も一方法と思うのだが・・。

公共事業のあり方を根本から考え直す良い機会にしてほしい。

2009年9月26日土曜日

自民党政権の尻拭いをしているのか、それとも翻弄しているのか


 民主党政権になって、良くやっていると感じるのは確かであるが、中身は自民政権とまるっきり正反対の政策に近いことを推進しているようだ。

 その原因は、先の総選挙での民主vs自民の政策の違いをはっきりさせるためのマニフェストの作成とその財源確保ではなかったか。

 分かって来ただけでも、八ッ場ダムに始まる公共事業の見直し、日本航空の再建計画、CO2削減目標8%から25%に、農家の支援と子供手当、財源確保のための09年度補正予算の見直し、公益法人の見直し、経済財政諮問会議・事務次官会議の廃止、インド洋給油の廃止とアフガン支援策の検討、暫定税率撤廃など税制改革、郵政民営化見直し、障害者自立支援法や後期高齢者医療制度の廃止、高速自動車道の段階的な無料化などが上げられるが、考えてみれば皆、自民政権時の反対の政策である。

 自民政権は、国民の目線の政治に欠けていたのか。

 2004年の総選挙の時、小泉さんは郵政民営化の是非を重要課題にしたが、確か120項目にわたるマニフェストを掲げていた。一方、民主党は当時岡田さんが「他にも大事なことがある」と国民に訴えた。当初は民主党優勢の情勢であったが、結果は小泉さんに踊らされたメデイアの小泉劇場で圧倒的な多数で自民が勝利したのは事実だ。

 この政権交代の機運を作ったのは、長妻さんの年金問題追求であったが、小泉さんが総理を退いてから不正が顕在化し、安倍さんはその対応に追われたが、それ以降での国民の信任を得ていない自民政権での政策、金融危機への対応での財政出動は国民の嫌気を増大させた。

 ここは一つ、政権を変えてみようという国民の考えが、今回の総選挙の民主など野党の得票率60%だった。

 根本的に仕組みを見直そう、新たな枠組みで考え直そうとする鳩山政権の姿勢には賛成である。補正予算の執行、税制や予算の組み方、日航の再建計画、地球温暖化対策しかりだ。

 事あるごとに、政治主導を訴え、官僚政治からの脱却を進めている。子供手当など財源捻出のための09年度補正予算執行状況の調査については、メデイアがほとんど執行済みとの情報を流しているが、民主党に言わせればこれは官僚が流した情報であるらしい。官僚は、自民政権でのやり方で執行しているが、民主政権では、そんな理屈は通らないという。

 今回の鳩山さんの外交デビューで注目されたのが、CO2削減目標25%の提案で、各国の首脳が絶賛した。地球温暖化防止でイニシアチブをとりたい日本にとって、アメリカ、中国、インドなどを巻き込んだ対応が必要であり、作戦としては理解できる。麻生さんは、確か8%を提案していたが、その整合性はどうなのか。経済産業相に言わせれば、麻生さんは、0%で経済成長がピークで、削減する毎に成長率が下がっていく考え方をとった。しかし、今回は「どうすれば達成できるか」。考え方を変えて議論すべきだという。

 しかし、この政権は、火種も抱えることになった。亀井さんが主張する「返済猶予法案」は、処理を誤れば、民主と国民新党の連立破綻の動きにも繋がってくる。郵政民営化の見直しも原口さんとは考えが違うようだ。郵政民営化見直しを1丁目1番地と考える国民新党にとっては、難しい対応になる。

 そして、八ッ場ダム中止問題だ。そ事業主体のメリットもなく、税金のムダ使いと見なされた公共事業のやり玉に挙がっている。前原さんが、23日現地視察したが、県知事や町長の訴えにもかかわらず「民主党がマニフェストで国民に約束したこと。中止に変更はない」と中止撤回を突っぱねた。

しかし、08年8月の八ッ場ダム視察で、鳩山さんはどの程度理解しての中止発言だったのか。

当時は、野党の幹事長。総事業費が2600億円からいきなり4600億円に増額されたり、市民団体が関連自治体の負担金支払いの差し止めを提訴している。別の市民団体は、既に事業自体の目標はなくなったと建設中止を訴えている。

長野県知事だった田中さんが「脱ダム宣言」で公共事業に対する国民の見方が変わってき、税金のムダ遣いとして、公共事業の見直しも進められていた。

 あらゆる社会情勢の元で、野党第一党の幹事長としては、自民党政権への対抗手段として「中止」があったのではないだろうか。

 前原さんの「マニフェストで国民に約束したこと」では、住民の怒りは収まらない。鳩山さん自ら、住民の言う「国と契約したことを何故反故にするのか」に応えなければならない。この処理は、鳩山政権の足を引っ張りかねない国内問題である。
 更に、今回の外交デビューで、数々の耳さわりの良い提案を行ない、各国の賞賛を浴びた。しかし、それを国内の問題に置き換えると、国民生活にどんな影響が出てくるのか。

 国民が鳩山さんに翻弄されることだけは、避けて欲しい。

 今、政界で不思議に感じることがある。これだけ民主党政権が反自民政策を推し進めているのに、何故自民党は反論できないのか。いままで、自民党政権での政策には、必ず野党の民主党のコメントがついたはずであるが、一向に自民党側からの反論が聞かれない。
そこまで落ち込んだ自民党に期待は出来ない。

2009年9月25日金曜日

ワクチン接種:季節型インフルは何とかなったが、新型は無理か




 新型インフルエンザ感染で重篤な脳症にかかった子供さん、持病があったため高齢の方がお亡くなりになった事例などがメデイアに取り上げられ、死亡者も増加している。季節型インフルエンザの患者数は人工の10~15%、それが新型になると倍ぐらいの患者数になると言う。「感染力が強い」ことから当然かも知れない。

 そんな中で、活字メデイアは、ワクチン不足、ワクチン接種の優先順位や海外の情報を報じている。情報は増えるが、実際に「身近ではどうなるのか」、不安が募ってくる。

 先日、東京から群馬に車で帰って来る時、環八沿いの順天堂大学付属練馬病院で、「発熱外来」のテントをみた。期間病院としての新型インフルへの対策だ。全国で感染拡大が続いている今、我が街の中核病院の対策はどうなっているのか心配になる。

 丁度、高脂血症で3ヶ月に一回、開業医に入って検査と処方箋をもらっている時期が来たので、昨日行ってきた。昨年なら待合室に「インフルエンザワクチン接種の予約受付」のお知らせが張ってあったが、今年はそのお知らせもみあたらない。

 一応の診察が終わると、先生が「毎年、ワクチン接種をされていますが、今年はどうしますか」と聞いてきた。「待合室に予約の受付の張り出しもなかったので、どうなっているのかと思っていました」というと、「ええそうなんです。今年は本数が減らされるので、張り出しはせずに、希望を聞いているのです」という。

 季節型インフルエンザのワクチン接種を予約し、更に「新型インフル円座のワクチンはどうなっているのですか」と聞くと、「まだ何も決まっていません。私達医療従事者への接種も分からないんです」と困惑を隠せない。「ただ、接種ワクチン量もきまっているし、優先順位もあるようなので、どこか一カ所の病院でやられるのではないか」と説明してくれた。

 接種の優先順位では、意見も分かれるだろう。厚生労働省ではHPでパブリックコメントを求めていたが、妊婦や持病を持っている人は勿論であるが、保育園児、幼稚園児や小・中校生そしてその家族に接種することで、大感染を予防できるのではないかと思う。

 医療体制も心配になったので、近くの中核病院に行ってみた。今年の初めの流行期には、病院の玄関前に、メキシコ、アメリカなど流行地への渡航の経験のある人に注意事項が張ってあったが、今回は「ご協力をお願いします」という張り紙が出されている。
 それによると、「発熱、咳などの症状のある方は事前に0274-63-2111をかけるか、受付窓口で相談ください。症状のある方は、マスクの着用をおながいします」とあった。

 新型インフルエンザへの対応、ワクチン接種は一概に決められず、地域によりことなるようだ。それだけに情報が欲しい。恐らく市の広報紙などで知らしめられるのだろう。

 結局、季節型インフルエンザのワクチン接種は11月に予約したが、新型については無理だろう。外出から帰ったら「手洗い」と効果は疑問視されているが「うがい」を励行するしかない。孫が通っている都立保育園では、玄関の柱に「新型インフルなど感染症の発生状況」の看板が出ているが、まだ感染児童はいない」らしい。保育園や外出から帰宅すると、洗面所に直行し、「手洗い」を30秒とぎこちない「うがい」をしている。

 大人も同様であるが、親は毎日子供の体調をチェックし、万一体調が悪かったら、保健所に相談し、医者に行き薬をもらって1週間ほど家で休養することだが、熱、咳、体調の悪さの判断をどうするか、子供を休ませるかどうか、毎日難しい問題に直面するのだろう。

 キーワードは「他人にうつさない」ことだ。

2009年9月23日水曜日

保管資料のうち、役立つのは最近の5年分か




ある著名な作家が「本が一度家の入ってくると、不思議なことに、なかなか出て行かない」という内容の随筆を書いていたのを見たことがある。
 よく言ったモノで、我が家でも作りつけの本棚では入りきれず、物置の棚にも積み上げられているが、それでも今まで4回ほど大胆に処分した。そのほかにパソコンにも7~8年分の資料が保管されている。

 会社勤務時代にも、どうすれば書類が減らせるか、書類の保管は最大にテーマであった。結局は、法定期間のあるモノは別にして、保管期限5年を決めて極力書類の保管は控えたが、会社の正式な場所に保管しているモノとは別に、個人で同じモノを机の引き出しに保管する事例が多かった。自分で抱え込まなければ安心できないのだ。
  
 個人の価値観にもよるが、書類の保管って、どの程度必要なのだろうか。

 何か仕事で、参照或いは引用すべき資料は、どんな資料なのか。どの程度保管した資料を使っているか、学会の機関誌、書籍の引用文献で調べてみた。

 JGL(日本地球惑星科学連合ニュースレター)で必要な報文があったために保管していた数冊から、何時発表された文献を引用しているか調べた。79件の引用文献で、1年前21.5%、2年前25.3%、3年前11.4%、4年前10.1%、5年前8.9%でそれ以前は2~3%だ。
 以前は学会に入っていたが、今は退会した日本自然災害学会の自然災害科学(Vol.28 No1 2009)では、引用文献52件で同様に34.6%、26.9%、9.6%、5.8%、5年前以前は2~4%だ。
 また、書籍を見ると、あの地球温暖化の是非をめぐる議論の発端となったビョルン・ロンボルグの「環境危機を煽ってはいけない(文藝春秋 2003年6月)」の「地球温暖化」の章では692件の引用文献があるが、同様に22%、18.8%、13.2%、9.4%、13%で、6年前も11.3%であるが、それ以前は2%前後である。
 社会科学系はどうかと思い、都留重人さんの「市場には心がない(岩波書店 2006年4月)」を見ると、引用文献135件のうち、同様に46.7%、11.1%、6,7%、5.9%、11.9%でそれ以前は2%程度だ。しかし社会科学系だけあって、古い文献では1926年の引用もある。

 いろいろ見てくると、引用される文献は、文献が発表される時点の5年前からの文献になる。それ以前の文献は、利用価値が極端に低くなる。
 

 しかし、このことは驚くことに50年前も同じ傾向があるのだ。

 「物理の散歩道(岩波書店 2009年9月)」の「棄てる」の章を見ると、海外の権威ある機関誌の1冊の掲載論文に引用された文献の年代別分布を見ると、5~10年前の文献が大勢を占め、特に5年前以降の割合が大きい。著者は「自分の資料を棄てる、あるいは置き換えるまでの保管期間をファイル後5年と決めてみようかと思う」と言う。

 確かに、その時は面白いテーマだと思って入手しても、今考えると「何だ」と思う例がある。本棚にも限界があり、専門の物書きではないのだから入手5年以前の書籍や、保管資料は思い切って棄てる勇気も必要だ。

 また、資料をスキャンし、パソコンのDドライブに保管されている資料もファイル後5年以上経っている資料は削除しても良さそうだ。ブログに記事を投稿する為に、役立つだろうと思って保管しているのだが、資料が容易に手に入ればテーマも決めやすいメリットはある。

2009年9月19日土曜日

八ツ場ダム中止で戸惑う住民、残るのは生活破壊、自然破壊と税金の無駄遣いか







取材のため川原湯に向かう車の中で、群馬県議会の冒頭、大沢知事が「民主党の八ッ場ダム中止を受けて1都4県で協調行動をとる」と発言したことをNHKニュースで聞いた。

 民主党政権でのムダな公共工事見直しで、俄然注目を集めることになった八ッ場ダムだ。
50年以上前に、計画が提案されたとき、地域住民は賛成、反対に分かれて長い闘争の果てに建設が決まった。当時建設反対でありながら、賛成にまわった住民が、今度は中止に反対の立場になった。

 関連する自治体は、次々に中止反対を表明し、東京都知事は万一中止になった場合は負担金の返還を要求すると言明した。
 建設反対を訴えていた市民団体は「ダムの必要性がなくなったので、政治的判断が下された。今後は補償計画を策定すべきだ」と中止を歓迎するコメントを発表した。

 地元住民で結成した「八ッ場ダム推進吾妻住民協議会は、9月14日、「中止は絶対に受け入れ出来ない」とダム早期完成要望書を新政権に送ったという。

 途中で大幅に増額された総事業費4600億円の内訳を見ると、治水で国負担1225億円、自治体負担525億円、利水で自治体負担1460億円で2008年までに3210億円。09年度以降はダム本体工事620億円、生活再建770億円で1390億円になる。
 中止すると、自治体負担分約2000億円の返却と生活再建分770億円に工事中の後始末費用など、計り知れない費用が発生すると思うが、朝日新聞(2009.7.11)によると国土交通省の担当者は還付金の支払いが必要で事業継続より800億円高く付くと試算しているという。

 しかし、続行するとなると、用地買収も遅れ予算の執行状況と工事の進み具合から更なる工事費の増額の心配もあると市民団体が発表している。

 そんな八ッ場ダム、川原湯温泉の現状を見た。

 まず、国道145号のJR吾妻線岩島駅を過ぎた付近で、付け替えJR吾妻線の橋の工事と思われる現場が目に入る。作業音が聞こえるので工事は続行中だ。

 吾妻渓谷の名勝地と言われる滝見橋下流150m付近がダム本体工事の現場だ。前回6月に来たときは、この付近はダム工事に先駆けた仮排水トンネル工事が行なわれ、呑口構造物などが工事中であったが、今は完成し、作業所や関連施設は既に撤去され、法面はモルタル吹きつけが施されていた。ダム本体工事延期(?)での後始末されたのだろう。

 川原湯温泉駅を過ぎ、久しぶりに「やんば館」に寄ってみた。目前にテレビの映像で有名になった湖面2号橋の工事が現れた。県道林岩下線が通る全長590mの橋だ。今も工事の音が聞こえる。工事見直しで有名になったためか、見学者が急に増えたと説明の女性が言う。

 やんば館のある側の山の中腹では、国道145号の付け替え工事が進んでいるが、土木工事は面白い。工事の着手をどの辺からするかは重要な問題であるが、急峻な法面にインクラインを設置し、工事用重機、工事資材などをトンネル工事着手地点まで上げて工事を推進していった。今はその法面もインクラインは撤去され、モルタル吹きつけが施されていた。

 引き返して、川原湯温泉街へ行く。

 共同浴場「玉湯」付近で、道路を掃除していた女性に「中止反対のスローガンを書いたボードなどないんですね」と聞くと、「いろいろ中止反対の運動をやっていますよ」という。

 この玉湯付近の用地買収が遅れているようだ。昔、土地を購入する場合、行政区の名前では登記出来ず、住民の名前を借用したために32人の共同所有になり、その人達の所在なども含め、進んでいないらしい。

 この温泉街付近は、脆い地盤で崩れやすく、落石防止のネットが至る所に張ってあるし、沢が多く防災ダムの工事が実施されているようだ。急峻な山腹を切り開き盛り土し平坦地にする工事もあちこちで実施されている。打越の移転地も盛り土工事で平坦地にされているが,地盤が安定するのは年数がかかる。地滑りも心配だ。

 ダムの天端標高が586mなので、温泉街は全部水没するが、水没を逃れる地点に行ってみた。墓があり、沼津ナンバーの車があったので「墓参りですか」と聞くと「そうです」といい「今度工事が中止になるそうですがどう思いますか」と聞いてきた。この方は、先祖がこの温泉源を見つけ、ここで旅館をやっていたが、今は廃業し信州に住んでいるというこの辺の名士なのだ。新しい移転先に墓地を買うことにして入るとも言う。

 「総予算4600億円のうち、すでに3200億円を使っている。おいそれと中止は出来ないと思うが、早くはっきりさせて欲しい」という。「こんどの連休に前原さんが視察に来ると言っているでしょう」と不安を募らす。私も「ここまでやったら、完成させるべきですよ」と応えた。

 帰りに土産物店に寄った。温泉以外に、この辺では何が名産になるのか聞こうと「この辺の名産は何ですか」と聞くと、「うちの手作り最中です。宅配便で全国に送っているし、予約しないと手に入らない」そうだ。1260円で一箱かった。

 新しい移転先に移る予定だが、「中止でどうなるのか」と心配されている。「50年前は建設に反対し、仕方なく賛成に回ったが今、中止に反対している。妙な事になった」という。

 「中止と言っても延期で、また工事を再開することになるのでは」というと、女性は真顔で「そう言う見方もあります」と応える。そして「こちらに署名してくれませんか」と中止反対の署名簿を差し出されたので、署名した。「この署名運動も始めたばかりですが、もうこんなにしてもらった」と見せてくれた。

 「もう、どうにでもなれ」と言うのが実感だ。

 足湯では、若い女性が足を浸かっていた。近くの旅館で大学のゼミが研修している学生だ。下から2人の男性が上がってきた。「露天風呂はどこですか」と聞くので、「もう少し行った左側の階段を上っていってください」と教えた。

 至る所で工事が進んでいる。吾妻川を挟んで両側の山腹が削られ山肌が露わになり、盛り土で平坦地に造成されている。川には巨大な橋脚が作られている。ダム本体は中止になったが、何一つ完成したモノはない。

 これで中止となると、地域住民の生活と自然環境の巨大な破壊を残したままの最悪の事業で終わってしまう。

 旅館は、移転があるので設備投資を控えてきた。このままだと設備更新も出来ず川原湯温泉は、足湯と露天風呂を残し消滅してしまう可能性がある。

 移転先も1~3区に分かれて造成されているが、今は1区に移転が済んだだけで2,3区は未だ造成中だ。6月に移転先を見たときは、約20軒ほど移転していたが、こんな山の中腹にポツンと残されたままでは、生活が不便だ。

 工事を中断した箇所も法面処理をされるだろうが、地滑りなどの危険はある。

 地域住民、旅館業の人達の生活補償を具体的にどうするのか。多くの課題がある。

 計画段階とか、少し着工した工事であれば中止してもそう問題はないと思うが、八ッ場ダムのように、ここまでやってしまったらムダとは思っても完成させた方が良さそうに思う。

 完成させればさせたで、その維持管理に公務員の職場が増え、税金から多額の維持管理費が支払われるジレンマはある。

2009年9月17日木曜日

長妻さんの徒歩での官邸入りに、何か新鮮さを感じる


今までの自民党政権で見慣れていた組閣時の新大臣の呼び込み、ペーパーの棒読みの記者会見を一変させた鳩山政権の誕生であった。

 新大臣も、平均年齢は上がったが、今までの目玉人事で新人の女性大臣、民間人の登用で人気を得ようとした今までの組閣と違って、未経験者とはいえ、政策に長けた人材のように思えるし、論客を配したことは、少しは安心感と、期待が持てるモノになっている。

 しかし、今回の組閣でなんと言っても注目を集めたのは、長妻さんの徒歩での官邸入りであった。ほとんどの人が黒色の高級車で玄関先まで乗り付けていたことを考えると国民目線の新鮮さを感じた。

 私もよく、霞ヶ関、永田町を歩く。霞ヶ関、国会、議員会館、政党本部があるこの狭い界隈を黒塗り高級車が走り回っている。国会裏門に面する道路には、「内閣府」「国交省」などの札を掲げた車がアイドリングしながら駐車している光景を目にする。この道路の中央分離帯に以前、散水設備を設置し、夏季の昼間、時間を決めて散水し周辺の気温を下げる実験をしていた。ほとんど成果は得られなかったと思うが、その傍らで公用車が待機時間中アイドリングしているのは滑稽だった。

 若手国家公務員も、運転手つきの高級車を乗り回す事が出来るのを、ステータスと勘違いしているのではなかろうか。税金を使って過剰な利便を図っているのは問題だ。昼間は公用車を乗り回し、深夜はタクシーで帰宅する居酒屋タクシー問題はどうなったのか。

 折しも、民主党はCO2削減で25%を主張し、産業界の一部からは反対されている。国民にもCO2削減でエコ生活を提唱している。まず、公用車から廃止したらどうか。

 国会議員も車を廃止したらどうか。議員会館で議員が出かける時に「○○先生、○○先生」と車を呼び出す女性の声を聞くと、その議員はCO2削減をどう考えているのかと呆れる。

 そんな時、長妻さんの徒歩での官邸入りを見て、国民目線の大臣であることが分かった。以前の国会での追及を聞いても、迫力があり理論整然としていた。民間会社勤務、記者経験が大いに役立っていると聞く。

 厚生労働省の公務員も、嫌な大臣としてでなく、国民に信頼を回復してくれる大臣として迎え、膿を出し、省内改革に努めるべきである。

2009年9月11日金曜日

こんな安売り競争していて、本当によいのか




家内のスーパーへの買物に時々付き合う。選ぶ品物は特売品や値引き品で、閉店間近がねらい目だ。パンなどの売れ残りは、いつも同じ物ばかりだ。買いだめをして冷凍庫に入れておく。卵や砂糖が1人一つのサービス品である時は、強引に連れて行かれる。
 良い物が易く手に入ったときは、家内も満足そうだ。
 市内にスーパーが5店あったが、値引き競争や手狭による改築が出来ず、3店が撤退した。値引きするが品物の質が落ち、お客が離れていったようだ。

 デパートの売り上げも連続して落ちているようだ。消費者のひもは堅い。婦人服売り場を見るが、いつもセールをやっている。家内が「これどう?」というので、店員さんに「もう少し待てば、セールに出ますよね」というと、「これは出ません」という。家内に「気に入ったら買ったら」と言うと、やっと買う決心が出来たらしい。家に帰って「貴方がいなかったら買えなかった」と御礼を言われる。

 首都圏のデパートでは、古い靴や下着、バッグなどを引き取り1000円の商品券がもらえる商法が話題を呼んでいた。何と新しい購買を誘い出す効果があったそうだ。しかしこれはそんなに新しい商法ではない。私が若い頃、スーツの安売り店が古い不用になったスーツを持ってくれば、「半額になる」とか、「値引きする」とか言って商売していた。安売り競争の元祖だ。

 この「安売りが銀座を変えようとしている」というので、銀座へ行ってみた。

 銀座と言えば、高級ブランドのイメージが強い。昔は「東京銀座○○」と言えば、高級感があった。いまでも銀座2丁目はルイビトン、ブルガリ、テイファニー、カルチェなど高級ブランド店が林立しているが、5丁目にはユニクロが出店している。

 小売店では一人勝ちの企業だ。2020年には連結売り上げ5兆円を目指している。その銀座店に入ってみた。他の高級ブランド店は、お客より店員の方が多かったが、こちらはお客のほうが多い。

 商品を見ていると、店員さんが「レザージャケットは今、6000円でおつりが来ます」という。良く値札を見ると価格は5990円に設定されている。確かに6000円で10円安い。そこら辺で安値感を出しているとしたら、テレビ通販のジャパネットタカタの商法だ。まとめ買いすると3990円、これも4000円でおつりが来る。有名になったヒートテックのアンダーウェアーは1500円だ。

 興味があるのは、隣のビルを今改造していて今秋オープンする予定で、スタッフを募集中とのこと。その改造中のビルに入っていたのは、高級ブランド店だったそうだが、安売りのユニクロが隣に来たので、高級感のイメージがなくなったので撤退したらしい。

 今、全国各地で安売り競争が激化している。私達も安くなければ手を出さない傾向になってきたが、「何故安いのか」、「安物ばかり買っていたらどうなるのか」を真剣に考えなければならない。

 家具を調達しようと、ニトリの店舗に行ってみた。「更に値下げしました」のキャンペーンをやっていた。この会社の社長は「30~40%値下げしないと、消費者が納得しないだろう」とテレビで発言していたことがあるが、会社は本当に値下げをしている。値下げできる要因に、海外の優れた材料を買い集め、東南アジアの工場で製造し、日本に持ってきているそうだ。設計とか品質は本社でやっているらしい。

 ニトリの製品が売れても、材料の生産者、工場の従業員は皆海外の人で、日本人が担当するのは店舗での販売が主だ。どの位もらっているのか知らないが、ニトリの製品が売れると、潤うのは外国人だ。

 一方、中堅の家具メーカーの島忠にも行ってみた。設計コンセプトは同じであるが、価格はニトリの倍で、10万円を超す商品がそろっている。材料は国産を使用し国内で製造している。重量感もあり質も良いことは分かる。この会社の商品を買うと、高いが、日本の生産者、製造・加工業者が潤うことになる。

 経済はグローバル化しており、保護主義は良くないことは分かるが、日本の労働者が潤うようにするには、高い方の商品を買わなければならない。

 私の場合、30分ほど車で行くとイーオンの郊外型大規模ショッピングセンターがある。今、プライベート・ブランドで新商品の開発を行ない、安価な商品を提供しているという。安く出来るのは、お客の情報を取り込み、自社で商品開発をして、自社員が販売することにあるらしい。勿論エコを取り入れてカーテンの余り生地で、クッションを作って198円という安値で販売をしている例もある。

 安値競争は、消費者に強く指示され、利益は少ないが今後も続くだろう。そして競争に勝って初めて、利益が出てくる構造だろう。

 企業にあっては固定費の中で、人件費の占める割合は大きい。競争が激しくなれば、人件費を抑えなければやっていけない。

 人件費を抑えようと思うと、正社員ではない派遣社員、期間工、準社員、アルバイトなどでまかなうしかない。正社員だって減給されるだろう。そうなると収入は伸びず、家計は苦しい、GDPの約6割が個人消費と言われているが、消費は伸びない。国内経済は不況だ。安くしないと売れないから、更に人件費を削ることになる。デフレスパイラルだ。

 年収が300万円未満の人は、今50%までは行かないだろうが、それに近いのではなかろうか。格差の拡大ではなく人件費の削減が進む結果、「低所得化」といった方が当たっている。

 政治的にはどうすればいいのか。最低賃金を時給1000円にする方法も提起されている。しかしアルバイトの時給を上げることは、他の社員の給料の値上げもしなければならないだろう。今だって四苦八苦している中小企業にあっては、人件費の高騰は経営に関わる問題である。

 「お客様の生活支援キャンペーン」なる催し物に出会うことがある。大企業が、自分の利益を吐き出してのキャンペーンなのか、生産者を泣かせてのキャンペーンなのか分からない。

 適正価格で、企業も正当な利益を出し、設備投資も出来、従業員の生活が楽になり、雇用も促進し、消費も拡大する。そうするにはどうすればいいのか。ここが一番の問題なのだろう。

 社内留保などを考えると、企業は労働者をないがしろにして大儲けしているのではないかという見方があるが、適正価格で安売りに歯止めをかけなければ、国民の懐はうるおわない。

 誰がその口火を切るのか。自分の事でさえ不安があるのに、他人の事など考えて買い物など出来ないのも確かだ。

2009年9月8日火曜日

国家公務員よ 奢るな! 公務員改革は過剰な身分保障の撤廃からだ




ここに来て、官僚の横暴さが目に余る。
 民主党政権は、マニフェスト実行の財源の一部を補正予算の見直しで捻出しようと考えていたが、そんな民主党の考えを無視したように、官僚は予算執行を進めている。これが本当であれば、民主党の政権は行き詰まる事態もなりかねない。
 官僚の天下り、渡りに駆け込みが目立った。輸入米問題で責任をとった農水省の前次官が大日本水産会の会長に天下りしたことから、それに関連しての渡りも明らかになり、玉突き人事であることが分かった。
 国家公務員制度改革では、麻生政権の対応に不快感を示し、行革担当だった渡辺さんの自民党離党までになった。麻生さんは天下り、渡りを禁止すると言明したが、実体は不透明だ。
 9月に入り、消費者庁の設立を急ぎ、長官に消費者行政に素人の内閣府の前次官が付いた。併設される委員会に委員長に知名度にある女性弁護士がつこうとしたが、消費者問題には素人との批判を浴びて自ら辞退したことを考えると、官僚の厚かましさがよく分かる。民間人を望む民主党は、この人事を見直すと言うが、思うように行くかどうか。

 公務員改革に対する官僚の抵抗は厳しい。

 政権交代を訴える民主党の鳩山さんは、当初「政権をとれば、局長以上は辞表を出して頂く」と政治主導を強く望んでいたが、今は余り聞かない。

 どうして官僚は、こうも強かなのか。学生時代に使った「行政組織法・公務員法(佐藤・鵜飼 法律学全集 有斐閣 昭和38年9月)」を開いてみた。

 国家が巨大な権力を持って広範な行政事務を遂行しようとすると、相当な人数の公務員が必要になる。そうなると、当然の事ながら同僚意識は出てきて「国民のため」の存在を忘れて、官僚主義が生まれてくる。官吏は試験任用制度があり、公務員試験に合格した特権的身分の確保となり、同僚意識、官僚主義が強くなる。

 1946年公布の日本国憲法第15条には「国民の公務員」「国民全体の奉仕者」と規定されている。公務員の選定罷免は国民固有の権利で、国民は公務員の使用者なのだ。では、国民の意思はどういう方法で示されるか。
 
 政治的には政党活動によるが、問題は「政府が自己意思によって公務員を動かすことが出来るか、公務員は政党の意思に奉仕しなければならないか」だそうだが、公務員は内閣に対して責任を負う事になる。
 一方、憲法73条4号に内閣の職権として「法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌握すること」と定めている。採用、罷免、懲戒などが法律で決められているのだ。

 しかし、人事行政は政治に左右されるのを防ぐ為に、一般行政から独立した人事院がある。麻生政権の時、官邸で総理が開催する公務員制度改革の会議を開くべく谷人事院総裁の出席を求めたが、発言しても聞いてはもらえないと出席を拒否し欠席したため、甘利行革担当相が記者会見でこき下ろした事件(?)があった。あの不貞不貞しい人事院総裁の顔を見ると、体を張って公務員の地位を守っている事がにじんでいた。

 公務員は、民間では見られない程、過度の身分保障になっているのだ。

 公務員が政府の活動を阻止する争議や共同罷業行為が禁止されている事は誰でも知っていることだ。1947年の第一回国家で、国家公務員法案を提出したが、最高司令部のフーバー案に反して、この行為は削除されていた。ところがその後、全官公労が闘争、争議に突入の形勢になり、最高司令官が公務員の団体交渉権を否認、違反に対して罰則を設けた。

 その後昭和23年、改正案などで、労働三権禁止の強化、人事院の権限強化、特別職の範囲を縮小するなどの改正が行なわれた。最も頻繁に改正されたのは特別職の縮小である。特別職は、自由任用を適当とする職や、選挙や国会の議決、同意で就任する職で、任免がある程度自由な職であるので、これに属する職を減らすことにより、国家公務員の身分保障を強めたことになる。

 これに引き替え、一般職の任免は法により厳しい条件が定められ、本人の意思に反して免職は出来ないのだ。局長や事務次官は、この一般職に該当し簡単に辞めさせる事など出来ないのだ。

 日本社会の他の分野に与えられているより、より多くの個人的保障が公務員に与えられていることになる。

 公務員の処分には、分限処分、懲戒処分、弁償責任と刑法上の責任がある。分限処分には、降任、休職、免職があるが、勤務実績が悪いとか、心身の故障、適格性の欠如など法律や人事院規則で厳しく定められている。

 大事なことは、このほかに「官制もしくは定員の改廃」「予算の減少による廃職」「過員を生じた場合」が法律で掲げられている。遂行すべき職務上の義務がなくなった場合が該当するらしい。
 問題は、この免職処分は自由裁量処分か、それとも国家公務員の身分保障の精神から考え自由裁量処分ではないのか。

 答え(解釈として)は、国家公務員の免職は一定の客観的基準があり、平等取り扱いの原則、分限の基本基準が法で決まっており、違反して免職させてはならない事になっているらしい。

 昭和33年に初版が出版された法律書で調べたのだが、公務員は一度採用したり任用すると、なかなか首切りが出来ないのだ。今はもっと身分保障がされているのではないかと思う。

 余りにも現代にあっていない組織であり、官も民を見習って強力に改革していかなければならない。

 まず、労働三権を与えて、過剰な身分保障は廃止すべきである。

 各省の局長や事務次官は、特別職にして免職しやすくすることだ。公務員の不作為や判断の間違いで、国民の信用を落とす事態が発生しても、誰も責任をとらないこと自体がおかしい。

 時代は変わっているのだ。国家公務員だけ特別なわけではない。「官制定員の改廃」、「予算減少による廃職」、「過員を生じた場合などの免職」は、税収減による予算不足、不必要な業務、重要性の低い業務、業務縮小による過剰人員、さらには「リストラ」で適用すべきだ。

 使用人である国民と比べ、過剰なほどの身分保障では、行政機関は硬直してくる。

 最大の難関は、国家公務員が自分の不利になることを率先してやるとは思えない。国民の多くの支持を得ている民主党政権でも、官公労を母体に持っている。どうなるか。鳩山さんのトーンも低くなった訳が分かる。

2009年9月7日月曜日

国民が民主党を見限るとき


民主党政権が右往左往している。一気に人事を発表すると言いながら、小出しの人事発令、なかなか読みにくい政権運用で要になる国家戦略局、連立政策のための社民党、国民新党との党首協議会などの構想、そして幹事長の小沢さんの存在に対する根強い不信感など民主党の先行きに不安を感じざるを得ない。

 それに、今回当選した民主党新人候補者の資質の問題は、直ぐに戦力として期待できず、国会議員教育は民主党の大きな課題に上げられている。

 さらには、民主党の大命題は「ムダの排除、予算を根本的に組み替える」ことであるが、経済効果を早く出すためか、駆け込み執行なのか、補正予算の多くは既に執行されているらしい。取り戻しが可能かどうかを検討するというのだから先が思いやられる。

 国民が期待した政権交代、民主党がやろうとしている政治改革は、言ってみれば大変革であり、国民を味方に付けなければ、ほとんど不可能である。

 今後は恐らく、事ある毎に民主党マニフェストとの整合性が攻撃課題になり、野党やメデイア、政治評論家は批判を繰り出し、そうなれば民主党政権は早晩行きづまる。その時、国民は我慢するか、民主党を見切るか。

 民主党が国民の支持を失う時とは、どんな時か

 一番考えられるのは、政治判断が国民の目線からかけ離れだしたときだ。
 政治では、大きな課題から小さな課題までその時、その時判断しなければならないが、その時官僚の情報、アドバイスに偏ると判断を誤る危険がある。「国民の目線」からかけ離れてくると、「やっぱり民主党もダメか」と言うことになる。
国民の支持を得るのは大変であるが、支持を失うのはアッと言う間だ。

政策実行に多数の機関が絡んでくるようになると、意見の一致が不可能になり、政権が瓦解することになる。

 官邸では、国家戦略局を中心に「官僚主導から政治主導」へと方向転換しようとしていることは賛成だ。しかし、参議院での議席数のことを考え社民党とか国民新党との連立が必要なために、協議会を作るという。社民党は国家戦略局への参加を希望しているとも言われている。何やらあの細川政権で政策不一致による政権瓦解の原因になった8党派による協議会(?)の存在が思い出される。
 国家戦略局が、政治主導へ向け激しく官僚と戦っているときに、官僚はこの協議会に擦り寄ってきて官僚主導を目指そうとする。官邸が党に負けるときが民主党政権の瓦解の時だ。細川政権の二の舞になるのだ。

 皆が心配している二重権力構造であるが、小沢さんの今までの政治行動からして、政権が行き詰まる事は十分可能性がある。一部の政治評論家は細川政権の時の「あの失敗」は反省しているはずだと言うが、小沢さん本人は「あの件」に関してなにもコメントしていない。

 鳩山さん、小沢さんの2トップの政治資金規正法違反事案は、民主党のアキレス腱だ。

 小沢さんの政治と金の問題は、裁判所も認める案件もあり、払拭するのはむずかしい。入閣すると矢面に立たされるのは目に見えているので党の仕事に専念するのだろうが、政権政党の幹事長だ。証人喚問するなどして徹底的な糾明が必要だ。「知らなかった」、「何もしていない」で斡旋収賄罪適用を回避するなど、国民感情からして理解できない。

 一方の鳩山さんも説明責任は尽くしたというし、世論調査でも60%は「納得する」という。でも何も分からないのが本当だ。考えてみれば脱税行為とも受け取れる。クリーンな政党には馴染まない。

 野党の自民党は、今はショックの余り消沈しているが、政治資金規正法の見直しは必要だ。「政治と金」の問題を議論する中で、2人の責任を追及する手もある。そして国民が納得できなければ、鳩山政権は終わりだ。

 鳩山さんがダメなら、岡田さん、菅さんがいるので、人材には事欠かないが、小沢さんをいれ2人の責任問題では民主党政権は持たないだろう。

 その時が2年先か、4年先か分からないが、野党自民党がどうなっているかだ。立ち直るにしても核となる人材がいない。強力な支持基盤がみつからなければ自民党は解党しているだろう。地方によっては、自民党議員が欠けた県もあるらしい。本当に小泉さんの「
 自民党をぶっ壊す」公約が実現したことになる。

 健全な二大政党制を築くには、健全な野党が必要だ。自民党を立ち直らせるか、他の政党を作れるかは国民の課題になる。民主党を見捨てるときは、野党が健在でなければ、国政は崩壊し、国民生活は大混乱になる。

民主党政権を長持ちさせるためには、メデイアも民主党が国民の目線に反する判断をする時は厳しく批判し、その姿勢を正すことだ。民主党員は官僚に負けないようにしっかり勉強し、党の方針に拘らず自分の判断で行動する勇気を持つべきである。

2009年9月5日土曜日

「国民目線の常識」で押せば、国民はついてくる


小沢さんは、これが民主主義の原点だと言った、辻立ち1日50回、握手責めの「ドブいた選挙」で民主党は圧倒的な数の議席を取り戻した。自民党大物議員に対立候補を立てての選挙戦は、何やら権力闘争の嫌いもあった。

 米国では日本を懸念するシンポジウムが開かれ、専門家である4人のコメンテーターが発言したというニュースがテレビでながれた。その中の1人は政権担当の経験のない政党で、その幹部クラスは国会に余り来ていない議員であることなどを例に挙げ民主党政権に対する不安を表明した。

 私達にも不安がある。本当にマニフェストを実現できるのか。八ッ場ダムの例のようにムダな公共工事の見直し、高速道の無料化、自民党政権では、なかなか進まなかった年金制度改革、860兆円に上る長期債務を抱えてバラマキ予算をどう処理するのか。財源はあると言うが、どんな格好で、どこにあるのか。

 「そんなにうまくは行かないだろう」とい根深い疑念があるのも確かだ。

 そして、ことあるごとに「マニフェストはこうだ」と国会審議やメデイアに取り上げられると、政権政党としては不利になる。当初のマニフェストに拘ってはいけないのだ。目標はP→D→C→Aで、修正しながら達成していくモノだ。

 課題が山積する国政にあって、まずやらなければならないのは、「国民の目線での常識」に沿った判断であり行動だ。これさえあれば、国民は何とか付いてきてくれるモノだ。

 ところが、それを疑う事案が都議会で出てきた。

 2016年夏季五輪開催地を決めるIOC総会に都議会は、15人の議員を派遣すると発表したが、1人100万円では「税金のムダつかい」ではと批判されていた。ところが、9月5日の朝日新聞で、余りの批判に民主は7人から4人、自民は5人で変わらず、公明は3人から1人へ減らして派遣するという。

 民主党が都議会第一党になったのに、どうして無駄づかいと判断できなかったのか。それでも「20人から115人に減らした」と弁明出来るのであれば分かるが、批判されての対応では情けない。自民党は減員せずでは、選挙に負けるのも当たり前と思えてくる。

 民主党は、本当に「変わったのだ」と言うことを示せなければ、次の選挙は負け戦だ。
 政権の交代期をまたいで、霞ヶ関では国民の常識から考えておかしい行政が進んでいる。

 民主党が財源確保のために、補正予算を根本から見直すと行っているのに、46基金について、予算を執行したので、取り戻せないかと検討するそうだ。高級官僚の天下り、渡りも行なわれているし、消費者庁では、トップの人事に民主党がクレームを付けている。

 国民感情からすると、麻生政権、霞ヶ関のやり方には、賛成できない。常識から考えても個々は新政権の判断を仰ぐべきである。

 国会議員や官僚は永くやっていると、国民感情からかけ離れた判断をするようになる。それが官僚や国会議員への不信となり、今回のなだれ現象となった。

 民主党政権を維持するためには、メデイアは小沢さんの行動をしっかり監視すべきである。細川政権の二の舞をやっては、国民が迷惑する。
 今回の選挙では、官僚にもNOを突きつけられたことになる。自民党とのなれない政治ではなく、国民目線での常識のある行動をとって欲しいモノである。官邸と民主党との権力の2重構造につけ込んだ官僚主導政治はゴメンなのだ。
 
 民主党も判断に迷ったら、今回の選挙の所信に立ち返って考えることだ。自民党は、何故大惨敗したのかを思い出すべきだ。

 政治への不信を払拭するには、「国民目線での常識」ある政策を示すべきだ。

2009年9月4日金曜日

自民党復権への道




 衆議院議席296から119へ、自民党の大惨敗の結果に終わった。
 
 先の衆院選は、自民vs自民の戦い
 今回の選挙で、民主党は自民党大物議員、問題議員へ女性新人候補を当てるなど、自民vs民主のであったが、前回は郵政民営化賛成派の自民vs郵政民営化反対派の自民の戦いで、刺客とは言うが自民党が自民党の仲間を制するモノであった。結果は、獲得票数では賛成、反対が拮抗するモノであったが、獲得議席数は自民党が296議席と圧倒的に多かった。

 小泉さんはその後「改革なくして、成長なし」をスローガンに思い切った改革を断行していった。年金問題では「加入していたかどうか」が問題になり、小泉さんは「人生いろいろ、会社もいろいろ」と自分の加入問題もはぐらかす奇妙な答弁に終始した。

 これだけ問題になっていた年金問題でも、不思議なことに民主党は小泉政権を追いつめる術がなかったのだ。

 そして小泉さんは、任期一杯で退く
 多くの続投エールを振り切り、国会会期延長もせずに任期一杯で退くことを決めた。兎に角、国会を延長せず、総理の座を退くことを急いだ。総理の座を禅譲された安倍政権で、年金に関する大問題が噴出したことを考えると、自分の政権で火の粉を浴びることを嫌ったのだ。新聞報道によると、後で「国会を延長しなくてよかった」と述懐していた事からもそのことは伺える。

 長老、キーパーソンによる政権たらい回し 
 小泉さんに再出馬の期待がかかるが、後に続く安倍、福田政権を作り上げた。しかし、参議院での「ねじれ国会」の状態でもあり、安倍、福田両総理は政策推進のために、民主党小沢さんに協力を求めるが、安倍さんは「あってもくれない」、福田さんは、小沢さんと話し合った連立構想も、民主党内の猛反発に会い破談に。党首討論で「誰と話したらいいのか、本当に困っている」と愚痴る始末だ。

 安倍さんは、体調を崩し政権を放り出したが、福田さんも「選挙に勝てる顔ではない」を理由に、これも政権を放り出した。このことは世襲議員のひ弱さを国民に見せつけた。

 度重なるたらい回し麻生政権が誕生
 たかが自民党総裁選が、何故こんな総選挙のようなお祭り騒ぎになるのかと疑問を投げかけた自民党総裁選で、マンガオタクで若者、無党派層に人気があると見た長老、キーパースンが麻生さんを担いだ。今、このようなやり方を批判している若手、中堅議員も雪崩を打ったように麻生支持で固まった。

 御名御璽など古い表現を使って所信表明をした麻生さんに、期待が集まったが、それは一時の夢だった。

 総理の資質、行政への不満、閣僚の不祥事で麻生政権は信頼を失う
 「選挙の顔」として選ばれ、選挙管理内閣の様相を示していたが、折からのリーマン・ショックで、世界的な経済危機に立ち向かわなければならなくなった。「政局より経済対策」を優先し財政出動に打って出た。08年、09年度本予算、補正予算と休む間もない財政出動に最後の方では、アニメ殿堂など愚かな箱モノ政策しか出てこない程になっている。

 麻生さん自身の素質の問題も出て内閣支持率は下がる一方、それに公務員制度改革の生ぬるさは、渡辺さんの離党へとなった。長年の構造改革も加わって格差社会が顕在化し、派遣社員の契約打ち切りは大きな社会問題になった。

 デイスカッションの苦手と言われる小沢さんとの党首討論でも、麻生さんには分がない。理論的主張は小沢さんに軍配だ。

 他に上げればきりがない。

 市場原理主義の構造改革からの離別
 「元々、私の場合は郵政民営化には反対だった」と言う発言も飛びだし国民はあっけにとられただろう。格差社会に対する批判がつのる中で、自民党はマニフェストで構造改革からの方針転換を唄った。

 小泉構造改革の真剣な総括が必要であるが未だやられないままの方針の転換だ。何故、総括が出来ないのか不思議だ。

 既に引退を表明していた小泉さんが、ある後援会で「自分が総理大臣についたのが、本当に良かったのかどうか」という発言をしたとメデイアが伝えていたのを聞き、小泉さん自身の総括もない事に、無責任さも感じる。

 過去の反省もなく、前へ前へ進む政治に不信感が募らないか。

 自民党でも若手、中堅議員はがんばっている
 若手、中堅議員ががんばっているのは民主党ばかりではない。自民党の若手、中堅議員もがんばっている。ムダ排除にはプロジェクトチームも出来、各省の政策の洗い直しをやっているし、メタボ国会も開催し国民とのタウン・ミーテイングもやっている。私も一度参加し「このような催し物では、年配者の参加申し込みが多いのでは」と質問すると、「いや、麻生さんが総裁になってから若者の申し込みも多くなった」と言う。

 政府とプロジェクトチームの政策の判断は、誰が見てもプロジェクトの言い分が正しい。麻生政権は官僚の言いなりの政策だ。

 自民党執行部も党員から見放されている
 選挙を控えて「麻生さんでは戦えない」という意見が続出し「麻生おろし」の動きも出てきたが、自民党執行部は、公認問題、選挙資金で脅しにかかったのだろう。反麻生の急先鋒だった、中川さんが議員懇談会で急に握手までした事からも伺える。

 選挙での敗北後も、これと言った方針が打ち出せず、首班指名で誰にするのかも宙に浮いたままだ。麻生さんも辞意は表明するも辞職せず、執行部も同様な状態で落選した前職が執行部を怒りまくるのも理解できる。

 自民党は党内から崩壊している
 次の核となる人が見つからないのだから、ドウしようもない。バラバラな状態で選挙に突入し、敗北後もバラバラなのだから組織として崩壊したのも同然だ。
 メデイアは、そんな自民党の映像流すので、重大さを目の当たりにする。本当にそうなのか。

 自民党復権への道
  いろんな手はあるだろうが、長期政権からの挫折は立ち直るにも茨の道だ。

  一番やらなければならないことは、民主党とは違った「自民党のあるべき姿」の構築だ。そのためには、旧来型の組織を引きずっていては理解されない。諸悪の根源かどうかは知らないが、勉強するグループは別として、モチ代、選挙資金を頼る派閥は解消すべきだろう。

 そして、国民の民意を汲み取った政策立案が大切ではないのか。今までの自民党の政策は官僚に頼った政策、企画会社の企画に頼りすぎてはいなかったか。自民党員が民意を吸い上げ、自民党員が政策を作り上げていく。そんなプロセスも必要になる。
 世代交代も必要だろう。折角設けた年齢制限も難なく破ってしまうやり方。あと1年で勤続50年で銅像が建つことを目指して高齢者が立候補し敗退する姿も見た。小選挙区で負けた党員が、今回の敗退のげんいんを作った長老や派閥の領袖、総理経験者の勇退を追求していたが、これが若手、中堅の本音だろう。

 今回の選挙でも、高齢の大物議員が民主党の若手女性候補に苦戦する姿は、見ていて滑稽だった。永年勤続などもっての他だ。若手を育てて世代交代する。議席を独り占めにしないことが重要だ。

 「政治と金」はクリーンに。政治資金規正法違反事件など起こしてはならない。

 民主党は鳩山さん、小沢さんと言うトップ2が、政治資金規正法で疑惑を問われている。小沢さんは秘書が政治資金規正法の虚偽報告で逮捕された。あっせん収賄の疑惑もあるらしいが、金を送った側は認めるが、受け取った側に認識がなければなかなか罪を問いにくい。

 小沢さんの政治力で、公共事業が取れると期待(誤解)して献金し続けたが、小沢さん側は何もせずに、タダ金を受け取るだけでは詐欺行為ではないか。鳩山さんだって、故人献金なんて、笑えないジョークだ。こっちの方は脱税の疑いも出ているらしい。細川政権の時の佐川急便事件の時のように自民党激しく追求してくるだろう。

 検察庁には、がんばって政界浄化を行なって欲しいが、民主党にとっては手痛いことになる。1人なら代わりに岡田さんや菅さんがいるので、何とかなるが、2人では致命傷だ。政権を譲り渡すしかない。

 こうなれば、野党である自民党にとっては復権のチャンスだ。
 若手、中堅議員を中心に、「新しい自民党」を構築することが先決だろう。

麻生さんは総理・総裁として、何を発信できたか




官邸での総理のぶら下がり会見。テレビで流れる映像が、全部なのか、一部なのか分からないので、これで本音を把握することは難しいが、総理・総裁の心境を良く映していて面白い。
 そして、懸命に弁解する官房長官の姿に、あわれさも感じる。

 麻生さんは、他人に丸投げの姿勢が徹底していた。

 最近では、記者から「首班指名で麻生と書くことに自民党内で異論が出ているが」との質問に、「ここは官邸。総裁の仕事にコメントできない」といい、「幹事長に任せている」とコメントを避ける。それでも「総裁としてどう考えるか」と聞かれ、「今も言ったとおり、幹事長に任せている」とコメントを拒む。

 行政の事に関する質問では「官房長官の仕事、官房長官に聞いてくれ」と逃げの姿勢が目立った。

 麻生さんは、社長経験者で経済には強いと自認している。オーナー社長は、好き勝手なことが言えて、役員から上がってくる事案に「ウン」と言えば済むし、必要な事は部下に任せればいい。政治のように自ら国民に働きかけることなど必要ない。そんな姿勢が身に付きすぎているのではなかろうか。言うなれば、総理・総裁に一番不向きな人なのだ。

 麻生さんが、総理・総裁としての考えを述べたことがあっただろうか。思い出せない。混乱時のコメントはほとんど丸投げなのだ。

 自分に関わる不味い質問は、当然の事ながら極力避けようとする。先日も「総理、総理、総理・・」と呼び戻される姿が映った。早々と逃げる姿勢は、国民に背を向けた証拠であり、人気の凋落に繋がる。

 国民に話しかける一番のチャンスを煙たがった総理に政治を任せるわけに行かない。人気下落は当然で、自民党大惨敗の要因は麻生さんのこんな姿勢にもあった。

 具体的にどう指示したのか、正直な自分の考え、皆さんだったらどう考える?、記者とデイスカッションし「そういう考えもあるね」ぐらいの鷹揚な姿勢が欲しかった。麻生さんは最後まで自分は何をすべきか分かっていなかったことになる。

麻生さんは、恥も晒し続けた。それは国の恥でもあったが、一番迷惑したのは国民だ。サッサと去って行った方がよい。もう誰も本気で相手にはしないのだから。

こんな民主党で政治主導ができるのか


民主党圧勝の原動力が分かってきた。民主党はその選挙区で、それなりの知名度もあり、実力もありそうな新人を、旧来の自民党がやった辻立ち、握手などのドブ板選挙で当選させてきた。その人物、あるいは政策、実績は二の次だ。

 国中が、自民党に嫌気がさし、今回は民主党に替えてみようかとの風潮が高まっていたのだから、民主党、名前、顔を売ることが当選の必須条件であることは分かる。

 開票してみれば、自民党は119議席に対して、民主党は新人143人を含む308議席を獲得した。民主党内では、小沢さんのグループは150人の所帯になり、菅さん、前原さん、野田さんのグループ、旧社会党グループ、旧民主党グループはそれぞれ30人程度であることを考えると、党内の小沢さんの発言力は絶大であると共に、国政への影響も計り知れない。

 それにも増して心配なのは、新人143人を抱えたことで、国政がうまく行くかどうかだ。民主党は100人ほどを行政につかせるという。全く素人では、官僚にバカにされるし、それなりに力のある経験者がつくだろう。政権を担う党として官邸にも優秀な人材を配置しなければならない。経験者65人と新人143人が党に残り国会の活動をすることになるのだろう。

 各種委員を掛け持ちで、委員会での審議に臨まなければならないが、与党委員として質問に立ったり、政策課題が十分に審議出来る能力が備わっているのか。官僚主導であれば、提案されたことにYESだけやっていれば良いが、今後は政治主導に持っていくとなれば自分の考えをしっかりしなければならないし、議員立法もドンドンやるべきだ。そんな国会で、政権与党の半分近くが素人同然の新人ではどうなるのか。

 民主党の主導する政治主導の政治など出来るはずがない。ますまず官僚が幅を利かす政治になっていく心配がある。

 しかも小沢さんには、「壊し屋」としての異名があるほど、政局での危うさがある。16年前の8党混在での細川政権樹立は、「新しい日本」の構築への期待が大きかったが、当時の大蔵省斉藤次官と小沢さんが組んでの唐突な福祉税導入問題で、政権は崩壊に向かい、他に金銭の問題もあって細川さんは政権を放り出した。

 小沢さんへの心配は、開票後から隙間見えてきた。開票速報の感想を聞かれて、「まだ確定したわけではない。メデイアの予想の段階では何も言えない」と言ってみたり、政権移行チームの断念や人事構想の発表を止めたり、何やらチグハグさが出てきているが、背後に小沢さんの意向があることは誰でも想像がつく。開票当初から、党内の権力闘争が見え隠れする状況だ。

 これでは、小沢さん不在の政権交代の方がまだましだ。

 今回の政権交代は、小泉さんの「自民党をぶっ壊す」宣言、構造改革による格差社会の顕在化などで、自民党への嫌気は増し、小沢戦術がなくても、拮抗しても政権交代はやれたはずだ。まだその方が議論百出で面白い。

 選挙期間中は、辻立ち、握手、子育て、教育など人気取りのバラマキ政策をお互いに批判しあってはいたが、日本のあるべき姿、860兆円にも上る先進国唯一の長期債務国での財政再建など重要な課題は話に上っていなかった。

 期待通り民主党はかったが、党内で小沢さんとの戦いをやっている暇などない。そんなことをやっていると官僚の思うつぼ、官僚主導に持っていかれ政治主導など夢物語になることは分かり切っている。民主党執行部が小沢さんとどう対応できるかで、日本の未来が決まるのは恐ろしいことだ。

ところで、小沢さんと鳩山さんの政治資金規正法違反事件はどうなったのか。小沢さんはあっせん収賄、鳩山さんは脱税の疑いを含んでいる。これから始まる権力闘争では自民党が激しく追求するだろう。党首討論の時、「政治と金」の問題で公明党の太田さんは「政治資金規正法違反事件では、秘書が責任をとるだけでなく、議員も辞職するようにすべきである」と鳩山さんに迫ったとき、鳩山さんはチョット考えて、「原則賛成だ」と同意した。

 「企業献金がダメなら、全面禁止にしたらどうか」と開き直るのではなく、まずもっと説明し、それでも国民が納得しないのであれば、潔く議員を辞めるべきである。

 西松建設違法献金事件での民主党の第三者委員会は「政局も重大な時期であり、指揮権発動の可能性も考えられても良かったのでは」という意味の報告書を提出した。なんて言う手前みその横暴な意見なのだろう。こんな重大な問題を抱えているので当然に、閣僚人事では法務大臣が注目される。小沢さんに近い人がなれば、見え見えである。

 国民はしっかり監視しなければ、権力者は自分に都合の良いようにやってしまう。民主党政権誕生による政権交代に浮かれてはいられない。幸いにも、来年の参議院選で審判を下す事が出来るのだ。

2009年9月3日木曜日

権力闘争の様相を呈してきた衆院選 これでよいのか


4年前の郵政民営化で自民が296議席、今回の政権交代で派民主が308議席、両方ともに驚くべき議席数だ。本当に民意を反映した結果なのか。

 先の小泉政権時の郵政民営化の是非を問う衆院選での新聞報道「都道府県別各党獲得票数・議員数」から有権者の判断を小選挙区の見たことがある。

 その結果を郵政民営化賛成を自民・公明獲得票、反対を野党獲得票で計算すると、賛成49%、反対51%で、郵政民営化には反対の意思表示であった。勿論、小選挙区は地域密着の選挙でもあるし人物本位での選択もあっただろうが、有権者の判断を知るには一番良いと考えたからだ。

 しかし、議席数では、自民が296議席で自公が圧倒的多数を占め、衆議院で2/3を確保し、「他に大事なことがある」と真面目に訴えた民主党を大きく引き離した。民意が議席数に反映していないのだ。私はこのことを2回ほどネット新聞に投稿したが、メデイアも、このことを報じることはなかった。

 ところが、政党はこのことを知っていたのだ。

 新聞報道によると8月27日頃、麻生さんの小松市での遊説で、このことに触れた演説をした。それによると、「先の郵政民営化選挙では、賛成51%、反対49%だった。この2%の差が議席数に大きく影響する」と言及し、更なる自民への支持を訴えたらしい。
賛成、反対が逆になっており、どういう計算をしたのか分からないが、政治通は分析していたのだ(当然の事だが)。

 国民の民意を解せず、圧倒的な議席数は、それ以降の自民党政権のごり押し国会運営に繋がっていった。

 そこで今回の政権交代の民意はどうだったのか。

 同様に小選挙区の集計表から見ると、獲得票数は自公で40%、民主で47%、その他の党が13%になるが、小選挙区での議員獲得数は自公で64人、民主221人になった。小選挙区300人を獲得票数比例で割り振りすると、自公120人、民主141人であり自公は半分、民主は1.5倍以上の議席数になる。1票の格差もあるが、民意と議席数はあっていない。
 政権交代賛成は60%、反対は40%であるが、奢るな民主、悲観ばかりするな自民だ。

 細川政権の時に小沢さんの強い意向もあり導入された二大政党制であるが、地滑り的な結果になる傾向にあるらしい。

 政治は「国民のため」であるべきだが、郵政民営化、政権交代を見ると、結果は権力闘争の様相をていして来たように見える。

 以前のように、中選挙区制による大きな選挙区で多様な意見を持つ国民の代表を国会に送った方が良いような気もする。

2009年9月2日水曜日

官僚主導から政治主導への重要課題




今回の政権選択選挙のでの民主党の圧勝は、官僚主導政治へ国民がNOを突きつけたことになる。

 官僚主導政治が問題になって久しい。脱官僚など多発する官僚パッシング、麻生さんは「官僚は敵ではなく、うまく使い切ることだ」と言うし、鳩山さんも「脱官僚は正確ではなく、脱官僚依存」と言い出した。

 民主党は、今回の選挙でも脱官僚政策を掲げている。事務次官会議の廃止、ムダをあぶり出すための行政刷新会議、そして目玉の「国家戦略局」がそれだ。

 期待したいところであるが、メデイアはそんな民主党政権に不安を隠しきれない。どのメデイアも不安を煽っている感じだ。あの自民党政権だって、官僚の協力なくしては何も出来なかったし、官僚にうまく使われて、私利私欲、省利省益の体質を築き上げた。

 敵対するも政策を推し進めるか、官僚とうまくやっていくか。巨大な官僚機構と相対することが大変な事ぐらい想像できる。

 しかし、メデイアの不安は、却って官僚の思うつぼだ。ここは逆に、官僚は政権の意向に沿って仕事をするのが当然だと主張すべきである.

 そして、政権の中枢である官邸と与党(連立与党)はしっかり団結すべきである。官僚は官邸と意見が合わない場合、官邸と考えを異にする与党の実力者に接近し、あわよくば自分たちの政策をごり押ししようとする。与党の実力者は、それを機会に政権の実権を握ろうとする。

 過去に良い例がある。細川政権の時、小沢さんと当時の大蔵大臣の斉藤さんが組んで福祉税を提案してきた。その時の官房長官だった竹村さんが、官邸での記者会見で「過ちは改むるに憚ることなかれだ」と福祉税導入に不快感を露わにしたのを、今も鮮明に覚えている。それ以降、細川政権は衰退の一途をたどることになった。

 大蔵省が福祉税導入を求めて、官邸と考えを異にする小沢さんに接近し、強力に推し進めようとした。細川さんには佐川急便などとの金の問題が発生した事もあるが、政権の命取りになった。

 いろんな要因はあるにしても、一番大事なのは、国会議員の意識の問題である。
 広く民意を汲み取り、しっかり研究し政策を議論すべきである。複数の委員会に属していても、委員会の開催、審議時間が極端に短い事に疑問を感じる。

 国会議員には、しっかり仕事をしてもらうために政策秘書を付けたり、約370億円に及ぶ政党助成金を血税から拠出したり、非課税の各種優遇策を与えている。国会会期中は国会に来てしっかり仕事をすべきである。

 次期鳩山政権は、いきなり大きな試練に立たされることになる。

 官邸と連立与党は、一致団結し官僚に隙を与えてはいけない。

 小沢さんは、じっと我慢すべきである。意に沿わなくても安易に官僚と組むようなことがあってはならない。

 国家公務員制度改革は急ぐべきである。労働三権は与えて、公務員の特権を排除すべきである。連合や日教組などとどう付き合うのか、はっきりさせることもポイントになる。

 すべて曖昧で、先送りでは国民の信頼を失う事は分かっているはずだ。

2009年9月1日火曜日

奢るな民主 この議席数は民意を反映していないのでは(2)


圧倒的な議席数を獲得した民主党であるが、こんごの政権運営にいろいろな情報が飛び交っている。「人事は一人で決める」と言うこと自体が、裏に何かあると思わせる。

 本当に政権移行がうまく行くのか、小沢さんとの2重権力構造をどうするのか。私も今までに「政局を小沢さんに頼る危うさ」を何回か書いたが、みんな心配している。ここは小沢さんには我慢してもらわなくてはいけない。

 ところで、民主党が獲得した議席数は民意を反映したモノだったのか。前回の郵政民営化で296議席を獲得した自民党の議席が、民意を反映したモノだったか検討したが、今回も検討してみることにした。

 前回の郵政民営化是非を問う衆議院選挙では、自民・公明票を郵政民営化賛成、野党票を反対票として小選挙区の得票数を計算してみると、反対51%、賛成49%で、有権者個人の判断は郵政民営化反対だった。
 それを比例区も含め、議席数で見ると、296議席という圧倒的多数で自民がかった。その後は、小泉改革の推進と、強引な衆院運営が見られた。

 このことをほとんど言う人はいなかったが、投票2日前の小松市での街頭遊説で、麻生さんが言及した。

 麻生さんは、「4年前の郵政民営化YESかNOかの選挙で、51%が賛成、49%が反対だった(どんな計算をした結果かは分からないが)。この数%の違いが、議席数に大きく影響する」と発言し、今回の選挙でもこの数%に期待しているという内容だった。

 当時小泉劇場に明け暮れて、メデイアは誰も言わなかったが、麻生さんが知っていると言うことは、選挙のプロは当然分析していたのだろう。

 そこで、今回の政権交代の賛否を見てみよう。2009.9.1の朝日新聞の「都道府県の当選者数・得票数・得票率」を参考にした。1票の格差が大きいために、考え方に問題もあるのは確かだ。

 小選挙区で見ると、政権交代反対票である自民・公明の得票数は6750万票の42%であるが、獲得議員数は小選挙区300議席の21%で、これは獲得票比例125人の半分(64人)。逆に政権交代賛成票の民主・その他の政党の得票数は58%で、議席数は300議席の79%、獲得票数比例175人の135%(236人)になる。
 一方、比例区では、自民・公明の獲得票は38.5%で獲得議席数は42%、民主・その他の政党は獲得票61.5%、議席数は58%で大体40vs60の構図だ。

 4年前の郵政民営化選挙では賛成、反対が拮抗していたが、今回も議席数では圧倒的に政権交代賛成派に有利になったが、6割の人が政権交代には賛成だったのだ。

 浮かれていると失敗し一気に国民が遠ざかっていく。来年は参議院選が予定され国民の審判が下される。改革できる政策から即実行に移さなければならない厳しい立場に立たされている。