日銀が目指す「2%物価安定目標」も、その道筋に異論もあり、決して一枚岩ではないのだ。日銀の異次元の金融緩和でマネタリーベース2年で2倍、2%物価安定目標を目指すというが、日銀内にもその道筋で異論が出ている。
一方、政府はインフレターゲット2%を掲げた後は、日銀にまかせっきりだ。財政政策、成長戦略では、財政再建も加わり二兎を追うことになったが、第2の矢では国土強靭化を御旗に公共投資を増やし、第3の矢の成長戦略も今までの政権でも言われていた課題で目新しさ、実現性に疑問符が付く。
アベノミクスと囃したてられ、当初は円安、株高基調に転換したが、今、アベノミクス効果はどうなっているのか。打ち出す政策との整合性が不確実になっている感じだ。むしろアベノミクスがなかっても欧州経済、アメリカ経済をみると行く行くは円安、株高に動く要素はあったという考えに説得力がある。
そこで肝心の日銀の政策評価がどうなっているのか知りたくて、金融政策決定会合議事要旨(2013.10.31分)を読んでみた。
余りなじまない文章だ。「委員は・・・」「一人の委員は・・・」「大方の委員は・・・」「何人かの委員は・・・」と誰が発言したのか分からないが、それぞれの意見を発している。以前、自民党の中川さんが「名前が具体的に記してないのは無責任ではないか」と国会審議で追及して事があるほどだ。
9人の委員の多数決で政策、展望、基本的見解が決まるのだ。異論が出れば多数決で決する。エコノミストは10人10色と言われ、それぞれ分析、評価が違うのだ。大方の方向性は合意しても、それへの道筋は異なるるのだ。
特に、経済環境に対する上振れ、下振れ要因は、どこに重点を置くかによって評価が変わってくるのだ。
その要因には、海外経済動向の不確実性、家計の雇用、所得動向、消費税率引き上げの影響、企業、家計の成長期待、財政の持続可能性があげられ、個々のデータの読み方、公的情報、個人情報で各委員が意見を陳述している。
だから表現法に異論が出るのだ。
たとえば、「2%の物価安定目標に向けた道筋を順調にたどって・・」では、順調ではなく緩やかにしたらどうか。
物価見通しでも、「2%程度に達成する可能性が高い」と言うところを「見通せるようになる」に変更したらどうか。
物価見通しのリスクについて、「上下に振れバランスしている」を「下方にやや厚い」に変えるべきだ。
予想物価上昇率についても、実際の物価上昇率の高まりによって上昇傾向をたどり・・」と言うところを「緩やかに上昇傾向」に変更すべきだという。
概して、積極的な表現を緩和する方向での意見が多い。日銀としては掲げた目標に対して順調に進んでいると言いたいのだろうが、慎重派はそうは思っていない。
9人の委員のうち3人が慎重な表現を主張している。
また、注目すべき指摘に経済の不確実性が高く下振れした場合に、日銀の金融政策に対する信認を毀損すると「読みを誤った時」の危険性を指摘する委員もいる。この委員が前の3人のうちの1人か、新しい委員かどうかは、分からない。
これは黒田総裁に変わった時から、こういう意見が出ていた。
10月31日の政策決定会合をまとめると、
金融市場調整方針では、マネタリーベース年間60~70兆円に相当するペースで増加させるという。無担保コールレートについては議案に記載がなかった。
米国の金融緩和縮小についても記述はあったが、米の緩和縮小→円安、株高→物価上昇、実質金利低下→実体経済への好循環が高まる可能性が高いとみている。
日銀の金融緩和縮小については何もコメントしていないが、これでいいのだろうか。米国の金融緩和縮小は世界経済に大きく影響するといわれているのだが。
経済、物価に関するリスク認識では、リスク分布は上下にバランスしていると委員の全体が認識しているというのだ。
問題の量的、質的金融緩和の効果については、企業や家計の支出活動を支える金融環境の緩和度合いは着実に強まっていると評価し、マネタリーベース60~70兆円分の増加ペースを今後も続けるというのだ。
ところが京大翁先生は、それはプラシーボ(偽薬)効果で薬効があるわけではなく、一度は効いても2回目以降も効く保証はない。偽薬を本当の薬のように宣伝し、期待に働きかけるという賭けに出た日銀を批判している(異次元緩和の功罪 朝日新聞2013.12.11)。
私も白川前総裁の慎重な緩和が正しかったと思うが、もうすぐその結果がでるだろう。
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