2014年12月6日土曜日

賛成5vs反対4:日銀のメンツをかけた追加緩和80兆円

日銀が10月31日の金融政策決定会合で賛成5vs 反対4のメンツをかけての追加緩和を決定した。新聞でも薄氷を踏む決定と評したが、2%物価目標を目指す黒田総裁の立場も日銀内で決して確固たるものでないことを示した。

2015年度内での2%物価目標達成になりふり構わぬ日銀は、消費税10%への再増税で景気が沈滞するリスクを回避するために80兆円の追加緩和に踏み込んだ。市場はサプライズと受け止め、安倍総理は評価するコメントを発表した。

ところが再増税を先送り決定し、日銀の追加緩和は何だったのかと言うことになる。円安は進み、株高で国民生活、企業活動は明暗を分ける結果になった。格差が一層拡大しているのだ。

私も日銀の今回決定は行く過ぎではないかと思ったが11月25日に公表された日銀・政策委員会金融政策決定会合の議事要旨を読んでみた。

日銀は今の経済をどう見ているか。

金利は0.1%を下回り、マネタリーベースは250~260兆円、海外では先進国を中心に回復、あるいは穏やかな回復と見ている。

国内経済では「景気は基調的には緩やかな回復」とみる。輸出は横ばいから緩やかに増加、公共投資は高水準で横ばい、設備投資は慎重な動きもあるが緩やかに増加、雇用/所得は失業率の改善、労働需給の改善、雇用者所得も上昇し緩やかに高まっている。個人消費も基調的には底堅く駆け込み反動も和らいでいる。先行きの見通しも同様だ。

物価については9月の消費者物価は+1.0%、企業物価も横ばいであるが、原油価格の下落は物価上昇への下押し圧力となり物価見通しでは下振れすると言い、2%予想物価上昇にマイナス影響を懸念するのだ。

何人かの委員は「全体には上昇」と言うが、1人は長い目で見れば上昇だが、「中長期的予想物価上昇率を示す指標は8月頃から横ばいか低下している」と指摘した。

そこで当面の金融政策をどうするかが議論されたのだ。

原油価格の下落は、長い目で見れば日本経済にはプラスだが、短期的には物価の下押し要因になり、デフレマインドの転換が遅れるリスクがある。

そこで、企業の事業計画策定時期、賃上げ交渉の時期を考慮して、追加緩和のタイミングだと見る。日銀が2年で2%の物価目標をコミットメントしているのだから揺るぎない決意を示し、日銀の信認を維持すべきだというのだ。

そうすることで物価の安定的達成が可能になれば「出口戦略」の議論も開始できる。

「景気の前向きな循環メカニズム」を維持できれば企業収益、雇用、賃金に効果が発揮出来る。

緩和のリスクと副作用を考慮して可能な限り大規模に行うべきで80兆円という額が提示された。

一方で、数人の委員は追加緩和に慎重な考えで、物価見通しにはリスクも大きいが、「前向きのメカニズム」は維持されており現状維持で良いのではないかと反論した。

追加緩和は物価の押し上げ効果が大きくなくコスト、副作用に見合わないともいう。

そして海外からも見られ出したが財政ファイナンスと批判されるリスクがある。

そして円安は内需型中小企業へ悪影響が出ている。

こういう真っ当な反対意見にもかかわらず日銀は追加緩和を決定した。評決結果は賛成5vs反対4だ。

巷では、円安倒産も増えてきたし、物価高の不況色も強くなってきた感じだ。アベノミクスを評価する人は賃上げ、株高の恩恵にあずかった人でありで「アベノミクスの効果」を否定する人は恩恵にあずかっていない人で、2極化し格差は拡大する一方だ。

オバマ大統領が不評だったのは格差が拡大したことも要因だ。

だが米国経済は雇用も32万人増と民間予想の30万人を超え、景気も良さそうだ。FRBも量的緩和を終了し、来年7月頃には金利上げのタイミングが来るという。

そうなれば一層「円売りドル買い」が進む。どこまで進むのか円安。長い間円高に苦しんできて、ここで今度は円安に苦しめられる皮肉なことになった。国民の生活や中小企業は苦しくなるだろう。

日銀は2%物価目標の安定的達成を目指すが、原油価格の下落などの要因もあり来年の目標達成は危険信号だ。未達なら黒田総裁、特に岩田副総裁は自ら責任を取り辞職すべきである。

「好ましくない経済循環」でも「循環メカニズムは維持されている」と無理矢理目標達成しようとする日銀を厳しく追及すべきである。


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