2013年3月11日月曜日

東電・福島第一原発メルトダウン:原子炉冷却対応への技術不足か

2011.3.1411時 3号機水素爆発
NHKスペシャル 2013.3.10

昨夜(10日)のNHKスペシャル「メルトダウン 原子炉冷却の死角」は、久しぶりに見応えのある内容だった。2011.3.14の3号機のメルトダウン、水素爆発は検証内容から、その緊急時に原子炉を冷却することへの対応に人的、設備的(技術的)な欠陥があることが分かった。

原発と言う危険で巨大な設備も「安全に停止」、「冷却する」ことで安全は保てると言われていたが、その冷却に問題があったのだ。事故に不思議な事故はないのだ。

未曾有の事態に直面し、極度の緊張と混乱の現場だったことを考えると、完全な処置を要求することは無理だと思っていたが、全電源喪失での原子炉冷却の訓練を40年間に1度もやっていなかったこと、異常か正常かを判断する事象も確認できていなかったことは、東電の幹部が言うように「基本的技術力が不足していた」ことになる。

NHKの番組をメモしたのだが正確さに問題が残るが、IC(イソケン)、RCICの作動および作動確認に問題があったようだ。メルトダウンまでの行程は次のようだった。

1,2号機の場合、電源喪失で運転状態が確認できなかった。特にICの作動状況が分からなかったのだが、原子炉内の水位は問題ない水位と判断し「動いていればなあ」と希望的感じを持っていたようだ。ところが、水位が低下し、「ICが止まっているのではないか」と思い出して、進展予測を始めたようだ。その予測では、燃料棒がむき出しになり1時間後にメルトダウンだった。

3号機の場合、RCICは電気で動くが不安定な動きをしていて、バッテリーがいつまで持つかが問題だった。対策は、代替注水のためにバルブを開けて減圧操作をしなければならなかった。しかしこれがうまくいかなかったのではないか。

代替注水の消防車注水
消防車による注水を始めたが、原子炉の方には45%しかはいらず、復水器の方へ55%が抜けていたのだ。現場所長と本社幹部との電話会談でも指摘し合っていた。東電本社での記者会見でも「復水器が満水のようだ」との発表があった。

NHKは、検証実験を海外でやった。

それによると、消防車からの注水は、1気圧の復水器のほうに55%、3.5気圧の原子炉の方へ45%が流れ、消防車による注水に抜け道があり、冷却に失敗し、あってはならないメルトダウンに至ったことになる。

又、番組では異常に気づくチャンスは3回あったという。
検証結果、消防車による注水は
原子炉に45%、残り55%が復水器
に抜けていたことになる
2013.3.10 NHKスペシャル

その一つが、「ブタの鼻」からの蒸気発生でICが作動しているかどうか確認できたそうだ。ところが実際には「もやもや」出ていたようだ。その意味がよく分からなかったそうだ。

作動していれば大量の蒸気が出るが、40年間一度も訓練したことがないのでその事象の確認が出来なかったらしい(米国では訓練しているそうだ)。

このNHKの検証に関わった学識経験者が、「ぶっつけ本番は、すべて失敗だった」という。

まとめてみると、最重要課題である冷却など基本的技術の不足、緊急事態訓練の不備、異常を見抜く力不足などが上げられるのではないか。

ブタの鼻
ICが作動していれば、ここから大量の
蒸気が出るので確認が出来るらしい。
東電は40年間一度も訓練していなかった
東電は、原発ではリーデイング・カンパニーとしての奢りがあったのではないか。原発と言う巨大で危険な事業を担うだけの資格はない。

プロ野球の野村監督が「勝つに不思議な勝ちあり、負けるに不思議な負けなし」と言う意味のことを言われたそうだが、「事故に不思議な事故なし」なのだ。




東電にとっては耳の痛い指摘だ

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