2014年8月23日土曜日

「なぜ戦争をするか」:クルーグマン教授は「算数の苦手な指導者の政権強化策だ」という

クルーグマンコラム
朝日新聞 2014.8.22
朝日新聞(2014.8.22)のクルーグマンコラム「なぜ戦争するか 危うい政権強化の思惑」は久しぶりに読み応えがあった。クルーグマン教授は、戦争はペイしないが算数の苦手な独裁主義政権の指導者が実績を示せなくなったとき、武力をちらつかせて脅し合う。戦争を始めることはまずい考えだが、それでも戦争は起こり続ける理由がそこにあるというのだ。

納得のいく内容だ。

今日の新聞を広げて見ても世界の紛争に関連する記事が多い。

注目はウクライナ情勢だ。ロシアのウクライナのクリミヤ半島編入以来、政府軍vs親ロシア派武装集団は欧米vsロシアの構図になってきた。日本もロシア制裁に参加したがロシアは日本に報復制裁を課してきた。エネルギー問題、北方領土問題にも影響するだろう。

イラクではイラク軍、シーア派民兵vs「イスラム国」でイスラム国が勢力拡大を狙っている。

イスラエルも大変だ。パレスチナ自治区ガザでの軍事衝突でイスラエルvsイスラム主義組織ハマスでの戦闘継続だ。恒久的な停戦協議も決裂したらしい。

タイではタクシン派を排除し軍による暫定政権が出来、改革を進めようとしている。

パキスタンでも総選挙の不正を追及し、シャリフ首相退陣デモが頻発し軍が介入する懸念も出て来た。

中国は尖閣諸島問題、南シナ海での領土問題で一触即発の危険まで出ている。

昔と違うことは、世界の平和、安全を守らなければならない国連の常任理事国、中国、ロシアが近隣諸国と領土問題で紛争の当事者になっているのだから、国連に仲裁などの機能を期待することは出来ない。

そして決して国内は富裕ではなく、貧しい国民の生活を守らなければならない国で国内紛争が頻発し、それに大国が一方を支持し紛争が長期化している。

このような世界的紛争にあってクルーグマンは第1次世界大戦の開戦から100年、「全ての戦争を終わらせるための戦争」であると多くの人が明言したが、あいにく戦争は起こり続けたと言い、日増しに恐ろしさを増すウクライナのニュースに「何故?」と問う好機だという。

クルーグマンは専門家の見方も紹介しながら次の様に言っている。

貧しい国でよく起きる内戦を予測するにはダイヤモンドなど略奪可能な資源の有無を見れば良いという。反政府勢力がいろんな理由を挙げるが、誰が不正な商売を取り仕切れるかどうかという犯罪者一家の抗争に進むのだという。

何やら今の中国指導部の不正防止、北朝鮮の権力闘争でも言えることだ。

又、豊かな近代国家では、戦争は楽勝でもペイしない。相互依存の世界では戦争になれば戦勝国でも深刻な経済損失を被り、近代戦は高く付くというのだ。

たとえば、イラク戦争の費用は1兆ドルを超え、イラクのGDPの何倍にもなるという。

ブッシュ前政権がフセインを倒して新政府を樹立するのに500~600億ドルと算出したらしいが、今のイラクを考えたらどうなのか。

ウクライナ問題では、プーチンは少しの費用でウクライナ政府を転覆できると思っていたのではないかとも言う。

なのに戦争は何故起きるのか。

それには、指導者が算数が出来ないからだと言う。

でも、戦争で政府が得することも非常に多いのだ。ウクライナへのロシアの介入はロシアの経済実績の悪化を国民の目からそらそうとしているとみる。過去にはフォークランド紛争、対テロ戦争で時の政権の支持率は急上昇している。

今は中国、韓国が対ニッポンで同じことをやっている様に見える。

そして、最後に独裁主義政権が実績を示せなくなったとき、武力をちらつかせて脅したくなる。だから戦争はまずいが起こり続けると言うのだ。


ロシア、中国に注目だ。

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