2014年8月25日月曜日

政府、日銀は今の日本経済の状況を「緩やかな回復基調」と言うが実感できるか

今の日本経済を政府や日銀は「緩やかな回復基調」というが、本当に実感できるのか。ある意味では実感できるも、民主党政権の方がよかったと感じる人も多いのではないか。安倍総理の経済政策をアベノミクスと称し「変わるんではないか」という期待感から市場は動いた。円高から円安、株安から株高へ転じる効果はあったが、経済は好循環ではなく、悪循環の傾向を呈している。

「第一の矢」の金融政策は、日銀の異次元の金融緩和政策で、「その期待」から市場は大きく動いた。安倍総理はインフレターゲット設定を日銀に迫り、日銀は2年で2%の物価上昇を掲げた。国会審議で前原さんから「2%の根拠」を聞かれ、安倍総理は「2,3,4%といろんな説があるが、一番実現可能な2%を選んだ」と答え、前原さんから「特に根拠があったわけではないのだ」と指摘されたことがある。

前原さんにも民主党政権時、じれったさがあった。野田政権の末期に前原さんは日銀にインフレターゲットの設定を迫ったが、当時の白川総裁に拒否された。安倍総理は白川総裁を更迭してインフレターゲット設定に漕ぎ着けたのだ。

その2%物価上昇率達成にも日銀、政府と民間エコノミストでは大きな隔たりがあり、大本営発表と揶揄されている。

最近の会議などから政府、日銀は、今の日本経済をどう見て、今後の日本経済の舵取りをどうしようとしているのか調べてみた。

第13回経済財政諮問会議で安倍総理は予算の全体像に絡めて、(1)デフレ脱却、(2)民需主導で経済の好循環を目指す、(3)アベノミクスを地方へ波及を訴えている。公共事業など官公需から民間需要で成長を促進したいようだし、アベノミクスも津々浦々まで浸透していない国民の不満を知っているようだ。

当然の話で、アベノミクスも特に変わった経済政策ではなく、従来から言われているように大企業、富裕層向けの経済政策なのだ。農村、漁村、山村にまで浸透する政策ではない。

甘利経済財政担当相も8月13日の談話で、先行き景気動向指標、消費者マインド、設備投資計画が改善していることを踏まえ、反動減で一部に弱さも残るが次第にその影響は薄れ「緩やかな景気回復が進む」と見込んでいる。

日銀も政策委員会金融政策決定会合で、駆け込み需要の反動も見られるが「基調的には緩やかな回復」を続けているという(2014.7.14~15)。

また、日銀・黒田総裁は2%の平均物価上昇率をしっかりアンカーすることで労使がこれを前提に交渉行うことが可能となり、それによって企業や家計は2%の平均物価上昇率を前提にしっかり行動計画をたてることが出来るようになる。デフレを脱却させ、将来にわたって明るい展望を経営者と労働者が共有することが大切だという(カンザスシテイー連邦準備銀行主催シンポジウム「デフレーション、労働市場、量的・質的金融緩和」2014.8.23)。

日銀の政策は、企業と家計に期待感を持たせ経済の好循環に寄与しろと行っているようだ。

しかし、内需拡大を目指した提言である前川レポート、21世紀版前川レポートも政策がつまずいた要因は、企業が儲けを家計に再分配するシステムが構築できなかったことにある。

安倍総理は、そこを見て企業に賃上げを要求する手段に出た。「法人税も下げる代わりに賃上げせよ」というのだろう。

でも、結果的に賃上げは出来ても消費税増税などで実質家計はマイナスだというのだ。

そして、第2の矢の財政再建はどうか。

世界的に債務を削減する動きの中で、IMF,G20からは債務改善に向け特例扱いされているが、対GDP200%以上、1000兆円を越える債務は成長戦略で税収増を目指すしかないようだが前途多難だ。

第14回経済財政諮問会議で民間委員が、経済再生と財政健全化の好循環を実現していくこと、成長戦略を実行することで官公需から民需中心の成長へ転換、1%成長率を2%に引き上げることを提言し、歳出削減しなければ消費税を10%に引き上げてもプライマリーバランスは黒字化できないと指摘している(2014.7.25)。

第三の矢で成長戦略を掲げるが、成長戦略は以前の政権でも同じような政策課題で目新しさに欠ける。安倍総理は既得権益者の岩盤規制にドリルの刃となって風穴を開けると海外で豪語するが、利得権益官庁、族議員、既存の利得権益者の抵抗が大きくテーマは掲げるも内容は骨抜きの状態だ。

政府の出来ることはほとんどやったことになる。今度は経済界の出番だ。「おねだり」経済団体を脱却し、「何をすべきか」を国民に説明すべきではないか。もうお亡くなりになった経済同友会の代表幹事を長くやられ「おねだりは辞めろ」と訴えた品川さんのような人材が財界に居ないのか。

安倍総理とゴルフをやって親交を保つのも良いが、喧嘩してでも「これをやりたいからこうしてくれ」ぐらいのことを言ってほしいものだ。

クルーグマン教授も「今の企業の儲けは、労働者の犠牲の上に成り立っている」というように、人件費などのコストカット、内部留保、生産設備の海外シフト、非正規従業員などの見直しをすべきではないか。

若い者が結婚出来る年収、安心できる正規従業員への移行を考えないと少子化も回避できないのではないか。

消費税増税の是非もエコノミストで見方が分かれている。8%への増税でも反動減は想定ないと言ってみたり、影響はあるものの次第に薄くなっていくと楽観的で、経済財政諮問会議では民間委員は「増税しても経済は成長する」という。

しかし必ず成長戦略が必要だと付け加えるのだが、ここが一番難しいことではなかったのか。

8%でも異論が続出しているのに、10%への引き上げではどうなるのか。

内閣府参与のエール大名誉教授の浜田さんは、10%への引き上げは待った方が良いという発言をしていたと思う。8%でも消費に影響が出ているのだから10%ではもっと影響が大きいのではないか。

そして肝心なLことであるが、3党合意で10%への引き上げが決まっているので「待った」をかけることになると、新しい法案が必要になる。増税分を社会保障費に回すと言うが、公共事業で甘い汁を吸おうとしている族議員は多いはずだ。

需給ギャップも、この間プラスに転じたと言われたが、またマイナスらしい。

経済指標も良くなったり、悪くなったり、速報値と確定値で評価も違ってくる。安倍政権も政策の評価のためには数値をいじくることなど朝飯前だろう。

発表される経済指標は、実態を反映させたものなのか。御用学者はヨイショするが間違っていないか。成長率の官民乖離をどう判断するか。

今のところ言えるのは、黒田総裁も、岩田副総裁も首を洗って待っていた方が良いのではないか。

安倍総理もアベノミクスを「バカノミクス」、「アベノミス」と揶揄されている。デフレ脱却宣言はどの政権にとってもやりたいことだ。民主党政権では、確か菅政権で検討されたことがあるが諦めた経緯がある。

デフレ脱却、民需主導の好循環に向けしっかり国民に説明すべきだ。


















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