2012年2月9日木曜日

富士山大噴火は、避けることの出来ない自然現象の繰り返し


噴火を描いた絵図

富士山大噴火は、避けられない自然現象の繰り返しなのだ。3.11東日本大震災の発生後、日本列島は巨大地震の発生が危惧されている震源域での歪などの蓄積で、その確率が早まったという。そこで出てくるのが富士山の大噴火の恐れで、メデイアの報道も目立ってきた。

富士山は、私が高校生のころは休火山だったと思うが、いつの間にか活火山に分類される活動している火山なのだ。もう30年ほど前だったろうか、相良さんという気象学者が9月15,16日に富士山が爆発することを予知した本を出版されたことがある。低周波地震、地下水温、マグマの上昇など理由を挙げての警告だったと思うが、その時を過ぎても噴火はなかった。

予知が外れたのだから、それまで名声をさせていた相良さんはメデイアから消えていったが、直後に富士山と関連している三宅島かどこかの火山の噴火があり、強ち相良さんの予知も全くの嘘ではなかったのではないかと思ったこともある。

宝永の噴火のときに出来た火口
富士山噴火の歴史を見ると、貞観地震後の864年、宝永地震後の1707年11月23日の大噴火といわれているが、「火山災害の研究」(損害保険料率算定会 平成9年)によると、1707年10月28日東海道沖~南海道沖を震源とする大地震起きる。11月16日、地震頻発し、東麓で強い地震、16日8時、東麓で強い地震とともに噴火開始、ゴロゴロという音と黒煙が上がった。

10時に噴火開始、東麓、南麓で白い灰が降る。13時には江戸でも白い灰が降る。16時には江戸も黒雲に覆われ、降灰が続き、灰の厚さは5~7mm(江戸)、日暮れのようになった。夜は晴れて空も見えたが、17日は江戸で強い振動、南西の噴煙中に雷、強い振動が止んだり続いたりした。18日は江戸は曇り、霧が立ち込めたようになり、黒砂が降るようになった。富士山の近くの村では「砂の降ること雨のごとし」という。その後強い振動、雷鳴が続くが、23日には噴煙と火山弾が吉田で見えた。灰は降り止むが霧煙が深く火山弾の噴出も続くが、1708年1月、噴火が終息する。

噴火が始まって数時間は安山岩質の噴出物が噴出し、その後玄武岩質のスコリア噴出に変わった。爆発的な噴火は最初の3日間で、あとは断続的な噴火が1708年1月まで続いた。大量の火砕物が山や谷に堆積し、雨とともに酒匂川などの河川に流入し、洪水が頻繁に発生した。下流域では農地の埋積がたびたび発生、このような洪水は噴火後10年にわたって続いたそうだ。焼石の落下は近くの村を全滅させたほどだ。
降灰は酒匂川に大洪水をもたらし浚渫を繰り返したようだ。幕府は藩領を幕領にし、全国の藩に普請の要請、分担をしたようだが、生活弱者も生み、男、若者は他に仕事を見つけに出て被災地は子供、女、高齢者だけになったそうだ。

当然、社会的矛盾も明らかになってきた。この点は今回の東日本大震災にも言えることだ。

相模トラフ、東海・東南海・南海の連動による巨大地震の後には必ず富士山噴火の危険があることは災害歴史から見ても明らかだ。

今、富士山周辺では異常が見つかっている。異常出水、温泉の出現、富士山の永久凍土の減少、低周波地震、山頂直下での地震、富士山周辺での地震の発生、磁気異常、マグマの上昇、山体温度の上昇などを前兆として指摘する研究者もいる。

寺田虎彦博士の「自然災害は、必ず繰り返す自然現象だ」という言葉を思い出すまでもなく、肝に銘じておかなければならない。残念なことはその時期、規模まではわからないことだ。国は今、地震研究に年間400億円もの研究費をつぎ込んでいるのだから、専門分野にこだわらず、研究者の奮起を期待する。


写真:いずれも「大震災後の富士山はどうなる 噴火と崩壊の危険」 2011.12.15 テレビ朝日 スクランブルより

2012年2月7日火曜日

国会審議:何故、協調出来ないのか


霞ヶ関から国会を望む

国会審議を聞いていて、どうして協調点が見いだせないのか不思議に思う。日本国憲法前文に「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」と記されている。国会審議は国民目線でおこなうものであり、すべて国民のためでなければならない。勿論、国民にもいろんな立場の人がいるので考え方、利益の享受も異なるので一様でないことは確かだ。

しかし、基本的に国民目線での政策を推進するのであれば、与野党で協調点を見いだせるはずであるが、国会審議を聞いていると議論は平行線を辿り一致点は見いだせそうにもない。

不毛の審議を続け、政治スケジュールが詰まり時間切れになり、あとは数に物を言わせた強行採決になる。その様子をテレビの映像で見るたびに政治不信が募る。

何故、協調点、一致点が見いだせないのか。

国会に提出される法案のほとんどは内閣提出法案だ。憲法では国会が国の唯一の立法機関とうたっているが、国会議員の法案提出数は非常に少ない。内閣に法案を提出する規定は憲法にはないが、内閣法で規定されている。

ということは、多くは担当官庁からの政策提言であり、当然に官僚主導の法案作りになるのではないか。

政策には従来からの整合性されたポリシーが必要で一度決まれば、滅多なことで変更できない。時代の変化にも、なかなか対応できないのだ。

政策は、長い間の腐れ縁である族、省利省益が優先し一部の国民は利するが、大方の国民の利益は無視される。

国会審議での閣僚の答弁は、あらかじめ質問取りし官僚が答弁書を作成し、閣僚は野党議員などの質問にあたかも自分が答えるように棒読みする。答弁書は官僚作成だから国民目線とかけ離れている。野党議員は当然反発してくる。

でも質問が続かない。質問者には持ち時間があり厳守だ。時たま予想だにせぬ答弁があって審議は紛糾する。理事が委員長席の周りに集まって協議する。面倒な問題は理事会預かりで急場をしのぐ。時間が来て他党の質問者に変わっても、また同じ質問を繰り返す。

そんな審議過程に協調点など見いだせない。

さらに、最近多く例が見られるのだが、政治基盤の脆弱な政権が誕生すると財務省との離が重要になる。財務省の機嫌をそぐと政権運営が難しくなる。逆に近づき過ぎると嫌悪感を持たれ政権の支持率が下落する。

国民目線の政治をやるには、議員立法を徹底するしかない。そのためには立法能力のある国会議員を国会に送る必要がある。

でも、これも難しい。人材難時代だし、国会議員数削減の問題もある。勿論多ければ良いという問題でもない。

国会審議での協調点、一致点を見出す方法は、政府が野党案をどう取り込むかにある。政府案はどうしても官僚案になりやすく、反対に野党は国民目線の考え方になりやすい。ここが本当の政治主導だと思うのだが、民主党政権はパフォーマンスに走りすぎたり、財務省の庇護下にありすぎたりバランスの取れない政権だ。

官僚を抑え、包容力のある総理の出現を期待する。

国会の平行線審議:考えの主張し合いでは何も決まらない


参院予算委員会での野田総理
政権と野党の考え、持論の主張
し合いでは何も決まらない。政権
には野党の意見も取り入れる
懐の深さが要求されないか
2012.2.7 NHK国会中継

国会の委員会審議を聞いていると、お互いに持論を主張し合う平行線審議では何も決まらない。これでは突っ込んだ審議もできず、民主党政権が事前協議を要求する気持ちもわからないではない。

7日の参院予算委員会で、みんなの党の小野議員が「事前協議でないとダメなのか」と社会保障と税の一体改革などで事前協議を要求している政権に説いただした。岡田副総理は「もっと突込んだ議論が必要」といい、野田総理は「国会審議もしっかりやるが、否定することもおかしいのでは」と野党の姿勢に不満を述べた。

公明党の魚住議員は、今、喫緊の課題であるデフレ脱却、円高への対応に機動的な金融政策を要求した。日銀の白川総裁は、デフレ脱却し経済成長への道筋は変わらず、物価安定の展望ができるまではゼロ金利を継続するという。物価安定は2%以内、物価指数がどうか、下落と景気悪化、物価感などを考慮するらしい。資金供給が減っているのではないかとの問いにも、資金供給も十分で実態経済に反映させたいという。

日銀は従来の考え、政策を正当化するだけだが、魚住さんは「何もやらないということか」と怒り、デフレ脱却に思い切った手を打ち、物価安定ばかりでなく、雇用の最大化にも努めてほしいと注文を付けた。

昨日6日の参院予算委員会でも白川総裁は円高を「大変厳しい問題と認識、よく状況を点検し政策に取り組みたい」と殊勝なことを言っていたが、市場は少し円安に動いたがけ為替介入の意思はなかったのだ。

更なる金融政策の必要性は叫ばれているが日銀に打つ手がないのか。インフレ・ターゲットの設定も嫌がっている日銀に、そんな度胸は期待できない。

みんなの党の小野さんは、「身を切る改革が必要というがどんな改革か」と問う。野田総理は「定数削減などの政治改革、特法、独法などの削減を含めた行財政改革だ」という。「ではどれを増税の前にするのか」と聞くと「すべてにおいて結果を出せることができなければ増税はない」とまで言い切った。岡田さんは、法案の成立は与野党での話し合い次第だという。

さらに国家公務員の給与削減は、2年間に限る時限的なものか。2年たったら元に戻すのかと質問。川端総務大臣は「時限であるが、法律が通れば労使交渉になる」といい、「いつになったら20%削減が実現するのか」の問いに岡田副総理同じ考えを示した。

議員歳費の引き下げ、政党交付金の削減を岡田さんがメデイアなどで語っていたが、この可能性について岡田副総理は「議員歳費については言及しないことにし、政党交付金については各党にいろんな意見がある」とトーン・ダウンした答弁になった。

消費税増税関連法案に景気動向の条件が付いているが、どういう経済変動なら増税が猶予されるのかの問いに、安住財務相は、「具体的な数字を法律には書きこむことはできないが、その時の政府の高度な政治判断による」という。小野さんは、それじゃ予算が組めないのではないかと反論する。

批判も多くて増税関連法案に無理矢理に景気条項を付けたが、政府のさじ加減でいかようにもなるということだ。

民主党政権が、増税案成立後に国民に信を問うのは遅すぎないかと小野さんは追求するが、野田総理は「やり抜いた後で信を問う」の一点張りだが、小野さんは「法案提出後に国民に信を問うのが本筋ではないか」と反論した。民主党が敗けた場合はどうなるんだと問いかけに、野田総理は「争点がいろいろある。国民が判断することだ」と答弁した。

野田総理は、「決められる政治」を施政方針演説で主張したが、国会審議を聞いていると、お互いに考え、持論を主張し合うだけで何ら結論の出ない平行線の審議が続き、最後は時間切れで質問が終わる。

消費税増税だって、民主党政権の従来の方針を変えて、法案提出後に国民の信を問うような協調点がどうして見いだせないのか。

小者の政治家の集まりに怒りを覚える。

2012年2月6日月曜日

次々報道される巨大地震シミュレーション、でもまだ安心か


東大地震研発表の「直下型地震4年以内
に発生確率70%」を報じる読売新聞
2012,1,23

次々に飛び込んで来る巨大地震シミュレーション、でもまだ安心なのか。毎日どこかのメデイアでM8,M9巨大地震の危険が報じられているが、極めつけはいつ起きても不思議ではないといわれている首都圏直下型地震の発生確率が「4年以内に約70%」だ(読売新聞 2012.1.23)。今まで「30年以内に70%程度」だったのだから東大地震研のこの試算はセンセーショナルなものだった。ただ、注意書きがあり、この試算の数値は、今の時点での最大瞬間風速で今後どう変わるか見守る必要があるという。

ところが、2月1日、今度は京大防災研が「5年以内に28%、30年以内に64%」と発表した。

3.11前後の地震発生データを昨年9
月時点で抽出し、モデルにインプット
した。
2012.1.29 日テレバンキシャ
同じモデルを使ったのだが、インプット・データとして東大は、昨年9月時点での3.11前後のM3以上の地震観測データから震災前は47回、震災後は343回に増えていること。地震はMが1大きくなると発生頻度は1/10になることを踏まえて試算したという。一方の京大は、それよりも発生頻度の落ちている時期のデータから試算したのだから確率も低くなっているのだ。

インプット・データが違えば当然結果も違うが、4年と5年、70%と28%の違いにどんな意味があるのかわからない。しかし、4年で70%といわれるとギクッとするが、5年で28%と聞くと少しは安心する。差迫っていることに変わりはないが、数字が低いとついつい安心し、そっちの方を信用しがちなのに驚く。

ところで3.11以降、出てくる地震予測は軒並みM9クラスの巨大地震だ。M9クラスの巨大地震は沈む込む海側プレートが陸側プレートに対して浅い角度で潜り込む地域で起きる。日本周辺のプレートは比較的深い角度で沈み込むからM9は起きないと考えられていたのだ。こうM8,M9クラスの予測ばかりだと、M6、M7クラスは「大したことはない」と思われては困るのだ。

地震に関する知識も以前とは変わってきたのではないか。「ゆっくり地震」の発生は歪も解消し、被害も少ないのでむしろ歓迎すべきだといわれてきたと記憶するが、今は「ゆっくり地震」の隣に危険な震源があるという。3.11の東日本大震災も「ゆっくり地震」が少しずつ南下していって、行き着いたところに3.11の震源域があったといわれている。「ゆっくり地震」は、巨大地震の予測にも利用できるらしい。

地震大国の日本だから地震の研究者も多いのは当然であるが、十人十色でいろんな注目震源域が挙げられている。

地下のプレート構造、他の地震との連動性、交通の要所で経済に大きく影響する地域、3.11以降地震活動が急増している地域、3.11以降ひずみ、バランスの崩れている地域、破壊を逃れた(割れ残り)地域、アウターライズ地震の可能性のある地域、さらには富士山噴火の危険、各種前兆現象からの予知など研究者の対象は多様だ。

私たちは、ちょっと確率が低くなったからとか、自分の住んでいるところから遠いからと言って「まだ安心だ」と思ったり、M8、M9ばかりが注目され、M6クラスは「大したことはない」と思ってはいけないのだ。

私も急遽、地震対策をした。家具、本棚類は転倒防止ゴムを敷き、ねじれん棒類で固定した。パソコンは、デスクトップ・タイプは止めノート・パソコンに交換している。戸棚のガラスはアクリール樹脂板に交換した。液晶テレビはテレビ台にバンドで括り付けた。この液晶テレビは我が家の地震計になる。テレビで地震情報が流れる前に揺れて教えてくれるのだ。後、小物類はゼルなどで止めようと思っている。

水は、45Lのポリ容器に45Lのごみ袋をいれ、飲料水をためることにしている。3日間ほどの携帯食糧、簡易便器なども用意しなくてはならない。

役割分担もある。小学校、保育園に行っている孫たちを迎えに行かなければならない。そして決められている一時避難場所の小学校に集まり、最終避難所、私の場合は多摩川河川敷になる。しかし、多摩川河川敷もM9クラスで大津波が東京湾に入ってくると危険になり、見直しがされているというが詳しいことはわからない。

地震に関する情報に一喜一憂せず、平素からの心構えが必要だ。

京大防災研は同じモデルで、余震が減った
本年1月のデータをインプット。「5年で28%」
の試算を公表した。
2012.2.1種と直下型地震 フジテレビ
スピーク
寺田虎彦博士が言われたかどうかは定かではないが、「災害は忘れたる頃来る」という。それは昔の話だ。今はそれなりの防災処置がされて安心していた時に、3.11が来た。今は「災害は油断したる頃来る」だ。

2012年2月4日土曜日

日本再生への道:消費税増税より国内投資、雇用の確保では


日米が競って金融緩和を進めるが
円高傾向が続く
読売新聞2012.2.3

財政再建、国債下落回避のために、消費税増税が大きな政治課題になっているが、日本再建には製造業の国内空洞化防止のための国内投資、職場、雇用の確保で日本を再建していくことが先決ではないのか。消費税増税は国民の支持が得られれば、一番楽な手段ではあるが際限がない。

パナソニック7800億円の過去最大の赤字、テレビ不振と合併問題が響いたという。最近の経済ニュースで日本を代表する大手企業の赤字1000億円などザラなのを聞くと驚きとともに、政府、日銀のデフレ、円高対策に何ら有効な手が打てないままに様子見の姿勢にいらだつ。

また為替市場で一時的とはいえ75円台になり超円高傾向はとまらない。1月25日、FRBは政策金利を1年延ばす方針を決め長期化することが分かったが、ますます円高基調だ。

日米が競っており、金融緩和策もさらなる追加緩和に踏み出す用意があるとバーナンキ議長は言っているという。インフレも2%を目安にしているようだが、決してインフレ・ターゲトではないらしい。2%の物価上昇率はほとんどの中央銀行が採用している数字で、物価安定と雇用の最大化は重要という(読売新聞 2012.1.27)。

日銀は確か1%の物価上昇率を考えている。金融緩和の継続も日銀の考えと大した違いはないとみているようだ(読売新聞 2012.2.3)。しかし追加金融政策については、実効性では試してみないとわからないという手探り状態なのだ(讀賣新聞 2012.2.1)。

製造業が海外移転し国内経済を空洞化させる円高、デフレ対策に不退転の決意であたり、日本国内経済の再建こそ最重要課題ではないのか。

今国会は、消費税増税で民主党マニフェスト違反、普天間移設問題、新防衛相の資質問題で不毛の論争を繰り広げているが、もっと真剣に円高、デフレ対策を議論しなければならない。

1月30日の代表質問でも民主党の藤原さんが日本経済は需要の低迷、物価の下落、賃金の減少の悪循環から抜け出せていないと指摘、共産党の市田さんも日本経済再生には、営業の再建、労働者の雇用の拡大と安定、時給1000円の最低賃金の引き上げが急務だと重要な提言をしているが国会審議ではその動きはない。
ただ2日の衆院予算委員会で自民党の山本さんが日銀も物価目標を明確にして、金融緩和を進めるようにせまったが、日銀の白川さんは「FRBも同じ目的のもとで金融政策を運営している」と述べたという(読売新聞 2012.2.3)。

2日はNHKの国会中継がなかったので、詳しいことはわからないが、要求する更なる金融緩和がどんな緩和なのか、日銀の相変わらずの従来の考え方の繰り返しでは如何に日銀の独立性を考えても議論にならない。

確かに、今の円高は欧州経済危機、米国の経済不安などが絡んでいることはわかるが、手をこまねいて様子見ではだめだが、政府も何もやっていないのではないらしい。

政府は、超円高対策に2000億円補助するという。製造業の国内設備投資1兆2600億円に対して2023億円を補助する。これにより約5兆円の需要、約20万人の雇用を期待しているという(読売新聞 2012.2.4)。

円高もまた危険な水準になってきた。他の先進国との協調介入でない限り単独為替介入には限界があるし、介入するにも資金は国民の借金になるのだ。それがわかっているから、政府、財務省は様子見なのだろう。

しかし、財務省は消費税増税には野田政権を援護射撃をする。

財務省が税と社会保障の負担が国民所得に占める割合・国民負担率の2012年の見通しを公表した。前年に比べてー0.2%の39.9%で、イタリア63.2%、フランス60.1%、イギリス45.8%。景気回復で国民所得は増えるとみている(讀賣新聞 2012.2.4)。

消費税10%でも他国に比べればまだ低いことを言いたいらしい。復興需要などで景気は回復すると政府も見ているようだが、その実感はまだ沸いてこない。

円高、デフレ対策、そして国内製造業の空洞化回避は我が国の緊急の課題で、これ以外に日本再建策はない。消費税増税が日本経済再生にどう貢献するのか。財政再建と経済成長は両立しにくいのではないか。

2012年2月2日木曜日

朝日新聞「三菱UFJ銀 国債急落危機対策」記事の影に財務省あり?


三菱UFJ銀行の日本国債の急落を
想定した危機対策を伝える記事
朝日新聞 2012.2.2

朝日新聞の2月2日朝刊の一面トップ記事、「日本国債の急落想定 三菱UFJ銀 危機対策」の記事の掲載タイミングに驚いた。何やら背後に財務省の意向(圧力?)を感じるのだ。今、国会の予算委員会は消費税増税でマニフェスト違反だとか、年金制度、財源試算などで混乱している。民主党が誘う事前協議に野党は乗りそうにない。

政府が考えている3月の消費税増税関連法案提案も危ぶまれている今、消費税増税に向け、政権を後押しする財務省が朝日新聞に圧力をかけ、ヨイショ記事を書かせたのではないかと疑う。

それによると、三菱UFJ銀行は、数年後に日本国債の価格が急落し金利が数%に上昇した場合、損失を少なくするために国債を売る「危機管理計画」を作ったというのだ。経済成長率、経常収支、為替などをみて急落の恐れがあるときは、売却するという。その潮目は2016年頃とみているが、今すぐに下落はないとみているそうだ。

日本国債の保有は、ゆうちょ銀行が断トツで三菱UFJ銀行も2番目の保有数であることはメデイアの報道でしており、国債下落の損失が大きく経営危機にかかる恐れもあると思っていたので、このような危機対策を持っていることも当然だと思った。

しかし、日本経済、強いては世界経済に影響を及ぼしかねない日本国債下落に対する危機管理を今、このタイミングで発表すべきものなのか。

欧州政府債務問題では、危機収拾に向かって政治が十分に対応できていないことで、市場が危機感を持っていることはわかっているが、政治も遅ればせながら危機に対応するセーフテイー・ネットの整備など動きを見せている。まだ不透明感は避けられないが、一応の落ち着きは取り戻しているようにも思える。

そのタイミングで、さらに混乱を増すような報道は慎むべきではないか。誰だって今の状況を考えると、世界恐慌でも起こって一旦チャラにして、難儀はあるだろうが再出発する手もあると考えてもいるだろうが、今は色んなセーフテイー・ネットで危機を回避できる可能性もある。

三菱UFJ銀行が経営責任から危機対策を作ったのであれば別にオープンにすべき問題でもないだろう。社内でしっかりマル秘扱いで対応すべきではないのか。

財務省も政治基盤の脆弱な野田政権を援護する気持ちはわかるが、もし大手メデイアを通じて国債危機を煽り消費税増税へ応援しようとしているのであれば民主主義を踏みにじる危険な行為ではないか。多くの国民から官僚主導が嫌われていることをしっかり認識し、自重すべきではないか。

朝日新聞も、今この記事が出た場合の影響の大きさを考えるべきだ。財務省のヨイショ記事ではないと思うが、もしそうだったらメデイアとしての存在を疑う。

今こそ、日本の国家財政について国会で真剣に議論し、国民に増税が必要かどうか判断する材料を与えるべきではないのか。

2012年2月1日水曜日

消費税増税:マニフェスト論争は不毛? 国家財政の徹底論争を


債務残高の国際比較(対GDP比)
財務省HP 「日本の財政を考える」
より

国会審議でのマニフェスト論争は不毛? もっと国家財政の論争ができないのか。今通常国会も消費税増税問題でマニフェスト論争の繰り返しだ。野党自民党は民主党が掲げて政権を勝ち取った09年のマニフェストの大きな柱は総崩れの様相を呈し、根底が崩れたのだから改めて国民に信を問えと迫る。一方、野田総理は消費税増税は大義、任期中には増税しないから何らマニフェストには反していないと強弁する。マニフェスト論争は平行線を辿った不毛の論争になりやすい。

谷垣総裁も野田総理もマニフェストの亡霊に悩まされているのではないか。

丁度、小泉総理時代に野党だった民主党の菅さんが予算委員会の質問で「公約違反だ」(政治課題が何だったかは思い出せない)と指摘したときに、小泉さんが「この程度のことで公約違反といわれても困る。もっと大事なことがある」と身振り手振りで反論したことを思いだす。菅さんはそれ以上のことは追求しなかった。小泉さんだから公約違反も許されたのだろうか。

準債務残高の国際比較(対GDP比)
同「日本の財政を考える」より
消費税増税問題は、反対している自民党もマニフェストに掲げた政治課題である。消費税関連法案提出前に国民に信を問えと主張する谷垣総裁も事前協議には応じることはできないが国会で審議しようと言っているのだから国会でしっかり議論すべきではないか。

ところで国会で国の借金がどう議論されているのか。参院の代表質問で民主党の輿石さんが国の借金を間違って1兆円といったようだが、それ以外に具体的は金額を上げて政府と与野党が激しく論争したのを国会中継で見たことがない。

私達が容易に債務残高の資料を得ることができるのは、財務省のホーム・ページの中の資料「日本の財政を考える」がある。それによると、債務残高の国際比較(対GDP比)は2011年に212.7%で90年代後半に財政の健全化を着実に進めた先進国と比較して、我が国は急速に悪化しており、最悪の水準になっているとコメントが付いている。イタリア129%、米国101.1%、フランス97.3%と続く。
各種統計における「債務残高」
同「日本の財政を考える」より  

一方で、債務ばかりでなく資産もあるのでそれを差し引いた純債務残高の国際比較(対GDP)でも日本は127.8%で主要先進国で最悪の水準になっている。財務省は政府の金融資産の多くは将来の社会保障給付を賄う積立金であり、すぐに取り崩して償還や利払いの財源にすることができないことなどを留意すべきだという。すぐに現金にできるものばかりではないということだ。
そして今騒がれている債務残高は一般政府の金融負債残高の1024兆円なのだ(同資料の各種統計における「債務残高」より)。

ギリシャと違って、日本は一般家計に1471兆円の資産があり日本国債も95%ぐらいは国内で消費されているから大丈夫という説もあるが、その差額450兆円も毎年借金が増えれば時間の問題だ。

急いで財政再建へ向けた政策が必要なことは十分理解できるのだが、諸外国に比べてもそんなに悪くはないという説があり、政府、財務省のいうことを鵜呑みにできないのではないか。

丁度、今週発行された週刊朝日(2012.2.10)では、「財務省のトリックを統べて暴く 消費税増税にだまされるな!」という闇株新聞の内容引用した記事が載っており、野田首相や財務省のごまかしにだまされるなと警告している。

それによると、国の借金といわれている中央政府と地方公共団体が1093兆円、そのほかに一般家計、民間非金融法人の借金を含めると総額2439兆円、一方資産は一般家計1471兆円を含めて2708兆円もあり、これでどうして日本国が破たんするのかと疑問を投げかけている。

しかし、これだって差額は300兆円しかない。財政が厳しいことに変わりはないのではないか。

国家財政について、いろんな見方があるが「本当のところはどうなんだ」と私は思う。

国家財政について、いろんな面から十分に議論し消費税の必要性の是非を議論し、さらに増税が日本経済に及ぼす影響についても十分に議論すべきである。国会審議のあまりにも抽象すぎる議論には終止符を打ち、現実的な議論で国民を引っ張っていくべきだ。
週刊朝日 2012.2.10