2013年2月22日金曜日

量的緩和:米・FRBも白川・日銀総裁警鐘の副作用に悩むのか

読売新聞 2013.2.22

米・FRBが白川・日銀総裁が警鐘した超緩和的金融政策・量的緩和の副作用に悩むか。読売新聞(2013.2.22)によると、連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨で、量的緩和政策を続けることによる副作用への懸念が広がっているという。金融緩和に積極的なバーナンキ議長は何も言っていないというが、同じく積極論者を日銀総裁に選任しようとする日本にも迫ってくる問題だ。

新聞によると、月850億ドル(約8兆円)のペースで債権を買い入れており、雇用が増え、労働市場に改善が見えるまで続ける方針だと言うが、副作用への懸念が広がってきたという。その背景には、資産購入による景気刺激効果が弱まって、メリットが見えなくなっているというのだ。

副作用の一つに物価が望まし水準を上回って上昇していくこと・・好ましくないインフレを恐れていることと、金融緩和が行き過ぎることで金融市場の安定性が損なわれはしないかと言う懸念だ。

そのために、量的緩和を縮小したり、停止すべきではないかという意見も出てきているし、景気の回復度合いによって資産購入を減らしていく準備をすべきだとの意見が強まった。

一方で量的緩和策の終了が早すぎれば、経済や雇用に打撃を与えるとも言う。

米国は日本の苦境に当たり「量的緩和」の必要性を忠告していたが、実際に自分たちがその目に遭うとゼロ金利下での金融政策運営の難しさを認識したようだ。

この点は、我が国でも今国会での予算委員会審議で質疑がされた。ハイパーインフレの危険はないと言われているが、2%物価目標を達成するまで金融緩和をやるのか、2%が見通せる時点で止めるのかとの質問に、安倍総理は「その判断は、専門家に任せる」と逃げるが、「早めに止めて目標を達成出来なかったことが多い」と従来の日銀の姿勢を牽制もした。

金融市場の安定が損なわれないかは、白川・日銀総裁も副作用として警鐘を鳴らしている。今、世界中で物議を醸している債券購入による「量的緩和」は金融政策の切り札となりえる有効な手段かどうかについて議論するために、各国の中央銀行のトップがワシントンに集結し、FRB(米準備制度理事会)主催の会合で、日銀の白川総裁が講演し、「積極的な金融緩和には副作用と限界がある」と警鐘をならしたのだ。

それによると、バブル崩壊後の積極的な金融緩和政策は必要としながらも、低金利が続くと、金利負担が軽いため借金返済の意識が薄れ、家計や企業の財務の健全化が遅れるし、企業投資の健全さも失う。国にあっては、財政の健全化が遅れる。低金利であふれた投資資金は原油や穀物などの投資にまわり、商品市況が高騰するという。何やら今の世界経済の歪んだ状況を言い当てているようだ。

ところで、ここ数年の超緩和的な金融政策を中央銀行のトップはどう考えているのか。

米・セントルイス地区連銀のブラード総裁も、ここ数年経済を支援したが常に適切とは限らない超緩和的金融政策について、過度に傾注することに慎重な姿勢を示した。米経済、ひいては世界経済に弊害をもたらす可能性があるというのだ(朝日新聞デジタル 2012.3.26)。

一方、米国FRBのバーナンキ議長は、世界恐慌を顧みて恐慌を長引かせたのは性急な金融引き締めだったとして、「あまりにも早く政策を逆転させないこと」と指摘し、暗に金融緩和を続ける意向を示したという(朝日新聞デジタル 2012.2.26)。

経済政策、金融政策に、これといった確固たる政策があるわけではなさそうだ。「過去の事例から、あの時にこうやったが失敗したので、今回はこうしてみよう」式の政策ではないか。

米国は一足早く量的緩和の副作用にぶち当たろうとしているが、我が国はこれから2%物価目標達成に向け、積極的な金融緩和論者を新しい日銀総裁に選ぼうとしている。今の日銀の政策委員には可能性の低い2%物価目標を掲げることは日銀の信認を落とすことになりかねないと反対した委員もいる。

どういう新総裁が選ばれ、どういう舵取りをするのか分からないが、好ましくないインフレが危惧される一方で、ゼロ金利下での量的緩和は効果がないという説も根強い。

経済指標をしっかり見ながら、しっかり議論していく必要がありそうだ。「今回こうしたら失敗したので、次はこうすべきだ」では遅すぎるのだ

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