17日の参院・国家基本政策委員会でのNHK中継の党首討論に注目した。民主党25分、維新の会13分、みんなの党7分の時間配分だったが、安倍総理は海江田代表とは政策の中心部分での討論となったために対立するも、石原代表、渡辺代表とは賛意を表する面もあった。全体に海江田代表はいいところを突いていたと思うが、安倍総理はチョットはぐらかし気味の発言だった。
安倍総理vs海江田代表
(海江田)経済政策の「アベノミクス」は期待に働きかけ、株価は上昇、円安で評価するが、日銀の金融緩和、異次元の緩和は劇薬で副作用もある。副作用にどんなものがあるか。
(安倍)確かに政策を新しくすると、未知の場合リスクもある。昨年の今頃は閉塞感に満ち溢れ海外へ出ていくことになった。政治が変わっても、そう変わらないだろうと国民は思っていた。しかし、今まさに円高是正、株は5割アップで、年金の運用益も5兆円上昇した。復興費もJT株を当てれば5000億円が9700億円増えることになる。この道を通るしかほかになかった。もちろん財政健全化も見ていく必要がある。
金利の上昇をリスクに手をこまねいていては50兆円という国民の宝を失う。「どんよりした空気が変わったこと」は認めてほしい。
安倍総理は、株高、円安基調に転じた市場を見て、自分の政策の正当性を訴えた。
(海江田)前段の話は承知しており、一定の評価をしているが、これからはリスク、副作用が出つつある。物価は上がってきた。地方行脚をしていると年金生活者は物価が上がっていることを指摘している。10月からは年金も減額になる。急激な2%の上昇は考えていなかった。生活者に対する配慮がなかった。
(安倍)国民の前で、どちらが正しいかを議論している。年金はデフレで物価スライドで年金を2.5%減額する。びっかが上がれば年金も上がる。年金財政も上がる必要があり、1.5兆円マイナスだと運用が下がる。
安倍総理は、タクシー運転手らの街角景況指数も改善し、パートの時給も上がり、4万人の雇用も生み出していると主張した。
委員席で拍手が起きる。自民党議員からの援軍だ。景気が上昇すれば給料も上がる。年金も上がるというのだ。
(海江田)昨年の秋から上昇基調へ向かっているし、昨年の9月が円高のピークで、それから円安へ動いている。リスクのことも考えて徐々に景気を良くすることも考えていく。
賃金はいつごろから上がってくるのか。大企業ばかりでなく、国民が実感できるのは?
(安倍)継続的に上がっていくかどうかはわからない。百貨店の売上、車、住宅は増加している。勤労者のも分配するようになってきた。観光客も33%増加し、消費もする。政治が決断すれば成長に向かう。輸入から輸出へ、経常収支も上がっていく。
(海江田)物価が上がれば賃金も上がるが、今場合は賃金上昇につながらない物価上昇だ。2005~2007年は、円安で企業収益は上がったが、賃金は上がらなかった。
海江田代表は問題意識を持てという。第三の矢は出ていないが、成長戦略はどうなっているのかと問う。
人材は過剰在庫で雇用規制が出ている。緩和方向をどう考えるか。
(安倍)雇用は3か月で4万人増えた。民主党政権の3年3か月は何もできなかったではないか。成長産業へ移動できるようにジョブトレーニングなどで雇用の活動性を促進する。
金銭で雇用をやりやすくすることは考えていないという。
「0増5減」は野田総理が党首会談で約束したが、約束したのは消費税増税定数削減の約束で、その後「0増5減」が出てきた。海江田代表は「定数削減をやるといえ」と迫ったが、委員長の「時間ですよ」で安倍総理の考えを聞くことはできなかった。
委員長は何故時間切れで制したのか。国民は聞きたい点だったのではないか。
安倍vs石原
(石原)北朝鮮のことを考えると、憲法改正、ミサイル戦略など防衛システムをきちっと作り直さなければならないのではないか。
(安倍)財政再建から防衛費の削減をやってきたが、安全保障のことを考えて11年ぶりに防衛費を増額した。
(石原)憲法改正は第96条、第9条だけではない。第90条の会計検査制度も見直しが必要だ。役人が役人をチェックするのはおかしい。特別会計だっておかしい。会計制度を変える法案をだし、無駄使いを見直す。TPPも象徴的問題で、遺伝子組み換えのラベルをアメリカ製品からはがせとの要求が出ているが消費者を守るためにも交渉担当者にはっきりダメと言明させてほしい。
(安倍)絶対に駄目だ。
(石原)尖閣諸島の実効支配はどうなっているか。領土を守る人を置くなどして実効支配してほしい。
(安倍)日本固有の領土で、海上保安庁の船が当たっている。
安倍vs渡辺
(渡辺)抵抗をはねのけて決断してほしい。TPP参加は党内で相当反対があっただろう。日銀依存も、オセロでひっくり返り、期待が高まった。みんなの党も言ってきたことだ。誰がやるかではなく、何をやるかだ。2年で2%物価安定目標で給料は3~4%上がる。民主党にはできなかったことだ。
消費税増税はどうなるか。4~5月の指標を見て決めるのはダメだ。消費税増税は民主、自民が結託してこんなことをしようとしているとは思えない。消費増税したらアウトだ。
(安倍)この点は政治の難しいところだ。渡辺さんの言うこともわかる。3%から5%に上げた時に景気は後退した。4,5,6月の景気判断するが、賛成票を投じた大きな責任がある。
(渡辺)安全運転していることはわかるが、日本の官僚制度である身分制度をやめたほうがいい。自民、みんなで共同提案したのに、なぜ採用できないのか。
みんなは今後も公務員制度改革を進めていくと主張した。
海江田代表は経済評論家らしく、大胆な金融緩和の副作用を心配している。多くのエコノミストもこの点に注目しだした。これからの国会審議でしっかり議論してほしい。経済指標をしっかり見ながら、好ましくない状況が見えた時、どうするか。これは大きな問題だ。
石原代表も、憲法改正で会計検査制度、特別会計制度の見直しにも言及した。都知事経験から無駄の削減は避けて通れない問題なのだ。
久しぶりに渡辺節を聞いた。みんなの党の政策にも忘れずに触れていた。
討論後、安倍総理は自民党議員たちと笑顔で握手し、勝ち誇った印象を与えたが、経済運営では海江田さんの考えが正論ではないか。急速な変化は副作用が大きい。油断してはいけないのだ。
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