モース博士肖像画 特別展で |
9日、江戸東京博物館で開催中のモース・コレクション特別展(2013.09.14~2013.12.08)を見学し、130年前の日本の明治時代の庶民生活と我が国最初の貝塚発掘の状況を知ることが出来た。特に注目すべきは当時の日本人の生活様式、道具類を見てモースがどう感じたかを「日本その日その日」から知ることが出来、又、777点の中の自筆のスケッチから、すでに日本では失われた光景を知ることが出来るのだ。
私も子どもの頃は岡山県の山間部の小さな村落に住み、家は農業をやっていたので展示されている多くの道具類には見覚えもある。
モースは「お雇い外国人」として東大の動物学教授として来日、1877年から3度、4年間の日本滞在での出来事を「日本その日その日」にスケッチを含め克明に記述し、何ら変哲もない日本の身の回り品を集め4万点のコレクションが米国のピーボデイー博物館に保管されている。
当時は東京の人口も100万人程度で、通訳がいなくても結構やっていけると感じたようで採集に出かけている。
最初にモースの興味をひいたのが「下駄」らしい。粗末な木製の履き物で、歩くと「カタカタ」音がすると書いている。そういえば今、下駄を履いて町を歩いている人はいない。
お歯黒には驚いたようだ。当時既婚の女性は歯を黒く塗り磨いていた。外国人にとってはゾッとするほど驚いたというが、私だってそういうのを見ると驚くだろう。
今、時代劇などで女優さんが多数出ているが、お歯黒はいない。もしお歯黒で出ると視聴率は上がらず、その前に苦情が殺到するだろう。時代考証としては問題ではないか。
「食べる」と言うことに関する資料も異彩を放っている。集められた台所道具などは面白い。モースは特に箸の使用を全世界に吹聴したという。
お正月料理がスケッチで出ていたが、今と変わらない。モースは、日本の風習に溶け込んでいたのだろう。
全員笑顔の子ども達の写真 |
特に子どものことに関する記述が多い。特別展の入り口の笑顔の子ども達の写真にも象徴されている(展示場内は撮影禁止だが、この写真とモースの肖像画は禁止が解かれていた)。モースは「日本は確かに子どもの天国だ」という。子どもが親切に取り扱われ、その子どものために深い注意を払う国は他にないない。このためにもコニコしているところを見ると、朝から晩まで幸せであるという。又、赤ん坊の為に尽くす国も他にはないと言う。
ところが、今の日本の世相はどうだろう。嬰児殺し、虐待、育児放棄が頻発していることを考えると、モースはどう言うだろろうか。
その要因に、昔は大家族で共同して子育てをやっていたが、今は核家族で頼れる人がいない。育児にも疲れが出てくるのだろう。早めに助けを求められないのかと焦れったくもなる。
又、モースは「人々が正直である国にいることは実に気持ちが良い。外国人は重荷に感じる善徳、品性を日本人は生まれながらに持っている」とも褒め称える。
今の日本に「どうしたんだ」と問いかけているようにも思えた。
モースは日本の明治時代の庶民の生活道具類を集め、当時の生活文化を後世に伝えようとしたが、日本は貴族など高い地位の人たちの調度品、コレクションを集めて高い維持費を払って保管しているが、それで生活文化が伝えられるのかと批判しているのを見たことがある(確か品川博物館でのモース展示で)。
庶民の暮らしを伝えるモース・コレクションは、我が国にとっても貴重なコレクションである。
一方、モースと言えば大森貝塚発見、発掘での日本の貝塚遺跡発掘での貢献だ。
JR京浜東北線上り 大森駅を出て直ぐ 左側に見える大森貝塚遺跡庭園 線路側の斜面に「大森貝塚」の 碑が\建っている |
モースは来日して3日目に横浜から東京に向かう大森付近で、汽車の窓から線路切り通しに貝殻の堆積物を見つけ、直ぐ貝塚であることを認識し発掘調査に移った。その様子をスケッチで残している。
遺跡は、今のJR京浜東北線で大森駅を出ると直ぐに左側に見ることが出来るが、2カ所に碑が建っている。
手前にあるのが大森貝墟で大田区にある。ビルの間を線路際に降りていくと碑が建っている。もう一つはそれから300m程離れた大森貝塚で品川区になる。どちらが最初の場所かと論争になったが品川区の方で決着は付いたようだ。
発掘調査風景 品川区・ポートランド姉妹都市記念碑に刻まれたスケッチ |
品川区の大森貝塚遺跡庭園には、品川区・ポートランド姉妹都市提携記念の碑に、大森貝塚発掘風景が刻まれているし、貝塚からの出土品を運搬する風景もスケッチされていた。
これらは「日本その日その日」でスケッチされている絵だ。
出土品の運搬風景のスケッチ 大森貝塚遺跡庭園の説明資料より |
スケッチの他にガラス原板写真も多く日本の風習が記録されている。これらのモース・コレクションは、アメリカにあって評価されるのか、日本では評価されないのか。
遺跡発掘も発掘者の国に多くの出土品が持ち出されているが、これで良いのだろかと疑問に思うこともある。
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