理研のSTAP細胞論文不正行為疑惑が泥沼化しそうだ。理研の問題ではあるが理研だけでは対応が出来なくなってきた。日本学術会議や各学会で「不正行為」について統一見解が出せないか。科学的な問題でありながら何やら裁判沙汰の様相も呈してきた。
小保方さん側の代理人が理研に対して「研究不正」の定義を質問してきたのだ(讀賣新聞2014.45.1)。
小保方さんの論文改ざん、ねつ造疑惑の調査委員会が「不正行為は小保方さん一人の行為」と決めつけたまでは良かったが、その報告書を作成した石井委員長に同じような疑惑が発覚、画像の加工は認めたものの「結果に影響はなく不正はなかった」と弁解し委員長を辞任した。
小保方さん側に言わせると、同じような疑惑事件で、石井さんの例では不正はなく小保方さんの例では不正というのは理解できない。「不正行為の定義」をはっきりしなければ争点がぼやけてくると言う主張だ。
確かに、実験ノートから追跡でき不正はなかったと結論づけられるのと、実験ノートは曖昧で結論に至る根拠が不明確とでは大きな違いがある。
それに拍車をかけたのが、ノーベル賞受賞の山中先生の論文での「切り貼り」の疑惑が発覚した。「論文の報告内容に一転の曇りもない」と言うが、生データが見当たらないというのだ。
小保方さんの事例、石井さんの事例、山中先生の事例でいずれも「結果は変わらない」と論文の正当性を主張する。
山中先生のES細胞論文は第三者によっても再現されているが、小保方さんのSTAP細胞論文は第三者による再現が出来ていないところに大きな差がある。一概に比較することは困難だ。
ところでこの不正行為の有無は小保方さんにとっては研究者生命にかかわることであり、理研とその有無について攻防が繰り返されそうだが、今の理研では当事者能力がなさそうだ。そこを小保方さん側は突っ込んでいる。
不正行為とは正しくない行為だ。
論文で言うと、画像などデータを改ざん、ねつ造して自らの推論する研究結果に導き、第三者に誤解を与える行為ではないか。
通常は実際の実験結果から結論を導き、万一自分の推論と異なる場合は実験をやり直すべきだと思う。
疑惑を持たれた研究者は必ず「結果は正しいから信じてくれ」と言う。実験データから追跡できれば良いが、それが不可能な場合は完全にアウトだ。
今までの新聞などの報道を見ると小保方さん側に不利であるが、石井さんの例も出て来たので俄然反撃に出たようだ。
不正行為は理研の規程にもあるようだが、定義ははっきりしていないようだ。
もう理研だけで対応できるものではない。日本の科学界全体が「論文の不正行為」について定義をはっきりさせた方が良いのではないか。
それがこれからの若い研究者に注意を喚起することにもなる。
日本学術会議が会長談話、日本分子生物学会が理事長声明を発表しているが、他の学会はどう考えているのか。
今、研究者としての考え方を表明しなければ日本の科学界の信用を回復することは困難になるのではないか。
理研の歴史は輝かしい。ノーベル賞受賞の理論物理学者も輩出しているし、寺田寅彦博士も在籍し昔は「科学者の楽園」と言われていた。
そして今、一人の女性研究者の論文疑惑で大揺れだ。
理研幹部の笹井さんが弁解記者会見でSTAP細胞論文を撤回に同意するが「検証の価値がある理論」と自らの行為を正当化する発言をしたことで混乱している。
「間違いはあったが「結果は正しい」、「STAP細胞はあります」、「検証に値する理論」「今の段階では仮説」、それぞれの立場で我が身を擁護しているのは明白だ。
不正行為も「故意か過失か」を問われれば、どんな研究者でも「過失」と言うだろう。
第三者が見て故意、過失に関係なく「不正行為とは」の定義をはっきりさせた方が良いのではないか。
そして早く、理研の再現性試験の経過を公表すべきである。
そしてもう一つ、共著者の責任問題がある。STAP細胞論文では実際には実験せずアドバイザーの役割だったというが、連帯責任は逃れられない。
理研は「小保方さん一人の不法行為」とした。弁護団は今後、そこも付いてくるだろう。問題は最初の投稿論文作成で若山さんに図表、画像をどう説明していたかだ。出どころもはっきり説明していなければ小保方さんのねつ造となるし、2回目の投稿論文作成で図表、画像の出所を笹井さんにくわしく説明していなければこれも小保方さんの責任だ。
実験ノートなどのチェックも若山さんは「バレンテイ教授が見ただろうから」と遠慮するし、笹井さんは「若山さんが見ただろう」と遠慮する。仕方ないことだろう。
だから、小保方さんが積極的に実験ノートなど資料を提出すべきなのだ。
裁判にでもなれば、そこらへんのこともはっきりするだろう。
逆説的だが、小保方事件は理研もさることながら日本の科学界のガバナンスに一矢を放ったことになる功績は大きいのではないか。
関連記事
2014.4.27掲載
続く理研の画像改ざん事件:2者の違いで正当化できるか
[後記]
ネイチャー誌が日本にも研究不正を監視する組織が必要と提言(讀賣新聞2014.5.2)
STAP細胞論文疑惑に絡み、日本でも米国の研究公正局のような監視組織を作る必要がある指摘した。
(2014.5.2)
そしてもう一つ、共著者の責任問題がある。STAP細胞論文では実際には実験せずアドバイザーの役割だったというが、連帯責任は逃れられない。
理研は「小保方さん一人の不法行為」とした。弁護団は今後、そこも付いてくるだろう。問題は最初の投稿論文作成で若山さんに図表、画像をどう説明していたかだ。出どころもはっきり説明していなければ小保方さんのねつ造となるし、2回目の投稿論文作成で図表、画像の出所を笹井さんにくわしく説明していなければこれも小保方さんの責任だ。
実験ノートなどのチェックも若山さんは「バレンテイ教授が見ただろうから」と遠慮するし、笹井さんは「若山さんが見ただろう」と遠慮する。仕方ないことだろう。
だから、小保方さんが積極的に実験ノートなど資料を提出すべきなのだ。
裁判にでもなれば、そこらへんのこともはっきりするだろう。
逆説的だが、小保方事件は理研もさることながら日本の科学界のガバナンスに一矢を放ったことになる功績は大きいのではないか。
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2014.4.27掲載
続く理研の画像改ざん事件:2者の違いで正当化できるか
[後記]
ネイチャー誌が日本にも研究不正を監視する組織が必要と提言(讀賣新聞2014.5.2)
STAP細胞論文疑惑に絡み、日本でも米国の研究公正局のような監視組織を作る必要がある指摘した。
(2014.5.2)
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