日銀・黒田総裁の量的・質的金融緩和の効果についての発言はブレていない。そうだろう、一度でもブレたら日銀の金融政策の失敗による信用失墜、総裁生命の終わりだけでなく、安倍政権の求心力はガタ落ちだろう。
先月8日の金融政策決定会合での金融緩和縮小提案に対して1vs8で否決し現状維持を決め、30日の展望リポートでは2%に達する時期を「2016年度前半」と先送りしたが目標達成には強気の姿勢を崩さなかったし、今月1日には大規模緩和は効果があるという検証結果をまとめた。
そして15日の読売国際懇談会での講演でも量的・質的金融緩和の効果と2%物価目標
の達成にも多くのエコノミストが疑問視する中で相変わらずの強気の姿勢を示した。
2年前に「2年ほどで2%物価上昇を目指す」と2年、2%のわかりやすい目標を提示し達成出来なかったら「総裁を辞任」のようなニュアンスの考えを示したし、岩田副総裁に至ってははっきり「責任を取る」と公言した。
でも、想定外の原油安、消費税増税による消費低迷などで上昇率は2%にほど遠く、達成時期を「16年度前半頃」に先延ばしした。15年度中としていたので先延ばしは大したことはないだろうと考えたのだろう。
新聞報道から読売経済懇話会(YIES)での講演内容を拾ってみても想定外の言い訳を言いながらも異次元の金融緩和によるデフレマインドの変化に確かな手応えを感じるというのだ。
円高→円安で輸出産業が息を吹き返し、株安→株高で企業の業績は向上した。消費税増税での消費の低迷には安倍総理自ら財界に賃上げを要求、連合のお株を奪ったようなものだ。
今後は、原油価格も底打ちで、企業の賃上げも広まり企業の儲けを家計に再分配するメカニズムが出来れば物価は長い目で見て上昇することは確かかもしれないが、円安による輸入物価の上昇は「経済の悪循環」にもなる。
経済の悪循環でも物価が2%上昇を達成出来れば日銀は「了」とするのか。
多くのエコノミストが2%物価目標を疑問視する中で元財務長官のサマーズさんと前のFRB議長のバーナンキさんの「低成長をめぐる論戦」は興味をひく。
読売新聞(2015.4.9)によると、サマーズさんは長期停滞の要因は、高齢化などで人々が消費せずおカネを貯蓄に回し、需要が不足する構造的問題にかかっていると言うのに対して、バーナンキさんは金融緩和で低金利が続けばやがて投資は回復すると量的緩和を推奨する。
現状は需要不足で供給過剰とみるとサマーズさんの見方があっているのか。
とにかく日銀は、想定外もあり2%物価目標も未達だが、金融緩和でデフレ脱却は未だ出来なくてもデフレマインドからの脱却には手応えが有り異次元の金融政策で当初描いたストーリーは進行しているという考えだ。
そこで気になるのが内閣府参与の浜田さんが「実質2%の物価目標に拘る必要はないのでは」と言った発言だ。
安倍政権の経済政策の要であるリフレ派の旗振りだった浜田さんが「拘るな」と言い出す一方で、日銀は2%物価目標に拘る発言をしている。
「内閣と日銀の不一致?」と思うが安倍政権内でアベノミクスへの発言が弱まっている。
安倍内閣発足時、民主党の前原さんが予算委員会で安倍総理に「何故2%物価目標か」と質問したとき、安倍総理は「専門家が2%,3%、4%といろんな数字を挙げているが、一番達成可能な2%を採用した」と答弁し前原さんが「その程度の根拠なのか」と呆れかえった感想を述べたときがある。「今後もこれに関して質問を続ける」と言っていたが国会でしっかり議論したらどうか。
「もうチョッとガマンすれば2%は達成出来ル」と日銀は踏んでいるのだろうが、そう簡単にはいかない。
これだけ大量(約300兆円?)のおカネを市場に流して後始末をどうしようとしているのか。海外では薄々財政ファイナンスとみられてきた。日本国債の下落、金利上昇の危険ははらんでいる。欧州では「国債はリスク資産」と見なされ、保有する金融機関の規制強化に動いておるらしい。
そうすると、金融機関、日銀にとっても影響は大きい。
更に出口戦略も考えなければならない。FRBは9月から金融政策の正常化に向け利上げを狙っているらしい。
国債のリスク、出口戦略が出てくると日本経済には大きな影響が出る。日銀の決定会合、経済財政諮問会議でも時々話題にはなるが真剣にやっているとは思えない。
黒田総裁のブレない発言にも驚かされるが、そろそろ路線変更の時期ではないのか。日銀の金融政策もPDCAサイクルを回しチェックすべきではないのか。
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