読売新聞 2013.5.16 |
原子力規制委員長が「これで欧米並みの基準になってきた」と言う新規制基準が7月から施行されることになったが、これで原子力行政において安全が政治を超えられるか。今、原発は再稼働を目指して、敷地内の活断層の存在が原発企業と規制委員会の間で激しい議論になっている。
安倍総理は率先して海外での原発施設の商談に余念がないし、政界では「原発の再稼働を促進する議員連盟」が立ち上がり、安倍総理も「規制委の新基準に基づく原発の安全審査を尊重する」と言いながら経済界からの要望が強い再稼働に意欲を燃やしているようだ。勿論「地元の理解を得つつ」と条件を付ける。
しかし、原発敷地内の活断層の存在は、企業にとっては存続の危機だし、周辺自治体、地域住民にも死活問題として生活に大きく影響する。
何故、「今頃こんな問題が」と思うが、「原発建設促進」の考えで建設計画時の審査が甘かった点もあるが、建設後に活断層が見つかった場合の規定もないようだ。
新聞報道では、日本原電・敦賀発電所の直下の活断層は「耐震設計上考慮すべき活断層」と初めて認められ、廃炉の可能性が出てきた。
その時、原子力規制委員会の委員長代理が「これまで事故がなかったのが幸い」とコメントしていたが、市長は「活断層としても耐震設計されていれば原発は動かすべきだ」と地元の意見を代弁していた。
確かに耐震設計されていれば安全のように聞こえるが、敷地がグラグラ揺れる程度ならいいが、活断層真上なら地割れ、大きな亀裂が発生するのだ。
高速増殖炉の「もんじゅ」も安全意識、安全管理に重大な疑問が出てくる。規制委員会は安全文化の醸成、安全確保の取り組み、責任の明確化を指摘し、準備作業中止命令をだした。10,000件に及ぶ点検漏れが指摘された時、理事長は「形式的ミスは避けられない」と強弁していたが、辞任に追い込まれた。
敷地内の断層が問題になっているのは、敦賀以外に北陸電力志賀、関電大飯など5か所あるという。
規制委員会の専門家チームが活断層とみとめたものを覆すのは並大抵のことでは無理なようだ。日本原電は、規制委に対して見直しを要請する一方で、海外の専門家に検証を依頼している。徹底抗戦の様相を呈してきた。
企業の存続にもかかわることだから必死だろう。
経済産業省の試算では、再稼働せず廃炉にしたときには、総額で4.4兆円かかるらしい。このほかに電気代の値上げは企業の生産活動、国民の生活にも大きな影を落とすことになる。
各種発電コストを比較してもウラン1gは石油2000リットルに該当するなど原子力発電はメリットが大きく発電単価は5~6円/kWhと低いが、実際には2倍ぐらいかかっているようだ。太陽光49円、風力10~14円だが自然エネルギー活用が進んでいるドイツでは風力発電、太陽光発電での電気代の家庭負担は驚くほど高い額だ。
安倍総理が、一つ一つの原発の再稼働にどう判断を下すか。「安全が政治を超えられるかどうか」は、安倍総理の決断一つだ。
東電・福島第一原発事故の反省から 浜岡原発の運転停止を要請したこと を伝える菅総理記者会見 2011.5.6NHKニュースウヲッチ9 |
思い出してみよう。民主党・菅総理(当時)が、東電・福島第一原発の事故後、浜岡原発のすべての原子炉の運転停止を中部電力に要請した時のことを。いつ起きても不思議ではない東海地震の震源域のど真ん中にあり、地震学者など学識者もその決断を評価した。
これを菅総理の勇み足と見るか、政治決断と見るか。
これを菅総理の勇み足と見るか、政治決断と見るか。
その浜岡原発も防潮堤のかさ上げ、非常用電源確保などの対策で再稼働を期している。
今、東電・柏崎刈羽原発を始め5基の原発が再稼働申請を予定しているらしい。地元の新潟県知事は「福島第一原発の事故の検証結果が示されるまでは再稼働の議論はしない」と、地元自治体の同意が取れるかどうかは、住民が納得する事故調査にかかっている。
規制委員会の安全性の判断か、政治判断が下されるのか。原子力行政から目が離せない。
2011.3.20 テレビ朝日 |
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