2014年11月5日水曜日

2040年代からマイナス成長?:成長率一辺倒の未来で良いのか

読売新聞 2014.11.3
このままで行くと2040年代から日本経済はマイナス成長にかかると経済財政諮問会議の有識者会議の「選択する未来」委員会が試算し人口減対策の必要性を提言している(読売新聞2014.11.3)と言うが、成長率一辺倒の未来で良いのか。

以前にも物質的経済的評価をGDPですることに疑問が呈されて、GDP崇拝を捨てようと「暮らしの質」、「幸福度」を測定し評価の試みがされているが市民権を未だ得ていないようだ。

成長率というと「成長率」=「労働力増加率」+「生産性向上率」で表されると習った。

2014年度の日本の成長率(IMF)は1.6から0.9%に下方修正したが、日本政府は1.4%の見通しのはずだ。生産性向上率は1990~2007年の平均で1.14%とすると1.4=労働力増加率+1.14となり、労働増加率はプラスでなくてはいけない。

ところが人口減と超高齢化で労働力人口が減少しており生産性の停滞と相まって30年後にはマイナス成長となるのだそうだ。

政府の14年度の成長率1.4%は、寄与度から考えると個人消費や公共事業など国内需要が1.2%、海外需要が0.2%を考えているようだが、財政再建、人手不足も絡んで公共事業が成長を押し上げる効果は疑問だし、企業が設備投資する国内需要があるのか。

一方で、「選択する未来」委員会は、50年後に1億人の人口を保ち、生産効率をアップし、出生率改善の政策を取れば50年代以降も2%程度の経済成長は維持できるという。

今まで国の豊かさは経済的物質的指標であるGDP,GNPの金額で表されている。

最近のGDPの規模は内閣府が発表した2012年度の国民経済計算書確報によると

第1位 米国 16兆2446億ドル、 第2位 中国 8兆2241億ドル、第3位 日本 5兆9359億ドル、ドイツ 3兆4260億ドルだ。長い間日本のGDPは米国の半分で第2位を維持していたが、中国に抜かれ金額も米国の4割以下になっている。日本がデフレでなかったら、今は8兆円ぐらいになっていたのだろうか。勿論その時の為替の問題もあるので一概にそうとは言えない。
ところが、GDPではなく、1人あたりのGDPに目を向けると別の姿、平均的な生活水準のおおよその目安が見えてくるのだ。

上記のGDPを一人あたりに換算すると

米国 66480ドル、中国 6089ドル、日本 46507ドルで日本はOECd加盟国34カ国中で第10位、中国は日本の13%程度なのだ。中国は10億を超える国民がいるのだから当然の数値だろうが経済指標も取り方によってかなり違ってくる。

一方で、生産の価値を誇張しすぎるGDP崇拝を捨てて「幸せ度」を評価する試みもされている。

ブータンが提唱しているGHNGross National Happiness)と言う指標があり日本でも大学の先生が研究していると聞いたことがある。

2014年9月9日発表の世界幸福度報告書2013によると、デンマーク、ノールウェイ、スイス、オランダ、スウェーデン、カナダ、フィンランド、オーストリア、アイスランド、オーストラリアの順で、米国は17位、日本は43位、中国は93位だ。

北欧が上位であることはいろんな面で知ることが出来るが、経済的、物質的豊かさだけでなく、これからの指標として「暮らしの質」を測定することを真剣に考えた方が良いのではないか。

2009年にフランスの大統領だったサルコジさんが家計の収入、消費、冨なども加味した「幸せ度」を採用することを提案していた。その後どうなったか分からないがフランスは1人あたりのGDPだと米国の73%だが、「幸せ度」では米国の87%になると言うことで乗り気だったのだろう。

国の経済指標として出来るだけ自国の成績の良い指標を採用しようとするのは為政者にとっては当然かもしれない。

「選択する未来」委員会は50年代以降も2%程度の経済成長を維持するための政策を提言している。

それによると、企業に技術革新を促す、社員教育の拡充、多様な人材が活躍出来る職場作り、不採算部門からの撤退、出産子育てにかかる給付費用の倍増、若年層の人生設計支援、男性の長時間労働の見直しで家庭と仕事の両立、地方への移住希望者に働く場所の用意、そして以前にも言われた1億人の安定人口の確保等の必要性がかかげられている(読売新聞2014.11.3)。

成長率を確保するために重要なのは、企業のイノベーションによる生産効率を高め、労働人口の確保なのだ。

しかし、何時までもこんなことが続くとは思えない。国民の新たな「幸せ度」を求める試みを進めた方が良いのではないか。


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