退屈で変わらないことが、経済成長の好ましい目標である。
「経済は復活の唯一の目標ではない。生活水準を向上させ、機会を創出し、人々が資源と計画を手に入れ、満足のいく暮らしを立てる手段だ。・・(中略)・・。経済は目的ではなく、奇跡の大勝でもない。奇跡的なくらい急激な成長を追求したために経済にとてつもない損害を与えインフレ、破綻、失業、分断を招いた例も多い。それよりも優れた目標、既にテクノロジーの先端に有り、教育水準の高い人々が多い、西洋各国に実行可能な唯一の目標は、不思議に平凡とでも言うような状態だ。
平凡を達成し、維持すると、すばらしいことが起きる。その理由は、経済成長の着実な積み重ねが、やがて国民全ての生活水準の向上につながり、長期にわたり政治的に望ましいレベルに福祉支援と公共投資を維持する財政が整うからだ。予想しやすい環境では人々も機構も計画を立て、それを続けていける。
以上の文章は「西洋の終わり」(ビル・エモット著、日本経済新聞 2017.7)の第11章「西洋の運命」ページ330に記述されている。西洋社会の復活を達成するには、どんな国、どんな政策も「開放性と権利の平等」という2つの指針を尺度に8つの原則に従わなければならないというその1つの原則である「7 退屈で変わらない事が、経済成長の好ましい目標である」というのだ。
日本は太平洋戦争でアメリカに負けたが、アメリカの支援を受け経済大国として復活した。しかし今、アメリカ式グロバリゼーションで企業経営は大きく変わり東南アジアの後進国と競争しなければならず、良き日本的経営も無視しなければならなくなった。日本社会は大きく変わったのだ。
ビル・エモットさんは更に言う「堅実な持続する成長は生活水準を上げ続け、衝撃と失政は生活水準を激しく下落させる」と。サッチャー主義は社会の緊張の原因となったし、アメリカと欧州で金融規制を怠ったためにリーマンショックが世界経済を酷い不調に陥れたのだ。一か八かの勝負はさけなければならない。オバマ大統領が言ったように「愚かなことはやってはいけない」という言葉が、先進国の経済政策の抱負であるべきだと(同上)。
日本経済復活のために安倍総理はアベノミクスの第1の矢「異次元の金融緩和」
策を継続、市場にジャブジャブお金を流している。北朝鮮の核・ミサイル開発の挑戦を受け近隣諸国の安全が脅かされているし軍事費は急騰している。
一方、グローバリゼーションでパイの奪い合いが始まっている。海外市場を目がけて輸出しか日本企業の生き残る術はなくなってきたが、「国内需要の創出」が喫緊の課題になってきている。
今までも前川レポート、21世紀版前川レポートで内需拡大が提言されてきたがいずれも失敗している。その要因は「企業の儲けを家計に再分配する」システムが出来上がっていなかったことらしい。
このことは残念ながら今も言えるのだ。
アベノミクスで経済が好転すれば企業は儲かり、家計に再分配し可処分所得が増えれば消費も増え税収増も期待出来る。でも企業は家計への再分配を渋っている。そのため政府は3%の賃上げを経済界に要求し、応じた企業には優遇税制で答えるとアメとムチだが、企業にはそれぞれ事情があるようだ。
消費の低迷は将来に対する不安が大きく影響しているとすれば、昔の良き日本式経営で日本社会の再構築が必要ではないか。
アメリカ式グローバリゼーションは止め高齢化社会、人口減に対峙しなければならない。
国内需要を創出し日本社会を再構築する。そんな政策課題を挙げる政党がないと言う事は難しいと言うことか。
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