今日の読売新聞(2019.8.22)の「経済学×現代」はリカードの「比較優位「自由貿易 恩恵と格差」」だ。ちょうど米中貿易摩擦、高関税掛け合いの真っ最中で出口が見えない。
リカードの比較優位では自国の得意とする分野の生産に力を入れ輸出を増やし、足りないものを輸入すれば全体で見た時より少ないコストで生産が可能になる絶対優位とは異なる(同上)。
50年前に学んだ経済学では比較優位の原則はそうだった。しかし今の自由貿易は多国間の競争、貿易のバランスを崩し米中貿易摩擦、日米貿易交渉とトランプ流の二国間交渉が続く。
トランプ大統領の「アメリカ第一」「保護主義」で比較優位の考え方も変わったと思うが、コメンテーターの伊藤先生は当時と現代では時代背景が大きく違うが最先端の経済学の実証分析では比較優位モデルが使われているという。
中国を考えてみよう。
他の国から部品や技術を導入し、国内の安い労働力で安価な製品を製造し世界市場に輸出していた。世界の工場とも言われていた。
ところが、輸入国であるアメリカは安価な商品を輸入し消費者は潤う一方で国内の産業は競争力を失い失業者、格差拡大でラストベルトが生じ国民に不満が募っていた。
また輸入超過は貿易のアンバランスを生み出し中国に対して貿易摩擦戦争をぶっかける事態に発展した。輸出入の金額的ギャップは政治と経済の違いを見せた。
今回の中国との貿易摩擦は貿易面だけでなく知的財産権、国有企業への優遇策また、覇権主義拡大と中国の政治体制にもかかわる問題を含んでいる。
今の貿易アンバランス、トランプ流経済外交は間違っているのか。
国内生産者の立場での「産業の衰退、失業の増加、ラストベルト」と消費者の立場である「安い製品を消費者に」の現実と理想のギャップが大きい。リカードは消費者の立場を取る。
伊藤先生は比較優位を考えるときは自国の産業同士の生産性を比べることが大事で自国内で競争メカニズムが働けば優れた企業に資源(カネ、人)が行き渡り国内生産は増えるという。
資源の無駄使いを減り弱い、競争力のない企業は淘汰される。
確か、昔の経済学では衰退する産業から伸びる産業にカネや人はスムーズに動くと習ったことがあるが、現実には難しい。技術も進んで人の再教育も大変で格差は拡大するばかりだ。
日本の場合も、農業部門と自動車産業を比べどれだけ競争力、生産性があるかを見ることで外国との競争力は別問題だという。打撃を受ける特定の産業だけを見るのではなく経済全体で影響を考えるべきだという。
でもそうはいかない。国内産業、失業者救済面から政治的な配慮が必要で関税をかけて保護することになるが、そのハードルをできるだけ低くするために国が集まって貿易圏を構築している。
日本が主導的立場にあるTPPもその一つであるがアメリカはトランプ大統領は離脱したが、国内農産物生産者の批判を受けている。多国間交渉から米中、日米経済交渉のように二国間交渉で優位な立場を確保しようとしている。
リカードの言う理想も現代の状況ではうまくいかないのだ。
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