今の経済、政治はケインズの言う「美人投票」だとすると、この考えが先鋭化すると本当の企業の価値、政党の価値が評価されなくなるとケインズは指摘していたというが的を得ている警告ではないか。
ケインズの言う「美人投票」とは客観的に最も美しい人ではなく、他人から人気を集めそうに思われる人に票が集まることらしい。株の投資でもいえることだ。自分が最も優れていると考える企業の株ではなく、他人が最も人気を集めそうな企業の株を推し量り勝馬に乗るというケインズの考え方だ(読売新聞2019.8.16経済学×現代「買い物他人の好みで」)。
今の経済だけでなく政治にも通じることではないか。
買い物をするとき、自分が本当に欲しいブランド品より、後になって中古市場で売れやすい品物買い求める。確かにそうだ。今ネットでも中古市場でブランド品を新品より安い価格で購入できるのだから繁盛している。
株の投資だってそうだ。昔はこの企業を育てようと個人的に長期に株を保持していたが、今は利益の極大化を図りコンピューターで瞬時に大量の売買が成立し株価の大きな変動をもたらしている。株価は「美人投票」理論から考えると実際には正しく評価されていないのだ。
金融政策も間違った方向に使われている。アベノミクスの異次元の金融政策で市場に流通するカネの量を増やしカネがだぶつくとよい投資先に行かず株や土地でバブル経済の危険、内部留保は460兆円を超える異常事態だ。
立正大の吉川学長は「美人投票」は経済外でもいえるという。ポストトゥルース「脱真実」に言及しているのだ。自分では何が真実か考えることなく、不和雷同に走り真実が議論にならず揺らいでいると指摘している。
そのためには「自分の頭で考えること」でケインズの「美人投票」は今の我々に警告を与えているのだ。
トランプの「アメリカ第一」「保護主義」、ジョンソンの「脱EU]など欧州で台頭するポピュリズム政党の台頭、そしてわが国でも「N党」「れいわ新選組」が議席を得たということで大手以外のメデイアがセンセーショナルに伝える。
安倍政権は長期政権になった。リーマンショックや福島第一原発の放射能事故のような致命的なショックを直接受けることなく一見安泰(?)な政治を続けることができ「他の内閣よりマシ」の評価を受け強固な内閣を築いてこれた。
でも本当に安倍政権は良いのか。よく考えれば決してそうではなかろう。ポスト安倍潰し、野党の体たらくで維持されているだけの内閣なのだ。
読売新聞(2019.8.16)の「長期政権を語る 柔軟されど哲学なし」で一橋大の楠木教授が「よく言えば柔軟だけれども、悪く言えば確固たる哲学や歴史観がない」と安倍長期政権を評価し、次の首相には哲学と歴史観を持って長期のビジョンを描くことができる人が出てきてほしいという。
同感だ。哲学と歴史観にかけることは一国のリーダーとして好ましくはない。国民一人一人が「美人投票」ではなく、今必要とするリーダーは誰か考える必要があるが、政治家も我慢が必要な時は我慢を強いることができるストーリーを国民に示すことが大事ではないか。
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