2012年3月24日土曜日

関電大飯原発:安全確保を放棄した原子力安全委員会か


斑目委員長記者会見
2012.3.24 日テレ ZERO
関西電力大飯原発ストレス・テスト1次評価了承の記者会見で斑目委員長は「安全性の確認を求められたものではない。どう使うかはあくまで政府の方で判断される」と、何やら原子力行政での安全確保を放棄した原子力安全委員会の姿を国民の前にさらけ出した感がした。

原子力安全委員会の名称だから誰でも安全確保が主務だと考えるが、間違いなのだろうか。
原子力安全委員会について調べてみた。

その職務は、原子力の研究、開発及び利用に関する事項のうち、「安全の確保について企画し、審議し、検討することである」と言い、原子力利用に関する政策のうちで、安全確保のための規制に関する政策に関することなどが挙げられている。

しかし、業者を直接規制することはできず、規制行政庁である原子力安全・保安院を監視、監査する内閣府の審議会の一つで、国家行政組織ではないのだ。

だから斑目委員長の発言は、正しいのかもしれない。

では、大飯原発ストレス・テストの一時評価で、どういう役目を果たしているのか。原子力安全員会のHPから、3月23日付、資料第1号「関西電力株式会社大飯発電所3号機及び4号機の安全性に関する総合評価(1次評価)に関する原子力安全・保安院による確認結果について」を読んでみた。

原子力安全委員会は、原子力安全・保安院に対して、発電用原子炉施設の安全性に関する総合評価の実施を要請し、何らかの基準に対する合否判定を目的とするのではなく、設計上の想定を超える外部事象に対して施設の潜在的脆弱性を事業者自ら的確に把握し、・・略・・施設の頑健性をたかめ、これらの内容について技術的説明責任を果たすことについて、規制行政庁である保安院がこれらの評価結果を的確に確認することを求めたという。

そしてこの報告書は保安院の審査結果を取りまとめたというのだ。確かに、原子力委員会は、各事項について「保安院が確認したこと」を確認している。

その「まとめ」でも、1次評価により緊急安全対策などの一定の効果が示された」ことは重要なステップだと評価している。

原子力安全委員会は、原子力安全・保安院に「やれ」と要請して、「やったこと」を確認しているのだ。

しかし、組織の実態はそうだとしても、国民は原子力安全委員会に積極的な「安全確保」を求めているはずだ。原子力を進める機関とそれを規制する機関は別でなければならない1996年の国際条約がある。

原子力安全員会には前科もある。

1999年9月、東海村の核燃料施設JOCで臨界事故が発生したが、その危険な変更申請を1999年5月に原子力安全委員会が許可してしまったのだ。これまで3%の濃縮ウランを扱っていた施設で、18.8%もの高濃縮ウランを扱えるようになったのだ。3%では間違っても臨界にはならなかった沈殿槽を小さく設計変更することなく、高濃縮まで扱えるようにしてしまったのだ。そして国内初の臨界事故に至ったのだ。この危険性にきずかなかった原子力安全委員会には責任があるというのだ(「危ない科学技術」武谷 青春出版社 2000年3月)。

新聞報道によると、福島第一原発事故でも、菅元総理から「爆発はないのか」と問われた斑目委員長は「水素がないので爆発はしない」と答えた直後に爆発した。それ以降、菅総理は斑目委員長を信用せず、あちこちから学者を参与に集め、アドバイスを乞うたようだ。

23日の斑目委員長のペーパー棒読みの記者会見、読み終わったらそそくさと会場を去る姿に、反対派が迫るシーンをテレビで見る限り、「公開」「民主」「自主」の原子力3原則が生かされていない。こんなことで原子力の安全が保てるとは思えない。

組織の位置づけがどうあれ、安全確保には遠慮はいらぬはずだが。

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