2012年3月9日金曜日

巨大地震予測:地震学者に何を期待するか


東大地震研が発表した首都圏直下
の地下構造
2012.3.7.首都圏直下震度7
防災対策
FNN スピークより

想定外(?)の規模の3.11東日本大震災を予測できなかった反省から、悩みが吹っ切れたように地震学者は巨大地震の予測成果を発表している。それに関連してメデイアが流す「あっちが危ない、こっちも危険だ」、「いつ起きても不思議ではない」など情報に振り回されている感がするが、地震学者に何を期待するか。

「何故予測できなかったのか」

2011年10月の日本地震学会では、研究姿勢、社会とのかかわり方に反省と批判が集中した。プレートが深く沈み込むような沈み込み帯では、大きい地震は生じにくいと言う理屈がわかりやすいために定説化され、観測データも100年程度と短期間で把握しようとしたこと、そして我が国ではM7以下の地震活動が一番高いとみていたことがM9という巨大地震を想定外としたという。

予知できると誤解していたこともあるらしい。地震は複雑なのに、いい加減な概念を積み重ねることをやっていた。今後は現象を正しく理解し、予測可能性を強化する必要があるとも言われている。更には、情報を提供する責務もあるが、現実は努力が非常に微弱だと見られている(以上 2011.10.20 NHKニュースより)。

悩みが吹っ切れたのか、地震学者はM9クラスの巨大地震の予測研究をドンドン発表するようになり、メデイアも追随する。

2011.3.11以前に報告されているこの付近での地震の予測としては、宮城県沖地震M7.5があり、平均周期は37年、M7クラスで海溝型、30年以内にM7.5が発生する確率は99%で、何時起きても不思議ではないといわれていた。

869年には津波が北関東まで及んだ貞観地震の震源域がこの宮城県沖よりも広く、宮城県沖から福島県南部沖まで200km、幅100㎞とみられていた(毎日新聞 2010.5.24)。東日本大震災の震源域が想定していた宮城県沖地震とずれているために危険は残っているとコメントしていた学者がいたが、どうなのか。これでストレスは解消したと言った学者もいたが・・。

なかなか経験も生かされないのが自然災害だ。チリ大地震による津波を経験したはずだが、巨大津波により多くの犠牲者を出した。ウェザー・ニュース社の調査によるとチリ地震津波で実際に避難した人は7%だったという。想定津波の規模が低かった要因もあるが、防潮堤を越えないという安心感もあったのだろう。
 
地震研究者に何を期待するか。勿論究極的には地震予知であるが、ほとんど期待できない。

研究成果を公開し、国民と共有する必要がある。最近は研究者も積極的に公開するようになったのかメデイアも情報番組で解説するようになった。

震源域の表現を統一できないか。気象庁や研究者は〇〇沖、〇〇東方沖、〇〇南方沖とか〇〇北部と表現するが、きちんと区別、統一された表現なのか。巨大地震の震源域との関連性があるのかどうかもわからない。

また、事後検証がほとんどで事前検証がない。発生後データを解析すると予兆があったというが、それが事前検証に生かされないのか。例えば、ゆっくり地震がある。

豊後水道で起きる「ゆっくり滑り」を観測すれば南海地震の発生を理解することができるかもしれないことを防災科学技術研究所と東大地震研が突き止めた(「巨大地震 仕組みにヒント 「ゆっくり滑り」観察 東京新聞 2010.12.20)。

ところが今回の東北地方太平洋沖地震の場合も、上の方から「ゆっくり地震」の震源域が段々下がってきて、今回の大震災の震源域に行き着いたという調査結果も出ている。他の研究者の研究成果を共有しなければ片手間な地震研究で終わってしまう。

それに各研究者の研究対象がバラバラだ。次に起きる危険な震源域も研究者によって指摘がまちまちだ。いつ起きるかわからない注目されている巨大地震のデータをコツコツ蓄積しながら兆候が表れるのを待つ仕事ほど忍耐のいる仕事だ。ほとんどが生涯かけても成果がないことになる。

一時、注目された地震予知もほとんど不可能と言われている。

一方、皆が注目している南関東の地震活動が東日本大震災後活発化して、発生頻度が大震災前の約3倍になり、「M7程度の首都直下地震がいつ起きても不思議ではない」と文部科学省の特別プロジェクトチームが発表した。

2012.3.7 NHKニュースウォッチ9
「震度7に備えよ」より
首都圏直下型地震の18のケースのその一つである東京湾北部地震は、沈み込むフィリッピン海プレートと陸のプレートとの境界が従来の想定より10km浅いことがわかり、東京都東部沿岸部では震度7の地点が出て、震度6強のエリアも拡大した。

しかし首都圏のプレートでは新しい見方もすでに出ていた。東大地震研が反射法で広範囲に解析した結果、フィリッピン海プレートの上面は深さ4~26㎞とわかり、これまでの想定より5~17㎞浅いことが分かったという。浅い場所で地震が起これば震源の上の揺れは強くなる(朝日新聞 2005.8.31)。

兎に角、震度7では人間も家具も飛ぶのだ。根本的に対策を考え直す必要も出てくるだろう。

色んな研究者の、いろんな研究成果を共有し地震予測あるいは、その防災に生かす努力が必要だ。

文部科学省主催のシンポジウムで高さ80m、20階建の高層ビルでの長周期地震動による揺れは、ビルの骨組みに損傷を与える可能性があることが報告されたという。柱と梁の溶接部分がはがれるというのだ。3.11の東日本大震災時の東京都心の高層ビルがゆっくり揺れているのを見て驚いたものだ。免震構造になっているからと言って安心してはいられない。日本中どこで発生しても長周期地震動は首都圏の高層ビルを攻撃してくる。知らぬ間にビルの主要構造に損傷をきたすのだ。

防災は総合力。税金を使っての研究成果は国民への説明責任として果たすべきであるという(2007.2.15 首都圏地震シンポジウム)。

研究姿勢と社会とのかかわり方が問われる地震研究である。

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