2012年6月22日金曜日

東京電力事故調査報告書:天災、想定外、官邸介入で被害者なのか


東京電力事故報告のポイント
2012.6.21 読売新聞

やっぱりと言ってもいいのか。東電の事故調査報告書は、「天災」、「想定外」、「官邸介入」を強調することにより、東電は被害者という立場を鮮明にし責任回避の論調だ。危険な巨大技術を駆使する原子力発電所にあって、あらゆる面で想定の甘さが目立ち事故拡大の防止が不十分だった。

この程度のことしか言えない東電の電力供給に頼っていたのかと思もうと腹立たしい。電力料金値上げの要請が来ていたが、契約アンペアを落として一層の節電をしようと思う。

ところで、新聞に記載された東電の事故調査報告書要旨を読んでみたが、知りたいことにはほとんど答えていない内容だ。

地震・津波の想定について、地震関係機関も考えていなかった、まさに知見を超えた巨大地震、巨大津波であったという。

しかし、2008年には仮想敵条件で算出した結果で実際には怒らない津波高さ(15.7m)と考えたようだが、実際には発生してしまった。

この時、堤防の工事費は80億円と見積もられたようだが、事故後の損害賠償などの費用を考えるとなんという微々たる金額だったのか。安全対策費をケチる判断はどういう過程でされたのか。

機器や電源がすべて機能を喪失し、想定されていた事故対応を大きく外れる事態になったことから従来の安全への取り組みだけでは事故の拡大防止はできなかったという。原子力発電という一旦トラブルが発生すると取り返しのつかない結果になる意識に欠けていた。

この福島第一原発の事故が、最初の事故ではない。チェルノブイリ事故は先例として多くのことを学ばなければならないにもかかわらず、類似災害から事故防止する意識に欠けていたのではないか。

非常用復水器も表示が消えて開閉など動作状況を把握することが困難だったという。でも当時の新聞にはオペレーターが間違って主導で閉にしたと報じられていた。この強制的に発生するスチームで冷却する機能があるから安全なのだとテレビでコメントしていた原子力関係者がいた。

ベント作業が遅れた要因の説明もしていない。ただ、所長からベントの準備指示が出たので、ベント操作手順書を作成していたというのだ。ためらったり、意識的に遅らせたことはないとも言う。

海水注水については、自衛隊による注水までに紆余曲折があったことは当時のニュースで知ることができたが、官邸の了解が取れないので中止したと発表されたが、実際には所長の指示で継続されていた。この判断は正しかったという。

報告書では、事故の応急復旧に対する責任者の所長の判断を超えて外部の意見を優先し、現場を混乱させた事例だったとして、総理の異常な介入を批判している。

自衛隊に注水を実施させるには総理の許可もいるだろう。官邸は素人なのだからプロ(?)である東電の判断でどうするかどうかを決めれば良い事ではないのか。あえて介入を批判することは責任逃れにならないか。

撤退か、退避かで政府関係者と東電の言い分が違っている。政府関係者は全員撤退と受け取っているし、東電は約70人を残しての退避だと言い、この行為は菅総理の発言によるものではないという。

しかし、東電のことだ。全員退避を考えていたのではないか。国民は政府の言い分を信用するしかない。

結びでは、史上まれにみる津波の影響で機能を喪失し、結果的に炉心損傷を防止することができず、申し訳ないという。

総電源喪失が大きな要因ではあったが、本当に津波の影響だけなのか。地震には十分に対応できたのか。

更に今回の津波に実際に遭遇し、事前の備えが至らなかったことを真摯に反省するともいう。

一旦事故が発生し、その影響は甚大で損害賠償も天井知らずの金額であることを考えると、津波の安全対策など微々たるものなのだ。安全対策を怠った東京電力経営陣の責任はあまりにも大きすぎないか。

「天災」、「想定外」、「官邸の介入」を強調する余り責任逃れであってはならない。そんな程度の意識しかない東京電力に巨大で危険な原子力発電を事業にする資格はない

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