2012年10月10日水曜日

国際通貨基金(IMF)は債務国を助けているのか、いじめているのか

IMF,世銀総会のロゴ
国際通貨基金のHPより

9日から日本でIMF・世銀総会が始まった。IMFと言えば国際通貨制度の安定確保を担う責務があるとはいえ、最近の言動は債務国を助けているのか、いじめているのか判断に苦しむ場面が多いと感じていた。金融支援の代わりに債務国に財政再建、緊縮財政を強要するが、緊縮財政に反発する国が多く、彼らは成長戦略で雇用の確保が急務なのだ。

IMFの役目について国際通貨基金のファクトシート­-IMFの概要から探ってみた。 為替レート制度、多国間決済制度などの国際通貨制度の安定性の確保が第一の責務だという。その安定の維持、危機の防止に向け、各国の政策、並びに国・地域・そして世界的な経済・金融状況をレビューし、188の加盟国へ政策助言をし、経済の安定、金融危機の軽減、生活水準の向上の実施に向けた政策を推奨するというのだ。

経済、金融面で大きな役割を担っているが、前回日本で総会が開かれたのは1964年で、日本は東京オリンピック、それに合わせた東海道新幹線の開通(IMFの支援で)と活気に溢れ成長率も9%だったが、今は低成長率が続き財政再建に苦悩している。

IMFの最新の報告書でも世界経済は数か月前よりも先行き不透明な状況に陥っており、見通しはさらに悪化、リスクは高まっていると指摘し、今年の世界経済の成長率は3.3%、2013年は3.6%と依然低迷すると見ている。

世界財政見通しでの主要国の対GDP比財政赤字も2013年度は米国6.4%(2012年8%)、ユーロ圏2.9%(3.4%)、イタリア2.8%(2.3%)、先進国4.6%(5.7%)と改善が進むが、日本は8.8%(10.2%)で相変わらず主要国では最悪の水準だという(讀賣新聞2012.1.25)。

そこでIMFは日本に対する年次審査報告書で政府債務を引き下げていくために、2015年以降も更なる財政再建策を求め、(1)消費税率を15%まで引き上げる、(2)法人税率を更に引き下げる、(3)年金支給開始年齢を67歳へ引き上げるなどの提案している(讀賣新聞2012.8.2)。

日本政府の政策を追認したのか、IMFの提言を日本政府が追認したのかわからないが、財務省から多くのスタッフがIMFに出向しているのでIMFも野田政権も財政再建策では共有しているのかもしれない。

IMFはほかにも色んな発言をしている。ラガルド専務理事は大飯原発の再稼働や消費税増税に「勇気ある決断と行動だ」と評価した。「勇気ある決断」とは国民に負担と不安を強要するものなのか。

IMFは世界経済のことを考えてのことだろうと思うが、何故、民意とかけ離れた政策を推奨しようとしているのか。

ⅠMFの債務国への融資条件を見ると、緊縮財政、増税を強要しているが雇用の減少→失業、福祉の切り捨てで国内経済は崩壊し、救済よりも国民を苦しめることになっていないか。

政府債務は政治家や官僚の利権食いの結果で拡大したもので、一時は国民に利得もあったろうが、そんな国家破綻に繋がるような放漫財政が長続きするはずはない。

しかし緊縮財政ということになると国民への犠牲は大きい。

欧州経済危機の発端となったギリシャに対してユーロ圏、IMFによる支援が続いているが、今でも先行きは不透明である。その支援の代わりにユーロ圏とIMFの監視下で歳出削減と構造改革が要求されているが、国民は「これ以上の我慢はできない」と緊縮政策に反発している。

そこで債務国である日本も勿論のことであるが、ギリシャでも経済成長路線が求められるようになった。

経済成長路線には財政出動が必要で赤字を積み上げることになる。その結果、景気が好転し税収が増えればいいが、今の世界経済でその可能性は低くないか。結局は財政出動を躊躇することになる。

「世界経済減速をどう防ぐか」は今の喫緊の課題であるが妙案はなさそうだ。

我が国も長期間続くデフレからの脱却、円高対策が経済再生の基本課題であるが、成功していない。今の円高は実情にあっていないと日本政府もIMFも認めるところではあるが、単独為替介入にはIMFは反対している。

ラガルド専務理事は「先進7か国で行われているように他の通貨当局と相談した後であれば正当化される(讀賣新聞2012.7.8)というが、米国はドル安政策で協力など得られはずがない。

そのIMFも構造改革が要求されている。新興国が出資比率を上げ発言力を強めようとしているのだ。中国がドイツを抜いて出資比率が3位に上がってきた。17%の出資比率で断トツの米国が単独拒否権を持っており、IMF改革も米国の意向次第なのだが、中国の台頭に警戒している。

それにしても今後のIMFの使命はどうなるのか。

途上国の経済発展の支援を担い、ユーロ連鎖危機の歯止め役と役割を果たしてきたが、これからの成長戦略にどう対応できるのか。

「国破れてIMFあり」は誰も望んではいない。

今回のIMF・世銀総会はエジプトの政情不安があり急きょ決まったようだ。日本にとっては防災・復興をアピールする良い機会なのだろう。しかし今世界は政情不安の時代だ。IMFも政情不安にどう対応するかは重要な課題であるはずだ。むしろエジプトで開催した方が良かったのではないか。

9日に有楽町の東京国際フォーラムに行って来た。

9日は総会場の入り口はフェンスで
ガードされ、警備員、警察官が警備
していた。
会場の入り口はフェンスでガードされ、警備員、警察官が立っていた。周囲の道路は警察の検問ラインが引かれ12日に向け警備が強化されている。街のコーナーには案内係のスタッフがプラカードを持って立っていたが、外人観光客、総会出席者は少なく手持ち無沙汰の状態だ。街路にもロゴをあしらった垂れ幕が下げられ、帝国ホテルへの矢印が記されていた。

アフリカの取材クルーが街頭で取材していた。インタビュアー同士が笑いながらデジカメをいじっていたので、日本製品のデジカメの良さを取材していたのだろう。

今朝のテレビ・ニュースで総会・会場の周辺は、外人観光客などは少なく日本人観光客が多いことに「異変が起きている」と驚いていたが、中国が参加を止めたので中国人観光客がいなかったのも原因ではないか。




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