消費税増税に向けての採決は、今混沌としている政治打開の最善策ではないか。野田・小沢会談で妥協点が見いだせず、「次にどうするのか」と聞かれた野田総理が「会談内藤をよく反芻して考える」という意味のことを囲い込み会見で言ったと思ったら、早々と採決へ向けて準備するという。
6月21日までの今国会期中での成案は、野田総理が国民に約束していたこと。総理の揺るがない姿勢を示すとともに、小沢グループを離れ、自民党に軸足を移していることになる。
大手新聞はこぞって会談物別れの結果、消費税増税に向け自民党との協調を提案し、自民党にも話し合いに応じるよう要望した。
一方、小沢元代表の「その前にやることがある」、「仕組みを変えて財源を見つける」、「マニフェストの原点に返れ」式の反対に異論を唱えた。
しかし、小沢元代表の主張は真っ当なもので、「マニフェスト違反」、「あの政権交代は何だったのか」と疑う国民も多いはずだ。そのため、選挙区での有権者の民主党政権嫌悪の反応に小沢元代表に群れる議員も多いだろう。
残念なことは、反対意見も小沢元代表が絡んでくると、「即政変」のうごきになり、せっかくの反対も歪曲化され条件闘争へと変わっていく。
一方、野田総理が期待する自民党も増税賛成の一枚岩ではない。一部の長老にひっかけ回されるとか、今の経済環境下では賛成できないと異を唱えている。
政権基盤の脆弱な野田総理が、自民党案をどの程度飲み込むことができるか、民主党案の見直しに党内がまとまるのか。
気がかりなのは、社会保障の一体改革の全体像が見えないのに消費税増税だけに力が入りすぎていることだ。先に河野元衆院議長が、細川内閣の時、政治改革のためのトップ会談が、いつの間にか小選挙区制にすり替わったことに不明を恥じていた。
今回も社会保障一体改革が、いつの間にか消費税増税にすり替わることにならないか。
国会は、これから各党の駆け引きで益々混沌としてくるだろう。
そのためにも、早めの採決は一つの策だ。
私も、以前「野田、輿石、小沢、谷垣、大島、石原のみなさん、メンツを捨て、政治を前に」というタイトルの記事で、「一旦採決したらどうか」と提案した。色んなしがらみをクリアーするためにも最善の方策ではないかと思ったのだ。
党議拘束などと言わず、私たちが国政を負託した国会議員が一人一人自分の判断で賛否を決める。
万一否決されれば、その時は総理は伝家の宝刀「解散権」を行使すればいい。そして総選挙で新しい議員で社会保障と税の一体改革を審議したらどうか。
当然のことながら、増税反対もあるだろう。その時は経済成長路線も真剣に検討されるだろう。
ここは採決することが最善の策とみる。