2012年5月19日土曜日

日銀vs政府:これでもデフレ脱却に問題意識を共有しているのか


なかなか打つ手が見出せない官邸

政府と日銀は、円高、デフレ対策に共通認識を持っているといえるのか。国会の質疑になると「もっと量的緩和を」と追及されるが、日銀・白川総裁は「金融政策には限度がある」と、寧ろ政府の財政政策などによるべきだと主張するのが常で、このパターンの繰り返しにはうんざりする。

17日の衆院特別委員会で民主党。前原政調会長が質問に立ち、デフレ対策で日銀と政府は政策協定を結ぶべきだと提案した。

これに対して野田総理は、「問題意識を共有するために会う機会を増やしている。課題が何で、どう分担するか、これからもやっていきたい」と言い、日銀が物価の目途1%、資産買い入れ拡大をやったことを評価した。

一方日銀・白川総裁は、例のごとく「金融政策だけでやっていくと市場に不測の事態が予測されると過度の期待に警戒感を表明した。

以前、白川総裁が海外の会議に出席する前に野田総理と会談したというニュースが流れた。官邸から去る総裁に記者団が「どんな話をしたのか」と問うが、総裁はノーコメントで足早に去っていった。

野田総理は会う機会を増やすというが、話し合ったって平行線で、良い考えなど出てこないのではないか。それともうっかり話すと市場が反応するとでも思ているのか。

物価安定の番人 日銀本店
毎月定例の日銀の政策決定会合が近づくと、政財界は更なる金融緩和を要求し、メデイアは日銀が更なる金融緩和に動くのではないかとの予想を流す。日銀はそのたびに「様子見」か「更なる緩和」を決定する。

しかし、市場は織り込み済みなのか、為替、株価に大きな動きはない。政府や日銀が何をしなくても、米国の経済状況で株価は上下動を繰り返す。今は、ギリシャの混迷による欧州経済の危機の影響が大きく為替は79円台、株価は8600円台で打つ手に乏しい。

野田政権は財政政策に手詰まり状態で、日銀に頼らざるを得ないようだが、日銀も国債購入が日銀券ルールをはみ出す状況になってきたため、更なる緩和に一層の警戒をする。

では今後どんな手があるのか。 
朝日新聞(2012.5.13)の「日銀と政治の責任」に白川総裁へのインタビュー記事が載っていた。

「金融緩和が足りない」という批判に、デフレから脱却したわけではないが、消費者物価は2009年のマイナス2.4%からマイナス幅は小さくなっており、13年度は0%後半、遠からず1%に達する可能性が高いという。

でも、多くの専門家は1%の目標が低すぎると日銀を批判しているのではないか。

日欧米中央銀行の通貨量
週刊東洋経済 「金融緩和」
2012.3.24
「通貨供給量が欧米の中央銀行に比べ少ないのではないか」との質問には、来年6月までに長期国債を年間算で47兆円という大きい額を買い入れる。欧米の中央銀行が08年のリーマンショック後に始めた緩和を日銀はずっと前から大胆にやっている。対GDP比では日本が最も高い水準だと従来の考えを繰り返している。

確かに日米欧中央銀行の総資産を対GDPで比較すると日銀が高い水準を維持しているのは確かだが、2007年3月末を100とした指数でみると日銀はFRB,ECBに比べてもかなり低い水準だ。

日銀は過度の量的緩和には警戒が強く、日銀の水準が高いデータで自らの政策の評価を行っているのではないか。多くのエコノミストが指摘しているリーマンショック前後の指数での比較での緩和不足をどう評価するのか。

財政の信認がなくなれば、物価安定も金融システム安定も損なわれ、際限なく国債を買い入れることは、制御不能のインフレになるおそれがあり、これが歴史の教訓だともいう。

インフレ、それも手の施しようもないスーパーインフレを警戒しているのだ。物価安定が仕事の日銀にとっては当然とも思えるが、このままで本当にデフレ脱却できるのか。2~3%へ持って行けるのか。

日銀は金融緩和でしっかり責任を果たすから、政府は規制や制度の思い切った改革をやれと言い、経済成長へ強力に取り組む必要があるというのだ。

でもその前にデフレ脱却、円高対策が必要と政府や財界は言っている。通貨の供給量の増やすのも一手なのだ。

野田政権の手詰まり感、日銀の量的緩和への警戒感を考えると、いい手はないことになる。

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