2015年12月8日火曜日

自然破壊:人間にとって有用な創薬資源を破棄することになるのか

人間の開発行為に伴う自然破壊は、一方で人間にとって有用な創薬資源の破棄になっているのではないか。今年のノーベル医学・生理学賞受賞の大村先生の「イベルメクチン」の開発業績をみてそう感じた。大村先生は土壌中の微生物だったが、自然界には30万種とも言われる植物が有り、薬用植物資源研究センターでは3万種が薬用可能とみている。

こういった動植物種は過去に5回「大量絶滅」し、5回目が6500万年前の白亜紀に恐竜が大絶滅したが、今6度目の「大量絶滅」が起ころうとしており、その要因は人間の乱開発行為だという。

特に、以前から指摘されている薬用植物の宝庫と言われているアマゾン熱帯雨林について朝日新聞Degital(2010.10.26)によると、新種の動植物はここ10年で1200種見つかっており、植物、脊髄動物は637種あったと言うが、経済成長、農地拡大のため生息地が破壊されているという。数十年間で人間活動によって雨林の17%以上が破壊されたことになるらしい。

そこで固有の植物種を守るために生物多様性条約で自然環境を守ることになったが、その効果はどうなのか。既に貴重な資源を失っているかもしれない。

昔から言われているのに、ニンニクからアリナミン、フグからフグトキシン、確か青カビからペニシリンなどが知られているが朝日新聞(2015.12.6)「科学の扉」の「天然物科学の巨人たち」によると、ノーベル化学賞受賞の下村さんのオワンクラゲからの緑色蛍光タンパク質の抽出、遠藤先生の米屋の青カビからコレステロール値を下げるスタチンの開発など天然物から構造を探ったり、微生物から薬を作ったケースが紹介されている。

野生の動物が体の具合が悪くなったときにどんな植物を食べているかによってヒントにもなるし、抽出物質の構造式から何に役立つか推定も出来るらしい。

この植物成分の化学構造からいろんな誘導体を合成する創薬手法も、今主流であるゲノム創薬手法に負けてはいないのだ。

何千種の中から有効な成分を拾い上げるのだから多くの研究者の並々ならぬ努力が必要で
一人一人の研究者が小さな袋とさじを持ち歩いたと言う。

創薬の種を天然薬物に頼るために各国で資源獲得競争がされているが固有の植物種を保護するためにもアマゾンの自然を守ることは大切だ。

そのためには人間による乱開発は慎むべきだが、大村先生は静岡県伊東市のゴルフ場近くの土壌にいた放線菌から見つけたという。開発行為でゴルフ場が造成されていなかったら、このチャンスはなかったことになるのか。


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