2015年9月11日金曜日

茨城、栃木、宮城に特別大雨警報:自然災害に勝る技術なし、まずは「早めに逃げる」こと

今回の茨城、栃木、宮城で大雨を起こした気象状況
NHK 特報首都圏 広がる大雨被害
2015.9.11
台風17号と台風18号から変わった低気圧による南北に広がる帯状降雨範囲で茨城、栃木、宮城に特別大雨警報が出、500mm以上の脅威の降雨は広域水害を起こす結果になった。自然災害に勝る技術はない、ただ「早めに逃げる」ことの重要性を改めて知ることになった。

テレビのニュース画面を見ると目を覆うばかりの大惨事、これでは復興も容易ではないと思う一方、いつものことだが自衛隊、警察、消防のヘリによる救出活動、地元消防団による避難活動、他の自治体からの給水活動は目を見張った。

被災した70歳代の男性は「今までこんな経験はない」と驚くし避難勧告を受けても避難しなかった人も急激な増水を考えなかったと言い、一度は寝たが耳まで水が来て慌てて避難を考えたが自分の力ではもう避難できる状態ではなかったとも言う。

深夜でもあって情報は出ていたが、それをしっかり把握することが出来なかったことが避難を遅らせた原因の一つかもしれない。情報伝達に工夫が必要と専門家は指摘する。

避難指示が遅れた地域もある。テレビのニュースでは市役所の担当者が先に決壊した箇所が気になって避難指示が遅れたという。しかし役所ばかり責めてはいけない。重要なのは常日頃からハザードマップなどを見ながら住民が自ら判断し早めに避難することだ。

それにしても今回の水害は専門家も驚く。

台風17号と台風18号から変わった低気圧が南北に帯状に降雨範囲を広げる珍しい現象だったというのだ。500mm以上の降雨は鬼怒川で越水→堤防が脆くなる→決壊を起こした。

天災に勝る技術はない。技術は災害を予測し減災に生かすことで、まずは早めに逃げることだ。東北地方太平洋沖地震による津波災害で東電・福島第一原発が放射能汚染を起こした。でも政府の地震調査研究推進本部はそれより先にM9の貞観地震で津波高さを15mの可能性を予測していたが、東電は無視し実際に甚大な事故を起こすことになった。東電が防潮堤をかさ上げしていたらどうなったかは分からないが、減災には役だったのではないかと思う。

今回の鬼怒川の堤防決壊も、数年前に国土交通省が少し離れた場所で決壊が起こったときのシミュレーションをしていたという。しかし、対策は下流からやっていたので間に合わなかったというのだ。ここは対策して大丈夫でも他の箇所で決壊していただろう。

私の住んでいる近くに多摩川の水害対策で新丸子のスーパー堤防事業が進んでいる。民主党の事業仕分けでやり玉に挙がった事業だ。費用vs効果を考えると廃止だろうが防災面を考えると無責任な判断も出来ない。

いつも天災と言うことになると寺田寅彦博士を思い出す。博士の随筆に「天災と国防」がある(寺田寅彦随筆集第五巻 岩波文庫)。

この随筆は昭和9年11月に書かれた物だが、それによるとこの年いろんな天変地異が楔を次いで国土を襲いおびただしい人命と財産を奪ったように見えると言う。統計的に考えてもある年は災禍が重畳したりある時は全く無事な巡り合わせが来ることは自然変異の現象、良い年廻りの時に十分用意しておかなければならないことは明白なことだが、きれいに忘れがちなことも稀だという。

もっとも忘れているために今日を楽しむことが出来るのだという。

確かにそうだ。東京で出かけるときは、今日は首都直下地震が起こって欲しくないと思う人は少ないだろう。首都直下地震が何時おきても不思議ではない状況だと言うことを忘れているから今日一日が楽しめるのだ。

日本は地理的にも気象学的、地球物理学的にも極めて稀な環境にあり特殊な天変地異に脅かされていることを忘れてはいけないという。地震、火山そして今の異常気象を考えるとその通りだ。

更に、文明が進めば進むほど、災害は激烈な度を増す。風圧や水力に抗するような造営物を造って暴威を封じ込めたつもりになっていると自然が暴れ出すという。天災に勝る技術はないのだ。

そして大事なことを指摘している。

昔の人は過去の経験を大切にし忠実に守り被害のなかった場所に集落を保存したが、一方今は、田んぼの中に新開地を造り新式の家屋を造るが災害でメチャクチャに破壊される。文明を買いかぶってはいけないと警告する。

災害で自然淘汰された場所は被害がないが、官僚的、政治的、経済的立場で開発された場所は天災に弱いのだ。東北地方太平洋沖地震で被災した地域を見直すと寺田寅彦博士が指摘しているとおりなのだ。

又、天災と国防について、戦争は国防などを議論し避けようと思えば人間の力で避けられるが、天災ばかりは科学の力でもその襲来を中止させることは出来ない。科学的国防の常備軍を設け、日常の研究、訓練により非常時に備えよと言う。

昭和9年の話だ。今も十分に通用する指摘だ。

「天災と国防」というと丁度今の政治とダブル。今回の水害も被害が大きくなった時点でやっと安倍総理は関係閣僚会議を開いたが約10分で終わり、今参院での安保関連法案の取り扱いをどうするかで頭がいっぱいのようだ。「国民の命と生活を守る」と言いながら安保関連法案に力を入れているようだが、今回の東北地方の水害を何と思っているのかと日刊ゲンダイが批判している(2015.9.11)。

言いたかったことを先に言われてしまった。


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