2011年11月29日火曜日

大阪ダブル選挙:維新圧勝と言っても支持は30%



大阪W選挙となった知事、市長選挙も橋本さん率いる維新圧勝と言っても、賛成したのは投票率、獲得票から全体の約30%、政治にリスクは付き物であるが、このまま橋本さんに託して突っ走るのか「大阪都構想」の感がする。

NHK出口調査(2011.11.28 クローズアップ現代)でも分かるように60%の人は大阪再生を託して維新の会を支持したのだ。長い間、大阪は地盤沈下に悩み関西経済の疲弊は大きな社会問題にまでなっていた。

そこで大阪府、大阪市は行政の無駄をなくし、集中投資で景気を回復させるため、大阪都構想を打ち上げた。橋下さん率いる地方政党・大阪維新の会は、大阪府議会で単独過半数、大阪市議会では第1党にまでなったが、なかなか言う事を聞かない大阪市に橋下さんは自ら乗り込み改革を進めようとした。

結果は、橋下、松井両氏の圧勝の感がするが、投票率、獲得票数から考えると、橋下さん支持は全市民の約36%、松井さん支持は全府民の約30%で、「大阪都」という大きな行政機構・地方自治改革を目指すにしては圧勝、完勝とはいえないのではないか。

テレビ報道を見ていると、不安を抱いている有権者も多い。このまま突っ走って、後で失敗ではどうしようもないというのだ。しかし、「何とかしなければ」と期待して支持した有権者も多い。

政治にリスクは付き物であるが、「大阪都構想」のメリット、デメリットをしっかり府民に提示すべきだ。改革し無駄な投資を止め、効率的な投資で景気が本当に回復するのか。大阪を8~9、堺を2~3の特別自治区にし、区長を公選し、住民サービスは区、広域行政は都が担当するという。

でも、区長、区議会議員、区議会の維持管理に相当の行政コストがかかるのも間違いない。橋下さんは大阪府の赤字を解消し、黒字に持っていった業績、経験がある。「オレの考えに反対のものは辞めていけ」と発言したことに独裁色を匂わすが、大きな行政改革は強いリーダーシップが必要だし、「数は力」でもある。

今後は、構想案を具体的に提示し、議会承認→住民投票→地方自治法改正のステップを踏むのだろうが、住民投票は過半数の賛成が必要で30%程度ではダメだ。法改正は国会での仕事になる。既成政党がどう対応していくのか。スピード感、国民目線の欠如している国会議員に適正な対応が出来るのか。

期待よりも心配の方が大きい。

写真:喜びの橋下さん NHKクローズアップ現代 2011.11.28

2011年11月28日月曜日

人情、コミュニケーションの希薄が「フーテンの寅さん離れ」を




































「フーテンの寅離れ」は、人情、コミュニケーションが希薄になった今の社会現象ではないか。人情とコミュニケーションの楽しさを見せてくれた「男はつらいよ」のフーテンの寅さん離れが起きていると読売新聞(2011.11.24)が報じた。柴又の「寅さん記念館」を訪れる人が開館した13年前の約1/3に落ち込み、特に児童・生徒の見学者も減っているらしい。

私たちのような年配になると、子供の頃はNHKの「バス通り裏」を見ながら夕食を食べたものだ。小さな庭を真ん中に近所の人たちが群れあい、悩み事を相談したりする人情話は、コミュニケーションの大切さ、楽しさを教えてくれたものだ。しかし、今はそんな風景を見ることさえ少なくなった。

寅さんの「男はつらいよ」はテレビの放送で毎回見ることが出来た。祭りの出店で啖呵売り、旅先で美人の女性と恋に落ちるが、最後は振られてまた旅に出る。時々は帰ってきての家族との会話、騒動も面白い。パターンは毎回決まっているが、なぜか毎回新鮮さがある。

何故、寅さんの出が葛飾柴又なのか。一度行ってみたいと思い11月27日に見学した。

京成電鉄柴又駅をでると、フーテンの寅さんの像が立ち、顔は横向きで帝釈天の方を見ているのだろうか。観光客がしきりにシャッターを切っていた。

帝釈天の参道は、両側に団子、せんべい、漬物などを売る店、食堂が並んでいる。やっぱり有名なのは高木屋本舗だ。店内には予約席のテーブルがある。渥美清さんの指定席らしい。

驚いたことに、熱狂的ファンがいるようで、フーテンの寅さんスタイルの観光客を見た。確か衣装は高島屋で作っているらしいが、お客さんからの注文は断っているといっていた。結構、高い値段だったと思う。

帝釈天は天気もよく、参拝者も多い。七五三のお祝いもあるようだ。ボランテイアのガイドさんに「記念館の見学者が減っているんですか」と聞くと、「そういう心配もあるが、今日なんか結構入っていましたよ」という。

記念館への道順を聞いて向かった。確かに参拝者数に較べて記念館に向かっている人数は少ない。

大人一人500円だが、65歳以上は400円だという。

記念館の中には撮影所から移設した見慣れたセットがあり、ポスター、フィルムも見ることが出来る。

何故、柴又なのか。豊かな自然と住む人たちの暖かい心、人情味豊かなこの土地が選ばれたようだ。1作目が42年前だから、その頃はそういう風情がこの辺にはあったのだろう。

寅さんの設定も面白い。不良少年という育ち、テキ屋家業、どう見ても親泣かせな人間だが、人情味のあるところはなかなかのものだ。

第一作目はどんなものだったのか。ポスターから第一作は42年前で、奈良・京都「男はつらいよ」、第2作目が京都・続「男はつらいよ」になっている。

第一作目の一部が紹介されている。御前様の娘冬子にふられた上、くるまやの皆といいたい放題を寅さんは聞いてしまう。2階に力なくあがっていく寅さんと気まずいくるまやの面々。「お兄ちゃん 何処へ行くの」「チョット旅に出ようと思ってな。何、最初からそのつもりだった」。毎回聞く定番の会話だが、なぜか新鮮さを感じられるのが不思議だ。

ところで「寅さん離れ」だが、寅さんは歴史上の重要人物ではなく、また、実在の人物でもない。人情や社会のコミュニケーションが希薄になっていく現在、年が経つに従い「寅さん離れ」が進むのも仕方ないことではないか。

むしろ、後世に忘れられないようにしようとすること自体が無理ではないか。人情の大切さを教えるにしても「男はつらいよ」では難しすぎないか。

写真上段左:熱烈な寅さんファンを見かけた 帝釈天表参道 2011.11.27

写真上段中:表参道の店 高木屋本舗 店内には渥美清さんの予約席がある 2011.11.27

写真上段右:京成柴又駅を出ると「フーテンの寅」像が待っている 2011.11.27

写真中段:寅さん記念館に移設されたセット 2011.11.27

写真下段:第1作、第2作の「男はつらいよ」のポスター

2011年11月27日日曜日

政治の劣化:国会議員の劣化、ひいては有権者の劣化?




政治の劣化は言われている通りだと思うが、有権者の劣化ひいては国会議員の劣化か、国会議員の劣化ひいては有権者の劣化なのか。

ギリシャに始まった欧州政府債務問題は、各国に飛び火し、比較的良好といわれたフランス、ドイツまで影響を及ぼしているが、日本だって他人事ではない。国の借金は対GDP比200%で、政治局面に何かあると市場が騒ぎ出すほどの危険水準である。

そんな状況下で、野田政権はTPPに続き財政再建で消費税増税に強行路線をとっているが、解散・総選挙も視野に与野党が対峙し、民主、自民ともに党内を二分化する恐れがあり、政界は不安定なままだ。

自民党長期政権で沈滞・腐敗した政治から脱却すべく政権交代したまでは良かったが、民主党政権の体たらくは期待を裏切り、次期選挙では惨敗が確実視され、コロコロ変わる短命政権は政治不信を掻き立てる。

さらに、「政治とカネ」、小沢氏起訴、小沢vs反小沢の飽くなき権力闘争、続く弱体政権は山積する難題を処理する能力なしと見られている。

11月25日の読売新聞で「「政治の劣化」に強い不満」という世論調査結果が発表になった。今の国会議員は「決断力」「指導力」に欠け、国民の目線に立たず、政策決定が遅いというのだ。

私も以前、国会議員の政治力の劣化という内容の記事を書いたことがある。指導力、決断力などあろうはずがない。まず「何がやりたくで国会議員になったのか」わからない。短期間のうちに選挙区を走り回り、握手攻めし名前を覚えさすのが選挙戦術だ。

当選すれば、派閥に入りそのリーダーの指示通りに動けばいい。むしろ指示通りに動かなければ何をやって良いのか分からないのだ。リーダーは、数で権力を見せびらかす戦術で党内の発言力を強める。

スピード感など要求できない。今は利害が多様化している。皆が議論し妥協点を見出すのではなく、一部の人間が作った案を「ああではない、こうでもない」といっているのだから決まろうはずがない。

今のような選挙のやり方では、出てほしい人も立候補にしり込みする。立候補の話を持ち込まれた人が、資金もなく、家族のことまでばらされるのは嫌だと断った話を聞いたことがある。

当然出てくるのは、野心を持った(?)公務員や元職、鞍替え組みだ。国政など考えてはいないし、斬新さなど感じられない。「新しい風」、「新しい波」などと強調するが、根はこってり古臭い。

政治が劣化しているのは、国会議員の劣化であるし、強いては有権者の劣化だ。

私たちが通常政治にかかわることが出来るのは「選挙」だが、これといった候補者も見つからず、二大政党制といっても政策に大きな違いは見出せず、結局のところポピュリズムに流される。

誰かが言い出し、あるいは動き出したことが大衆迎合(ポピュリズム)で政治を動かすが、チョットしたことで失望し離れていく。安定政権など期待できないのだ。

既成政党に飽き足らず、中央では新しい少数派政党が乱立し、地方でも「維新の会」「減税」を訴える政治グループが活躍しているが、ポピュリズムに流されるととんでもないことになってしまう心配がある。

ダメな国会議員だといっても仕方ない。今の難局を乗り越えるには、自分で判断し自ら有権者を説得し、地道に努力するしかない。一歩政局になれば市場は不安視し、日本危機の勃発になる。


写真:「政治の劣化」を報じる世論調査 読売新聞 2011.11.25

2011年11月24日木曜日

政治家も投資家も利己心を捨て、世界的経済危機に立ち向かえ







政治家、投資家よ、ここは冷静に利己心を捨て、世界経済危機に立ち向かえないか。政府債務問題、財政危機を引き起こす要因は政治家にあったのではないか。投資かも投資で社会に貢献するという理念があるなら、今は短期の利益を追求するのではなく、世界経済危機を回避する努力をするのが道ではないのか。

今のままでは、世界経済は破綻し政治家は各国民にその無能さをさらけ出し、投資家は投資を続けることが出来なくなる。

最近のメデイアの報道する経済ニュースに唖然とする。債務残高が対GDP比83%で良好といわれるドイツ国債が7割しか応札できず「札割れ」を起こしたという。利回りはまだ1.98%であるが、イタリアは7%台、スペイン6.7%、フランス3.7%、ベルギーは5.5%でユーロ圏外であるがIMFに支援を求めたという。

今一番安定といわれているトリプルAのフランス国債を米国の格付け会社が格付け見直しをするというニュースが流れた。フランス国債が格下げされるとなると、大きな影響があるが、これは確か誤報のはずだ。

それほどユーロ全体が売られている感じだ。

しかし、EUだって黙ってはいない。ユーロ圏維持のため、欧州委員会は予算編成に関する規制案を発表し、財政・金融危機に対応しようとしているし、ユーロ圏の共通債を導入し、各国が借金のために発行する国債の変わりにユーロ全体で保証し危機拡大を防止しようとしているが、ドイツは反対のようだ。

一方で、主要外国為替決済機関が、ユーロ崩壊に備えようとしているというニュースも流れている(WSJ2011.11.24)。

今回の欧州の政府債務問題は、ユーロ圏そのものの存在意義を問われるものであり、だからこそ最後は政治の問題なのだ。

ギリシャは政権交代し、政治家のいない内閣が樹立したし、イタリアも政権が変わったが、与野党の権力闘争が激しく、決して安定政権とはいえない。米国も大統領選を来年に控え、オバマ大統領は財政赤字削減問題でゴタゴタしているし、日本は財政健全化に向けた消費税増税問題で野田民主党は党内を二分する動きもあり、自民党と公明党は解散・総選挙を視野に野田政権と対峙しようとしている。

そのため、市場は政治に不信感を抱き、経済安定が遠のく要因になっている。
ここは冷静に、政治家も投資かも利己心を捨て財政危機に立ち向かうべきではないか。

写真左:ユーロ圏の財政政策統合と条約改正案を発表する仏独首脳会談

写真右:ドイツは否定的考え?

いずれも2011.11.25 NHK「おはよう日本」より

2011年11月23日水曜日

東京湾震源、震度2:「ドン」という音と同時に我が家の地震計が揺れた



11月23日午後3時半ごろ、「ドーン」という突き上げる音とともに、我が家の地震計が約10秒間揺れた。見ていたテレビ画面を大相撲中継中のNHKに切り替えたが、地震情報は出ていなかった。「ドーン」という音では震源は東京湾?。

見ていたテレビは、テレビ東京の「RAILL WAY」、母親の看病のために49歳で故郷の私鉄の運転手で再就職する男の物語だ。うわさには聞いていたので見ていたら、「ドーン」という突き上げる音の後、我が家の地震計が揺れた。

我が家の地震計は、薄型液晶テレビで、よく揺れるので、すぐ地震と分かる。もちろん転倒防止のため、ロープでしっかり台に縛ってある。

3月11日の東北地方太平洋沖地震以降、多くの研究者が茨城県沖から房総沖での地震の発生を警告している。房総沖は空白区域としても要注意のエリアだ。巨大地震もこの域ですべりが止まっているので、エネルギーもたまっているはずだという。

最近良くあたると評判の北大の先生によるVHF電磁波観測でも地震発生の兆候が見られると週刊誌などで報じられている。

東京湾北部地震、房総沖地震はしばらくの間、要注意なのだ。

写真:気象庁発表 11月23日15時28分地震情報

アメリカの要望事項:「年次改革要望書」から「日米経済調和対話」へ




アメリカの対日ごり押し政策は、「年次改革要望書」から「日米経済調和対話」に姿を変え、やっぱり続いていたのだ。アメリカは輸出を増やし、雇用を高めるためにドル安政策をとり、TPPなど経済連携でも、「国益」を押し通す姿勢を変えていないが、その日米経済調和対話では、日米両国の経済成長を支援するためと称して数々の改革が要求されている。

以前は、在日米国大使館のHPを開くと、右下の欄に「年次改革報告書」に関連する報告書をクリックすることが出来たが、今はその欄はない。止めたのかと思ったが、やっぱり続いて要求されていたのだ。

今回は日米経済調和対話に行き着くには、チョッとクリックが多くなる。政策関連情報→経済・通商関連→規制改革→日米経済調和対話(2011.2)で開ける。

そこには、情報通信、知的所有権、農業関連、ワクチン領域ではすでに良好な成果をもたらしたが、この対話の下に共通の目標達成に向け、引き続き日本との更なる調和と連携を促進するという。

その米国が関心を寄せている事項に、情報通信技術、知的財産権、郵政、保険、運輸・流通・エネルギー、農業関連課題、ビジネス法制領域、医薬品・医療機器があげられているのだ。年次改革要望書での事項と変わらないようだ。

違っている点は、毎年進捗状況を報告するという記述が見当たらないことだ。

確かにアメリカの厚顔無恥とも思える内政干渉であるが、対等な競争、手続きの簡素化、透明性、公平性、効率性など日本の制度としての閉鎖性が見られたが、アメリカの要望はこれらを改善し門戸開放を求めたものであり、評価すべき点もあるが日本の育んできた良き制度を破壊する改革もあった。

情を失った、ただのビジネスライクであってはならない。

小泉政権で強引に郵政民営化をやり、今までの良き制度をひっくり返す結果になったために、今でも郵政改革見直しでおおもめであり、どうなるのか分からない。

関税の問題を除けば、TPPと余り変わらないように思えるが、TPPも賛否二分化され、与野党ともに党内分裂の様相を呈している。
ここは、常識では「先送り」だろうが、それでは問題が深刻になるばかりだ。

改革は、しっかり議論し、急がずゆっくり足を地に付け前進させるべきだ。


写真:日米経済調和対話 在日米国大使館のHPより

2011年11月22日火曜日

消費税増税強行路線へ:財政健全化か日本の信用不安回避か

野田首相が消費税増税に向け強硬路線に転じたかに見える。長年の課題である財政再建への一歩のためか、日本の信用不安回避のために急ぐのか。

民主党政権の取り組みは右往左往の連続である。「消費税増税なし」で政権交代を戦い、鳩山政権ではそれを踏襲したが、菅政権で消費税増税論が再燃し、反対意見が多いと見るや増税論議は良いだろうと言い出した。そして財務省に押された野田政権では、国内の消費税増税論議を後回しに、APECで国際公約をし、それを御旗に強硬路線を進んでいる。

私も以前から指摘していたことだが、政府債務問題では日本もこのままでは信用不安にかかるのは間違いない。その回避のためにも急いでいるのか。

民主党政権が描く消費税増税工程は、次期通常国会で関連法案を成立させ、その後国民に信を問い、消費税上げを実施するというものだった。付帯条件に「経済環境の好転したとき」も盛られる話だった。

藤井民主党税調会長も同様のことを発言しながら、それには国会議員、公務員も痛みわけしないといけないとか、民主党が選挙に負ければ消費税上げは出来ないだろうともいっていた。

ところが、今日の新聞報道では、野田総理は関連法案で消費税増税の「実施時期も書き込む」と言い出した。第3次補正予算が国会を通り、今後は消費税増税で与野党が対立することになり、場合によっては解散・総選挙もあるかもしれない。そのとき民主党は敗北するだろうが負けても消費税増税は実施できることになるのだ。

常識で考えると、解散・総選挙で国民に信を問い、消費税増税関連法案の国会提出になるのだろうが、自公の主張を民主党はどう受け止めるのか。

その民主党でも消費税増税に一枚岩ではない。最大派閥の小沢さんが「今は消費税上げの時期ではない」といったという。政治基盤の脆弱な野田首相にとって、どういう手で党内をまとめようとしているのか。

もう一つは、政府債務問題で、日本の信用不安が市場で叫ばれるようになるのは時間の問題だ。そうなると日本国債の下落、利回り率の上昇はギリシャ、イタリアどころの話ではなくなり世界経済は奈落の底に落とされる。財務省と野田首相は、それを回避するために早めの手を打っているのか。

それには、もっと前にやるべきことがある。

公務員の削減、給与カット、国会議員数の削減と今、一人当たり年に約1億2000万円かかっている費用の大幅カットによる歳出の削減だ。

先の国会の事業仕分けでは、役人天国の事案が槍玉に上がった。国家公務員宿舎の問題は見直しの判定だったと思うが、元改革派官僚で参考人として加わった古賀茂明さんが「国家公務員宿舎は不要、2500万もの年収のある高級官僚が格安の宿舎に入る必要はない。必要なら個人で借り上げたらどうか。そもそも、国民に増税をお願いしながら、一方で国家公務員の福利厚生をどうしましょうかと言う感覚が可笑しい」と喝破したのに拍手喝さいだ。

官僚は日本が財政破綻しIMFの管理下に入って財政再建の道を踏み出して初めて公務員などの削減・給与カットなどに取り組むのか。それじゃギリシャやイタリアにも劣るんじゃないか。

さらには、日本の財政の本当の姿がまだ分からない。財務省は財政健全化のために増税を訴えるが、まだ無駄な金を財務省などは隠していると指摘する経済学者もいる。

今の時期に増税してどうなるのか。さらに消費が萎み経済不況が進むのか。増税で市場の信用を得て、日本の信用不安が回避できるのか。

減税して消費が伸び、経済が回復し税収も上がり経済成長に持っていけるのか。タイラー・コーエンが言うように「容易に収穫できる果実」がふんだんにある時はそうだろうが、今はそんな時ではない気がする。

経済への影響を考えた総合的な判断が出来るデータを野田政権は国民に示すべきだ。

2011年11月20日日曜日

スパコン「京」:為替変動を予測し投資家の投機行動を抑えられないか



スパコン「京」が毎秒1京回の計算速度を持ち、2期連続で世界の首位に立ったという。なかなか実感できないモノであるが、そうだとすると今、一番困っている為替変動が世界経済を不安定にしていることに対して、為替変動を予測して投資家の投機的動きを抑制できないか。

このままでは、世界経済はクラッシュしそうなのだ。それを警告し防止する手立てをスパコンで出来ないか。

このスパコンの用途は広い。最先端の製品開発、医療分野、新薬開発、防災、地球環境問題、新エネルギー、新祖竿の開発そして宇宙の解明などが上げられている(富士通 スパコン「京」新聞広告より)。

私がスパコンの利用を身近に感じたのは「地球シミュレーター」での気候変動予測だった。地球上の気温の実測値が自然変動だけでは説明できなかったが、自然変動にCO2排出の要素を組み込むことによって実測値と予測値が一致したという。

そこから地球温暖化はCO2排出による人為説が主流となり、世界的にCO2排出量の削減が要求されている。しかし一方で、CO2排出説に異論を唱え自然変動説を主張する研究者も多いのだが、CO2がどういう要因でスパコンのロジックに組み込まれているのか説明がないことが不思議だ。

もっと身近には、通販サイトで知ることが出来る。私たちがネットで本や商品を注文したときに、「あなたの購入した本(商品)を選んだ人が、こういう本(商品)も選んでいます」という推薦商品を上げているが、これもスパコンでの情報処理の結果らしい。

ところで、今一番問題となっているのがドル安、円高基調が変わらない為替変動、世界的株安、政府債務問題にからんだ財政再建だが、この経済問題も強力な指導力で山積する難問に立ち向かっていくリーダーの不在など多くは政治問題なのだ。

政治的に安心感が読み取れれば市場も落ち着くだろうが、このままでは世界経済は大変なことになる。

市場は世界経済の将来をどう見ているのか。

今のような投機的状況が続くと世界経済は崩壊の危機に立つ。投資家自らの行動が投資をダメにするのだ。

何とかして防止するために近将来を予測し、政治で解決の道を選ぶ。投資家の心理を読み取って、為替変動に対応する金融政策、財政政策をどう打ち出していくか。スパコンの活用が出来ないか。

人間の行動心理を読むロジックは難しいかもしれない。コンピューターを使わず、人間がこつこつデータを集め、過去の実績を評価し、人間が考えることが一番のスパコンかもしれないが。

写真:スパコン「京」の新聞広告(富士通)

2011年11月17日木曜日

政治家よ 利己心を捨て政治にあたれないか



今の世界各国の政治を見ると、政治家は利己心を捨て一致団結してこの国難にあたらなければならないときに、私権、党利党略に走り与野党に一致点が見られず国政の不安定性ばかりが目に付き、市場が好転する気配がない。

新聞報道によると、財政再建を最優先しなければならないイタリアのモンテイ政権に、政治家が一人も入っていないという。日本の議院内閣制とは違うのだろうが異常な内閣だ。

政治家が一人も入っていないと言うことで安定政権として危惧する見方もあるが、モンテイ新首相は、「議会や政党から強い支持を得るのに役立つ」と強弁する。学者、官僚、企業人だからそれぞれ専門性を発揮できるだろうが、議会対策が大変だろうと思うのは取り越し苦労か。

「財政再建」という国民に負担を強いる最優先課題を担っているが、国民の信を得ていないだけに、早晩解散・総選挙を迫られるだろう。

連立救国内閣でも作って、全員一致で国難にあたらなければならないときに、政治家の利己心、党利党略で非協力は頂けない。

イタリアばかりではない。

アメリカも来年の大統領栓を控え、共和党はオバマ大統領の再選を阻止するために米議会はゴタゴタしている。債務問題での上限枠引き上げ、雇用促進法案でのゴタゴタはまだ新しい。世界が何をしているのだと不信感を持っても可笑しくはない。共和党はオバマ大統領再選阻止の戦術を取っているのだ。

オバマ大統領は、点数を稼ぐ絶好のチャンスとしてAPEC,TPPに臨み国益を押し出す態度をとった。

日本だって同じことだ。

内閣支持率も下落する弱体民主党政権に協力することなど全く念頭にない。自民党は解散・総選挙に持って行き政権奪還することが最優先課題で谷垣総裁の命運がかかっている。

大震災を受けて連立政権構想も持ち上がっていたが、菅総理の手法の稚拙さから実現できなかった。野田政権は消費税増税、TPP参加の路線を進んでいるが、消費税増税は国際公約を御旗に突き進もうとしているし、賛否二分化するTPPに対しては日米交渉で解釈の違いを鮮明にした。

先の参院予算委員会の審議でも議論がかみ合わない。消費税増税では国民に信を問うタイミングが問題になった。野党は消費税増税法案の提出前に解散・総選挙を訴えているが、与党の民主党は法案成立後に国民に信を問うという。マニフェストとの整合性でこの一点張りだ。

これでは、政治家はダメだと言われても仕方ないが、政治家がダメな要因に選挙がある。

常に選挙の洗礼を受ける。私権、党利党略に走り相手側に点数稼ぎさせることなど毛頭考えていないのだ。

今はそんな時ではない。政治家は利己心を捨て国民のために政治にあたらなければならない。

写真:イタリア新政権を報じる読売新聞 2011.11.17

2011年11月16日水曜日

円高・デフレ対策:日銀は国会で政策論争せよ







日銀は国会で政策論争し、国民に円高・デフレ対策についてもっと説明すべきではないか。11月15日の参院予算委員会で民主党の川上義博議員が、日銀に円高・デフレ対策で、「もっと金融緩和をすべきではないか」という意味の質問をしていたのをNHK国会中継で聞いた。

今、日本中の企業が円高に悩まされている。TPPも経済連携では大事なテーマであるが、経済成長には円高、デフレ対策も重要な課題である。ところが翌日、16日の新聞では川上議員のこの質問は予算委詳報には載っていなかった。大事なことなので記憶に頼りながら記事にした。

まず、川上議員は「何故、日銀総裁が出席できないのだ」と執拗に代理出席(?)した副総裁に迫っていた。金融政策に責任を持つ立場であるなら白川総裁の出席は当然のことだ。
副総裁は、15日から金融政策決定会合が数ヶ月も前から予定されていたので出席できなかったと弁解していた。

おまけに「日銀は市場の動きに敏感に反応するために緊張感を持って仕事をしなければならない」という意味のことを発言し、国会出席よりも金融政策決定会合の方が重要であるかのように抗弁していた。

16日の新聞には、日銀政策決定会合の記事が載っており、欧州の財政・金融危機や最近の超円高が日本経済に及ぼす影響を話し合ったという。前回の会合で追加緩和を決めており、今回はその効果を見極める「様子見」のようだ。

円高の要因を聞かれ、ユーロ各国の経済不安でユーロ安、米国景気の先行き不透明感でドル安が円高につながっているという。

川上議員は円高是正には、「更なる金融緩和が必要ではないのか」という趣旨の質問をしていた。

これに対して日銀副総裁は、マネタリー・ベースで言うと、日本は対GDP25%,アメリカは17%で、決して金融緩和が不十分というわけではないという。日銀が常に言っていることだ。

確かに、日銀は対GDP24.6%、FEBは17.4%、ECBは11.5%で高くなっているが、日本は現金決済取引が多く、欧米より高くなっているのだ。

マネタリー・ベースで言うと、日本円は対GDP25%とすると、GDPが480兆円だから約120兆円、米ドルは対GDP17%だからGDP1063兆円とすると180兆円になる。

ところが、日銀は金融緩和をするが一向に円高は抑制できない。その原因についてエコノミストの高橋洋一さんは、「水準」ではなく「変化」が大事なのだという。日米マネタリーベース対GDP比を比較すると、2000年1月を100として、アメリカは290、日本は180で日本の金融緩和は不十分だという(現代ビジネス 「ニュースの深層」より)。

日銀は18番の「様子見」を決め込んでいるが、更なる金融緩和をやってみる必要があるという考えが多い。

川上さんは、民主党政権も困っているので何とかしろという。

安住財務相は、日銀の金融政策ばかりではダメで、財政政策と組み合わせての円高対策が必要で、今後日銀と強調し対応していくと引き取った。

日銀はもっと政策を検討すべきだ。失敗を恐れて及び腰になっている。象牙の塔のような日銀の部屋で会合し、時々記者会見し、出張先で政策についてコメントするのではなく、国会でわれわれの代表者、財務省、日銀、在野のエコノミストが政策について議論し、国民にしっかり説明すべきではないのか。

政策に至る根拠が見えず、責任の拠り所が不明である。

写真左:日銀本店

写真右:日米マネタリーベース比較 高橋洋一 現代ビジネス「ニュースの深層」より

2011年11月15日火曜日

TPP:国益を押し通すアメリカ、守る中国、そして損なう日本か






日本でも交渉参加問題が賛否二分化している今回のTPP交渉は、国益を押し通すアメリカ、国益のため主導権を握ろうとする中国、そして遅まきながらの交渉参加で国益を損ないかねない日本の実態が明らかになった。

アジア太平洋経済連携で主導権を握り、輸出を増やし雇用につなげようとするアメリカ、来年の大統領選に向け実績をアピールしたいオバマ大統領にしてみれば、出身地のハワイでのAPEC開催は願ってもないチャンスだった。

中国は経済統合に向けては、多くのチャンネルを考えているようで、どうやって中国の主導権が確保できるかが最大の関心事だ。TPPに関しては中国の高官が「招待されていない」と発言したが、米国は「招待されるものではない。そっちから参加しろ」と反論される始末だ。

一方の日本は、APEC首脳会議でTPP交渉参加へ向けて関係国と協議に入る方針を表明し、関係国から歓迎されたという。野田首相が小オバマ大統領の横に並んで笑みを浮かべている写真を見ると主催国のアメリカの歓迎ぶりがわかるのだが、素直には喜べないところもある。

オバマ大統領との会談で、「全品目とサービス分野を貿易自由化の交渉テーブルに載せる」と発言したとアメリカ側の発表があったが、日本側は「事実ではない」と訂正を要求、認められたとした。帰国後の15日の参議院予算委員会でも追及され、野田首相は改めて否定した。

しかし、ホワイトハウスの副報道官は、発表内容は正確で「修正するつもりはない」という(asahi.com
2011.11.15)。

外交交渉では、よくある解釈の違いと言ってはいられない。TPP 参加交渉の肝心なところで、国益を守るためには例外事項もあるのだ。

国益を守るためにも、公的保険制度、美しい農村は守り抜くというが、コメについては重要品目か、例外かは明言していない。

国益を守る手段として、先の参院予算委員会で野田首相は国内法に基づき是非を決めるという発言をしていたが、条約は国内法の上位に来れば、そうとは言っておれない。そのとき枝野経済産業相が首相の席に駆け寄り説明していた。

TPP から国内の良き制度を守るためには、当初から例外事項に入れなければならないのだ。しかし、ここが難しい問題なのだ。米国は全品目、サービスが念頭にある。米政府高官が早い時期から「高いレべルの課題に対応すべきである」と先制攻撃したことからもうかがい知ることができる。

讀賣新聞(2011.11.15)の世論調査結果では、TPP決断に評価する人が51%というが、私もよくわからない。

もっと情報を収集し、国民的議論を広げ、国益の視点から結論を出すと民主党政権はいうが、野田首相がどうやって国益を守るのか、交渉担当者の実力はどうなのか。2012年度予算で農業強化策を打ち出すと官房長官は言うが、それではもう参加がきまっているのか。

写真左:日米会談 2011.11.14 テレビ朝日 報道ステーションより

写真右:参院予算委員会での野田首相 2011.11.15 NHK国会中継より

2011年11月12日土曜日

TPP交渉参加:野田首相! 言葉の「まやかし」ではないか



まだ、ひと悶着続きそうなTPP参加問題だがAPECでは「参加表明」ではなく、「交渉参加表明」に政治決断されたが言葉の「まやかし」ではないのか。賛否二分化するTPP参加で結論を先送りしたかに見える官僚特有の表現になった。すでに参加は決まっているが、ここは国民を欺瞞する手法に出たのではないか。

APECで表明するには時間が迫っている。参加反対意見も多い中での決断は、反対意見にも配慮しなければならない事態になった。

日本が今まで築いてきた良い制度は守り抜くと「国益」を守る意思も表明したが、交渉に当たる政府や官僚が「国益」を守ったことがあるだろうか。守ったのは、常に自分たちにかかる利権であり、相手国(今回は米国)に高評価を得ようとする政権の立場だ。

「交渉に参加」とは、どういうことか。TPPでの詳細な交渉で、日本の国益に合わない事態が生じた場合「不参加」を表明できるのか。また、それだけの覚悟で交渉に当たるのか。

11日の首相会見を見ると、「各国と協議」→「情報収集」→「国民的議論」→「国益の視点に立って結論」という。

今だって、反対者は情報が少ないというと政府は、得ている情報は出しているという。すでに50時間も議論したというが、その結果が今回の一連の賛否両派の動きだとすると、「国民的議論」なんて期待できない。もしかして国民に信を問うのか。

今まで米国とは内政干渉に近い年次改革要望事項が出され、日本政府はそれに従い改革をやってきた。しかし、国益が守られたものではなく、米国に言いなりのものだった。

今回のTPPに関しても韓国を例に「米国との交渉は常に損?」と警告する記事が載っている(朝日新聞2011.11.5)。

今回日本が考えているTPP参加は、GDPから見ても明らかなように、結局は日米自由貿易協定(FTA)だというのだ。韓国は米国との米韓FTAでは「韓国が損」をしており、韓国内ではデモが拡大しているという。

米韓FTAの問題点をよく検討してからでも決めた方が良いとアドバイスしている。
また重要なことであるが、企業が相手国の政策で損害を受けたとき、仲裁機関に訴えて損害賠償を求められる条項も含まれるとすると、北米自由貿易協定(NAFTA)で例があるように莫大な賠償金を要求してくる恐れもある。米国だからやりかねない。

コロコロ変わり、普天間問題でゴタゴタしている日本の首相と米国大統領の間では良好なコミュニケーションがないこともあるだろうが、政権延命のために米国との良好な関係を築くために、「国益」を犠牲にした協定を結んではならない。

TPP参加は避けられないと思うが、国内議論が今は足りない。

写真:TPP交渉参加の首相会見を報じる読売新聞 2011.11.12

2011年11月11日金曜日

これが政治の潮流か:指導力なき弱体政権、与野党攻防そして債務問題



これが世界の政治の潮流なのか。指導力のない弱体政権、あきれ返るほどの与野党攻防、そして経済学では解決しそうにない債務問題、それに関連した為替、株安の動向、目が覚め新聞を開くと飛び込んでくるニュースだ。

政府債務問題では、市場不安が拡大し国債下落、国債利回りの危険水域を大きく外れたギリシャ、7%の危険水域を浮沈しているイタリアの政権が崩壊し、ギリシャは政治手腕は未知数であるが経済専門家のパパデモス新首相での連立政権、イタリアは2月の総選挙を待てずに経済通のモンテイ新政権で財政再建法案を成立させようとしている。

議会での与野党の攻防も激しい。パパンドレウ政権、ベルルスコーニ政権も内閣不信任案の提出が予定され、国民投票、総選挙で国民に信を問うことも考えられていたが、早急な財政再建が要求され連立政権での政治運営になったが、先行きは不透明と思われている。

これらの欧州の動きは、決して他人事ではない。日本も同じ状況にあるのだ。

政府債務は対GDP200%、借金は1000兆円に迫ろうとしている。何時市場が警戒感を持つかにかかっている。

民主党・野田政権も弱体政権だ。民主党は信を失っているし、野田政権の党内基盤は脆弱だ。薄氷のバランスの上にかろうじて成り立っている政権で、指導力など発揮できる状態にない。

案の定、TPP参加では「最後は政治判断だ」といいながら、党内の賛否も二分化している状態に、「一日良く考える」と表明を先送りした。11日の衆議院予算委員会をNHKテレビ中継で見たが、十分に情報公開もされず、議論も進んでいないTPP参加問題に野党の質問者は、拙速な参加に異議を唱えていたが、野田首相は「現実に甘んじるか、将来を考えるか」、これが判断基準だという。

与野党の攻防も激しい。解散・総選挙を目指して主導権を発揮したい自民党にとっては、そう容易に民主党との妥協は出来ない。

「国益」は何だといわれても、そんなことを考えて政治をやっているわけではなかろう。

ポピュリズムにより政権交代できたが、ポピュリズムにより見放されている民主党政権だ。
そんな政権に重大な国政を託し続けるには不安が大きい。

米国だって同じだ。来年の大統領選に向けオバマ大統領は苦戦している。雇用促進法案も共和党の支持が得られずモタモタしている。経済も一向に好転しない。草の根会、茶会などに振り回される政治に大きな期待は出来ない。

世界を震撼させている債務問題は、国債利回りが危険水域の7%をこえた国だけでなく、一応安全水域にある国も巻き込んだ経済混乱を起こしている。

財政健全化に向け強い指導力の発揮できる政権を要望されているが、政治・経済に強いリーダーが出てくるのは何時のことか。主導権争いばかり繰り返している各国政界にあっては所詮無理な話か。

写真:予算委員会での野田首相 2011.11.11 NHK国会中継より

2011年11月7日月曜日

政府債務問題:経済問題ではなく、政治問題では



















ギリシャに端を発した債務問題は、経済問題よりも政治問題ではないか。G20では各国がドル安に悩んでいることを考えると「基軸通貨としてのドル」が主要議題になるのではないかと考えていたが、ギリシャの債務問題に明け暮れ、その信用不安は債務残高が対GDP比119%のイタリアに拡大し、IMFの監視下に入ることになったという。

G20後の首脳宣言では財政赤字国は財政再建に努めよう促した。

しかし、その後のメデイアの政府債務問題の検証報道をみると、問題の多くは経済学では解決できない政治問題であることが分かる。ギリシャ、イタリアの問題は債務残高が先進国一悪い日本へも飛び火する可能性がある。

クルーグマン教授がそのコラムで、今の米国の経済状況は経済学では解決できない政治問題だと指摘していたが、今各国が債務問題を抱えているが、ほとんどが政治問題に帰することが多い。国のリーダーが指導力を発揮して、国民に負担を強いる政策も推進していける政治情勢下にないことが経済の混乱を長引かせている。

ギリシャのパパンドレウ首相は、「支援を受け入れるか」「ユーロにとどまるか」の是非を問う国民投票を表明したがユーロ圏は勿論のこと国内からも批判が上がり、与野党緊迫する中でようやくのこと信任は受けたが辞任に追いやられ大連立構想が持ち上がった。

イタリアは財政不安が懸念されているが、その不安を抑えるために支援は受けないが、IMF、EUの監視下に入ることにしたが、連立与党からもベルルスコーニ首相の退任を求める動きが活発になった。今まで数々のスキャンダル、暴言が話題になっていたが、指導力も問われての政変が起きている。

それぞれの国内政治事情を見ると、与野党が議席で競っているので、選挙に勝つために甘い政策を訴え、その結果が財政赤字につながっている。公務員の削減、増税を訴えるが反対のうごきがあり思うように進まない。ギリシャでは4割が裏経済といわれているし、脱税も横行している。

ポピュリズムで政権に就くが、議会が対立し政策が停滞するとポピュリズムで政権は見放される。米国のオバマ政権、日本の民主党政権がいい例だ。

日本も対GDP比債務残高は先進国一悪く、野田政権基盤も脆弱で融和、低姿勢でないと政権運営が難しい。

対GDP比債務残高を比較すると、日本は212%、ギリシャ157%、イタリア129%、米国101%、フランス97%、ドイツ87%、スペイン74%だ(読売新聞2011.11.5)。経済規模は日本が約450兆円、ギリシャ約17兆円、イタリア約120兆円で、イタリアが債務不履行の状態になると世界経済への波及は想像がつかないほどだ。

順番からすると、日本が一番最初にIMFの監視下に入り財政再建を進めなければならないところであるが、わが国はまだ国債のファイナンスが国内で出来るため市場で大きな問題にはなっていないがそれも時間の問題だ。読売新聞(2011.10.22)によると、国の借金は1000兆円を超え、一方個人の金融資産は1138兆円で、国の借金との差は焼く50兆円、今のところは国債は順調に買われ、金利は1%の低水準にある。

しかし、国の借金が個人金融資産を超えたとき、市場がどう判断するかだ。ギリシャの問題は決して他人事ではない。

野田首相は、サミットで日本の債務が槍玉に上がるのを避けるために、国内では明確にしていない「消費税10%への段階的値上げ」を打って出たのだろう。本人は否定しているが、国際公約を御旗に消費税増税へ突く進む魂胆だろう。

消費税増税法案を成立させた後、上げる前に国民に信を問うというが、どういうことなのか。まず国民に増税に対する信を問うて法案を成立させるのが本来のやり方ではないのか。

また、政治にはやることがある。

今回のG20の行動計画では「巨大な金融機関に格差是正、危機対応策の財源を負担させるべきだ」と明記されたというが、ロナルド・ドーアロンドン大学名誉教授やバチカンも提言している。為替など金融取引にグローバルに課税し、投資家の投機的な取引を抑えるとともに、格差是正、危機対応への資金にすべきで、これも政治の問題なのだ。

まず、投機的取引の大きいドイツの銀行からやってみてはどうか。

また、一国のリーダーに「指導力がない」と言われるのは残念なことだ。指導力のある政治家を育成できなかったことは各国民の責任でもある。ポピュリズムに走ることなく、力のある政治家を育てることも急務である。


写真上段左:日本の国の借金と個人金融資産 読売新聞2011.10.22


写真上段右:欧州の主な国の経済規模と借金(参考に日本も含む) 朝日新聞2011.11.5


写真下段:G20首脳宣言 赤字国は財政再建を 2011.11.4 G20ニュースを報じる民放テレビ

2011年11月4日金曜日

ギリシャ債務問題:何を考えるパパンドレウ首相、日本だって他人事ではない









世界経済を脅かすまでになったギリシャの債務問題は、EUの提案を受け入れ「管理型デフォルテ」で財政再建を目指すことになったが、EUからの支援を受けるには緊縮財政が必要で、その前提に政権は公務員数の削減や年金カットを打ち出したが大規模デモなどで国民の不満は高まり与野党の攻防にまで発展した。パパンドレウ首相は国民投票での決着を表明した。

EUからの金融支援を受けることになると、全てがEUの管理下に入ることになりギリシャの主権が危ぶむことにもなる。

国民の反対はある一方、ユーロにとどまることを目指すが政治基盤の弱いパパンドレウ首相にとっては国民投票で直接国民に「緊縮策受け入れの是非」、「内閣の信任」を問いかけ、信任を得て一気に突き進もうとしているのだろう。政治決断が出来ず、国民に判断を仰ぐことになる。

日本だって同じことをやろうとしている。野田首相は、国内では反対も多い消費税上げに関してG20のテーマでもないのに国際舞台で表明し国際公約を背景に国内で消費税上げに突き進もうとしている。

公明党の井上幹事長に続き、自民党の谷垣総裁も消費税上げ法案の前に総選挙で国民に信を問えといっているが、民主党政権は消費税を上げる前に国民に信を問えばいいと考えている。

ところで、ギリシャの債務問題は、どうなるのだろうか。債務問題は、ギリシャに次いでイタリア、日本が危ぶまれている。決して他人事ではないのだ。

パパンドレウ首相の国民投票表明で危機再燃を心配したフランスのサルコジ大統領、ドイツのメンケル首相、EU,IMF関係者らが協議し、パパンドレウ首相を説得したが失敗した。

しかし、今朝のメデイアは一斉に「ギリシャ国民投票回避も」と報じている。相変わらずのギリシャ国内の与野党攻防で「議会承認」を条件に国民投票を撤回する可能性が出てきたというのだ。

ギリシャ国債の債務50%引き下げでもギリシャの債務残高は対GDP比160%から10年後に120%に下がる。ギリシャのGDPを35兆円(2008年 3575億ドル)とすると42兆円だ。ギリシャの2009年度の輸入が443億ユーロ、輸出が143億ユーロで貿易赤字の国だ。

主権を失うよりもユーロを離脱してドラクマに復帰し、債務をチャラにすればアルゼンチンのように、すっきり行くのではないかという考えもあるだろうが輸出で儲けることが出来ず輸入超過では無理なようだ。

欧州各国は、投資家に安心感を与えるためにギリシャ支援を行っているが、債務問題は尽きない。12月にはギリシャの国債償還期が来るというが、破綻はフランス、ドイツをも悪化させる。スペインへの不動産投資の不良債権が拡大するともいわれ、フランスは国債格下げの問題があり、ドイツは50%の国民がギリシャ支援に反対している。

日本だって他人事ではない。ギリシャに次いで、イタリア、日本の債務問題に注目が集まっている。

わが国の債務残高は対GDP比約200%、1024兆円だ。先進国一悪い。ギリシャのように公務員削減、ムダの削減は進んでいない。一方で消費税の値上げは段階的に10%まで持っていくとG20で国際公約してしまった。法案と国民に信を問う時期で国会が紛糾するだろう。

まだ日本は国債の95%が国内で資金調達されているが、国内資金調達が難しくなってくると市場で財政危機が意識されるようになるだろう。

決して他人事ではないギリシャ債務問題だ。


写真左:フランス サルコジ大統領 「ユーロ圏にとどまりかどうかも問え」と言う 2011.11.3フジテレビ スピーチより

写真右:ギリシャ パパンドレウ首相 ユーロ圏にとどまる考えを表明 2011.11.3 フジテレビ スピーチより

2011年11月3日木曜日

TPP:賛否二分化する「平成の開国」、その本質は?







TPPへの参加が、激しく賛否二分化され、「平成の開国」も国の基本を揺るがす様相を呈してきた。物品貿易を100%自由化すると、GDPが2.7兆円増加するというが、じったいは日米二国間の自由貿易協定で、おまけに米国での事前協議が必要になるというのだ。

アメリカを始め参加している9カ国に日本が加われば10カ国になるのだが、日米でGDPの厄91%を閉めることになるが、中国、韓国は不参加だ。関税障壁を除けば産業界も自由に海外への進出が出来るが、輸出となると頼みは米国だけだ。

TPP参加の効果として、野田首相は2.7兆円のGDP押し上げと国会で説明しているが、確か「10年間で」と聞いたことがある。そうすると年間たったの2700億円となるのだが・・。

しかも分かってきたことには、米国の議会と政府の事前協議が必要で、その後米議会の承認手続き、ルール作り参加、TPP交渉合意とスケジュールが続くのだ。完全に2国間の自由貿易協定だ。依然、小泉政権の時、米国から「年次改革要求事項」が突きつけられ進捗状況まで報告を求められたことがあるが、それに良く似ている。この年次改革報告書は在日米国大使館のHPで閲覧できたが、今は消されている。

10月30日の衆議院本会議の代表質問で自民党・谷垣総裁は「政府が情報を提供しないから国民的議論が全く熟していない」とひはんし、交渉参加の賛否を明らかにせよと迫った。

自民党も外交・経済連携調査会で、4日までに意見を集約する方針ではあるが、APECでの参加表明には反対している。

逆に、自民党にはどんな対案があるのか。「民主党よりも先に党の態度を決めるべきだとの考えもあり、主導権争いの様相を呈してきた。

公明党は、10月26日井上幹事長が、「賛同するには国是を変えることになる。断じて認めるわけにいかない」と交渉参加に反対した。

一方、政権与党である民主党もTPP参加反対慎重派として「TPPを慎重に考える会」があり、反対運動を展開しているが、民主党の経済連携プロジェクトチームでは、推進派と慎重派が綱引きをしている。どうも推進派は勢いを増してきたようだ。

野田首相は、2日に交渉参加の方針を決め、10日に記者会見で表明し、衆参両院予算委員会で集中審議をして、12日のAPEC前の決着を目指している。

十分な議論、情報公開が不十分な状況下で米国政府や産業界に配慮した決断のようだ。

一方、農業、漁業関係者の反対意見も理解できるし、自由化することにより競争力のついた農業、漁業も期待できるかもしれないことも理解できる。さらには、医薬品や保険制度も貿易目標にいれて医療のコストダウンも狙っている。wsjのオピニオンー日本が世界貿易で主導権を握るチャンスーによると、元ヤイター通商代表が「地域競争を前向きに受け入れ、TPPを通じた雇用創出メカニズムを活かせるチャンスだ」と効果を訴えていた。

米国主導のTPP参加は、郵政民営化の二の舞にならないか。郵政民営化は小泉政権が終わり、政権交代した途端に修正に動いている。TPP参加の国益が何処にあるか、政府はもっと情報を出さなければ国民は判断に迷う。

写真左:TPPに関する野田首相の答弁 読売新聞2011.11.3

写真右:TPP参加、揺らぐ前提 「米国内での事前協議が必要」 asahi.com2011.11.2

2011年11月1日火曜日

歯止めのかからぬ円高:日本も財政悪化、それでも円を買うのか
















日本の財政状況は、先進国一最悪なのに何故、投資家の円買いで円高が止まらないのか。10月31日10時35分、テレビに為替介入のテロップが流れた。「必要な時がきたら介入する」と口先介入だと思っていたが、75円32銭で、財務省はやっと介入に踏み切った。安住さんは、「納得のいくまで介入する」とコメントし、断続的な介入を匂わせていた。

安住さんは、さらに記者団に「何ら理由があるわけでもいない」のに残念と、投機的な取引に不満をにじませていた。投資家は、短期的な利益確保に専念している。これでは経済が安定するはずがない。

欧州の財政危機、EUの封じ込め策への懐疑的な見方、米経済の低調さ、米の更なる金融緩和、米大手証券のMFグローバルホールデイングの破、はドル、ユーロの売り、消去法で円が買われる結果になった。

どうして日本の財政状況が先進国一の悪化を来していることが頭にないのか。

読売新聞(2011.10.29)によると、今年度の国の借金は1024兆円になる。赤字国債や建設国債など国債が約795兆円、政府短期証券が約171兆円、この中には為替市場での円売り介入の資金調達も含まれている。借入金は約58兆円だそうだ。国の借金は1年間に99.7兆円、秒速320万円で増え、個人総資産に近づいている。

日本は、95%が国内で資金調達されるために、個人資産にまだ少し余裕があるために余り騒がれないのか。

それでも債務残高は対GDP比200%で、先進国一悪いのだが、円が買われる。ドルもだめ、ユーロも駄目では、円しか残らない。

「円が危ない」とは認めたくないのだ。少なくとも短期的には円は逃げれない。

今回の円買い、ドル売り介入に経済界は効果があったというが、経済アナリストたちは効果は数日しか持たないだろうという。

日銀の白川総裁は、「為替相場の形成に相当の影響を及ぼす」と思っているようだが、11月1日は78円台で推移している。

経済評論家といわれる人たちには、もっと日銀は積極的に介入しなければならないと批判する。円/ドルの関係は相対的な量関係にあるという。数10兆円という大胆な金融緩和をしないと話にならないという。

でも、円売り、ドル買いの資金も借金になる。借金で介入し、おまけに買ったドルが円高では目減りする。為替介入はすべて国民の負担なのだ。介入効果が上がらないまま借金だけが残る介入が今までの介入だ。

投資家は、短期的に利益を確保できればいいだろうが、世界経済は混乱と疲弊していくだけだ。バチカンが「利己心を捨てろ」と提言しているのを投資家はどう判断するのか。

今は、ドル、ユーロから円に移っているが、逆に円からドル、ユーロに移りだしたらどうなるか。

写真上段左:介入後の円の推移 テレビ東京WBS 2011.10.31より

写真上段右:日経平均株価の推移 テレビ東京WBS 2011.10.31より

写真下段:政府・日銀の介入を報じる読売新聞 2011.11.1